「画家 ル・コルビュジエ」展、銀座 蔦屋書店で開催。絵画から読み解く建築思想
取材/LWL online編集部
サヴォア邸やロンシャンの礼拝堂など、20世紀建築を象徴する作品を残したル・コルビュジエ。その創造の根には、生涯にわたって続けた絵画制作があった。銀座 蔦屋書店では2026年7月25日から、ドローイングとリトグラフを通じて、知られざる「画家」としての軌跡をたどる展覧会を開催する。建築と絵画を往還しながら、人間と自然、秩序と生命の関係を探究した、一人の創作者の全体像に触れる機会となる。
建築と絵画を分けなかった創作者
「近代建築の巨匠」として知られるル・コルビュジエは、同時に、生涯を通じて絵を描き続けた画家でもあった。

ル・コルビュジエ財団によれば、1917年から1965年までに制作した絵画は450点を超え、日々数時間を絵画制作に充てていたという。彼にとって絵画は、建築の仕事とは切り離された余暇や副業ではない。形、色彩、比例、身体、自然といったテーマを考え続ける、もうひとつの創造の場だった。
ル・コルビュジエは1918年、画家アメデ・オザンファンとともに「ピュリスム(純粋主義)」を提唱した。キュビスムの造形を受け継ぎながら、より明快で秩序ある構成を志向し、瓶やグラス、楽器といった日常の器物を、幾何学的な形態と抑制された色彩によって描いた芸術運動である。
複雑な対象を基本的な形へと還元し、比例と構成によって全体を調和させようとする姿勢は、その後の建築にも通底する思考だった。
「秩序」から「生命」へ。2点の原画が示す造形の変化
本展の大きな見どころとなるのが、異なる時代に制作された2点の原画《ピュリスムの静物》(1927年)と《手》(1951年)である。
《ピュリスムの静物》では、日常的なモチーフが直線と幾何学的な輪郭によって整理され、画面の中に静かな秩序がつくられている。後にサヴォア邸などで結実する初期の建築思想と、形態を整理し、全体を明快に構成しようとする感覚を共有する作品といえる。

それに対して《手》では、直線的な秩序に代わり、身体性を帯びた自由な曲線が前面に現れる。初期の幾何学的な構成から、より有機的で彫刻的な造形へ。こうした変化は、ロンシャンの礼拝堂をはじめとする後期の建築や、チャンディーガルの象徴として構想された「開いた手」のモチーフにも重なっていく。

2点を対比して見ることで、ル・コルビュジエの造形思想が、秩序を追求するピュリスムから、身体や生命、自然を包み込む表現へと展開していった軌跡が浮かび上がる。
人間と自然の関係を描いた『直角の詩』
本展の主軸となるのが、1955年に刊行された版画集『直角の詩(Le Poème de l’angle droit)』である。制作は1947年から1953年にかけて進められ、ロンシャンの礼拝堂が竣工した1955年に、パリの出版社テリアードから発表された。
本作は、リトグラフと自筆の言葉を組み合わせ、ル・コルビュジエ自身が考案した「イコノスタシス」と呼ばれる構成に沿って展開される一冊のアートブックである。財団が公開する作品資料には、太陽や水、生命、愛、「開いた手」など、彼が長年向き合ってきたテーマが繰り返し現れる。
タイトルにある「直角」とは、単なる幾何学的な形ではない。大地の水平線に対し、人間が垂直に立つことで生まれる角度であり、人間が自然と結ぶ関係の象徴でもある。
建築における直角、身体を基準にした寸法体系「モデュロール」、太陽の運行を受け止める空間、そして人間と自然との調和。『直角の詩』には、建築家、画家、詩人、思想家としてのル・コルビュジエが重なり合っている。
アートは空間を仕上げる「最後の装飾」ではない
本展で紹介される絵画は、ル・コルビュジエの建築を理解するための単なる補足資料にとどまらない。絵画と建築を分けず、その両方を通じて世界を捉えようとした、一人の創作者の姿を浮かび上がらせる。
住まいにおけるアートもまた、完成した空間に最後に加える装飾とは限らない。壁面の色、差し込む光、家具との距離、そこを歩く人の視線と響き合いながら、空間の経験そのものをつくっていく。
ル・コルビュジエの絵画を見つめることは、名作建築の背景を知るだけでなく、アートと建築、そして暮らしをどのように結び直すことができるのかを考えることでもある。
会場で展示される作品は販売も予定されている。建築の巨匠が残した造形と思考を鑑賞するだけではなく、日々の暮らしの中へ迎え入れるという選択肢にも触れられる展覧会となりそうだ。

開催概要
- 展覧会名:画家 ル・コルビュジエ 建築の巨匠が紡いだ絵画の世界
- 会期:2026年7月25日(土)~8月27日(木)
- 時間:10:30~21:00 ※最終日のみ18:00閉場
- 会場:銀座 蔦屋書店 アートウォール(GINZA SIX 6F)
- 住所:東京都中央区銀座6-10-1
- 入場:無料
- 主催:銀座 蔦屋書店
- 協力:ヨシムラファインアート株式会社
- 展示作品は7月25日10:30から店頭で販売予定。プレセールスの状況により、会期開始前に販売が終了する場合がある。
- 詳細:銀座 蔦屋書店 公式特集ページ
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LWL online 編集部