Yチェアにレザー座面の「CH24P」登場。カール・ハンセン&サンが名作を再解釈

 取材/LWL online編集部

カール・ハンセン&サンが、ハンス J. ウェグナーの名作CH24「Yチェア」にレザー座面を採用した新仕様「CH24P」を発表した。1950年の発売以来、70年以上にわたり生産され続けてきたYチェアは、なぜ今も更新され続けるのか。1908年創業のブランドの歴史と、ウェグナーが築いたデニッシュモダンの系譜から読み解く。

1908年創業。カール・ハンセン&サンとデニッシュモダンの歴史

デンマーク家具を代表する一脚として、70年以上にわたり世界中の住空間で使われ続けてきたハンス J. ウェグナーの「CH24」、通称Yチェア。そのアイコンに、新しい表情が加わる。

カール・ハンセン&サンは、Yチェアの座面にレザーを採用した新仕様「CH24P」を2027年から通常販売する。これに先駆け、2026年10月1日から11月30日まで、東京・大阪の旗艦店、公式オンラインショップ、全国の正規代理店で「A REIMAGINED ICON – CH24P(Yチェア)」キャンペーンを実施する。

ペーパーコードをレザーへ置き換えたバリエーションの追加と捉えるには、この椅子が背負ってきた時間はあまりにも長い。1949年にデザインされ、1950年の発売以来、一度も途切れることなく生産され続けてきたYチェア。新作CH24Pはその完成された造形を変えることなく、「素材」というもっとも身体に近い部分から、名作を現代へと読み替える試みである。

ではまず、簡単にカール・ハンセン&サンの歴史を紐解こう。

それは、1908年、デンマーク・フュン島のオーデンセで家具職人カール・ハンセンが開いた小さな工房から始まった。

当初手掛けていたのは、当時主流だった重厚なヴィクトリアン様式の注文家具だった。だが、1915年には近代的な機械を導入した工場へと発展し、職人による手仕事と効率的な生産を組み合わせる体制を築いていく。

現在まで続く同社の特徴は、この「クラフツマンシップ」と「合理的な生産」の両立と言っていい。伝統的な木工技術を守りながら、優れたデザインを一部の富裕層だけのものではなく、より広い暮らしへ届ける。こうしたクラフツマンシップと合理的な生産の両立を背景に、同社はやがてデニッシュモダンを代表する家具メーカーの一社へと歩みを進めていく。

そして1949年、2代目を務めていたホルガー・ハンセンが、当時若手デザイナーだったハンス J. ウェグナーをオーデンセへと招く。

20世紀家具史を代表するパートナーシップが始まったのだ。

短期間の共同作業からCH22、CH23、CH24、CH25など、その後名作と呼ばれることになる椅子が次々と生み出される。なかでも世界的な成功を収めたのがCH24、すなわちYチェアだった。

ハンス J. ウェグナーとYチェア。明代の椅子から生まれた「CH24」

ハンス J. ウェグナーは1914年、デンマーク南部のトゥナーに生まれた。家具職人としての訓練を受けた後、デザイナーとして活動。生涯に500種類以上の椅子をデザインしたことから「椅子の巨匠」とも呼ばれている。

ハンス J. ウェグナーとYチェア CH24
ハンス J. ウェグナーと代表作のひとつであるCH24「Yチェア」。ウェグナーは生涯に500種類以上の椅子をデザインした

なお、LWL onlineでは、ハンス J. ウェグナーのクラフツマンシップを紹介する『織田コレクション ハンス・ウェグナー展』も取り上げている。

Yチェアの源流をたどると、さらに時代を遡る。

1940年代、ウェグナーは中国・明代の椅子に着想を得て、一連のチャイニーズチェアをデザインしている。木の構造を生かしながら、必要な要素だけを残すという研究の延長線上で1949年に誕生したのがCH24だった。

背もたれとアームを一本の曲木によって連続させた構造とし、中央を支えるY字形のパーツが独特のシルエットを生み、日本では「Yチェア」、海外では鳥の胸部にあるY字形の骨になぞらえて「Wishbone Chair」と呼ばれるようになった。

一見すれば、きわめてシンプルな椅子なのだが、1脚の製造にはなんと100以上もの工程が必要とされ、その多くを現在も職人の手作業が担うという。

Yチェアの「シンプルさ」、そして「軽さ」は、複雑な技術や工程を表面に見せることなく、結果としての軽やかさだけを体験させる。そのあり方は、LWL onlineが追ってきた「Invisible Technology」という考え方にも通じる。

ペーパーコードからレザーへ。「CH24P」が変えるYチェアの表情

レザー座面のYチェア CH24Pを配置したダイニング空間
レザー座面のCH24Pをダイニングに配置した空間。Yチェアを象徴する軽やかなフレームはそのままに、レザーがより落ち着いた表情を加える

今回登場するCH24Pでは、Yチェアのフレームの造形はそのまま継承されている。

大きく変わったのが身体に直接触れる座面である。

柔らかくしなやかなレザーを用いることで、従来のペーパーコードとは異なる触感と視覚的な密度が加わった。日本で展開されるモデルにはFSC®認証を受けたビーチ材またはオーク材を使用し、レザーには日常使用での耐久性や汚れへの耐性を考慮した「Loke」「Thor」が採用される。

ブラックのYチェア CH24Pを配置したワークスペース
ワークスペースに置かれたブラック仕上げのCH24P。ダイニングチェアとしてだけでなく、仕事や書斎の空間にも取り入れやすい
Yチェア CH24P ブラックフレームとレザー座面のディテール
CH24Pでは、従来のペーパーコードに代えてレザーを座面に採用。Yチェアの軽やかな構造に、異なる触感と視覚的な密度が加わった

レザーは使い込むほど表情を変え、パティーナを帯びていくが、木材そのものが時間とともに色艶を変えていくYチェアに、新たに「時間を記録する素材」が加わったともいえる。

ナチュラルな木部とブラウンレザーを組み合わせたYチェア CH24P
明るい木部とブラウン系レザーを組み合わせたCH24P。素材の色合いや仕上げによって、同じYチェアでも空間に与える印象は大きく変わる

レザーのYチェアは初めてではない。1990年代から続く構想

なお、Yチェアとレザーの関係は今回突然始まったわけではない。

1990年代にはウェグナー自身がカール・ハンセン&サンとともにレザー座面を検討していたという。2019年にはウェグナー生誕105周年を記念し、ウォールナットのフレームとゴートレザー座面を組み合わせた限定仕様も製作されている。今回のCH24Pは、そうした長年の試行を、より本格的な製品バリエーションへと発展させたものと見ることもできる。

名作は「保存」するのではなく、使い続けるために更新される

窓辺のワークスペースに置かれたレザー座面のYチェア CH24P
70年以上にわたり生産され続けてきたYチェア。CH24Pもまた、鑑賞するための名作ではなく、日々の暮らしの中で使われる家具として提案される

1950年から70年以上、生産が続く家具は決して多くない。

そして、カール・ハンセン&サンは、Yチェアを博物館の中に固定された「完成品」として扱っていない。

木材や仕上げ、カラー、サイズ、そして今回のレザー座面。基本となる造形を守りながら、時代や暮らし方に応じて、少しずつアップデートしてきた。

変えてはいけないものと、変えることのできるものを見極めながら、次の世代が再び使いたいと思える状態にしていくこと。これこそが長く使い続けられる「名作」の所以だろう。

CH24Pという小さな変更から見えてくるのは、75年以上経過した今もなお「完成した名作」を更新し続ける、デニッシュデザインのしたたかな強さである。

カール・ハンセン&サン Yチェア CH24P レザー座面 日本展開5仕様
レザー座面を採用したYチェア「CH24P」。日本ではオーク、ビーチの各仕上げとレザーを組み合わせた5仕様をキャンペーン対象として展開する

CH24P(Yチェア)製品・キャンペーン概要

  • デザイナー:ハンス J. ウェグナー
  • サイズ:幅55 × 奥行51 × 高さ76cm/座面高45cm
  • 素材:FSC®認証ビーチ材またはオーク材、レザー
  • 希望小売価格:152,900円(税込)〜
  • 通常販売:2027年予定
  • 「A REIMAGINED ICON – CH24P(Yチェア)」キャンペーン
  • 期間:2026年10月1日(木)〜11月30日(月)
  • 展開:カール・ハンセン&サン東京本店、大阪、公式オンラインショップ、全国の正規代理店
  • ※キャンペーン期間中は特別価格にて展開

カール・ハンセン&サン「CH24P」公式ページ

カール・ハンセン&サン公式サイト

カール・ハンセン&サン公式「沿革」

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