オノ・ヨーコ、Nujabes、森山未來が交差。「MEET YOUR ART FESTIVAL 2026」天王洲で開催。音、香り、身体で感じるアートへ
取材/LWL online編集部
2026年10月9日から12日まで、東京・天王洲運河一帯で「MEET YOUR ART FESTIVAL 2026」が開催される。森山未來が手がけるエキシビションをはじめ、オノ・ヨーコ、Nujabesにまつわる展示、音に反応する作品、香りを用いたアートなど、150名を超えるアーティストが参加。アート、音、香り、身体、テクノロジーが交差する4日間を、LWL onlineが追う「Invisible Wellness」「Invisible Technology」の視点から読み解く。
アートは、目で見るものだけではなくなりつつある。音が空間を満たし、身体の動きが作品と呼応する。香りが記憶を呼び起こし、そこに居合わせた人や環境の変化によって作品そのものが姿を変える。
森山未來が手がける「REFLUX」とは? 音、身体、気配までを作品に
MEET YOUR ART FESTIVAL 2026(MYAF 2026)の中心となるアートエキシビションが、「REFLUX たちのぼる兆し」だ。
アーティスティック・ディレクターを森山未來、キュレーターを吉田山と渡邊賢太郎が務め、Ideal Copy、磯村暖、evala、津田道子、手塚治虫、山内祥太、Ryu Ikaが参加する。
「REFLUX」は逆流や環流を意味する。社会が絶えず「発展」「進歩」「未来」へ向かっているように見えるなか、その一方向だけでは捉えきれない揺り戻しや変化に目を向ける。

視覚だけでなく、音や動き、気配など、身体のさまざまな感覚からアートに出会う空間が展開される。さらに森山未來がディレクションするパフォーマンスでは、カナキティ、QUICK|福井貴彦、contact Gonzo、ソー・ソウエン、ハラサオリ、涌井智仁らが参加し、展示空間や観客に応答しながら、身体、音、映像を用いたパフォーマンスを展開する。

ここでは、作品と観客を隔てる境界が曖昧になる。
周囲の「音」に反応して変化する作品
今回のテーマを象徴する作品のひとつが、山内祥太の《In Between… Us?》だ。
木の根や人間の神経網を思わせる白い構造体が、周囲の音や声、環境の変化を受けてその姿を変えていく。会場で生まれる反応は一つとして同じではなく、作品とそこに居合わせる人々との間に、予測できないやり取りが生まれる。あらかじめ完成された造形物を眺めるのではなく、その場で発生する状況によって作品が変化するため、同じ状態を二度見ることはできない。
また、磯村暖は、人々が眠る表情からシャボン玉が放たれる映像インスタレーションや、日本語の詩片を浮かべる泡を生み出す作品を発表する。空間を漂い、やがて消えていく泡が、目には見えない風や時代の気配を空間に立ちあげる。
眼に見えるのは泡だが、それを動かしている風そのものは目には見えない。
LWL onlineでいう「Invisible Technology」にも通じるのは、テクノロジーが前面に出るのではなく、その働きによって生まれる変化や体験の方が意識される点だ。
住宅でも同様に、照明、音、温熱、センサー、オートメーションといった技術は、機器そのものが存在を主張するのではなく、空間体験の背後へ溶け込んでいく方向へ進んでいる。
テクノロジーが「見えるもの」から、「感じるもの」へ変わる。現代アートの世界でもよく似た変化を見ることができる。
Nujabesの音楽とアート、自動演奏ピアノが一つの空間に

音と空間の関係という意味で、特に注目したいのが、中西伶とNujabes Metaphorical Ensembleによる「Flowers」を起点とする特別インスタレーション『中西伶 × Nujabes Metaphorical Ensemble「Flowers」with H2O RETAILING』である。
7インチシングル「Flowers」のために中西が描き下ろしたジャケットアートワークの原画を中心に展示し、さらに会場にはヤマハ協力による自動演奏ピアノを設置。中西の視覚作品と音楽が重なり合う空間を構成する。
作品と音楽、そしてそれらを包む空間までを一つの体験として構成する。スピーカーやピアノといった「音を出す装置」の存在以上に、その場所にどのような音場や感情が生まれるかが重要になる。住宅においてオーディオがインテリアや建築と融合していく現在の流れとも、どこか重なるものがある。
「香り」を所有するアート。FAMEME《Duri-Grance》
さらにユニークなのが、香りそのものを作品へ変える試みだ。
FAMEMEは「ドリアンがもし香水になったら?」という発想から、《Duri-Grance: Fame is a Scent》を発表する。

本プロジェクトの出発点は、2026年2月、恵比寿駅から東京都写真美術館へと続くスカイウォークと同館のロビーで展開された広告インスタレーション。ドリアン家業を受け継ぐFAMEMEが、ドリアンの香りにまつわる先入観を覆す構想を、実際のラグジュアリーな香水へと発展させた。
限定エディションとして制作される各作品には、それぞれにデジタル作品証明書が付属し、専用のデジタルインターフェースを通じてオリジナルの広告映像にアクセスできる。
広告の中で想像されていた香りを実際に体験し、香りだけでなく、映像やプロジェクトの背景にあるコンセプトもともにコレクションできる。
コレクターが手にするのは「香水」だけではなく、香り、映像、物語、デジタルデータを含めた一つの作品体験が重要性を増している。
香りは当然目に見えないが、空間の印象や人の記憶を瞬時に変える力を持つ。
インテリアを家具や照明、素材だけで構成するのではなく、音や香り、空気まで含めて環境を設計する考え方は、ラグジュアリーホテルやウェルネス住宅でも急速に重要になっている。その意味でも「嗅覚をアートにする」という試みは、住空間を考えるうえでも実に興味深い試みだ。
19歳のオノ・ヨーコが描いた《見えない花》
そして、注目を集めると思われるのがオノ・ヨーコの《見えない花》だ。
1952年、19歳のオノ・ヨーコが二つ折りの便箋に描いたドローイングや言葉。そのうち38枚を、ショーン・オノ・レノンの全面監修のもと、山田写真製版所のデジタルアートプリント「Solegraph」によって、質感やサイズまで忠実に再現。ヨーコとショーンが新たに並べ直した作品は、緩やかな物語を感じさせるボックスセットとして発表される。

画面に記された「yes.」など、後の表現にもつながる瑞々しい感性を通して、世界的アーティストの知られざる創作の原点に触れることができる。
さらに、《見えない花》というタイトル自体が、「目に映るものだけが、私たちの体験をつくっているわけではない」という、本展全体に通底する感覚とも響き合っているように思える。
「Invisible Wellness」という視点からアートを見る

LWL onlineでは、住宅やインテリアを考えるうえで「Invisible Wellness」という考え方を追ってきた。
ウェルネスというと、フィットネスマシンや健康機器、睡眠デバイスなど目に見える装置を想像しやすい。だが、実際の生活では、光、音、温度、湿度、香り、触感、空気、そして空間の余白といった、意識されにくい要素が人間の感覚に大きな影響を与えている。
優れた空間ほど、その仕掛けは前面に現れない。
テクノロジーについても同様だ。センサーを意識せず、スイッチを探さず、機械を操作しているという感覚すらなく、環境そのものが人間へ穏やかに応答する。
それが「Invisible Technology」のひとつの到達点だとすれば、MYAF 2026に集まる作品の多くにも、似た構造を見ることができる。
音に反応する作品があれば、空間を漂う泡もあり、身体によって変わるパフォーマンスや自動演奏されるピアノもある。姿の見えない香り。そして、作品と人、人と空間の間に生まれる気配。
アートは「見る対象」から人間の感覚そのものへ作用する「環境」へと拡張する。
アート、音、香り、身体、空間。境界が消えた先へ
MEET YOUR ART FESTIVALのアートフェア「MEET YOUR ARTISTS」では49名の気鋭アーティストによる約500点を紹介し、「CO-CROSSOVER」では70組以上のアーティストが参加する17の展示企画を展開。加えて音楽、パフォーマンス、屋外作品、マーケットなどが天王洲運河一帯へ広がる。
アートと音楽、デザイン、身体、香り、テクノロジーと、それぞれを別のカテゴリーとして切り分けること自体、もはや意味を失いつつあるのかもしれない。

住まいについて考えても、建築、インテリア、照明、音響、テクノロジー、ウェルネスを個別に設計するのではなく、それらを一つの「体験」として統合する方向へ向かっている。
MEET YOUR ART FESTIVAL 2026で起きている領域の交差は、アートの世界だけの話ではない。
私たちがこれから「空間」をどのように感じ、どのように設計していくのかという、未来を考えるためのヒントも、天王洲の4日間には潜んでいるかもしれない。
【MEET YOUR ART FESTIVAL 2026】
- 会期:2026年10月9日(金)~10月12日(月・祝)
- 会場:東京・天王洲運河一帯(寺田倉庫ほか)
- 主な会場:
- ・ART EXHIBITION「REFLUX たちのぼる兆し」/寺田倉庫 G1-5F
- ・ART FAIR「MEET YOUR ARTISTS」/寺田倉庫 B&C HALL
- ・ART FAIR「CO-CROSSOVER」/寺田倉庫 D HALL
- ・LIVE PERFORMANCE/T-LOTUS M
- ・TALK SESSION/WHAT CAFE
- ・SUPER ART & CRAFT MARKET/WHAT CAFE、ボードウォーク、ボンドストリート
- 主催:MEET YOUR ART FESTIVAL実行委員会、東京都
-
-
取材
LWL online 編集部