FENDI Casa、広尾に日本初のブランデッドレジデンス。CEOの言葉から読む住まいの思想
取材/LWL online編集部
FENDI Casa(フェンディ カーサ)による日本初のライフスタイル・ブランデッドレジデンスが、東京・広尾に誕生する。2026年10月27日に発表された「Tokyo Private Villa HIROO. Interiors by FENDI Casa」は、建物面積約997㎡、全4層の既存邸宅をリノベーションするプロジェクト。2027年夏の完成を予定している。
イタリアの職人技と日本の美意識は、ひとつの住まいでどう響き合うのか。FENDI Casaを率いるAndrea Gentilini(アンドレア・ジェンティリーニ)氏の発表コメントを手がかりに、広尾の立地や中庭の設計、素材の選択から、ブランドが描く住まいの思想を読み解く。
広尾で進むFENDI Casaのレジデンス計画。約997㎡の既存邸宅を再構成
「Tokyo Private Villa HIROO. Interiors by FENDI Casa」は、リストデベロップメントを事業主に、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ、FENDI Casa、ブランデッドレジデンスのデザインを専門とするThe One Atelier(ザ・ワン・アトリエ)が協業するプロジェクトだ。2026年10月27日に発表された。
対象となるのは、東京・広尾に立つ2020年3月竣工の既存邸宅。建物面積は997.37㎡、敷地面積は453.93㎡で、外観上は地下1階・地上3階に相当する全4層で構成される。
The One Atelierが主導する設計のもと、既存建物の構造や意匠を生かしながら、FENDI Casaのデザインコードを住空間へ取り入れる。建物がもともと備える個性と、メゾンの美意識を重ね合わせていく計画である。
ここでいうブランデッドレジデンスは、ブランドの世界観や美意識を住空間へ反映した住宅を指す。今回の邸宅では、特注家具に加え、内装の素材やディテール、空間全体の調和を通じて、FENDI Casaならではの暮らしを提案する。
FENDI Casaとは。1987年に始まったフェンディの家具とインテリア
FENDIは1925年、アデーレとエドアルド・フェンディによってローマで創業された。ファーやレザーの職人技を礎に、素材の可能性を探りながら、伝統を現代的な表現へと更新してきたメゾンである。
FENDI Casaは、そのライフスタイルビジョンを住空間へ展開するブランドとして1987年に始動した。翌1988年には、FENDIとLuxury Living Group創業者のAlberto Vignatelli(アルベルト・ヴィニャテッリ)による最初の家具コレクションが発表されている。
ファッションブランドが国際的な規模を持つ総合的なホームコレクションへ進出した、先駆的事例のひとつだ。
そのデザインを形づくるのは、メゾンに受け継がれてきた多種多様な要素である。ローマのFENDI本社「イタリア文明宮」に見られるアーチ、FFやKarligraphyのロゴ、Pequinストライプ、バッグにも使われるSelleriaステッチ、そして緻密なテーラリング。これらを家具のプロポーションや縫製、素材の組み合わせ、色彩へと翻訳している。
現在はソファ、テーブル、チェア、ベッド、照明、ラグ、アウトドア家具などを展開。邸宅や集合住宅のほか、ヨットやプライベートジェットを対象とするインテリアデザインサービスも手がける。
FENDI Casaは、家具を起点に、住まい全体へとメゾンの美意識を広げてきた。その視点から今回の広尾プロジェクトを見ると、一つひとつの家具を超えて、そこで過ごす時間までを構想しようとする姿勢が浮かび上がる。
CEOコメントから読み解くFENDI Casaと日本の美意識
Andrea Gentilini氏は今回の邸宅について、イタリアの職人技と創造性を現代的な暮らしに結びつけ、日本独自の文化や美的コードを尊重しつつ、その魅力を引き立てる計画だと述べている。
一方で、Gentilini氏は「強く際立ったアイデンティティを持つ空間を創り出す」ことにも言及している。
土地への敬意を払うことと、ブランド固有の個性を保つこと。この二つを両立させるのは決して容易ではないだろう。地域性へ近づきすぎればメゾンの輪郭が曖昧になり、ブランドコードを強調しすぎれば、その土地が育んできた生活の感覚が退いてしまう。
広尾の邸宅で問われるのは、日本の住文化に向き合いながら、FENDI Casaの個性をどのように空間へ定着させるかということになる。
ローマと東京、イタリアの職人技と日本の美意識を、それぞれの輪郭を保ったまま出会わせる。Gentilini氏の言葉からは、異なる文化を住空間によって「翻訳」しようとする意思が読み取れる。
広尾の静けさと国際性が支えるプライベートな暮らし
FENDI Casaによる日本初のブランデッドレジデンスは、広尾の住宅地に計画された。
広尾周辺には、大使館や外交官公邸、インターナショナルスクールが点在する。有栖川宮記念公園をはじめとする緑に恵まれ、都心の利便性と国際性を備えながら、落ち着いた住環境を保っている。
江戸時代に大名屋敷が置かれ、その後も邸宅地として歴史を重ねてきた広尾。プライバシーや静けさを大切にする土地の性格は今回の住空間の構想とも重なる。
邸宅は道路側からの視線に配慮し、主要な居住空間をプライベートな中庭へ向けて配置する。都市の利便性を享受しながら、建物の内側に落ち着いて過ごせる場所を確保するという構成である。
こうした立地と設計を合わせて見ると、広尾という街は、ブランドの美意識を暮らしの実感へ結びつける重要な要素になっている。
中庭で響き合う古代ローマのドムスと日本の住文化
邸宅の中心に設けられる中庭はこのプロジェクトの思想が表れた場所である。
主要な居住空間が中庭を囲む構成は、古代ローマの都市住宅「ドムス」から着想を得ている。内庭を中心に住まいを組み立て、建築と自然のつながりを意識した設計だ。
古代ローマの住宅形式を参照するこの構成は、ローマで創業したFENDIの背景とも響き合う。同時に、坪庭や庭に面した居室を通して、外部との距離や光の入り方を整えてきた日本の住文化も想起させる。
ローマのドムスと日本の中庭を持つ住まいは、別々の歴史を持つが、都市の中で私的な領域を守りながら、暮らしの内側へ自然を取り込むという点に、共通する感覚を見いだすことはできる。
The One Atelierの公式紹介によると、この邸宅は都市の中に構想された私的な世界として説明されている。全4層の各階には、到着や社交、日常生活、休息といった異なる役割が与えられ、中庭を介して建築と自然、居住空間が関係を結ぶ。
中庭を中心に据える構成から、静けさを重んじる住まいの姿勢がうかがえる。
FENDI Casaの特注家具と大理石がつくる広尾の住空間
リビング・ダイニングは、中庭やプライベートテラスに面して配置される。居住エリアには、主寝室と二つのベッドルームを設ける計画である。

地下のエンターテインメントフロアには、ゲストスイート、サウナ、バー、ビリヤード・ゲームエリア、ゴルフシミュレーションルームなどの設置を計画しているとのこと。各階をつなぐ専用エレベーターに加え、スタッフなどの利用を想定した独立した出入口も設ける予定だ。
インテリアには、カラカッタ大理石、ステイン仕上げのオーク、ダークウォルナットのパネル、ヴェネチアンプラスター、リネンやシルクの壁装、スモークミラー、ブロンズ調の金属などを採用する。
さらに、FENDI Casaの特注家具や天然石を使ったキッチン、アート作品を組み合わせ、素材の質感と職人技を感じられる空間を目指す。
こうした素材が光をどう受け、時間帯によってどのように表情を変えるのか。興味は尽きない。
フェンディがファッションで培ってきた素材への理解やテーラリングの精神は、縫製や仕上げに加え、異なる素材を隣り合わせる感覚にも表れる。広尾の邸宅では、そうした感覚を住まいのスケールで体験することになるだろう。

Tokyo Private Villa HIROO. Interiors by FENDI Casaの物件概要
- 物件名:Tokyo Private Villa HIROO. Interiors by FENDI Casa
- 所在地:東京都渋谷区広尾
- デザイン:FENDI Casa、The One Atelier
- 構造・規模:RC造地下2階付地上2階建(建築確認申請上。外観上は地下1階・地上3階に相当する全4層)
- 建物面積:997.37㎡
- 敷地面積:453.93㎡
- 既存建物竣工:2020年3月
- リノベーション竣工:2027年夏予定
- 事業主:リストデベロップメント株式会社
※本記事は、発表資料および各社の公式公開情報をもとに構成しています。Andrea Gentilini氏のコメントは発表資料によるものです。
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