【スマートホーム/ホームオートメーション特集】別荘から考える建築統合型スマートホーム―― スマートホームのアラート設計とは?

 取材/LWL online編集部

前回までに、セキュリティを「動線設計」、設備監視を「状態設計」と整理してきた。本稿ではその最終章として、別荘におけるアラート設計を解説する。施主用UIと管理会社用監視UIを分離し、設備異常や温湿度逸脱を適切な相手に通知する二層構造とは何か。スマートホームを“統合管理システム”へと昇華させるアラート設計の本質に迫る。

セキュリティ設計・設備監視の先にあるアラート設計

前々回でセキュリティは「動線・ゾーニング設計」であると述べた。前回では、設備監視は「状態設計」であると整理した。

スマートホームのセキュリティは動線設計で決まる──顔認証と警備連動の実践例

別荘のスマートホーム設備監視とは?

では、実際に異常(または空調のフィルター交換やプールの塩素補充等)が発生したときはどうするのか。ここで初めて浮上するのが、「アラート設計」という領域である。
スマートホームにおけるアラートは、しばしば「通知機能」として語られる。スマートフォンにプッシュ通知が届く。それで終わる。

だが、別荘においては、それだけでは不十分だ。建築統合型スマートホームにおけるアラートとは通知だけではない。判断を促すための伝達という意味もある。

別荘は常時有人ではない──通知設計の前提条件

そもそも別荘は、常時住んでいる住宅とは本質的に異なる。施主が不在の時間の方が圧倒的に長い。にもかかわらず、設備は動き続ける。また、海沿いの別荘であれば、外構は外気にさらされ、機械設備は劣化する。

わたしがかつて手がけた案件では、アラートの通知先を明確に分離した。施主が持つスマートフォン(またはiPad)の「施主用UI」と、管理会社が所有するPCやタブレットの「管理会社用UI」の二層構造である。

施主用UIと管理会社用監視UIの分離設計

快適操作と設備監視は分ける

施主のUIは快適性と操作性を優先する。ライティングシーンや温熱操作、ホームシアター、セキュリティの状態表示と操作画面。
施主のUIに、ポンプトリップ警報や温湿度逸脱アラートを表示する必要はない。

一方で、管理会社のUIは役割がまったく異なる。以下に例を挙げてみよう。

・プール濾過設備の異常
・露天風呂循環停止
・ワインセラー温度逸脱
・サウナ異常停止
・漏水警報
・警備異常
・フィルターユニット目詰まり警報
・ガス給湯器一括警報
・ワインセラー室空調トリップ警報

管理会社はこれらを即時に把握する必要がある。わたしが手がけた案件では、管理会社が所有するiPadに専用の監視UIを実装した。施主のUIとは完全に分離した監視画面である。

アラートは「誰に出すか」が設計である

軽微異常・重大異常・侵入警報の優先順位

アラート設計で最も重要なのは、「誰に通知するか」である。

すべての異常を施主に通知するのは誤りだ。例えば遠隔地にいる施主に軽微な異常やプールの塩素の補充などまで、いちいちアラートを届けていては、施主も落ち着かないことだろう。フィルターユニットの目詰まりアラートが来ていても、施主はどうすることもできない。管理会社の領域である。
設備の軽微な異常やフィルターの交換・プールの塩素の補充は管理会社のみ、重大な異常は施主と管理会社としておくのが良いだろう。また、セキュリティ侵入はそもそも警備会社に発報される。

通知の優先順位と送信先は施主の要望を踏まえて整理する。これは機能の問題ではない。運用設計の問題である。

スマートホームは、建築と同様に「使われ方」まで、ヒアリングを重ねて設計しなければならない。

通知ではなく「状況の可視化」

ダッシュボード形式の統合監視

管理会社用UIでは、単なるアラートポップアップではなく、常時監視ダッシュボード形式を採用した。基本的には、毎日朝昼晩必ず状態を監視するように、施主と管理会社の契約に記してもらった。

ダッシュボードでは、現在の設備稼働状況、警備ブロックの状態、温湿度一覧、異常履歴をパッと見ただけでわかるようにした。アラートは一瞬の通知だが、ダッシュボードは継続的な状態把握を可能にする。重要なのは、「何が起きたか」だけでなく、「いま何が正常か」を確認できることである。

正常が見えていなければ、異常も判断できない。

アラート設計はゾーニング設計である

アラート設計は単なるIT設計ではない。

どの設備がどのゾーンに属するか、警備と設備をどう紐づけるか、漏水が起きた場合、どこまで遮断するかなど、ゾーニング設計そのものだ。
前々回記した動線設計、前回述べた状態設計が統合されて初めてアラート設計が成立する。

別荘における統合アラートの要件

別荘では、アラートは「安心の源泉」である。
管理会社がiPadで常時状態を確認できる。異常があれば即時に現地対応できる。
施主はすべてを監視する必要はない。必要な情報だけが整理されて届く。

ここに、建築統合型スマートホームの思想がある。

制御を増やすことでも、通知を増やすことでもない。適切な人に、適切なタイミングで、適切な情報を届ける設計である。

制御・監視・アラートは三位一体

別荘における建築統合型スマートホームは、制御だけでは未熟であり、監視だけでは不十分であり、通知だけでは機能しない。①動線設計(セキュリティ)、②状態設計(設備監視)、③アラート設計(異常対応)の三層が統合されたとき、住宅は初めて「システム」として完成する。

ラグジュアリー邸宅のスマートホームは、生活を便利にする装置だけにとどまらない。住宅という建築物を安定運用するための統合管理システムである。

LWL onlineが提唱してきた「建築統合型スマートホーム」とは、機器の足し算ではない。電気設備、機械設備、警備、AV、空調、給排水といった分断された領域を、建築という一つの構造の中に再統合する思想である。
フィールドバスによるローカル制御、Home OSによる階層化設計、UIによる状態の可視化。そして今回取り上げたアラート設計は、その最終層に位置する。
制御は日常を整え、監視は状態を把握し、アラートは異常時の判断を支える。この三層が噛み合って初めて、住宅は「便利な家」から「安定運用される建築」へと昇華する。

ラグジュアリーとは装飾のことではない。見えない部分まで設計され、長期にわたり破綻なく機能すること。その構造そのものが真のラグジュアリーである。スマートホームの成熟度は、どれだけ多くの機能を持つかではなく、どれだけ安定して運用できるかで測られる。
アラート設計は、その成熟度を示す最後の指標なのである。

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