ミーレ(Miele)、ミラノデザインウィーク2026で新コンセプト「Designed to Move with You」を発表。キッチンを「暮らしに寄り添う空間」へ
取材/LWL online編集部
ミーレ(Miele)は、ミラノデザインウィーク2026にあわせて、最新コンセプト「Designed to Move with You」を発表した。舞台となったのは、キッチンの国際見本市「EuroCucina」と、ブレラ・デザイン地区のMiele Experience Center。キッチンを単なる調理設備としてではなく、日々のリズムや住まい方の変化に応答しながら、人の暮らしに静かに寄り添う「つながりのあるリビング空間」として再定義する姿が見えてきた。
キッチンはもはや固定された「作業場」ではない
ミーレが発表したコンセプト「Designed to Move with You」には、「キッチンはもはや決められた位置に固定された作業場ではない」という明確なメッセージが込められている。
会場となったEuroCucinaの展示では製品を単体で見せるのではなく、建築、ライティング、デジタル演出を組み合わせた没入型の空間として世界観を提示。そこではキッチンが、生活の一断面に置かれた機器の集合ではなく、日常の動きや感情の流れと連動する、開かれたエコシステムとして描かれている。
この提案が単なる高機能家電の訴求にとどまっていない点が非常に興味深い。ミーレが示したのは、「キッチンが人に合わせて適応する」という思想である。限られた空間、変化するライフスタイル、そして直感的に使えるテクノロジーを前提に、キッチンそのものをより柔軟で応答性の高い存在へと変えていこうとしている。
調理体験を更新するIHとAIアシスタント
その思想を支える具体的な製品群も披露された。
たとえば「KM 8000」シリーズのIHクッキングヒーターと、それに対応する「M Sense」クックウェアは、内蔵センサーによって温度と火力を自動制御し、焦げつきや吹きこぼれを抑えながら、調理の精度と快適性を高める。調理という行為を単なる手間の削減だけで語るのではなく、より滑らかで失敗の少ない体験へと変換しようとする姿勢がうかがえる。

また、Mieleアプリに新たに導入されるAI搭載アシスタント「Culinary Coach」も、このコンセプトを象徴する存在だ。ユーザーごとの嗜好や調理経験、生活リズムを踏まえて提案を行い、調理に関する質問にリアルタイムで応答しながら、最適な設定を対応機器に直接反映するという。キッチンは単に命令に従う場ではなく、使い手を理解しながら伴走する環境へと近づいている。

コンパクト化と換気設計が都市生活に応える
さらに、都市居住を意識した提案として注目したいのが、新しいスチームドロワーである。高さ45cmの電子レンジ機能付オーブンと組み合わせることで、ベーキング、温め、スチーム調理をひとつにまとめた3-in-1ソリューションを、高さ60cmの限られたスペースで実現する。大きさを競うのではなく、コンパクトな空間の中で機能の密度を高める発想は、現代の都市生活におけるキッチンデザインのひとつの答えと言えそうだ。

換気設計においても、ミーレは建築との親和性を強く意識している。60cm幅のコンパクトなクッキングヒーター一体型換気システムや、キャビネット内にほぼ見えないかたちで収まるガラスパネルフードは、視界を妨げず、空間を守りながら、高い機能性を両立する。キッチンにおける設備の存在感を抑えつつ、必要なときだけ機能が立ち現れるというあり方は、これからのラグジュアリー空間において、ますます重要になっていくだろう。


さらに、オーブン清掃の新しいアプローチである「HydroClean」、より柔らかなデザイントーンを演出する最新カラー「Pearl Beige(パールベージュ)」、小型から大型まで幅広い冷蔵ニーズに対応したソリューション、資源効率に優れた食器洗い機も登場した。
屋外と小空間へ広がる新しいキッチンの輪郭
今回の発表で印象的なのが、屋外へと広がる視点である。
ミーレは「Outdoor Cooking」としてモジュール式アウトドアキッチンコンセプトも提示した。空間や用途、ライフスタイルに応じて組み換え、拡張し、配置を変えられるシステムは、屋外調理を単なる付加価値ではなく、住まい全体の体験設計の一部として捉えていることを示している。

インドアとアウトドアの境界が緩やかになっていく近年の住空間において、この柔軟性は大きな意味を持つ。
加えて、ブレラ地区のMiele Experience Centerでは「Miele Compact Living: Kitchen Unit powered by Hettich」も初公開された。調理、収納、リビング機能をひとつのコンパクトなユニットへと統合し、朝はワークスペース、昼は調理台、夜は人が集う場へと役割を変えていくその提案は、キッチンを住宅設備としてではなく、「暮らしの時間に応じて姿を変える住まいのインフラ」として再考するものだ。

キッチン観そのものを更新する提案
ミーレがミラノで示したのは、新しい製品群の発表であると同時に、キッチン観そのもののアップデートでもあった。調理を行うための設備から、住まいのリズムに呼応する空間へ。機能を単純に足し算するのではなく、人の動きや日常の変化に寄り添う環境としてキッチンを捉え直すこと。その転換こそが、「Designed to Move with You」の核にあるように見える。
ラグジュアリーとは、装飾の多さではなく、暮らしへの応答がどれだけ自然であるかによって形づくられる。ミーレの今回の展示はそのことを改めて感じさせる。
※なお、記事に掲載されている製品、アプリ機能、カラーに関しては、日本での発売・導入は未定である。
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LWL online 編集部