オルガテック東京2026で考える、ホームオフィス時代のオンとオフの設計
取材/LWL online編集部
オルガテック東京2026を、ホームオフィスと別荘ワーケーションの視点からレポート。LiberNovoのワークチェア、ピクシーダストテクノロジーズのiwasemi、KayuStyleのアウトドア家具と植栽の展示を通じて、住まいや別荘のなかで「働く時間」と「休む時間」をどう切り替えるべきかを考える。
ホームオフィスとワーケーションが問い直す、住まいの中の「働く環境」
ホームオフィスやワーケーションが広がる時代に、私たちは住まいや別荘のなかで、どのように「働く時間」と「休む時間」を切り替えるのか。LWL onlineが継続して追究してきたテーマである。
コロナ禍以降、自宅で働くことは特別なものではなくなった。さらに近年は、別荘やホテル、リゾート地に滞在しながら仕事をするワーケーションも一般化しつつある。ネット環境さえ整っていれば、どこでも働くことは可能となった。特に別荘でのワーケーションは、富裕層を中心に近年人気を高めつつある。自然に近い場所で働くことは、都市のオフィスにはない豊かさをもたらす。一方で、仕事が住まいに入り込むほど、オンとオフの境界は曖昧になる。
だからこそ、これからのホームオフィスには、単にデスクとチェアを置くだけではない設計が求められる。身体を支える椅子。集中を妨げない音環境。そして、ワーケーションの舞台となる別荘で仕事から離れるための家具や植栽。今回のオルガテック東京では、LiberNovo、ピクシーダストテクノロジーズの「iwasemi」、そしてKayuStyleの展示に、その手がかりを見ることができた。

LiberNovo:椅子が仕事のモードを立ち上げる
会場でまず目を引いたのがオレンジのフレームを大きく掲げたLiberNovoのブースである。
複数のワークチェアが並び、来場者が実際に腰を下ろして、背もたれやリクライニング、身体への追従性を確かめていた。
LiberNovoについては、LWL onlineでもすでに記事化している。ワークチェアを単なる家具ではなく、身体の動きに反応するプロダクトとして捉えている点が特長である。
座る人は、常に同じ姿勢でいるわけではない。前傾する、背を預ける、片側に重心を移す、少し姿勢を崩す。そうした日常的な動きに、椅子がどこまで応答できるかが問われている。
ホームオフィスにおいて、椅子は非常に重要な存在である。リビングの椅子やダイニングチェアでも一時的に仕事はできる。しかし、それが毎日続けば、身体への負担は確実に積み重なる。住まいで働く時代には、仕事の効率だけでなく、身体をどう守るかが空間設計の大きなテーマになる。
さらに、ホームオフィスの椅子には、ホームオフィスならではの役割がある。オンとオフを切り替えるスイッチになることだ。自宅や別荘のなかにいても、仕事用の椅子に座れば、身体は仕事モードに入る。逆に、そこから離れれば、仕事から戻ることができる。LiberNovoの椅子は単体でその切替を助ける存在になり得る。詳細は過去記事をご覧いただきたいのだが、仕事と休息を1台で兼用できる点に注目してほしい。
空間全体を完全にオフィス化しなくても、椅子が身体に対して「ここからは働く時間だ」と伝える。LiberNovoの展示は、そんなホームオフィスの可能性を感じさせた。

iwasemi:ホームオフィスに必要なのは静けさの設計
もうひとつ重要な展示をしていたのが、ピクシーダストテクノロジーズの「iwasemi」である。同社のブースでは、音響メタマテリアル技術を用いた吸音パネル「iwasemi」シリーズを軸に、サンゲツ、ユニバーサル園芸社などとの共創展示が行われていた。
会場では、壁紙に吸音を組み込む提案、フェイクグリーンと吸音を組み合わせる提案、伝統工芸と吸音を結びつける提案などが並んでいた。黒を基調としたブースに、素材サンプルや植栽、パネルが配置され、音環境をいかに空間のデザインに溶け込ませるかが示されていた。
iwasemiについても、LWL onlineでは過去の記事で既に何度か取り上げているが、今回、ホームオフィスという視点から見ると、非常に示唆的である。自宅や別荘で働くとき、問題になるのは椅子やデスクだけではない。オンライン会議の声、家族の生活音、空調音、外部の騒音、あるいは自分の声の反響。音は、集中力にも、疲労感にも、空間の居心地にも直接影響する。
オフィスならばともかく、別荘やラグジュアリー邸宅では、空間の美観を損なう吸音材は使いにくい。いかにも会議室然としたパネルを壁に貼れば、住まいの空気は一気にオフィス寄りになってしまう。これではスムーズにオフに移行できない。その点、iwasemiの展示は、吸音を「設備」ではなく「素材」や「意匠」として組み込む方向を示している。
ホームオフィスに必要なのは完全な防音室などではなく、むしろ、仕事に必要な静けさを、生活空間のなかに自然に導入することだ。音を制御することは、オンの質を高めるだけでなく、オフの時間の落ち着きにもつながる。iwasemiの展示は、ホームオフィス時代の「静けさをつくりだすインテリア」として捉えることができる。





KayuStyle:仕事から離れるための家具と植栽
今回、LWL onlineのテーマである「オン」と「オフ」のスムーズなつながり、あるいはワーケーションやホームオフィスの時代に相応しいインテリアの構築に最も直接的に響いたのがKayuStyleのブースである。
ウッドデッキ、石積み、植栽、柔らかな照明、アウトドア家具を組み合わせた空間は、展示会場の中にありながら、リゾートホテルのテラスや別荘のラウンジを思わせた。
KayuStyleは「365DAYS RESORT」をコンセプトに、屋外・屋内で使用できるガーデン家具、リゾート系家具を展開するブランドである。オルガテック東京では「Office × Sustainable」を掲げ、変わりゆくワークプレイス環境に向けた展示をしていた。
ブース全体が家具単体の展示ではなく、明確に「場」として設計されていた。木質の床、天然石のような壁面、足元の石、豊かな植栽、ラウンジチェアやソファ、アウトドア家具。そこには、座る、話す、休む、眺めるといった行為が自然に生まれる余白があった。
ホームオフィスを考えるとき、人はどうしても「どう集中するか」に意識を向けがちだ。しかしそれと並んで「どう仕事から離れるか」も非常に重要になる。自宅や別荘で働く場合、オフィスのように退勤という明確な区切りがない。だからこそ、仕事用の椅子から離れ、別の素材、別の照明、別の緑の気配に身を移すことが、オンとオフを切り替えるために重要になる。
KayuStyleのブースは、まさにそのオフへの移行を空間として見せていた。画面から目を離し、アウトドア家具に座り、植栽の影を眺める。そうした時間があることで、仕事は住まいを侵食するものではなく、暮らしのなかに適切に収まるものになる。
また、LWL onlineでテーマとしている「別荘とテクノロジー」に引き寄せれば、KayuStyleの提案はさらに重要になる。別荘は、働く場所としても使える。しかし、別荘が単なる遠隔オフィスになってしまっては意味がない。仕事ができることと、仕事から離れられること。その両方を成立させる家具と空間が必要になる。



ホームオフィスに必要なのは「オン」と「オフ」のスムーズな切替
ホームオフィスやワーケーションの議論では、ともすると「どこでも働ける」ことが強調される。だがもうひとつ見過ごされがちながらも重要になるのは「休息」だ。ネット環境さえ整っていれば、どこでも働ける時代だからこそ、どうやって仕事から離れるのかという視点も必要になってくる。住まいや別荘のなかに、オンとオフの境界をどうつくるのか。ここがホームオフィスで重要なポイントになる。
LiberNovo、iwasemi、KayuStyleは、それぞれ異なる展示でありながらも、ホームオフィス時代の課題に対するひとつの連続した答えのようにも思えた。
7月のLWL onlineサテライトイベントで扱う「別荘とテクノロジー」というテーマにおいても、重要なのはテクノロジーを詰め込むことではない。働く、休む、集う、回復する。その切り替えを、家具、音、素材、緑、電源、AV、そして空間全体でどう支えるかがポイントになる。 上質なホームオフィスとは、仕事に入りやすく、仕事から離れやすい場所である。オルガテック東京2026で見た3つの展示は、これからの住まいと別荘におけるワークスペースを考えるうえで、非常に示唆に富むものだった。
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