「吸音するグリーン」が空間に「閑さ(しずかさ)」を実装。iwasemi OC-βとフェイクグリーンがつくる新しい音環境
取材/LWL online編集部
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社と株式会社ユニバーサル園芸社はフェイクグリーン製品に吸音モジュール「iwasemi OC-β」を組み込む新製品の共同開発を開始した。植栽がもたらす視覚的な癒しに、音環境を整える機能を重ねることで、空間に「静けさ」ではなく、人が自然に落ち着き、集中できる状態としての「閑さ(しずかさ)」を実装する試みである。開発中の製品は、2026年6月2日(火)から4日(木)まで東京ビッグサイトで開催される「オルガテック東京2026」にて展示される予定である。
植栽の価値に音環境という機能を重ねる
近年、オフィスや商業空間、ホテル、公共施設などでは、自然とのつながりを空間に取り入れる「バイオフィリックデザイン」への関心が高まっている。植栽は、空間にやわらかな印象を与えるだけでなく、リラックス効果や視覚的な疲労軽減といった心理的な価値をもたらす要素として評価されてきた。
一方で、会話音の反響、雑音による集中力の低下、ミーティングエリアやラウンジにおける聞き取りづらさなど、音環境の課題は依然として残されている。視覚的には心地よい空間であっても、音が過剰に響けば、人は落ち着いて過ごすことができない。
今回の共同開発は、こうした「見た目の快適性」と「音の快適性」を分断せず、ひとつの空間要素として統合しようとする取り組みだ。
フェイクグリーンの背面に「iwasemi OC-β」を組み込む
本共同開発では、ユニバーサル園芸社が展開するフェイクグリーン製品の背面構造に、ピクシーダストテクノロジーズの音響制御モジュール「iwasemi OC-β」を組み込む。外観としてはグリーンの印象を保ちながら、その内側に吸音機能を備えることで、意匠性と音響性能の両立を図る。
従来、音環境の改善には、壁面や天井に吸音材を追加する方法が一般的だった。しかしその場合、空間のデザインと吸音対策が別々に扱われ、インテリアの世界観を損なうことも少なくない。今回の「吸音するグリーン」は、吸音を目立たせるのではなく、植栽の背後に隠すように組み込むことによって、音環境を整える機能を、空間の風景そのものに溶け込ませる提案である。

iwasemiとは何か。音響メタマテリアルが生む「閑さ」
iwasemiはピクシーダストテクノロジーズが展開する音響制御技術および吸音プロダクトのブランドである。音響メタマテリアル技術を応用し、人の会話音の中心帯域に着目して、空間内の反響を抑えることを目的としている。
今回使用される「iwasemi OC-β」は2026年3月3日に発売された吸音モジュール。フェイクグリーンや家具、内装材、什器などに吸音機能を組み込み、空間の音環境を整えるための音響モジュールである。サイズはW140×H140×D38mmで、人の会話音の中心周波数帯域である500〜1000Hzに特化した吸音性能を備える。

LWL onlineでも以前紹介したとおり、iwasemi OC-βの特徴は、吸音材を「後から貼るもの」ではなく、「あらかじめ組み込むもの」として再定義している点だ。表装材の選択自由度、設置仕様の自由度、そして会話音に特化した吸音性能を備えることで、壁材、什器、家具、装飾材などとの一体化を想定している。
つまりiwasemi OC-βは、空間の仕上げやインテリア計画の中に、音の快適性を組み込むためのモジュールなのである。
「癒し」と「集中」が両立する空間へ
今回の共同開発が興味深いのは、フェイクグリーンが持つ視覚的・心理的な価値と、iwasemiが担う音響的な価値が、自然に接続している点だ。
オフィスのフリーアドレスエリアやミーティングスペースでは、開放性と集中環境の両立が求められる。ホテルや商業施設のロビー、ラウンジでは、空間演出と会話のしやすさが同時に重要になる。飲食店では、デザイン性を保ちながら、会話が聞き取りやすい環境が求められる。教育施設や公共施設では、安心感のある空間づくりと、過度な反響音の抑制が必要となる。
そうした場において、「吸音するグリーン」は装飾と機能の境界を静かに越えていく。視覚的にはグリーンとして空間に潤いを与えながら、背後では会話音の反響を抑え、落ち着いて過ごせる音環境を支える。
空間の快適性を「見えるデザイン」だけでなく、「感じられる環境」として捉えるLWL onlineの視点とも重なる。
吸音を「貼る」から「組み込む」へ
ピクシーダストテクノロジーズは、iwasemi OC-βを建築・インテリア・建材・装飾材など、多様な領域との連携を前提に開発している。今回のユニバーサル園芸社との共同開発も、その実装例のひとつと言える。
これまで音環境の改善は、完成した空間に対する補助的な対策として扱われることが多かった。しかしこれからは、光、空気、温熱環境、動線と同じように、音もまた設計段階から考えるべき要素になっていく。
その変化は、空間づくりにおける音の位置づけを大きく変えていく可能性がある。 今回の「吸音するグリーン」は、バイオフィリックデザインと音響設計を接続する、新しいインテリアエレメントとして注目したい。植物のやわらかさ、視覚的な癒し、そして会話が心地よく届く音環境。そのすべてが重なったとき、空間には単なる静けさではなく、人が自然に落ち着ける「閑さ」が生まれる。

オルガテック東京2026で展示予定
開発中の体験キットおよび本共同開発のコンセプトは、2026年6月2日(火)〜4日(木)に東京ビッグサイトで開催される「オルガテック東京2026」にて展示する予定だ。今後は実証導入を通じた効果検証を進めながら、用途別・空間別の最適設計モデルを構築していくという。
建築、インテリア、オフィス、ホスピタリティ、公共空間。さまざまな領域で、音をどう整えるかが問われている。iwasemi OC-βとフェイクグリーンの融合は、その問いに対するひとつの美しい回答となるかもしれない。
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LWL online 編集部