Bang & Olufsen × fragment、藤原ヒロシが100年の名作を「黒」で再解釈

 取材/LWL online編集部

デンマーク発のオーディオブランド、Bang & Olufsen(バング & オルフセン)は、藤原ヒロシ氏率いる東京のデザインスタジオfragment(フラグメント)とのコラボレーションモデルを発表した。ポータブルBluetoothスピーカー「Beosound A1」、ヘッドホン「Beoplay H100」、壁掛け型スピーカーシステム「Beosound Shape」、そして名作CDプレーヤー「Beosound 9000」を現代に蘇らせる「Beosystem 9000c」。4つのアイコニックなプロダクトが、fragmentの美学によって再解釈される。

今回のコラボレーションはよくあるような単なる限定モデルと捉えるべきではない。Bang & Olufsenの100年にわたる音とデザインの歴史と、30年以上にわたりBang & Olufsenを愛用してきた藤原ヒロシ氏の個人的な記憶が交差するプロジェクトである。

1925年、デンマーク北西部の小さな町ストルーアで生まれたBang & Olufsenは、ラジオから始まり、テレビ、オーディオ、スピーカー、ヘッドホンへと領域を広げながら、音響技術とプロダクトデザインを結びつけてきた。美しい音を鳴らすだけではなく、住まいの風景そのものを変える存在である。Bang & Olufsenのプロダクトが、建築家、デザイナーたちから長く愛されてきた理由はここにあると言っていいだろう。

ストルーアから東京へ。Bang & Olufsenがカルチャーの中で響いた理由

Bang & Olufsenの歴史をたどると、その歩みは常に「音をどう聴くか」だけでなく、「音を鳴らす装置が、空間の中でどのように存在するか」という問いとともにあったと言えよう。

創業期のラジオ、1930年代のラジオ蓄音機一体型システム、Jacob Jensen(ヤコブ・イェンセン)によるミニマルな造形、David Lewis(デイビッド・ルイス)による彫刻的なプロダクト群、そして現在のオブジェのような名作たち。Bang & Olufsenのプロダクトは家具や照明、アートピースと同じように、住空間を構成する要素としてデザインされてきた。

とりわけ、1990年代以降の日本において、Bang & Olufsenはオーディオファンだけのものではなかった。音楽、ファッション、インテリア、グラフィック、プロダクトデザインが互いに影響し合っていた時代に、その数々のプロダクトは「音楽を聴くための再生装置」であると同時に、感度の高い暮らしを象徴する存在でもあった。

藤原ヒロシ氏はその文脈の中に存在する。藤原氏は1980年代から日本のDJカルチャーを牽引し、1990年代以降は音楽、ファッション、プロダクト、空間、ブランドコラボレーションを横断する存在として、日本のあらゆるクリエイティブシーンに大きな影響を与えてきた。fragmentは2004年に設立されたデザインスタジオでありながらも、ファッション、音楽、テクノロジー、ポップカルチャーを接続し、既存のブランドやプロダクトに新しい読み方を与える、ひとつの文化的編集装置とも言える。

藤原氏は30年以上にわたりBang & Olufsenを愛用してきた。1990年代には、Master Linkのシステムを自宅に取り入れるため、ワイヤーが美しく隠れるように家を設計したというエピソードも語られている。これは、Bang & Olufsenというブランドを考えるうえできわめて象徴的だ。

オーディオを置くために、音響機器のために、空間の構造を整える。このエピソードはLWL onlineが繰り返し考えてきた「住まいとテクノロジーの統合」という視点にも通じるものがある。Bang & Olufsenのプロダクトは、後から置かれるガジェットではなく、空間の所作を変えるデザインであり続けてきたのだ。

Bang & Olufsenとfragmentのコラボレーションロゴ

fragmentの「黒」、Bang & Olufsenのアルミニウム

今回のコレクションを特徴づけるのは、fragmentを象徴するモノクロームのブラックと、Bang & Olufsenが長年磨き上げてきたアルミニウム加工の融合である。

Bang & Olufsenにとって、アルミニウムは単なる素材ではなく、冷たく硬質な工業素材でありながらも、丁寧な加工と研磨によって、柔らかな光をまとい、住空間に溶け込む表情を獲得する素材である。ストルーアの工房で培われてきたクラフツマンシップは、アルミニウムに音響機器としての精度と、家具としての佇まいを同時に与えてきた。

そこに、fragmentの黒が重なった。

fragmentの黒は装飾的な黒ではない。過剰に語らず、輪郭を引き締め、プロダクトの造形と素材を前景化する黒である。ロゴもまた、主張する記号ではなく、沈黙の中で存在を刻むサインとして置かれる。

今回、Bang & Olufsenはポータブル製品に対して高度な陽極酸化処理と手作業による研磨工程を施し、液体のような光沢を備えたブラックアルマイト仕上げを実現したという。fragmentのミニマルな美学と、Bang & Olufsenの精密な加工技術。今回のコレクションは、その接点に生まれた、限定色というよりも、ひとつの時代感覚をまとったプロダクトである。

Bang & Olufsen × fragmentのBeoplay H100とBeosound A1
Beoplay H100とBeosound A1。fragmentを象徴するブラックと、Bang & Olufsenのアルミニウム加工が静かに呼応する

4つのアイコンを現代の視点で再解釈する

今回のコレクションでは、Bang & Olufsenを象徴する4つのプロダクトが選ばれた。

まず、ポータブルBluetoothスピーカー「Beosound A1」。防水仕様、360度サウンド、迫力ある低音、最大24時間のバッテリーを備えたモデルであり、Cradle to Cradle Certified®ブロンズ認証も取得している。
fragmentモデルでは、高光沢アルマイト加工によるブラックの表面に、二重の稲妻マークが刻まれる。手のひらに収まるサイズでありながら、素材、音、造形の密度を感じさせるプロダクトだ。価格は64,000円(税込)。

Bang & Olufsen × fragmentのBeosound A1
Beosound A1のfragmentモデル。高光沢アルマイト加工によるブラックの質感と、二重の稲妻マークが印象的だ

次に、ヘッドホン「Beoplay H100」。チタンドライバー、次世代ノイズキャンセリング、ドルビーアトモス対応を備えたフラグシップヘッドホンであり、長く愛用することを前提に設計されたモデルである。
fragmentモデルでは、光沢のあるブラックアルマイト加工の表面と、ホワイトのロゴが対比を生む。ヘッドバンドとイヤーパッドにはブラックレザーを採用し、専用レザーポーチにもダブルロゴが配される。価格は310,000円(税込)。

Bang & Olufsen × fragmentのBeoplay H100
Beoplay H100のfragmentモデル。ブラックレザーと光沢のあるアルミニウムが、静謐なモノクロームの世界をつくる

そして壁掛け型スピーカーシステム「Beosound Shape」。六角形のタイルを組み合わせることで、音響装置でありながら、壁面のアートピースとしても成立するプロダクトである。Bang & Olufsen本社でBeosound Shapeを目にした藤原氏は、ホテルに戻るとすぐに、花のような配置のスケッチを描いたというエピソードが残っている。
今回のコレクションでは、厳選された7枚のタイルを用い、モノクロームのファブリックカバーとアルミニウム製のダブルロゴタグによって仕上げられる。価格は1,119,700円(税込)。

Bang & Olufsen × fragmentのBeosound Shape
六角形のタイルで構成されるBeosound Shape。音響装置でありながら、壁面を構成するアートピースとしても機能する

最後に「Beosystem 9000c」である。
元となったBeosound 9000は、Bang & Olufsenの歴史の中でもメルクマールとなるプロダクトとして知られている。6枚のCDを垂直に並べ、ピックアップが水平に移動する。その機構は、音楽を再生するためのメカニズムであると同時に、音楽を視覚的に見せるための舞台装置でもあった。CDというメディアを黒い箱の中に隠すのではなく、ギャラリーのように飾るという思想は、改めて見直すと、やはり鮮烈である。

今回のBeosystem 9000cでは、象徴的なCDプレーヤーとBeolab 28がfragmentによって再解釈され、ブラックアルマイト仕上げと独自のロゴディテールが施される。過去の名作を単に復刻するのではなく、100年の記憶を現代の素材と感性で再編集する試みといえる。価格は10,990,200円(税込)。

Bang & Olufsen × fragmentのBeosystem 9000cとBeolab 28
Beosound 9000を現代に蘇らせたBeosystem 9000c。fragmentのブラックによって、CDを“見せる”というBang & Olufsenの思想が新たな表情をまとった

製品の背後にいる職人たちへの敬意

今回のプロジェクトで興味深いのはコレクションが製品だけにとどまっていない点である。

藤原氏は、ストルーアにあるBang & Olufsen本社を訪れた際、製品をつくる人々にも目を向けた。そして、Bang & Olufsenのファクトリーチームのために、限定Tシャツをデザインした。ブラックのTシャツには、fragmentの象徴である稲妻マークと、Bang & Olufsenが大切にしてきた「We think differently」のフレーズが配されている。

このエピソードはブランドコラボレーションにおいて見逃せない。ラグジュアリーとは、完成したプロダクトの表面だけに宿るものではなく、素材を選び、削り、磨き、組み上げる人々の時間の中に息づいている。Bang & Olufsenの100年を支えてきたのは、音響技術やデザイン、最先端のテクノロジーだけではなく、そうしたクラフツマンシップの連続性でもある。

fragmentがその点に注目した事実は、今回のコラボレーションが単なるファッション的な別注ではないことを示している。プロダクトの表面にロゴを置くのではなく、その背後にある作り手の文化まで含めて、Bang & Olufsenを読み直したのだ。

Bang & Olufsenの工房で作業するスタッフとfragmentデザインのTシャツ
fragmentは製品だけでなく、Bang & Olufsenの工房で働くスタッフのためのTシャツもデザイン。クラフツマンシップへの敬意が、プロジェクトの奥行きを示す

POP-UPは「機能の拡張」をテーマに。電源コードを隠さず空間化する

Bang & Olufsen × fragmentのコラボレーションを記念し、全世界に先駆けて日本でPOP-UPも開催される。会場は、伊勢丹新宿店、阪急メンズ大阪、岩田屋本店。伊勢丹新宿店と阪急メンズ大阪のPOP-UP空間は、設計事務所DAIKEI MILLSが手がける。空間設計を担うDAIKEI MILLSは、中村圭佑氏が2011年に設立した東京のデザインオフィスであり、商業空間から都市の余白をひらくプロジェクトまでを横断しながら、機能、素材、場のふるまいを再編集してきた。

テーマは「機能の拡張」。

空間には、工業製品のミニマルな美しさと無骨さをあわせ持つ「延長コード」がマテリアルとして用いられる。通常であれば隠される電源コードを、あえて見せる。機能を隠蔽するのではなく、空間を構成する要素として拡張する。その発想は、Beosound 9000がCDのメカニズムを隠さず、むしろ美しい所作として見せた思想とも響き合う。オーディオは電源を必要とする。であればこそ、電源コードをどのように見せるかによって、空間の印象は大きく変わる。

今回のPOP-UPは製品を販売する場であると同時に、Bang & Olufsenとfragmentが共有する「機能を美に変える」感覚を体験する場でもある。

POP-UPは、伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージで2026年5月20日(水)から5月26日(火)まで、阪急メンズ大阪 1階 メインステージで6月3日(水)から6月9日(火)まで、岩田屋本店本館1階 KIRAMEKI BOARDで7月1日(水)から7月7日(火)まで開催される予定だ。

コラボレーション商品はPOP-UP会場に加え、5月27日(水)より一部商品がBang & OlufsenオンラインストアおよびBang & Olufsen表参道店でも取り扱われる。

DAIKEI MILLSが手がけるBang & Olufsen × fragment POP-UP空間
POP-UP空間はDAIKEI MILLSが設計。「機能の拡張」をテーマに、通常は隠される電源コードを空間構成の要素として見せる

そして、100年の記憶をいまの暮らしへ。

Bang & Olufsenの100年は、音響機器の歴史であると同時に、暮らしの中で「音」がどのように存在しうるかを探ってきた歴史でもある。

高音質や美しいデザインはもちろん重要である。だがしかし、Bang & Olufsenが長く支持されてきた理由はそれだけではない。音を鳴らしていない時間にも、空間の中で美しく佇む。機能を隠すのではなく、所作として見せる。テクノロジーでありながらも、家具や建築と対話するという姿勢が長く愛されてきた背景にある。

藤原ヒロシ氏とfragmentの協働は、Bang & Olufsenの100年の記憶に、東京のカルチャーを通過してきた鋭い視点を重ねることだった。

Bang & Olufsenのアルミニウムにfragmentの黒が重なり、そしてストルーアのクラフツマンシップに東京の編集感覚が交差する。
20世紀の名作が2026年の住空間へと再び置き直されたこのコラボレーションは、Bang & Olufsenの過去を懐古するためではなく、100年を経てもなお、音とデザインが暮らしの風景を変えうることを示す、力強い再解釈である。

https://www.bang-olufsen.com/ja/jp

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