いよいよロボットが住宅に入り始めた!? AI家電の次に来る家庭用ロボットと共生する家
取材/LWL online編集部
人型ロボットはもはやSFの中の話ではなくなりつつある。2026年5月から、JAL・JALグランドサービス・GMO AI&ロボティクス商事が、羽田空港でヒューマノイドロボットの実証実験を始める。対象となるのは、手荷物・貨物の搭降載や機内清掃といった、人が使うことを前提に長く設計されてきた現場だ。空港と住宅はもちろん違うが、人間のために整えられた空間にロボットが入り込み始めた。次にその波が向かう先として、家庭を考えるのはごく自然な流れだろう。
しかも住宅の内部では、既にロボット掃除機が入り込んでいる。さらにCES 2026では、LGがシンク下に収まるビルトイン型ロボット掃除機ステーションを展示し、LG CLOiDは料理や洗濯を担うホームロボットとして披露された。一方、SamsungはBallieにGemini搭載の家庭向けAIコンパニオンロボットとして位置づけている。
AI家電の次に来るものを考えるなら、答えはかなりはっきりしている。次の有力候補はロボットだ。いよいよロボットが住宅に入り込み始めている。そして、LWL onlineの視点から問われるべき課題は、ロボットの性能云々だけではなく、ロボットを受け入れる住宅の側に、どんな準備が必要なのかである。
ドラえもんには押し入れがあった――ロボットと暮らす住宅に必要な「居場所」
ロボットのいる家を想像するとき、やはりドラえもんはわかりやすい。彼には押し入れがあった。あれは単なる寝床ではない。家庭の内部に、ロボットの「帰る場所」が与えられていたわけだ。ロボットと暮らす未来を考えるとき、私たちはつい「何ができるか」という性能に意識を向ける。だが実際には、「どこにいるのか」「どこで待機するのか」「どこから動き出すのか」という住宅側の条件を整えておくべきである。
冷蔵庫や洗濯機の居場所を住宅側が整えていったように、ロボットの居場所を真剣に考えるべき時代が到来しつつあるのだ。 ロボット共生住宅とは、ロボットが自然に待機し、移動し、働き、そして邪魔になりすぎないように整えられた住宅のことである。AI家電の次にロボットが来る時代には、この考え方がますます重要になるはずだ。
すでにロボット掃除機は住まいを変え始めている

ロボット掃除機の普及は床の使い方や家具配置にまで静かに影響を与え始めている
ロボット掃除機の普及で変わった床・段差・充電ドックの考え方
家庭用ロボットというと未来の話に聞こえるかもしれないが、第一段階はもう始まっている。ロボット掃除機である。ロボット掃除機が家に入ると、細かな段差を減らす、充電ドックの場所を決める、といった変化が起こる。つまり私たちはすでに、「ロボットが動ける家」へと住まいを少しずつ変え始めているのだ。これは小さな変化に見えて、実はかなり大きい。住宅が人間だけでなくロボットの移動も前提にし始めたからだ。
ビルトイン型ステーションやアーム付きロボット掃除機は何を変えるのか
しかも最近のロボット掃除機は、単に床をなぞるだけの機械ではなくなりつつある。LGのビルトイン型ステーションは、シンク下という住宅の余白をロボットの拠点へ変える提案だった。RoborockのSaros Z70は、5軸アームで床上の小物に対処する方向を打ち出した。ロボット掃除機は、掃除家電であると同時に、住宅内で定位置を持つ存在へ変わり始めている。

AI家電の次に来る家庭用ロボットとは何か
LG CLOiDやBallieが示すホームロボットの現在地
ロボット掃除機の先にあるのがいわゆる家庭用ロボット、ホームロボットだ。
LGのCLOiDは、LG ThinQエコシステムと接続しながら、洗濯機への衣類投入、衣類の折りたたみ、冷蔵庫整理、片付け、簡単な調理補助などを担う存在として示されている。SamsungのBallieは、自然な会話を通じて、家庭内での支援やパーソナライズされた相互作用を行う「home AI companion robot」として案内されている。
AI家電の次には、家電を横断しながら家の中を動く、「身体を持った知能」が入ってくることが望見できる。固定された機器としてのAI家電に対し、家庭用ロボットは移動し、家の中の複数の作業をつなぐ。そこに大きな違いがある。
家庭用ロボットは「家電の延長」ではなく「動く知能」になる
SwitchBotもCES 2026で、「Smart Home 2.0」を掲げながら、家庭用ロボットの方向性を明確に示した。発表ではonero H1がロボット掃除機と役割分担しながら、テーブル上の片付けなど床以外の家事にも関わる存在として説明されている。次のロボットは単体で万能な一台というより、まずは家の中の複数の機器や役割のあいだをつなぐ形で入ってくる可能性が高い。


人型ロボットも家庭を見始めている
1X NEOやFigureが家庭内の家事・片付けを見据える理由
さらに注目すべきなのは、人型ロボットがはっきりと家庭を視野に入れ始めていることだ。
1XのNEOはホームロボットとして案内されており、基本的な自律動作に加えて、洗濯や来客対応のような家事シーンが前面に出されている。複雑な作業については、遠隔のエキスパートが学習を補助する設計も示されており、完全自律の完成品というより、「まず家庭に入り、そこで育っていくロボット」という性格が強い。
Figureも2026年3月に人型ロボット『Figure 03』とAIモデル『Helix 02』による「リビングを片付ける」デモを公開した。Figure自身が説明するように、リビングは工場のように整然とした環境ではなく、物が散らかり、家具で通路が狭くなり、柔らかい物も多い。だからこそ、リビング片付けを人型ロボットの課題として正面から掲げたこと自体が、開発の視線が家庭へ向いている証拠だと言える。
Tesla Optimusの量産構想は人型ロボット時代を早めるのか
しかも、この流れはスタートアップだけのものではない。
Teslaもまた、人型ロボット「Optimus」を自社のAI戦略の中核のひとつとして掲げている。Teslaは人型ロボット『Optimus』の量産準備を進めている。2026年4月公表のQ1 Updateでは、初の大規模Optimus工場の準備開始と年産100万台規模を想定した初代生産ラインへの言及が見られる。家庭向けロボットの普及はまだ先だとしても、世界有数の量産企業が人型ロボットを「生産する製品」として扱い始めた意味は大きい。住まいの側だけが、いつまでも無関係でいられる話ではなくなってきている。
ロボット共生住宅設計で考えるべき5つのポイント
ここから先は、製品紹介ではなく住宅設計の話になる。家庭用ロボットや人型ロボットが入ってくるなら、住宅側には五つの論点が生じる。
その論点は待機・充電、動線と床、キッチン・ランドリー接続、人との距離感、そして普段いる場所の五つだ。
ロボットの待機場所と充電場所をどう設計するか
まず必要なのは待機場所と充電場所だ。ロボットは使うときだけ現れるのではない。普段どこにいるのかが重要になる。ロボット掃除機ならドック、人型ロボットなら自動充電のための待機スペースが必要になる。見えすぎず、しかしすぐに出られる場所。この「ロボットの定位置」は今後の住宅設計で重要なポイントになるだろう。1XがNEOで自己学習と家庭内運用を前提にしていることは、ロボットにも帰る場所が必要になることを逆に示している。
ロボットが動ける動線・床・段差をどう整えるか
次に、動線である。ロボットが家庭内を移動するなら、廊下幅、家具配置、扉の開き方、床に置かれた荷物までが設計条件になる。さらに床と段差も大きい。ラグの厚み、敷居、ケーブル、レベル差は、人には小さくてもロボットには障害になる。家庭は工場よりも雑然としている。だからこそロボットの実装は難しいと言われている。言い換えれば、ロボット共生住宅とは、見た目が未来的な住宅などではなく、床面の秩序が設計された住宅でもある。これはFigureが家庭内タスクとしてリビング片付けを重視していることとも重なる。
キッチンやランドリーと家庭用ロボットをどうつなぐか
三つ目は、キッチンやランドリーとの接続だ。LG CLOiDが示しているのは、ロボットが家電そのものになる未来ではなく、家電と家電のあいだをつなぐ未来である。必要なのは、物を取り出しやすい高さ、回遊できるレイアウト、一時置きスペース、洗濯物や食器を扱いやすい収納計画など、空間そのものの段取りである。ロボットは機器の上位互換ではなく、空間を横断する作業主体なのだ。

家庭用ロボットは家電そのものではなく、キッチンやランドリーをつなぐ存在として考えたほうが実態に近い
人型ロボットと暮らす住宅で重要になる「人との距離感」
四つ目は、人との距離感である。ロボットは便利になればなるほど、気配の問題が出てくる。常に近くを動いていると落ち着かないし、見守り機能が強くなれば監視の感覚も生まれる。Ballieが自然な対話による伴走者として、1XがNEOを家庭空間に入る存在として打ち出しているのは、この問題を各社がすでに意識しているからだろう。ロボット共生住宅では、「ロボットが働ける」だけでなく、「ロボットがいすぎない」ことも大切になる。

ロボットが日常空間に入るとき、性能以上に問われるのは人との距離感と気配のデザインである
ロボットは普段どこにいるべきか――住宅内の定位置を考える
そして最後に、普段いる場所をどう考えるかだ。ここでまたドラえもんの押し入れが効いてくる。家庭用ロボットも人型ロボットも、結局は「どこに帰るのか」が大事なのだと思う。ロボット共生住宅設計の核心は、この一点に集約できるかもしれない。
家庭用ロボットと人型ロボットは住宅にどう普及していくのか
まず普及が進むのはロボット掃除機の高度化
今後の普及はおそらく段階的に進むだろう。まず広がり続けるのは、ロボット掃除機の高度化だ。そこに見守り、搬送、簡単な整理、家電連携が加わる。
次に来るのは家電連携型ホームロボット
次に、BallieやCLOiDのような家電連携型ホームロボットが、一部の住宅に入り始める。そしてその先で、1X NEOや、さらに量産を志向するTesla Optimusのような人型ロボット群が、家事や片付けから徐々に生活空間へ近づいてくるはずだ。
その先に人型ロボットが生活空間へ近づく
業務現場ではすでに羽田空港のような実証が始まり、家庭ではロボット掃除機が高度化し、その上に家庭用ロボットや人型ロボットが重なってきている。これはSF的な空想というより、各社の現在地を並べたときに見える自然な順番である。
まずはロボット掃除機の居場所を住宅の中につくっておこう
いま必要とされているのは、ロボット掃除機の居場所を住宅の中に用意することだ。コンセントの近くに何となく置くのではなく、見えすぎず、出入りしやすく、掃除の邪魔にもならず、生活の景色も壊さない場所として考える。ここが定まるだけでも、住宅は少し変わる。ロボットのための小さな待機場所を設計することは、そのまま家庭用ロボット時代の入口になる。
AI家電の次はロボットか。答えは、おそらくイエスだ。
ただし本当に大切なのは、ロボットが来ること自体というよりも、ロボットを受け入れられる住宅である。家庭用ロボットも人型ロボットも、まだ完全には普及していない。だが、ロボット共生住宅設計という考え方は、もう始めておいてよい。住宅はこれから、機械を置く器から、動く知能を静かに迎え入れる器へと変わっていくのかもしれない。

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