アルネ・ヤコブセン「タンチェア」が日本限定で復刻。フリッツ・ハンセンの名作をアクタスで発売

 取材/LWL online編集部

フリッツ・ハンセンは、アルネ・ヤコブセンが1955年に手掛けた「Tongue Chair(タンチェア)」を、日本限定モデルとして復刻する。ムンケゴー小学校のトータルデザインから生まれ、SASロイヤルホテルのバーにも特別仕様で採用された知られざる名作だ。2026年8月7日からアクタス新宿店で先行発売される。

タンチェアは、セブンチェアやアリンコチェア、エッグチェアほど広く知られた存在ではない。しかし、建築、家具、照明、内装を一体として設計したヤコブセンの「トータルデザイン」を、極めて純粋なかたちで伝える一脚である。約70年前、学校建築のために生み出された小さな椅子が、現代の日本で再び日の目を見ることになる。

リネンカーテン越しの光を受ける白いアルネ・ヤコブセンのタンチェア
アルネ・ヤコブセンが1955年にデザインした「タンチェア」。フリッツ・ハンセンによる日本限定の復刻モデルとして、2026年8月に発売される

タンチェアとは。ムンケゴー小学校のために生まれた椅子

タンチェアがデザインされたのは1955年。ヤコブセンがデンマーク・ゲントフテに設計し、1957年に開校したムンケゴー小学校のために開発された。

ムンケゴー小学校は、教室に十分な自然光を取り込み、それぞれの教室から中庭へ直接出られる構成を採用するなど、児童の身体的・心理的なウェルビーイングを重視した学校建築だった。ヤコブセンは建物だけでなく、家具、照明、色彩、造作、テキスタイルまでを包括的に設計した。

タンチェアもまた、完成した建築空間のなかに後から置かれた家具ではない。教室の広さ、子どもたちの身体、椅子を移動させる行為、光や色との関係までを考慮し、建築を構成する要素のひとつとしてつくられたものだった。教室では学年に応じてサイズの異なるモデルが使用され、一部には持ち運びやすいよう、背に手掛けとなる開口部を設けた仕様も存在したという。

ホワイト、オリーブグリーン、ブラックのタンチェア3色
日本限定モデルは、ホワイト、オリーブグリーン、ブラックの3色を展開。成形合板による一体型シェルと、クローム仕上げのスチール製ベースを組み合わせる

「くびれ」を持たない、アルネ・ヤコブセン最小のシェルチェア

タンチェアは、座面と背もたれを一枚の成形合板で構成したシェルと、クローム仕上げのスチール製ベースから成る。

一枚の成形合板で座面と背もたれを構成した白いタンチェア
座面から背もたれまでを、一枚の成形合板によって連続的に構成。薄いシェルの緩やかな曲面が、タンチェア特有の軽快なシルエットを生み出している

ヤコブセンとフリッツ・ハンセンは1950年代初頭から、成形合板によって座面と背もたれを一体化する技術を発展させてきた。1952年のアリンコチェアに続き、1955年にはセブンチェア、タンチェア、ムンケゴーチェアなど、異なる輪郭を持つシェルチェアが生み出されている。

なかでもタンチェアは、ヤコブセンが手掛けた椅子のなかでも特に小さく、輪郭を最小限まで削ぎ落としたモデルとされる。

アリンコチェアやセブンチェアでは、座面から背もたれへ移る部分が細く絞り込まれ、腰のようなくびれが形成されている。一方、タンチェアには明確なくびれがない。座面から背へと連続する一枚の面が、舌を思わせる丸みを帯びたシルエットを描いている。

舌を思わせる丸い背もたれを持つオリーブグリーンのタンチェア
アリンコチェアやセブンチェアのような明確なくびれを持たず、座面から背もたれまでが滑らかに連続する。舌を思わせる輪郭が「Tongue Chair」の名の由来となった

学校からSASロイヤルホテルのバーへ広がったトータルデザイン

教育施設のために生まれたタンチェアは、その後、ヤコブセンのもうひとつの代表作であるSASロイヤルホテルにも、姿を変えて採用された。

1960年に開業した同ホテルは、建築から家具、照明、カトラリー、ドアハンドルに至るまで、ヤコブセンが統合的にデザインしたプロジェクトとして知られる。直線的でモダニズム的な外観に対し、内部にはエッグチェアやスワンチェアなど、柔らかな有機的形態を持つ家具が配置された。

タンチェアはホテルの客室用チェアとしてではなく、バーのために革張りとコラムベースを備えたバースツール仕様として製作された。学校で使われた軽量な椅子の基本造形を、ホスピタリティ空間のための特別仕様へと展開した事例であり、その簡潔なシルエットが備える応用力を物語っている。

日本限定の復刻モデルは3色。アクタスで先行発売

今回の復刻モデルでは、オリジナルの簡潔なフォルムを継承しながら、現代のインテリアに取り入れやすいカラードアッシュ仕上げを採用する。

木製ダイニングテーブルに合わせたブラックのタンチェア
ブラックモデルを木製のダイニングテーブルとコーディネート。簡潔なシルエットとクローム仕上げの脚部が、木質を基調とした空間に軽やかなコントラストを加える

カラーはホワイト、ブラック、オリーブグリーンの3色。白や黒はダイニング、書斎、オフィスなど幅広い空間に合わせやすく、落ち着いたオリーブグリーンは木材や自然素材を用いた住宅にも穏やかなアクセントを加えるだろう。

価格は各65,780円(税込)。2026年8月7日からアクタス・新宿店で先行販売し、今秋からアクタス各店およびアクタスオンラインショップでも取り扱う予定だ。販売はアクタス限定となる。

ブラック仕上げのアルネ・ヤコブセンのタンチェア
ブラックのカラードアッシュ仕上げ。木目を残したシェルに、クローム仕上げのスチール製ベースを組み合わせる。価格は65,780円(税込)

一脚の家具から、建築全体を読み解く

1872年にデンマークで創業したフリッツ・ハンセンは、アルネ・ヤコブセンやポール・ケアホルムをはじめとする建築家、デザイナーとの協働を通じて、数多くの家具を生み出してきた。なかでもヤコブセンとの協業は、建築と家具の境界を越えたフリッツ・ハンセンの歴史を象徴するものだ。

タンチェアの価値は、世界で日本だけに展開されるという希少性だけにあるのではない。この椅子の背景をたどると、家具が単独の商品としてデザインされたのではなく、光、動線、建築、利用者の身体、空間で営まれる行為を含めた全体の一部として設計されていたことが理解できる。

照明や音響、空調、家具、住宅設備を個別に配置するのではなく、ひとつの空間体験として統合することが求められる現在の住宅設計において、ヤコブセンのトータルデザインは決して過去の思想ではない。

誕生から約70年を経て、フリッツ・ハンセンの復刻モデルとして日本に登場するタンチェアは、一脚の家具から建築全体を考えるための、小さくも示唆に富んだデザインなのである。

フリッツ・ハンセンの家具が配置された木質基調のインテリア空間
ヤコブセンの家具は、単独のプロダクトとしてではなく、建築、照明、素材、人の動きまでを含む空間全体の一部としてデザインされてきた

製品概要

Tongue Chair(タンチェア)

  • デザイン: Arne Jacobsen/1955年
  • 座面: カラードアッシュ
  • ベース: クローム仕上げ
  • カラー: オリーブグリーン、ホワイト、ブラック
  • 価格: 65,780円(税込)
  • 発売日: 2026年8月7日
  • 販売店: アクタス・新宿店で先行販売。今秋以降、アクタス各店およびアクタスオンラインショップで販売予定

FRITZ HANSEN公式サイト

タンチェア公式アーカイブ

アルネ・ヤコブセン公式「Complete Works」

アクタス・新宿店

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