清川あさみ×名和晃平「Invisible Garden」銀座で開催。生成AI、刺繍、PixCellが交わる「見えない庭」
取材/LWL online編集部
美術家・清川あさみと彫刻家・名和晃平による初の二人展「Invisible Garden」が、東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催されている。刺繍によって「見えないもの」を可視化してきた清川と、「セル」によって物質の表皮と知覚を変容させてきた名和。全幅約9メートルの共作《PixCell-Our New World》では、風景写真や生成AIによるイメージ、透明なセルが重なり、現実と仮想、自然と人工の境界が揺らぐ「みえないにわ」を描き出す。会期は11月8日まで。
※アイキャッチ画像:photo by Nobutada OMOTE
現実と仮想の境界に生まれる「Invisible Garden」
情報が絶えず流動し、現実と仮想、自然と人工の境界さえ曖昧になりつつある現在。わたしたちが目にしている風景は、果たしてどこまでが「現実」なのだろうか。
そのような極めて現代的な感覚をひとつの「にわ」として描き出す展覧会が、東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで9月16日から開催されている「Invisible Garden」である。美術家の清川あさみと、彫刻家の名和晃平。今回が初の二人展となる。
清川の著書『みえないにわ – Invisible Garden』の刊行を起点として構想された展覧会である。滴や胞子、微生物や動植物、人の記憶や時間、夢、想像力といった有形無形のさまざまなものたちが息づく風景としての「にわ」を描き出す。
清川の刺繍によって紡がれる物語や、名和のセルによって被覆・変換されたイメージ——白で統一された空間のなかでそれらの色彩と輪郭は静かに浮かび上がり、ゆるやかに結びつきながら、ひとつの「にわ」が姿を現す。

刺繍と「セル」が交差する、全幅約9メートルの《PixCell-Our New World》
展覧会の中心をなすのが、二人の共作となる全幅約9メートルの大型新作《PixCell-Our New World》だ。

全幅は約9メートル。風景写真や生成AIによる画像の断片を用いて清川が構成した「Our New World」の画面を、名和が透明な「セル」によって覆う。透明なセルを通して見えるイメージは、部分的に拡大され、分割と統合を繰り返す。現実の風景、デジタルによって生成された風景、清川によって再構成されたイメージ、さらに名和による物質的な表皮。その複数のレイヤーを通過することで、イメージそのものが揺らぎ始める。

生成AIによるイメージが日常へ急速に入り込み、「撮影されたもの」と「生成されたもの」の違いすら意識しないまま目にする機会が増えた現在。《PixCell-Our New World》が提示するのは、現代における「見る」という行為自体なのかもしれない。
「見えないもの」を可視化してきた清川あさみ

清川あさみは、写真や雑誌、布、書物などに刺繍を施す独自の表現を出発点としてきた現代美術家だ。「見えないものを可視化すること」をテーマに作品を制作。近年は、記憶、神話、自然に加え、AI時代の想像力まで射程を広げ、平面作品からインスタレーション、公共アート、映像、出版まで領域を横断している。
会場では「Serendipity」シリーズの新作なども展示されている。刺繍という極めて身体的な行為によって、写真やデジタルイメージの上に別の時間を重ねていく。


名和晃平、「PixCell」が変えるモノの「表皮」

名和晃平は、感覚に接続するインターフェイスとして彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸に創作を続ける。彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。
代表的な「PixCell」シリーズでは、対象物を透明な球体で覆うことで、そこにあったはずの輪郭や質感を変容させる。

名和は彫刻だけでなく、アートパビリオン《洸庭》など建築領域にも活動を広げてきた。2018年にはルーヴル美術館のピラミッド内に《Throne》を展示し、2023年にはフランス・セガン島に《Ether (Equality)》を恒久設置している。
本展では「PixCell」の近年の展開のひとつである「PixCell-Random」も展示され、物質とイメージの間に生じる知覚の揺らぎを体験できる。
ギャラリーから街へ広がる「Invisible Garden」
「Invisible Garden」はポーラ ミュージアム アネックス3階の展示室だけにとどまらない。同じポーラ銀座ビル1階の「POLA GINZA」でも、展覧会と連動したインスタレーションが展開される。植物や滴をモチーフとした作品群が置かれ、清川の書籍を起点に広がる世界が、3階と1階という二つの空間をつないでいく。

さらにPOLA GINZAでは、ポーラの最高峰ブランド「B.A」と両作家によるコラボレーション「PixCell B.A」も展開される。清川と名和の表現が、ギャラリーの作品だけでなく、プロダクトや店舗空間へと広がっていく点も興味深い。
ギャラリーの中に閉じた「作品」ではなく、街の中を歩きながら異なる場所で断片を発見していく。その体験自体が、「にわ」という展覧会のコンセプトとも重なる。
開催概要
- 展覧会名:清川あさみ|名和晃平「Invisible Garden」
- 会期:2026年9月16日(水)〜11月8日(日)※会期中無休
- 開館時間:11:00〜19:00(最終入場18:30)
- ※11月6日(金)〜8日(日)は10:00開館
- 会場:ポーラ ミュージアム アネックス 公式サイト
- 所在地:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
- 入場料:無料
- 主催:株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
- 協力:ASAMI inc.、Sandwich Inc.
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LWL online 編集部