「Lutron Design Session vol.1」ラグジュアリー住宅の最新トレンドと照明制御の現在地

オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子 

世界の照明制御をリードする老舗「ルートロン(Lutron)」と、LWL onlineによる共同セミナー「Lutron Design Session vol.1」が、2026年7月27日に東京・青山で開催された。米Lutron Electronicsよりセシリア・E・ラモス(Cecilia E. Ramos)氏を招き、ラグジュアリー住宅に深く関わる参加者が集った当日の模様をレポートする。

ラグジュアリーな住空間における「光」の真価

単なる「部屋を明るくする道具」から、空間の美しさを引き出し、住む人の心や体のウェルビーイングに寄り添う存在へ――。今、住宅における照明の役割は、大きな変革期を迎えている。 

そんな照明を制御する分野の老舗であり、“調光”という文化を人類の生活にもたらした第一人者が、ルートロンだ。1961年に米国で設立され、世界で初めて調光器を発明したパイオニアである。以来、高級住宅やラグジュアリーホテル、商業施設において、最先端の照明制御システムや電動カーテンなどのソリューションを提供し続けている。

室内外の照明をシーンごとに制御した夜の住宅外観
ルートロンのラグジュアリー住宅向けシステム「HomeWorks」は、室内外の照明やシェードなど異なる要素を連携させ、住宅全体の光を一つの体験として束ねる
織物調の壁面に設置されたLutronの3ボタン式デザインキーパッド
Lutronのキーパッド「Alisse」。高度な制御を背後に隠しながら、住む人が触れる部分には素材感と操作の美しさを残す

同社がこのたび開催したイベント「Lutron Design Session vol.1」のテーマは、「Lighting To Live By 光の中で生きる ー 無形のものを通じた体験を高める」。照明・自然光・シェード・制御を丁寧に統合することで、空間の雰囲気を深めながら、感情的な共鳴を高め、住まい手の空間体験を豊かにする手法を考察する。 

ラグジュアリー住宅の関係者をはじめとする多くの参加者が集まり大盛況に
会場内にはルートロンのデザインキーパッドの実物が展示され、その高い質感を感じられるようになっていた

イベントの冒頭では、ルートロンの日本法人であるルートロンアスカ株式会社の日本カントリーマネージャー・谷崎氏が挨拶した。「本日は単なる製品紹介ではなく、ラグジュアリーな住空間と光のあり方を深掘りするセミナーとして企画しました」と語り、同社の歴史と理念を伝えた。 

ルートロンアスカ株式会社 日本カントリーマネージャー・谷崎氏

谷崎氏の「ショールームでの体験を含めて、ぜひ光がもたらす豊かな世界を楽しんでほしい」という言葉とともに参加者の期待が高まる中、メインイベントとなる基調講演へと移った。 

基調講演:目に見えない「体験」を仕立てる照明デザイン

登壇したのは、米Lutron Electronicsのシニアディレクター、セシリア・E・ラモス氏。照明・インテリア・建築デザインを専門とし、Lutron ElectronicsにおいてArchitecture & Design分野の取り組みをリードする人物である。

米Lutron Electronics セシリア・E・ラモス(Cecilia E. Ramos)氏

セシリア氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)でB.SAD、プリンストン大学でM.Archを取得し、Lutron入社以前はL’Observatoire Internationalにて、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、ディオール・パルファムなどLVMHグループのラグジュアリーリテール空間の照明設計を手がけてきた。 

「ラグジュアリーの本質は、目に見えません」と語る同氏は、マサチューセッツ工科大学で建築を学んでいた学生時代、光の反射によって時間とともに表情を変えるエーロ・サリネン設計の「MITチャペル」に感銘を受け、光が持つ圧倒的な表現力に魅せられたと振り返る。 

「光、空間、そしてそこに生まれる感情を演出することこそが私たちの仕事です」というセシリア氏。今回の講演では、世界的なラグジュアリー住宅のトレンド変化から、そこに求められる最新の照明デザインについて多角的な視点で語られた。 

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変化するラグジュアリー住宅のトレンド

セシリア氏は、現在のラグジュアリー住宅デザインは「物質を足していくこと」から「体験を高めていくこと」へシフトしていると指摘する。 

「今、ホスピタリティの分野は、ホテルやリゾートをベンチマークとし、インテリアデザイナーたちのインスピレーションの源泉となっています。ホテルのコンシェルジュサービス、ウェルネス、ウェルビーイング、そういうホスピタリティ領域にデザイナーたちも注目し、いくつかの要素を住宅に取り入れるトレンドになっているのです。実際に、自宅でアウトドアライフやリゾートやスパのウェルネス体験を求めるオーナーも増えていて、そういった意識が住宅デザインへ影響を与えていますね」 

また、テクノロジーの進化に伴う「シンプル化の追求」にも言及。裏では複雑かつ洗練されたシステムが動きつつも、住人が触れる操作盤にはシンプルな美しさを追求すべきであり、ストレスのないスマートな操作性の重要性を強調した。 

加えて、環境配慮(サステナビリティ)も当然となっている近年の考え方として、「環境に優しい“エコフレンドリー”だけでなく、美しく洗練された“エコシック”に発展していくべきです」と、デザイン設計の重要性も指摘。さらに出来合いのものではなく、自分にとって意味のあるオーダーメイドの空間や体験の価値が見直されている現状についても触れた。 

「インスタグラムなどSNSの普及により、現代は視覚の情報に偏りがち。しかし本物のラグジュアリーとは、五感をフルに活用するものです。古来、絹の香りや tactile(触覚)、洗練された sound(音)が贅沢の証であったように、これからの住空間も視覚だけでなく五感全体で感じる体験が重要になるでしょう」 

そして、これらの要素を踏まえ、「これからのラグジュアリーは3つのTで形作られます」と提示した。 

「ひとつめはTIME(時間)。これは誰にとっても有限で貴重なもの。ふたつめはTRUTH(真実)。クライアント自身の真実や本質に辿り着くデザイン。そして最後がTRUST(信頼)。オーナー、デザイナー、ブランド間の確固たる信頼関係。これらの要素によって、これからのラグジュアリーな住宅・空間デザインは形作られていくでしょう」 

住宅トレンドが移る中で、光をどう設計するか 

ルートロンでは3年に一度、インテリアデザイン業界やラグジュアリーホームのオーナーを対象に、第三者機関でトレンド調査を実施している。その最新版である「2026トレンドレポート」の調査結果を元に、セシリア氏は暮らしを変える「光のダイナミズム」について解説した。 

「トレンドレポートでは、91%の回答者が『自宅における光の重要性』を認めるという結果が出ています。個人のウェルネス・健康が、光に大きく影響を受けると気づき始めている人が多いのでしょう。 

そこで、光を動的に変えられる照明が重要となるわけですが、ルートロンの提供するシステムは柔軟に光を調整できることにより、同じ空間でも時間に合わせてさまざまなムードを作り出すことができます。これは照明が快適なウェルネスに繋がる要素です」 

加えてセシリア氏は、光をレイヤー(層)として重ねる照明設計の重要性についても指摘した。 

「アンビエントライト、アクセントライトなど、色々な高さ・強さの照明を重ねることで空間を仕上げていくことができます。そして光の重要性は、自然光なくしては語れません。この自然光をコントロールするためのシェード(電動カーテン)と組み合わせることで、空間の光をレイヤーで重ねる空間照明の完成度は高められます。 

こういったところから、ウインドウトリートメントの要素が復活してきていて、業界全体でカーテンの提案などからパーソナライズの一環として活用しようという流れが生まれています」 

そして最後に「本日お伝えしたかったこと」として、こう結んだ。 

「住まいは、そこに暮らす人間のパーソナリティに合わせ、アダプト(調整)して変えていくものになってきています。住宅における光や照明は、目に見えない空間体験を支えるイネイブラーになってきている。単なるインフラやアメニティといったモノとして捉えるのではなく、光・照明が作り出す空間体験が住まう人にとっての素晴らしさ、ラグジュアリーとなるのです」 

また、講演後の質疑応答で参加者から「文化や地域による光の好みの違い」について質問が寄せられると、セシリア氏は「非常に意識しているポイントです」と答え、国や地域によって心地良く感じる色温度が異なることを解説。 

「例えば東南アジアでは4000Kのすっきりとした光、欧州では2700〜3000Kの温かみのある光が好まれる傾向があります」としつつ、「同時に現代では、世界中を旅するデザイナーたちによってアイデアが交差し、その感覚もハイブリッドに進化しています」と、世界がシームレスにつながることにって、グローバルな価値観が広がりつつある現状を語った。 

ショールームツアー:究極の光制御「HomeWorks」を体感

基調講演の後は、普段は限られた関係者しか立ち入ることのできないルートロンのショールームへ移動し、ラグジュアリーレジデンス向けのトータルホームコントロールシステム「HomeWorks」をはじめとするデモ体験ツアーが開催された。 

ショールームには、ルートロンの原点でもある「白熱灯の繊細な調光デモ」や、外光と室内の明かりを完璧に調和させるシステムなどが備えられている。

セシリア氏の講演にもあったウインドウトリートメントの一環として、外光と連動する自動調光システムも紹介された。

設置された住宅の位置情報、日にち、現時刻をもとに、電動シェードから差し込む外光の強さに応じて、室内照明の明るさを自動調整するシステムだ。外の自然光と室内の人工光が境目なく溶け合う空間表現に、参加者からは感嘆の声が漏れていた。 

光が紡ぐ、これからのラグジュアリーな暮らし

イベントの最後には懇親会が行われ、セシリア氏やルートロンのスタッフ、そして参加者同士で、会場に展示されたルートロンの美しいキーパッドを手に取りながら熱い意見交換が交わされた。

「光の中で生きる ー 無形のものを通じた体験を高める」というテーマの通り、照明はもはや空間を照らすためだけの設備ではない。住む人の心身を整え、暮らしの質や空間の価値を何倍にも高めてくれる重要な要素だ。 

ルートロンが提示する先進的な光のイノベーションと、五感に響く体験デザイン。これからのラグジュアリー住宅やインテリアデザインにおいて、光が持つ無限の可能性を強く実感させられる、実り多きイベントとなった。 

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  • オーディオ&サブカルライター

    杉浦みな子

    1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://foriio.com/minako-sugiura

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