カリモク家具×OJAS「音の家具」誕生。スピーカーの設計思想から生まれた家具15種、代官山で公開
スピーカーの設計思想が、チェアやシェルフ、吸音パネルへ。カリモク家具は、オーディオデザイナーのデヴォン・ターンブル(Devon Turnbull)が手掛ける新ブランド「音の家具 By OJAS and Karimoku Furniture」を発表した。2026年10月22日より全15種の製品を発売する。同日からザ・コンランショップ 代官山店では、音と光、影をテーマにしたポップアップイベントを開催。音楽を聴くという行為を家具と空間の関係から捉え直す、新たなリスニングルームのあり方を提案する。
スピーカーの設計思想を家具へ。OJASが生み出した「音の家具」
音楽を聴くための空間は何によって形づくられるのだろうか。
スピーカーやアンプといったオーディオ機器はもちろんのこと、そこに置かれる椅子や家具、さらには空間を仕切る建具や壁面も、リスニング体験を構成する重要な要素となる。
カリモク家具が発表した新ブランド「音の家具 By OJAS and Karimoku Furniture」は、そうした音と家具の関係に新たな視点を投げかけるコレクションである。
デザインを手掛けたのは、ニューヨークと東京にスタジオを構えるアーティスト、オーディオ・エンジニア、デザイナーのデヴォン・ターンブル。自身が創設したオーディオブランド「OJAS(オジャス)」を通じて、独自のスピーカーシステムを製作してきた人物である。
OJASのスピーカーは、ヴィンテージのオーディオ機器やDIY文化、日米のオーディオデザインの歴史から着想を得た造形が印象的である。
今回発表された「音の家具」は、ターンブルがスピーカーの設計で培ってきた構造やプロポーション、幾何学的な造形といったデザインロジックを解体し、家具という異なる用途へと再構築したものだ。
原点は2021年に909 Galleryで開催された展覧会「Not For Sale」のために製作された一脚のチェアにさかのぼる。
スピーカーのパネル構成を座面や背もたれへ、筐体の構造を建築的なフォルムへと読み替える。音を生み出すための構造から、人が身体を預けるための家具が生まれたのである。

「Chair 001」から吸音パネルまで。音楽を楽しむための家具15種
新ブランドのコレクションは、カリモク家具の共創プロジェクト「KARIMOKU RESEARCH」の一環として開発が進められた。
「Chair 001」:スピーカーと設計思想を共有するチェア
2026年2月から6月に開催された、「機能とは何か」を問うKARIMOKU RESEARCHの「Survey 03:FORM FOLLOWS FEELINGS」での協業を通じて、「Chair 001」が誕生。これを起点に、座椅子や長椅子、シェルフ、アコースティックパネルなど、15種の製品へとコレクションが広がった。
コレクションの中心となる「Chair 001」は、シンプルな幾何学的構造と、低く構えたプロポーションが印象的なチェアである。スピーカーの外観を家具に置き換えたわけではなく、OJASのサウンドシステムと共通する設計思想を、そのまま家具の造形へと昇華させている。

必要最小限の構成要素によって成り立つそのデザインは、素材本来の質感を生かしながら、構造そのものを意匠として表現。無駄を削ぎ落とした明快なフォルムでありながらも、緻密に計算されたプロポーションによって、空間に確かな存在感をもたらしている。

アーム付きのタイプや長椅子型のユニットなども用意され、組み合わせによってさまざまなリスニングスタイルに対応する。


オーディオ用シェルフと屏風型の吸音パネル
「Shelving 001」は、ターンテーブルや真空管アンプを置くことを想定したシェルフ。LPレコードがちょうど収まる高さに設計され、積み重ねたレコードの重量を支える強度も確保されている。

また、「Acoustic Panel OJ1」は、日本の屏風の形状と役割から着想を得た自立式の吸音パネルである。壁際に設置することで音の反射を抑えるほか、広い居室を緩やかに区切り、独立したリスニングスペースをつくる用途にも対応する。
音響調整のための機能を、インテリアを構成する家具として成立させようとする発想は、住宅の空間設計という観点からも注目したい。
代表的な製品にはナラ材が使われ、コレクション全体では「Pewter Gray(ピューターグレー)」と「Pure Oak(ピュアオーク)」の2色を基調とする。

特にピューターグレーは、ターンブルがOJASのスピーカーに使用してきた象徴的なカラー。木目の表情を生かしながら発色するよう、今回のプロジェクトに合わせて新たに調色されたという。
主な製品の税込価格は、「Chair 001」が327,800円、「Shelving 001」が429,550円、「Acoustic Panel OJ1」が760,100円(2枚1セット)。
いずれも音楽を聴くという行為と、家具としての機能、造形の美しさを結びつけた製品となっている。
代官山で「音と光、影」を体験。OJAS Tokyoと「wagetsu わ月」が共演
新ブランドのローンチに合わせ、ザ・コンランショップ 代官山店では、2026年10月22日から12月29日まで、ポップアップイベント「Shadow, Light & Sound -音の気配、影の輪郭-」を開催する。

会場では、「音の家具」のコレクションに加え、「OJAS Tokyo」のスピーカー、さらに家具ブランド「wagetsu わ月」の製品を組み合わせたリスニングルームを展開する。
OJAS Tokyoのスピーカーは「Sanjo」「Rokujo」「Nurikabe」の3モデル。いずれも筐体の製造をカリモク家具が担当し、「音の家具」と共通するピューターグレーとピュアオークのカラーを用意する。

音響機器と家具の素材や色彩を統一することで、スピーカーだけが突出するのではなく、空間全体に一貫したデザインの秩序、統一感をもたらす構成となる。
さらに、この空間に光と影という要素を加えるのが「wagetsu わ月」だ。
同ブランドは、ロサンゼルスを拠点とするデザインスタジオ「WAKA WAKA」とカリモク家具の協業から生まれたもの。
「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。」
谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』に記した一節だ。
光に照らされたものそのものではなく、そこに生まれる陰翳や明暗の移ろいにこそ美を見出す。陰翳を愛でる日本の文化を示すことだけにとどまらず、家具と家具、家具と空間がつくり出す関係性のなかに、美のありかを見出す視点にもつながる。
そうした日本独自の美意識を現代の家具へと昇華させようとするのが「wagetsu わ月」である。

音を中心とするOJAS、家具の構造と機能を追究する「音の家具」、そして陰影を通じて空間を捉える「wagetsu わ月」。それぞれ異なる視点から生まれたコレクションが、一つのリスニングルームとして構成されるのが今回の展示の特徴である。
オーディオとインテリアの融合が描く、新しいリスニングルーム
住宅におけるオーディオの導入は、スピーカーやアンプといったオーディオ機器の選定を中心に語られることが多かった。もちろん、この視点は重要である。
だが、良質なリスニング体験を考えるうえでは、どこに座り、どのように機器を配置し、音の反射をどう扱うかといった空間全体の設計も欠かせない。
その意味で「音の家具」は、オーディオとインテリアを別々の領域として捉えるのではなく、共通の設計思想によって結びつけようとする試みといえる。
特に、自立式の吸音パネルを家具としてデザインした点は特筆したい。音響的な機能を持つ要素が、視覚的にも空間の一部となる。そこでは、音響設備を隠すか見せるかという二者択一を超え、機能そのものをインテリアへと統合する可能性が示されている。
音楽を聴く時間の豊かさは、オーディオ機器の性能に加えて、椅子に身を預ける感覚、木材の質感、空間を包む陰影、そしてそこに流れる音楽までもが調和することで、より深いものとなる。
「音の家具」は、音楽とともに暮らすための空間を家具の側から再考するコレクションといえそうだ。
「Shadow, Light & Sound -音の気配、影の輪郭-」開催概要
- 会期: 2026年10月22日(木)~12月29日(火)
- 会場: ザ・コンランショップ 代官山店 地下1階
- 住所: 東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟 B1F
- 営業時間: 11:00~18:00(土曜日は19:00まで)
- 休業日: 水曜日
- アクセス: 東急東横線「代官山駅」徒歩3分
- 「音の家具」コレクションは10月22日より全国のカリモク家具取扱店で発売予定。