イームズの名作「EC-127」が復刻。ハーマンミラー、再生プラスチック99%で日本発売
取材/LWL online編集部
ハーマンミラー(Herman Miller)は、チャールズ&レイ・イームズが1970年にデザインした名作チェア「EC-127」を現代仕様で復刻し、「Eames Molded Plastic Dining Chair(イームズ モルデッド プラスチック ダイニングチェア)」として2026年10月15日より日本で発売した。オリジナルの造形と快適性を継承しながら、座面と背もたれに99%のポストインダストリアル再生プラスチックを採用。新たに張地なしの仕様や多彩なカラーを加え、半世紀以上の時を経た名作が、現代の住空間に向けて生まれ変わった。

イームズの名作「EC-127」とは? 1946年のDCMから続くデザインの進化
20世紀のモダンデザインを代表するチャールズ&レイ・イームズ。彼らが生み出した家具は、優れた造形美と合理性、そして日常生活に寄り添う快適性によって、現在も世界中で愛され続けている。
今回復刻されたEC-127の背景には、イームズ夫妻が長年にわたって取り組んできた、素材と構造の改良の歴史がある。
EC-127の系譜をたどると、1946年に発表された「DCM(Dining Chair Metal)」に行き着く。成形合板による座面と背もたれを金属製フレームで支えるDCMは、素材の特性を生かした軽快な構造によって、イームズの代表作のひとつとなった。
その後、図書館での使用を想定し、後脚を長くすることで、より直立した姿勢をとりやすくした「DCM-L」へと発展。EC-127は、このDCM-Lを基に、より高い耐久性と快適性を追求したモデルとして誕生した。
従来の成形合板に代わって強化プラスチックを採用。ラバーと金属を組み合わせた衝撃吸収用のショックマウントを座面と背もたれに一体化し、外観を損なうことなく強度を高めるとともに、製造工程の効率化も実現した。

イームズ夫妻にとって、デザインとは一度完成させれば終わりというものではなかったのだ。新たな素材や製造技術を取り入れながら、使い勝手や品質を絶えず改善していく。その思想を象徴するプロダクトがEC-127だったと言えるだろう。
再生プラスチック99%を採用。張地なしの新仕様も登場
今回の復刻で注目すべきは、環境への配慮とデザインの継承を両立させた素材の選択だ。
新しいEC-127では、座面と背もたれに、製造工程で生じた端材などを再利用する「ポストインダストリアル再生プラスチック」を99%使用している。
曲線を描く座面と背もたれ、軽快な金属製フレームというオリジナルの基本構成はそのままに、現代の再生素材を取り入れながら、日常的な使用に求められる耐久性と、環境への配慮を両立させている。
また、今回初めて、張地を設けない「ノンアプホルスター」仕様をラインアップに追加した。張地付きモデルに加えて、プラスチックならではの質感やシンプルな造形を際立たせた選択肢が用意された。
張地のない仕様によって、住宅のダイニングや書斎に加えて、オフィス、図書館、レストランなど、多様な空間への導入も想定している。
イームズの色彩感覚を継承。豊富なカラーとジラードの「Hopsak」
もうひとつの特徴として挙げられるのが、豊富なカラーと張地のバリエーションだ。

新しいEC-127の色彩計画には、イームズ夫妻が手がけた組み立て玩具「The Toy(ザ・トイ)」のプロトタイプから着想を得たカラーパレットが取り入れられている。
脚部には、クラシックなクローム仕上げに加え、マリーゴールド、ブレイズ、ベリーブルーなど、鮮やかなパウダーコート仕上げを用意。ブラックやホワイトも選択でき、空間のテイストに応じたコーディネートが可能となっている。
張地付きモデルでは、テキスタイルブランドMaharam(マハラム)が選定したファブリックを採用。ミッドセンチュリーデザインを代表するアレキサンダー・ジラードによる「Hopsak(ホップサック)」も選択できる。
アレキサンダー・ジラードは、イームズ夫妻やジョージ・ネルソンとともに、ハーマンミラーのデザイン文化を形成した重要なデザイナーのひとり。オリジナルのEC-127にも採用されていた彼のテキスタイルが新しいモデルに受け継がれている。
シェル、張地、脚部の組み合わせによって、落ち着いたモノトーンから色彩豊かなアクセントチェアまで、さまざまな表情を楽しめる。機能性を追求する一方で、色彩や素材を通じて暮らしに楽しさをもたらすという、イームズ夫妻のデザイン哲学が反映されている。

なお、ハーマンミラーが受け継いできたモダンデザインの系譜については、9月30日に開業した「ハーマンミラーストア 梅田」を紹介したLWL onlineの記事でも詳しく取り上げている。
名作は完成形ではない。イームズが受け継ぐ「改良」のデザイン思想
今回の復刻について、Eames Officeのディレクターであり、イームズ夫妻の孫にあたるイームズ・デメトリオスは、EC-127を、夫妻が自らのデザインを絶えず改良し続けた姿勢を象徴する存在と位置づけている。
ハーマンミラーとEames Officeは、現在入手可能な再生素材を活用しながら、オリジナルの意匠と思想を次の世代へ引き継ごうとしている。これは過去のデザインを忠実に再現するだけの復刻とは一線を画す。
優れたデザインの本質を守りながら、その時代に求められる素材や技術、価値観を取り込み、更新し続けるという考え方が今回のEC-127からは見て取れる。
住宅やインテリアを長期的な視点から考えるうえでも、流行に左右されない造形と、時代に合わせて進化する機能をいかに両立させるかは重要なテーマとなる。
1970年に生まれた一脚の椅子が、現代の素材と色彩をまとって再び登場したことは、長く使うためのデザインとは何かを、改めて考えるきっかけになるだろう。
Eames Molded Plastic Dining Chair(EC-127)製品概要
- 製品名:Eames Molded Plastic Dining Chair(EC-127)
- デザイナー:Charles & Ray Eames
- サイズ:W521 × D527 × H775mm
- 仕様:ノンアプホルスター(張地なし)、アプホルスター(張地あり)
- 素材:座面・背もたれにポストインダストリアル再生プラスチック99%を使用
- 日本発売日:2026年10月15日
- 販売:ハーマンミラーストア各店、公式オンラインストア
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LWL online 編集部