27tの竹でつくる「TAKE TORI HOUSE」竣工。サステナブル・ラグジュアリーの未来

 取材/LWL online編集部

サステナビリティとラグジュアリーは、いまや相反する価値ではなくなりつつある。素材がどこから来て、どのようにつくられ、長く使われ、次の循環へ向かうのか。「素材の背景」まで含めて空間を選ぶことが、新しい豊かさの尺度になり始めている。

その可能性を「竹」から提示するのが、株式会社アステップが千葉県船橋市に竣工した「TAKE TORI HOUSE(タケトリハウス)」だ。約1,000㎡、重量27t相当の竹建材を活用した3階建てのショールーム兼実証施設で、竹建材から家具、インテリア、ホテルアメニティ、生活用品までを一棟に集約。サステナブルとラグジュアリーを接続する、新しい素材と住空間のあり方を考える。

27tの竹建材を使った「TAKE TORI HOUSE」とは

TAKE TORI HOUSEの特徴は、竹を単なる装飾材として見せるのではなく、建築、家具、インテリア、生活用品までスケールを横断して展開していることにある。

アステップはこれまで、竹箸や歯ブラシ、ヘアブラシ、カトラリーなどの竹製品を開発してきた。特に竹箸やホテル・旅館向けアメニティは全国約6,000施設に導入されているという。

竹製ホテルアメニティと開発中の竹家具を展示するTAKE TORI HOUSE
竹製の歯ブラシやヘアブラシ、コームなどのホテルアメニティから、開発中の竹家具まで。TAKE TORI HOUSEでは、日用品からインテリア、建築へと広がる竹の用途を実際に体感できる

現在は、その対象を家具や建築資材へ拡大。さらに製造時に生じる端材を竹のオガ炭として製品化したり、間引かれた竹をメンマとして商品化したりするなど、一本の竹をできる限り多用途に利用する取り組みを進めている。そして、今回竣工したTAKE TORI HOUSEは、実際にそれらを「見て、触れて、体感する」ための場所である。

竹製品の端材と竹のオガ炭、間引き竹から製品化されたメンマ
竹製品の製造過程で生じる端材からつくられる竹のオガ炭と、間引かれた竹を活用したメンマ。一本の竹をできる限り多用途に活用する取り組みが進められている

竹には一本一本異なる模様や色、触感があるのだが、工業素材の均質性とは異なる微細な揺らぎが、空間に独特の表情をもたらす。

サステナブルであることがラグジュアリーの価値になる

これまで、ラグジュアリーな住空間を象徴してきたのは、希少材、大理石、金属、レザーといった素材である。しかし近年、世界のインテリアデザインでは「何を使うか」と同時に、「なぜその素材を使うのか」が重視されるようになっている。

2026年のミラノデザインウィークでも、Bentley Homeは新コレクションにおいて、天然素材や触感、長く使えること、環境負荷の低減を重視した。高級家具の世界でも、サステナビリティは美しさやクラフツマンシップと並ぶデザイン要件へと入りつつある。

環境配慮のために意匠を犠牲にするという発想から一歩進み、素材の来歴や循環性そのものを意匠の価値へと転換する考え方が生まれている。

この視点から、「竹」という素材を改めて考えてみると、成長が早く、適切に管理すれば継続的な利用が可能であり、さらに日本の文化や建築、工芸とも深いつながりを持つことが見えてくる。また、均質化された人工素材とは異なる手触りや表情を持っている。

環境負荷という数値だけでなく、触覚、経年変化、地域性、ストーリーまで含めて素材を選ぶ。その行為自体が、現代のラグジュアリーと交差する。

竹材でつくられた座椅子と卓を配したTAKE TORI HOUSEの和室
竹材でつくられた座椅子と卓。自然素材ならではの色や木目、手触りの違いも、竹を住空間へ取り入れる魅力のひとつとなる

「放置竹林」を資源へ。竹がつくる新たな循環

TAKE TORI HOUSEにはもう一つ重要なテーマがある。

日本各地で問題となっている放置竹林をどうすべきかという課題だ。管理されなくなった竹林は周辺の森林や農地へ広がり、生態系や景観に影響を与える場合がある。一方、伐採だけを繰り返しても問題の根本的な解決にはつながりにくい。

必要なのは、伐採された竹を継続的に利用できる「需要」をつくることだ。

建材、家具、インテリア、アメニティ、食品、炭など、竹の出口を増やし、伐採から加工、製品化、販売までを経済活動として循環させる。アステップは、そこまでを含めた竹資源循環モデルの構築を目指している。ただし、現時点で同社製品に使われている竹は、品質と供給量を安定させるため、中国福建省のFSC認証竹が中心となっている。

今後は海外の認証竹による安定供給と、日本各地の竹を活用する地域循環を組み合わせ、国産竹を継続的に利用できる仕組みをつくっていく計画だ。

竹を建材、日用品、メンマ、炭、パルプなどへ活用する竹資源循環モデル
竹の部位や成長段階、加工時に生じる端材までを、集成材、生活用品、メンマ、炭、パルプなどへ展開する竹資源活用のイメージ。竹に継続的な需要を生み出すことで、資源循環につなげることを目指す

サステナビリティを語るうえでは、単に「自然素材だから環境に優しい」と結論づけるのではなく、産地、加工、輸送、耐久性、廃棄まで含めたライフサイクルを見る必要がある。

この点でもアステップは、竹製ホテルアメニティやカトラリーについて、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄までの温室効果ガス排出量を把握するCFP(カーボンフットプリント)の算定を進めている。

高級ホテルや邸宅だからこそ、素材の背景を考える

TAKE TORI HOUSEの取り組みをLWL onlineの視点から見ると、とりわけ興味深いのがホテルや高級住宅との接点だ。

ラグジュアリーホテルでは、ゲストが触れる家具やアメニティ、壁面、床、照明まで含め、空間を構成する一つひとつの要素がブランド体験をつくる。

そこに竹を採用する意味は単なる「プラスチック削減」にとどまらない。触れたときの感覚、自然素材ならではの微細な違い、地域や文化とのつながり、さらにその素材を使うことによって生まれる資源循環。そうした背景を知ることで、ひとつの家具やアメニティの体験価値は変わる。

高級住宅も然り。設備や家具の価格、素材の希少性だけで住まいの価値を測るのではなく、その空間をつくる素材が、どのような社会や環境とつながっているかを選択することもまた、住まい手の価値観を示すようになる。

「使うこと」が環境を守る。サステナブル・ラグジュアリーの未来

TAKE TORI HOUSEは完成形ではなく、竹の用途を広げるための実証拠点として位置づけられている。今後はホテル・旅館、住宅、店舗、オフィス、公共施設などへの竹建材・家具の展開を進め、大学や研究機関とも連携しながら耐候性や耐久性の検証を続けていくという。

もちろん、竹を使えば自動的にサステナブルになるわけではない。耐久性や加工方法、輸送距離、メンテナンス、製品寿命まで含めた検証が必要になる。

それでも、TAKE TORI HOUSEが提示する「竹を使うことで竹の需要をつくり、資源の管理へつなげる」という考え方はさらに注目されていく可能性がある。

竹という古くから存在する素材を、現代の建築とインテリアの文脈から捉え直すTAKE TORI HOUSE。サステナブルとラグジュアリーを接続する、新しい素材選択の実験として注目したい。

TAKE TORI HOUSE公式サイト

TAKE TORI HOUSEブランドブック(PDF)

竹材を天井や床などに使用したTAKE TORI HOUSEのエントランス
約1,000㎡、重量27t相当の竹建材を活用した「TAKE TORI HOUSE」。建築から家具、生活用品まで、竹の可能性を体感できるショールーム兼実証施設として千葉県船橋市に竣工した
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