ジオ・ポンティの思想を住まいに置く。Molteni&C「GIO PONTI OBJECTS」日本発売

 取材/LWL online編集部

Molteni&Cが建築家ジオ・ポンティのデザイン思想を受け継ぐオブジェコレクション「GIO PONTI OBJECTS」を発売した。展開場所は、東京・南青山のパラッツォ・モルテーニ東京。アルフレックスジャパンが国内販売を手がける。

コレクションは単なる名作の復刻ではなく、建築と家具、そして日々の暮らしに寄り添う小さな器物までを、ひとつの美意識のもとで結び直そうとしたジオ・ポンティの視線そのものだ。
住まいを機能の集積ではなく、思考と感性が静かに立ち上がる場として捉える人にとって、本コレクションはきわめて示唆に富む提案といえるだろう。

建築家ジオ・ポンティが見ていた、暮らしというひとつの全体

1891年にミラノで生まれたジオ・ポンティは、20世紀イタリアを代表する建築家であり、デザイナーであり、編集者であり、舞台美術家でもあった。

代表作として知られる《ピレリ高層ビル》や《スーパーレジェーラ》を見ればわかるように、彼の仕事には構造的な明晰さと軽やかさ、そして生活空間への深いまなざしが一貫して流れている。

ポンティにとって、建築と家具とオブジェは別々の領域ではなかった。いずれも、人がどのように生き、どのように住まうかを形にするための創造である。だからこそ今回の「GIO PONTI OBJECTS」も、単に愛らしい小品の集まりとしてではなく、建築的思考を宿した「住まいの断片」として見るべきだろう。

©Gio Ponti Archives – Archivio Storico Eredi Gio Ponti
1891年 ミラノ生まれ。ミラノ工科大学卒業後、建築設計事務所を設立。1923年 磁器メーカー<リチャード・ジノリ>(当時)のアートディレクターに就任。1928年 建築誌 <domus>を創刊。以降、建築、デザイン、編集、舞台美術など、多岐にわたる 分野で数多くの作品を手がける。代表作に<ピレリ高層ビル>、<スーパーレジェーラ>など。近年、再評価が進み複数のメーカーから家具、プロダクトの復刻が進められている

「GIO PONTI OBJECTS」が映し出す、小さな建築としてのオブジェ

本コレクションはジオ・ポンティの膨大なアーカイブに含まれる250点超のデザインオブジェの中から選び抜かれた8点で構成される。素材はステンレススチール、木、セラミック。そこには、ポンティの探究的で実験的な姿勢が、現代の暮らしにふさわしいかたちで蘇っている。

いずれも「装飾品」という言葉には収まりきらない。彫刻のように空間の重心を変えるものもあれば、花器やキャンドルホルダーのように使うことで完成するものもある。共通しているのは、どのオブジェも置かれた瞬間に周囲との関係を更新し、室内の見え方そのものを変えていく点にある。

テーブルの上にひとつ置かれたオブジェが、壁面の静けさや光の角度、家具の輪郭、さらにはそこにいる人の所作にまで影響を及ぼしていく。そうした働きは、まさに小さなスケールで行われる建築的な介入に近い。

幾何学と遊び心が同居する8つの造形

たとえば「LA MANO(ラ・マーノ)」は、一枚の金属板から立ち上がる「手」のフォルムが強い印象を残す作品だ。ユーモラスでありながら、どこか緊張感も漂わせるその造形は、空間に軽やかな違和感をもたらす。ジュエリースタンドとしても機能するが、その魅力はむしろ、実用品と彫刻のあわいに立つ曖昧さにある。

LA MANO(ラ・マーノ)

「POMPEI(ポンペイ)」は、キャンドルホルダーとしても花器としても成立する、多機能で象徴的なオブジェである。わずか3点で支えられた姿は大胆で、建築構造を思わせる均衡の美しさをたたえる。

POMPEI(ポンペイ)

「CAVALLO(カヴァッロ)」や「COLOMBO(コロンボ)」は、折り紙を思わせる簡潔な造形によって、動物の姿が軽やかに立ち上がる。平面の金属板が、わずかな操作によって生命感を帯びていくそのプロセスには、ポンティ特有の自由な発想と洗練が見てとれる。

CAVALLO(カヴァッロ)
COLOMBO(コロンボ)

一方で、「BUCCHERO(ブッケロ)」は古代エトルリアの技法を想起させる深い黒の陶器として、時間の厚みを現代空間に呼び込む。

BUCCHERO(ブッケロ)

「BOTTIGLIE(ボッティリエ)」は異なる木材と仕上げのコントラストを通じて、木という素材の表情そのものを可視化する。

BOTTIGLIE(ボッティリエ)

「7 TUBI(セッテ・テゥービ)」は7本の金属チューブを異なる高さで束ねた構成によって、強い建築性と物語性を感じさせる。

7 TUBI(セッテ・テゥービ)

そして「ARCHITETTURA(アルキテットゥーラ)」は、六角形のフォルムによってポンティの代表作《ピレリ・タワー》を思わせる、まさに建築家らしい視点から生まれたトレイである。

ARCHITETTURA(アルキテットゥーラ)

ラグジュアリーな空間に必要なのは過剰さではなく「置かれた意味」

ラグジュアリーな住まいに必要なのは、単純な高級感の演出ではない。むしろ重要なのは、そこに置かれたものが空間の秩序を乱さず、それでいて確かな緊張感と余白を生み出すことだ。視線を奪うために存在するのではなく、空間全体の品位をそっと引き上げること。その繊細な役割を果たせるものはそう多くない。

「GIO PONTI OBJECTS」はまさにそうしたオブジェのコレクションである。
主張しすぎることなく、しかし確実に空間の密度を変えていく。インテリアを「ものの配置」ではなく、「思想のある風景」として考える人にとって、このシリーズは非常に魅力的な提案となるはずだ。

Molteni&Cが継承してきた、ジオ・ポンティという遺産

Molteni&Cは2012年、ジオ・ポンティの相続人との正式な合意のもと、「ジオ・ポンティ・コレクション」を開始した。他社にライセンスされている製品を除き、ポンティが手がけた家具を世界で独占的に復刻・展開する取り組みである。

本プロジェクトは、家具にとどまらず、建築、デザイン、応用美術、出版など、50年以上にわたるポンティの創作活動に改めて光を当てるものでもあった。今回の「GIO PONTI OBJECTS」は、その流れをさらに押し広げる試みといえる。家具よりも小さなスケールでありながら、そこに込められた問いは決して小さくない。建築とは何か。暮らしの美しさとは何か。空間はどこまで繊細に編集しうるのか。そうした問いが、8つのオブジェに凝縮されている。

ジオ・ポンティ・コレクションのひとつ、ラウンジチェア「D.154.2」。2024年に栄誉あるCOMPASSO D’ORO 賞を受賞。

ジオ・ポンティの視線を東京の住空間へ

「GIO PONTI OBJECTS」は、2026年4月1日よりパラッツォ・モルテーニ東京で販売が開始された。すべての製品には、真正性を証明する鑑定書とシリアルナンバーが付される。

空間の印象は大きな建築要素だけで決まるわけではなく、むしろ最後に空気を整えるのはこうした小さな存在であることも多い。

ジオ・ポンティが見つめていたのも、まさにそうした繊細な領域だったのだろう。
建築、家具、オブジェをひとつづきの風景として捉える視線。その静かな知性を、Molteni&Cは今あらためて、日本の住まいへと差し出している。

GIO PONTI OBJECTS

パラッツォ・モルテーニ東京

東京都港区南青山5-16-10営業時間:11:00〜18:00
定休日:水曜、祝日
※予約制

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    LWL online 編集部

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