奈良祐希《Bone Flower Luminous》がUESHIMA MUSEUMに登場。「時のうつほ」で見る陶芸と建築の融合

 取材/LWL online編集部

陶芸家・建築家の奈良祐希による新作《Bone Flower Luminous》が、東京・渋谷のUESHIMA MUSEUMで開催中の茶陶と現代陶芸展「時のうつほ」に登場した。2025年大阪・関西万博のパブリックアート《Prayer Vessel(祈器)》から展開した作品で、アルミニウムと光によって、奈良が追求してきた「建築と陶芸の融合」をさらに空間へと拡張する。「器」の内側にある「空=うつほ」を、建築や光の体験へと読み替える新作を紹介する。

奈良祐希とは? 陶芸と建築を横断する陶芸家・建築家

奈良祐希は、360年以上続く茶陶の名窯・大樋焼の系譜に生まれ、東京藝術大学で建築、多治見市陶磁器意匠研究所で陶芸を学んだ、陶芸家であり建築家だ。

自身の制作において掲げてきたのが、「建築と陶芸の融合」というテーマである。

建築には設計者の意図によって秩序を与えながら、そこに偶然性や「揺らぎ」を取り込む。一方、土や火など予測できない要素を伴う陶芸には、建築的な設計の思考を持ち込む。建築と陶芸、デジタルとアナログ、意図と偶然。その境界を往復することで、新しい造形を生み出してきた。

そのテーマにおける代表作のひとつが〈Bone Flower〉シリーズだ。

薄い面が連続しながらひとつの器のような輪郭をつくり、外側と内側、物質と空間との境界を曖昧にしていく。その作品はヴィクトリア・アンド・アルバート博物館や金沢21世紀美術館にも収蔵されている。

奈良祐希《Bone Flower Luminous》とは? 大阪・関西万博《Prayer Vessel》から展開

アルミニウムと光が生み出す幻想的なモアレ

今回UESHIMA MUSEUMに加わった《Bone Flower Luminous》は、2025年大阪・関西万博で奈良が手がけたパブリックアート《Prayer Vessel(祈器)》から展開した2026年の新作である。

従来の陶による〈Bone Flower〉とは異なり、作品を構成するのはアルミニウム板。研磨によって独特の光沢を与え、アルマイト処理と電解着色を施す。複数の金属板は、隣り合う板同士が結びつき、互いを支え合うことで、ひとつの構造として成立する。

表面に光が当たると、金属板の反射が重なり合い、見る位置によって複雑なモアレが現れる。作品は固定されたひとつの表情を持つのではなく、鑑賞者の位置によって絶えず変化する。

光もまた、作品を構成する「素材」のひとつなのである。

UESHIMA MUSEUM「時のうつほ」とは? 「器」を物体ではなく空間として見る

《Bone Flower Luminous》を理解する鍵となるのが、作品が展示される展覧会のタイトルでもある「うつほ」だ。「時のうつほ」は器をその内側に抱えられた「空」から読み直そうとする展覧会である。

器の内部にある何もないように見える場所には、水や花、光、空気、身体の動き、そして時間や記憶が入り込む。「空」は単なる空洞ではなく、何かを受け止めるための潜在的な空間になるという考え方だ。

直接的な関係性はないものの、この「空」を空虚ではなく受容のための空間として捉える発想は、内田繁が「ウツ」として論じた茶室や日本の空間文化にも通底するものがある。

展示は「沈黙」「受容」「変容」「解放」の4章で構成され、《Bone Flower Luminous》は最終章となる「解放」に置かれている。

この章では、ガラスや光、開口部などによって、器の内側と外側を隔てていた境界が次第に薄れていく。〈Bone Flower〉から《Bone Flower Luminous》へと至る流れもまた、器の内側にあった「空」が周囲の空間へ広がっていく過程として読むことができる。

UESHIMA MUSEUM「時のうつほ」展示風景 奈良祐希《Bone Flower Luminous》
茶陶と現代陶芸展「時のうつほ」の展示風景。中央に奈良祐希《Bone Flower Luminous》を配し、器と「空」の関係を空間全体で提示する

UESHIMA MUSEUM「時のうつほ」開催概要

  • 展覧会名:茶陶と現代陶芸展「時のうつほ」“UTSUHO: The Hollow of Time”
  • 会場:UESHIMA MUSEUM 6F展示室(東京都渋谷区渋谷1丁目21番18号 渋谷教育学園 植島タワー)
  • 一般公開:2026年9月2日(水)~
  • 《Bone Flower Luminous》展示開始:2026年9月16日(水)
  • キュレーター:奈良祐希
  • 開館時間:11:00~17:00(最終入場16:00)
  • 休館日:月曜。月曜が祝日の場合は開館し、翌平日休館
  • 鑑賞方法:「時のうつほ(お抹茶体験)+鑑賞セット」のチケットが必要。茶室体験は時間指定制
東京・渋谷のUESHIMA MUSEUM外観
東京・渋谷のUESHIMA MUSEUM。「時のうつほ」は6F展示室で開催されている

UESHIMA MUSEUM「時のうつほ」公式ページ

奈良祐希 公式サイト

UESHIMA MUSEUM

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