スマートホームとは?「IoTガジェット型」と「建築統合型」の違いを基礎から解説【スマートホームの基礎の基礎・前編】 Living Insight vol.17

 取材/LWL online編集部

「スマートホーム」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?

「スマートホーム」といっても、その仕組みは一様ではない。

スマート電球やスマートロックなど、IoTデバイスを後付けする「IoTガジェット型(デバイス統合型)スマートホーム」と、照明・空調・電動シェードなどを住宅設備として住宅に予め組み込む「建築統合型スマートホーム」では、設計思想そのものが異なる。
両者に優劣があるわけではなく、住宅の種類や予算、求める暮らしによって適した方法は変わる。

本記事では、スマートホームの基礎から、「IoTガジェット型(デバイス統合型)スマートホーム」と「建築統合型スマートホーム」という2つの方式の違い、メリット・デメリット、住宅タイプ別の考え方までわかりやすく解説する。なお、本記事は2回に分けての掲載となる。
今回は「スマートホームとは何か? 基礎の基礎編」である。

※アイキャッチ画像:建築統合型スマートホームの代表的な存在として世界的に知られるLutronのHomeWorksのイメージ画像。Lutron提供。

そもそも「スマートホーム」とは何か?

スマートホームは「スマホで操作できる家」だけではない

スマートホームとは、照明、空調、セキュリティ、家電などをネットワークや制御システムによって連携させ、操作を簡単にしたり、自動化する住宅のことだ。

勘違いされがちだが、スマートホームとは必ずしも「スマートフォンで家電を操作できる家」を意味するわけではない。そもそもスマートフォンが登場する前、1990年代からスマートホームは北米の高級レジデンスを中心に普及してきた。スマートフォンでの操作がスマートホームに入ってきたのは、iPhoneが登場した00年代の終わりの頃だ。

スマートフォンから照明をON/OFFするのは「遠隔操作」である。それに対して、人が帰宅したことをセンサーが検知してトリガーとなり、時間帯や周囲の明るさに応じて調光調色された照明が灯り、空調が快適な状態に自動的に整えられることは「自動化」である。

スマートホームには、「操作する」→「複数の機器を連携させる」→「暮らしに合わせて自動化する」という段階がある。スマートフォンでの操作は「操作する」のみに相当する。

スマートホームの操作・連携・自動化の3段階を示した図
「操作する家」から「暮らしに合わせて動く家」へ。スマートホームは、個々の機器を人が操作する「CONTROL」から、複数設備をまとめて動かす「INTEGRATION」、さらに暮らしに合わせて住宅設備を自動制御する「AUTOMATION」へと発展していく
生成AIを使用して作成

この3つの段階の違いを理解すると、スマートホームという言葉の意味がぐっとわかりやすくなる。

なお、「スマートホーム」と似た言葉に「ホームオートメーション」がある。両者は重なる部分も多いが、スマートホームがネットワークにつながった機器や住宅設備を含む住環境全体を指す広い概念であるのに対し、ホームオートメーションは、照明や空調、シェードなどを条件に応じて自動化することを指す。

「スマートホーム」が『何がつながっているか』まで含む概念だとすれば、「ホームオートメーション」は『住宅設備や機器がどう動くか』に重点を置いた言葉だと考えるとわかりやすい。

スマートホームには大きく2つのタイプがある

IoTガジェット型と建築統合型スマートホームの違いを示した比較図
スマートホームには、大きく異なる2つのアプローチがある。IoTガジェット型スマートホームはスマート機器を住宅に追加する「DEVICE-FIRST」、建築統合型スマートホームは照明・空調・シェードなどを住宅設備として統合する「HOME-FIRST」を考えの起点としている
生成AIを使用して作成

IoTガジェット型(デバイス統合型)スマートホームとは?

スマートホームのうち、もっとも身近なのが、スマートデバイスを住宅に追加していく方法だ。スマートフォンのアプリや、スマートスピーカーでデバイスを操作する「スマートホーム」がここに相当する。

スマート電球、スマートプラグ、スマートロック、ネットワークカメラ、スマートリモコン、スマートスピーカー、ロボット掃除機などを住宅に追加するケースである。

基本的にはインターネット環境を利用して、簡単操作を実現する。

既存住宅や賃貸住宅でも導入しやすく、自分で購入して設置する、DIYが基本となる。必要な場所やデバイスから少しずつスマート化できることも大きなメリットだ。

Amazon Alexa、Google Home、Apple Homeなどのプラットフォームを使えば、複数のデバイスを一つの操作環境へまとめることもできる。異なるメーカーの対応機器を連携しやすくする共通言語「Matter」は、こうしたデバイス間の相互運用性を高めるための重要な規格として位置付けられている。

このタイプのスマートホームは「住宅にスマートな機器を追加」して、「インターネットを通じてデバイスを操作する」ことがベースにある。

スマートスピーカーやスマートロックなどIoTスマートホーム機器のイメージ
スマートスピーカー、スマートプラグ、スマートロック、ネットワークカメラなど、後付けできるIoTデバイスを組み合わせて住宅をスマート化するのがIoTガジェット型の基本的なアプローチだ
Image:ST.art /Shutterstock.com

建築統合型スマートホームとは?

もう一つが、住宅そのものをシステムとして設計する「建築統合型スマートホーム」だ。

照明、空調、床暖房、換気、電動シェード、セキュリティ、AVなどを、それぞれ独立した機器としてではなく、住宅設備全体として連携させる。

たとえば「映画を見る」という一つのシーンを実行すると、照明が暗くなり、シェードが閉まり、AV機器が起動する。
「外出」というシーンであれば、たとえば電気錠がロックされたことをトリガーにして、照明や空調がOFFになり、電動シェードが降り、必要に応じてセキュリティが作動する。

LutronやCrestronなどの住宅制御システムや、欧州を中心に住宅・建築制御で広く使われるKNXなどのプロトコルが、こうした建築統合型スマートホームを考える際に登場する技術となる。

基本的な発想はIoTガジェット型とは逆だ。「住宅にスマートな機器(デバイス)を追加する」のではなく、「住宅自体をスマート化する」、あるいは「スマートに設計する」のである。

電動シェードと照明を統合した建築統合型スマートホームのリビング
建築統合型では、照明、空調、電動シェードなどを個別の機器ではなく、住宅設備全体として設計・制御する。自然光と人工照明を組み合わせた環境制御も、その代表的な例となる。画像は建築統合型スマートホームの代表格であるLutronのHomeWorksのイメージ。HomeWorksは自然光と人工照明を組み合わせた光のエコシステムと、空調制御を連動してコントロールできる
画像提供:Lutron

IoTガジェット型(デバイス統合型)と建築統合型の違いを比較

両者の違いを整理すると、次のようになる。

比較項目
IoTガジェット型
(デバイス統合型)
建築統合型
基本思想
スマートデバイスを住宅に追加する
住宅設備そのものを統合する
導入時期
入居後でも導入しやすい
新築・大規模リノベーション時に計画しやすい
初期費用
比較的抑えやすい
比較的大きくなりやすい
導入方法
DIYで導入できる製品も多い
専門的な設計・施工が基本
インターネット
クラウドを利用する製品が多く、インターネットへの依存度は比較的高い。一方、ローカル制御に対応する製品・規格もある
主要な制御を住宅内のローカル環境で完結させる構成が多い。遠隔操作や外部サービスとの連携などを行う場合はインターネットを利用する
自動化
アプリやスマートホームプラットフォームを中心に設定
照明・空調・シェードなど住宅設備全体を横断して設計
デザイン
デバイスや操作機器が室内に増える場合がある
機器や操作部を建築・インテリアに溶け込ませやすい
更新・交換
機器単位で交換・アップデートしやすい
長期運用を前提としたシステム設計が重要
向いている住宅
賃貸住宅、既存マンション、既存戸建てなど
新築注文住宅、高級住宅、別荘、大規模リノベーションなど

もちろん、これは明確な境界線ではない。現在では両方を組み合わせたサービスもある。
また、一見建築設備と一体化して見えるサービスでも、実際の制御基盤はIoTデバイスを組み合わせた構成となっている場合もある。

IoTガジェット型スマートホームのメリットとデメリット

IoTガジェット型スマートホームの最大のメリットは導入のしやすさだ。

既存住宅や賃貸住宅でも始められ、スマート電球一個からでもスマートホームを体験できる。予算に合わせて段階的に増やせるうえ、新しいデバイスへ交換しやすい。

テクノロジーの進化が速い分野では、この「交換しやすい」という特徴は大きな利点になる。

ただし、デバイスを増やしていくほど、システムが複雑になる場合もある。

照明には照明のアプリ、カメラにはカメラのアプリ、ロボット掃除機には掃除機のアプリ、と管理環境が分かれてしまうケースもある。プラットフォームによってまとめられたとしても、それぞれの機器が持つ機能すべてを横断的に使えるとは限らない。一つひとつの機器はスマートでも、住宅全体がスマートになっているとは限らない。

また、大半のコンシューマー向けIoTサービスではクラウドを利用するため、インターネット接続への依存度が高くなる。IoTだから当たり前といえば当たり前だが、クラウドを使用していることの危うさは知っておくべきである。以前LWL onlineに掲載したInsteon事件に関する記事をリンクしておくので、是非ともお読みいただきたい。

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建築統合型スマートホームのメリットとデメリット

建築統合型スマートホームの最大の特徴は、住宅全体を一つの環境として考えられることにある。

照明だけ、空調だけを個別に操作するのではなく、「朝」「外出」「帰宅」「食事」「映画」「就寝」といった人の生活を起点に、複数の設備を連携して操作する。

センサーを組み合わせれば、操作そのものを減らすことも可能になる。在室状態、照度、室温・湿度などの情報を住宅が受け取り、時間や緯度・経度を考慮して、必要な設備を自動的に調整するようになれば、毎回スマートフォンを取り出したり、音声で命令したりする必要すらなくなる。

高度になるほどテクノロジーが前面に出るのではなく、むしろ見えなくなる。

LWL onlineがこれまで「Invisible Technology」と呼んできた考え方にもつながる。

一方で、導入には専門的な知識が必要となる。また、新築や大規模なリノベーションであれば計画しやすいが、完成後に大幅な変更を行うのは難しい。

なお、建築統合型スマートホームでは、主要な制御を住宅内のローカル環境で完結させる構成が多い。その場合、インターネットは遠隔操作や状態確認、外部サービスとの連携などに限って利用することになる。

どちらを選ぶ? 住宅タイプ別に考えるスマートホーム

住宅の条件によって考えるとわかりやすい。

賃貸住宅・既存住宅の場合

賃貸住宅なら、原状回復が容易なIoTデバイスが中心になるだろう。

既存マンションや既存戸建ても、まずはスマートロック、照明、カーテン、空調などから段階的に導入する方法が現実的だ。

新築住宅の場合

新築住宅では少し考え方が異なる。住宅完成後には変更しにくい照明、空調、シェードなどについては、設計段階からスマート化を検討する意味は大きい。

注文住宅・高級住宅・別荘の場合

注文住宅、高級住宅、別荘などでは、照明、空調、シェード、セキュリティ、AVなどを建築設備として横断的に設計する建築統合型スマートホームとの相性がよい。

ただし、すべてを建築に統合する必要はない。

ロボット掃除機やスマート家電のように製品の進化が速く、数年単位で買い替える可能性があるものまで住宅設備として固定する必要はない。

長期間使う住宅インフラは建築統合型スマートホームとして新築時やリノベーション時に設計を行い、ロボット掃除機など進化の速い機器はIoTデバイスとして、建築統合型スマートホームには後からMatterなどを使って接続する。このように役割を分ける方法もある。

スマートホーム設備を備えた現代的な戸建住宅の外観イメージ
新築や大規模リノベーションでは、照明、空調、シェード、セキュリティ、エネルギー管理などを、建築計画の段階からスマートホームの一部として考えることができる
Image:Slavun /Shutterstock.com

「何を操作できるか」ではなく、「どんな暮らしを実現したいか」から考える

スマートホームを考えるとき、つい「スマートフォンから何を操作できるか」に目が向きがちだ。しかし、冒頭で述べたように、そもそもスマートホーム自体、スマートフォンが登場する前から高級住宅に導入されてきた。

本来最初に考えるべきなのは、スマートフォンで何を操作するかなどではなく、朝起きた時や帰宅した時に、住宅はどのような状態になっていてほしいのかなど、暮らしをまず先に考え、その実現手段としてIoTデバイスや住宅制御システムを選ぶ。

スマートホームは、究極的には、人が住宅を操作する回数そのものを減らし、住宅が暮らしに自然に寄り添うことなのかもしれない。

スマートホームは、本当はもっと細かく分類できる

ここまで、スマートホームを「IoTガジェット型(デバイス統合型)」と「建築統合型」という二つの大きな考え方から見てきた。

スマートホームをデバイス側から見るのか、住宅側から見るのかという、発想の起点が両極なので、わかりやすいため、あえて二つに分けて解説したが、現実のスマートホームは、この二つに明確に分かれているわけではなく、より細分化してカテゴライズした方が適切な場合もある。

一台のスマートデバイスから始まり、複数機器の連携、センサーによる自動化、照明や空調などの設備制御、さらに住宅全体の統合へと、その間にはいくつもの段階が存在する。

また、「後付けか、建築と一体化しているか」「デバイスが中心か、住宅そのものが中心か」「人が操作するのか、住宅が自律的に動くのか」という複数の視点から見る必要もある。

次回は、スマートホームをさらに細分化したLWL online独自の「6段階分類+3つの軸」から、現在のスマートホームの全体像を読み解いていく。

FAQ:スマートホームについてよくある質問

Q. スマートホームとは何ですか?

照明、空調、セキュリティ、家電などをネットワークや制御システムで連携させ、操作の簡略化や自動化を行う住宅のシステム、あるいは仕組みを指します。スマートフォンから機器を操作するだけでなく、センサーなどを利用して住宅側が自動的に環境を調整する仕組みも含まれます。

Q. スマートホームにはどんな種類がありますか?

スマート電球やスマートロックなどのIoTデバイスを後から住宅に追加する「IoTガジェット型(デバイス統合型)スマートホーム」と、照明・空調・シェードなどの住宅設備を統合する「建築統合型スマートホーム」に分けられます。ただしこの区分はおおまかなものであり、より詳細に分けて考えた方が適切な場合があります。

Q. スマートホームは後付けできますか?

可能です。IoTガジェット型(デバイス統合型)スマートホームであれば、スマート電球、スマートロック、スマートリモコンなどを既存住宅や賃貸住宅に導入することは比較的容易です。ただし、照明回路や空調などを住宅設備として統合する建築統合型スマートホームは、新築やリノベーションの設計段階から検討する必要があります。

Q. スマートホームにはインターネットが必要ですか?

製品やシステムによって異なります。クラウドサービスを利用するIoTデバイス型スマートホームではインターネット接続は必須になります。建築統合型スマートホームでは、住宅内のローカルネットワークや専用の制御システムを利用して、主な設備の制御はローカルネットワーク内で完結させます。

Q. 新築なら建築統合型スマートホームにするべきですか?

必ずしもすべてを建築統合型にする必要はありません。照明、空調、シェードなど長期間使用する設備は設計段階から検討し、ロボット掃除機やスマート家電など更新サイクルの短いものはIoTデバイスとして利用する、といった組み合わせも考えられます。
また、ラグジュアリー住宅の場合は、住空間のデザインや設備との一体性、操作部を目立たせない設計、長期運用まで含めて検討する必要があります。そのため、照明や空調、シェードなどについては、建築統合型を設計段階から検討する意味が大きい。

Q. IoT型スマートホームと建築統合型スマートホームは併用できますか?

できます。むしろ住宅設備と家電では製品寿命や更新周期が異なるため、用途によって両者を使い分ける方法は合理的です。住宅の基盤となる設備と、交換しやすいデバイス=家電の役割を分けて考えることは重要です。

Q. スマートホームを検討するとき、最初に決めることは何ですか?

最初から製品を選ぶのではなく、「どのような暮らしを実現したいか」を整理することが重要です。帰宅、外出、食事、映画、就寝など、生活の場面ごとに住宅に何をしてほしいのかを考えると、必要な設備やシステムを判断しやすくなります。

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