ガウディ展2026、渋谷で11月28日開幕。自筆図面・家具160点に見る「総合芸術」
取材/LWL online編集部
スペインを代表する建築家アントニ・ガウディの没後100年を記念する「アントニ・ガウディ. 建築と芸術 : 没後100年特別展」が、2026年11月28日から2027年1月27日まで、東京・東急プラザ渋谷で開催される。自筆の建築図面や立体模型、オリジナルの家具、装飾鉄細工など160点を公開。サグラダ・ファミリアやカサ・バトリョなどの代表作をたどりながら、建築・インテリア・自然光・通風を一体として構想したガウディの「総合芸術」の思想に迫る。
建築・家具・装飾を一体で設計。ガウディが追求した「総合芸術」とは
アントニ・ガウディ(1852~1926年)は、サグラダ・ファミリアやカサ・バトリョ、カサ・ミラなど、数々の独創的な建築を生み出したスペイン・カタルーニャ出身の建築家だ。ガウディが手がけた7件の建築作品・関連部分が、「アントニ・ガウディの作品群」としてユネスコ世界遺産に登録され、没後100年を迎える現在も、世界の建築・デザイン界に大きな影響を与え続けている。
ガウディの建築といえば、波打つような曲線、自然界の造形を思わせる柱や天井、色彩豊かなタイル装飾が思い浮かぶ。だが、その革新性は視覚的な造形美だけにあるのではない。
建物の構造から室内空間、家具、照明、建具、さらにはドアノブや手すりに至るまで、住まいのあらゆる要素を一体として設計したことにこそ、ガウディの本質があると言えるだろう。
ガウディの思想は、建築・工芸・芸術を統合する「総合芸術(Gesamtkunstwerk)」の思想に通じる。建築を単なる器として考えずに、空間を構成するすべての要素を連続したひとつの世界として創造するのがガウディだ。
今回の展覧会は、そうしたガウディの思想を、建築図面から家具、工芸作品までを横断して読み解く機会となる。

自筆図面や家具160点を公開。ガウディ没後100年特別展の見どころ
本展は「ガウディ・イヤー2026」の公式記念事業の一環として、カタルーニャ州政府の諮問機関「アントニ・ガウディ評議会」の協力のもと開催される。
カタルーニャ工科大学のガウディ関連アーカイブ、カタルーニャ・ラ・ペドレラ財団、カサ・バトリョ、カサ・ビセンス、バルセロナ・デザイン博物館など、主要な所蔵機関や個人コレクションから貴重な資料を集めた。
展示されるのは、自筆の建築図面、水彩画、立体模型、オリジナルの家具、装飾鉄細工など160点の作品・資料である。初期の建築プロジェクトから、実業家エウゼビ・グエルとの協働、都市住宅の代表作、そしてサグラダ・ファミリアに至るまで、その創作活動を俯瞰する。

展覧会は、チャロ・サンフアンのキュレーションによるイントロダクションと8つのテーマセクションで構成される。
なかでも建築・インテリアの観点から注目したいのが、第6セクション「都市住宅の進化」と、第7セクション「デザイナーとしてのガウディ」である。
「都市住宅の進化」では、カサ・カルベット、カサ・バトリョ、カサ・ミラ「ラ・ペドレラ」といった住宅建築に焦点を当てる。壮麗なファサードや彫刻のような屋上の造形にとどまらず、精緻な室内空間の構成や室内装飾にも目を向けることで、ガウディが暮らしの場をどのように捉えていたのかを探る。
「デザイナーとしてのガウディ」では、家具や装飾、鉄細工などの細部に宿る造形思想を紹介。建築とプロダクトデザインを分けることなく、統一された美意識によって空間を構築した、その創造の過程を浮かび上がらせる。
カサ・ミラとカサ・バトリョに見る自然光・通風の設計思想
ガウディの住宅建築を、現代の視点から捉え直すとき、もうひとつ注目したいのが「住環境の快適性」である。
例えば、バルセロナのカサ・ミラでは、建物内部に設けた2つの大きな中庭が、各住戸への自然光の導入と通風を担っている。
ガウディは、柱を主体とした構造によって室内の壁配置に自由度を持たせるとともに、採光や自然換気を建築計画に組み込んだ。中庭に面した窓には、開閉によって換気を調整できる仕組みも採用されている。
カサ・バトリョでは、中央の吹き抜けに上層階ほど濃く、下層階ほど淡い青色のタイルを用い、窓も下層階ほど大きく設計することで、各階に届く自然光の均一化を図っている。

こうした設計からは、光や風を建築に付随する条件ではなく、空間の質を決定づける重要な要素として扱っていたことが読み取れる。
自然光、換気、温熱環境、身体的な心地よさ。これらは今日のウェルネス住宅においても重要な設計テーマとなっている。
ガウディの建築を現代の視点から見直すことは、テクノロジーの高度化だけでは実現できない、住まいの本質的な快適性を考えることにもつながるのだ。
人間の身体に寄り添う家具とディテール。ガウディのデザイン哲学
ガウディのデザインには、自然界の造形に対する深い観察とともに、人間の身体への関心が見て取れる。
代表的な住宅建築では、手すりやドアノブ、家具の曲面などにも独自の造形が取り入れられている。人の手が触れることや、身体を預けることを意識したデザインでもある。

カサ・バトリョの室内では、木製の手すりや建具、ガラス、タイルなど、多様な素材と職人技が調和している。視覚的な美しさと使い勝手が両立し、建築の細部に至るまで統一された世界観が貫かれている。
現代では、建築、インテリア、家具、照明、設備などが、それぞれ異なる専門分野として設計・選定されることも多い。しかし、ガウディはそれらを分断することなく、人が触れ、動き、過ごす空間の一部としてデザインした。

建築とインテリア、身体と空間との関係をどこまで丁寧に考え抜くか。その問いに、ガウディの作品はいまなお深い示唆を与えている。
ガウディの「総合芸術」が問いかける、現代のウェルネス住宅のあり方
現代の住宅は、建築とデザインに加え、照明制御、空調、音響、センサーなど、多様なテクノロジーを取り込むようになった。
とりわけ上質な住環境を目指す住宅では、機器の性能や機能だけでなく、それらが空間にどれだけ自然に溶け込み、暮らす人の快適性を支えられるかが問われている。
その意味で、ガウディが追求した「総合芸術」の思想は、現代の建築統合型スマートホームやウェルネス住宅とも無縁ではない。
ガウディの時代と現代とでは、用いられる技術も、住環境に求められる要件も大きく異なる。しかし、構造・機能・美を分け隔てることなく、住まい全体をひとつの環境として設計する姿勢には、時代を超えた共通性がある。
没後100年という節目に開催される今回の特別展は、ガウディの独創的な造形世界を鑑賞するだけでなく、建築と暮らしの関係を改めて考える機会となるだろう。
建築家やインテリアデザイナーはもちろん、これからの住宅のあり方に関心を持つ人々にとっても、見逃せない展覧会となることだろう。

「アントニ・ガウディ. 建築と芸術 : 没後100年特別展」開催概要
- 会期:2026年11月28日(土)~2027年1月27日(水)
- 会場:東急プラザ渋谷 3階 特設スペース(東京都渋谷区道玄坂1-2-3)
- 開館時間:11:00~22:30(通常の最終入場21:30)
- 休館日:2027年1月1日(金・祝)
- 年末年始の変更:12月31日(木)は17:00最終入場、1月2日(土)は20:00最終入場
- 入場方式:平日は日付指定、土日祝日は日時指定のチケットを販売。日時指定不要のスーパーパスも用意
- 早割料金(一般):平日2,300円、土日祝日2,800円(11月17日まで販売)
- 主催:CSTS
- 共催:AUREA、Brand Architects、MOAT Experience
- 公式サイト:https://gaudi100.net/
- チケット:https://w.pia.jp/t/gaudi100/
- ※東京開催後、大阪への巡回を予定。チケット料金・入場条件は券種によって異なる。
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