山梨デザインプロジェクト発表会レポート。山梨が世界に誇る技術とデザインの融合による新たな創造

fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人 

山梨の風土が育んだ技術を、現代のデザインによって新たな価値へと結び直す試みが進んでいる。東京・六本木のAXISビルで開催された「山梨デザインプロジェクト」発表会では、甲斐雨端硯本舗、貴石彫刻オオヨリ、近藤ニットの3社と、深澤直人、柴田文江らデザイナーが協働した9製品を公開。地域の歴史と職人技を、国内外のモダンラグジュアリー層に向けたプロダクトへと昇華する、その現在地が示された。

山梨デザインセンターが目指す地域活性化と新しい土産開発

今年度で2回目となる「山梨デザインプロジェクト」の発表会が、東京・六本木AXISビルで開催。デザイナー深澤直人らによるトークイベントが開催された。

山梨デザインプロジェクトは、山梨ならではの歴史、自然、技術といった土地固有の風土を“文化的テロノワール”と定義し、土産品ならでは高付加価値を発揮した新製品を、山梨の歴史と風土が培った職人と世界的なデザイナーで開発する企画。2024年11月20日に開設された山梨県立美術館付属山梨デザインセンターの理念である、デザインの力で地域の活性化や社会課題の解決を図るために新たな価値創出を目指す活動の一環だ。

右から、オーガナイザーの山梨県CDO兼山梨デザインセンターセンター長・永井一史、プロジェクトマネジメントを担う古川真由子。「デザインはユニバーサルなものですが、これからすごく大事になるのは文化的テロノワールの観点から山梨とは何なのか深掘ることです」(永井)

今年度は、甲斐雨端硯本舗、貴石彫刻オオヨリ、近藤ニットの3社が、デザイナーの深澤直人や柴田文江と組んで、9製品の開発を行った。

甲斐雨端硯本舗×深澤直人が提案する硯と文具の新しい価値

元禄3年に初代雨宮弥兵衛(あめみややへい)が、富士川支流の奥地・日蓮宗総本山に近い早川町で拾った黒石を硯にしたのが始まりという、甲斐雨端硯本舗(かいあめはたすずりほんぽ)。

雨宮弥兵衛(左)と深澤直人

深澤直人が甲斐雨端硯本舗を訪れてとくに感銘を受けたという「猿面硯(えんめんけい)」と「日月硯(にちげつけい)」に、水滴、筆、和紙を合わせて桐箱に収めて製品とした。また、スマホで済ませる現代だからこそ「かねてから作りたかった」という手帳型も製品化された。

「このようにシンプルでシャープな形を作るのは、職人にとって誤魔化しが効かないため、いちばん難しいんです」と雨宮が言えば、深澤も「このセットのために銀座の鳩居堂で作ってもらいました」と、硯単体では出せない文化的な風景についてのこだわりを語った。

貴石彫刻オオヨリ×深澤直人、水晶技術を生かしたジュエリーの可能性

金峰山一帯を中心に豊かな水晶資源を擁することから1000年に亘る研磨技術を磨いてきた山梨。工芸品として高い魅力を持ち100年の歴史を誇る貴石彫刻オオヨリが、より身近にすべくジュエリーの製作に取り組もうと2013年に立ち上げたジュエリーブランド「TO LABO(トゥラボ)」だ。

大寄智彦(左)と深澤直人

13代目にあたる大寄智彦は深澤と組むにあたり、石の中に石があるようなやり方、最高の技術力でシンプルに仕上げたら新しい技術を創造できるのではないかと思い至ったという。

「石と金属ではなくて、石と石なら組み合わせられるなと。でも、一面に艶と艶消しがあるということは普通はないんですよ。水晶とホワイトカルセドニーを合わせるのが非常に難しくて。ふたつを擦り合わせることでお互いの面を作り一体になるという下降をしています」

見れば見るほど職人技の凄さに引き込まれていくさまは、オーディオのカートリッジのコイルや針先を思い出させる。デザインと技術が協力してできあがった新しいモノというところが価値になると深澤は語った。

【ニット】近藤ニット (evam eva) ×柴田文江

創業80年以上の歴史を持つ近藤ニットは、2000年に自社ブランド「evam eva(エヴァムエヴァ)」を立ち上げ、既に天然素材を使った人気商品を多数生み出している。

今回はプロダクトデザイナー柴田文江が、もともとのエヴァムエヴァにないモノにチャレンジした。

柴田文江が登壇。近藤ニットはオンラインでの参加

「より地元っぽいものにチャレンジしたかったんです。ちょっとボリュームがあったり、違ったものを組み合わせたり、生地の合わせ目を表に出したりして、カシミヤの質感も出しました。既存のグレーのものに合わせて黄色を差し色としても使ったり、手持ちのお洋服に合わせると、またその洋服の雰囲気がすごい変わるような役目ができればいいなと思って作ったものです。純粋に買うときの欲望だけで作ったのは初めてです」

問い合わせ先

  • 山梨デザインプロジェクト
  • https://ydc.pref.yamanashi.jp/ydp/
  • 山梨県観光文化・スポーツ部観光地経営支援グループ TEL:055-223-1620
  • fy7d(エフワイセブンディー)代表

    遠藤義人

    ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。

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