世界6か国の窓装飾トレンド。Tuissの調査から読むブラインドと窓辺の自動化
取材/LWL online編集部
英国発のオーダーメイド・ブラインド/カーテンブランド「Tuiss(チューイッシュ)」が、イギリス、スウェーデン、デンマーク、スペイン、アメリカ、オーストラリアを対象とした「世界の窓辺レポート」を発表した。6か国の比較から浮かぶのは、窓装飾が色や素材を選ぶインテリアの一部に加え、採光、遮熱、断熱、プライバシーを調整する住宅設備へと進化している姿だ。北米では、Lutronの「HomeWorks」やHOMMAのシステムに象徴される電動シェードの自動化も進む。窓辺はいま、インテリア、住宅性能、テクノロジー、Invisible Wellnessを結ぶ領域になりつつある。
Tuissが世界6か国の窓装飾トレンドを調査
Tuissは2000年に英国で設立された、オーダーメイドのブラインド/カーテンブランドである。現在は世界15か国で事業を展開し、ウッドブラインド、ロールスクリーン、ローマンシェード、ハニカムシェードなど2,500種類以上を取りそろえる。日本でも事業を展開している。
今回発表した「世界の窓辺レポート」では、各国の担当者へのヒアリングをもとに、人気カテゴリーや色、素材、機能、さらにその背景にある気候や住宅事情、ライフスタイルを紹介している。
「カーテンが当たり前」とは限らない世界の窓辺
日本では、遮光カーテンとレースカーテンを重ねるスタイルが広く定着している。一方、今回調査した6か国では、日本とは異なる傾向が見られた。
今回調査した6か国では、ロールスクリーンがすべての国で人気カテゴリーの上位3位に入り、カーテンが3位以内に入ったのはオーストラリアのみだった。
イギリスではウッドブラインド、スウェーデンとデンマークではロールスクリーン、スペインではロールスクリーンと窓貼りタイプ、アメリカではハニカムシェード、オーストラリアではロールスクリーンが首位となった。
この違いを生むのが、各国の気候、建築、光に対する感覚である。窓辺には、その土地の暮らし方が凝縮されているのだ。

なお、Tuissでは公式ブログでは、8月5日より「世界の窓辺レポート」特集として、イギリス、スウェーデン、デンマーク、スペイン、アメリカ、オーストラリアの窓まわりトレンドを国別に順次公開予定とのこと。
Tuiss公式ブログ
英国と北欧に見る、自然光を美しく取り込む窓装飾
イギリスで人気を集めているのはウッドブラインドである。ビクトリアン様式の住宅などで見られる縦長の窓と、木製スラットの水平線が調和し、歴史ある空間に端正な表情をもたらす。
近年はクールグレーから、オートミール、ウォームホワイト、リネン調の生地といった温かなニュートラルカラーへ人気が移っている。北欧デザインの簡潔さと日本の自然素材感を組み合わせた「Japandi」も、英国の窓辺に影響を与えているという。
スウェーデンとデンマークでは、ロールスクリーン、ローマンシェード、ハニカムシェードが上位を占めた。
北欧は冬の日照時間が短いため、貴重な自然光を室内へ取り込みながら、夏の長い日照、睡眠、プライバシー、断熱にも対応する必要が生じる。淡い色と簡潔な形状のスクリーンは、室内の明るさを保ちながら光を穏やかに調整する。
スウェーデンの「mys(ミース)」やデンマークの「hygge(ヒュッゲ)」が表す居心地のよさも、窓辺の選択に深く関係している。窓装飾は、空間全体に温かさと落ち着きをもたらす要素として選ばれている。



スペイン、アメリカ、オーストラリアに見る窓辺の機能性
強い日差しを受けるスペインでは、多くの住宅に外付けシャッターが備わっており、日射と熱を建物の外側で遮る考え方が根付いている。
そのため室内側のスクリーンには、柔らかな光をつくることや、プライバシーを確保すること、インテリアに自然になじむことが求められる。近年はSNSでの広がりもあり、工具を使わずに設置できる窓貼り式や穴あけ不要タイプも支持を広げている。
アメリカではハニカムシェードが首位となった。セル状の構造が空気層をつくるハニカムシェードは、断熱や遮熱、省エネルギーの観点から選ばれている。
広い国土のなかに寒冷地から高温地域まで幅広い気候が存在し、大開口や高窓を持つ住宅も多い。窓辺には採光やプライバシー対策のみならず、UV対策、断熱性や遮熱性などの室温管理といった複数の役割が求められる。また、大きな窓や手の届きにくい窓を備えた住宅が多いため、電動ブラインドやスマートシェードへの関心も高まっている。
オーストラリアでは、白や温かなニュートラルカラーのロールスクリーンに、レースのウェーブカーテンを重ねるレイヤードスタイルが人気を集めている。
スクリーンが光と視線を調整し、カーテンが柔らかな質感を加える。住み替えや再販を意識した住宅市場を背景に、幅広いインテリアへ調和する普遍的なデザインも重視されている。



窓装飾は住宅性能とインテリアをつなぐ
6か国の事例から浮かび上がるのは、窓装飾が住宅の快適性を支える環境装置として選ばれていることだ。
窓は、眺望や自然光を室内へ取り込む一方、夏の日射熱、冬の冷気、眩しさ、紫外線、外部からの視線も通す。窓装飾はその境界で光、熱、視線を調整する。
ロールスクリーンの簡潔さ、ハニカムシェードの断熱性、外付けシャッターの遮熱性、カーテンとのレイヤードによる意匠性。窓の方位、開口の大きさ、部屋の用途、時間帯に応じて、これらを組み合わせることにより、室内環境の質が高まるのだ。窓装飾を家具やファブリックの一部として選ぶ視点に、住宅設備としての視点が加わりつつあるといってもいいだろう。
北米のラグジュアリー住宅で進む窓装飾の電動化・オートメーション化
窓辺の機能をさらに高めるのが、電動シェードとホームオートメーションである。
北米、とりわけ米国のラグジュアリー住宅では、大きな開口、吹き抜け、高窓、天窓が採用されることも多い。複数のシェードを手作業で調整する負担を軽減しながら、眺望、採光、プライバシー、日射熱、家具やアートの保護を両立する手段として、自動化の価値が高まっている。
Lutronが2025年12月に公表した米国調査「2026 Luxury Residential Trend Report」によると、住宅デザイナー/建築家の56%が電動シェードを最終設計に採用し、43%が顧客へ追加導入を推奨している。また、富裕層の住宅所有者の59%は、自然光を人工照明と同程度に重視すると回答した。
Lutronでは、電動シェードが寝室や浴室から、リビング、ホームオフィス、キッチンへと広がり、ラグジュアリー住宅の機能性と美観を支える重要な要素になっていると分析する。
自動化されたシェードは、季節、時間帯、太陽の位置、生活シーンに合わせて動く。朝は自然光を穏やかに取り込み、日中は眩しさや日射熱を抑え、夕方には西日から家具やアートを守り、日没後は外からの視線を遮り、室内のプライバシーを確保する。
窓辺は「開ける」「閉める」という二つの状態から、光、熱、視線、眺望を連続的に調整する領域へ変わっている。
Lutron「HomeWorks」が自然光と人工照明を統合する
北米のラグジュアリー住宅における建築統合型システムを象徴する存在のひとつが、Lutronの「HomeWorks」である。
HomeWorksは、照明、電動シェードなどのウインドウトリートメント、そして空調を連動させる住宅向けの統合制御システムである。特筆すべきは、窓から入る自然光と、照明器具がつくる人工光を一体的にコントロールできる点である。
たとえば朝には、シェードを上げながら室内照明を穏やかに点灯する。窓から十分な光が入る時間帯には人工照明を抑え、日射による熱負荷が高まる時間にはシェードを下げる。夕方から夜にかけては、シェードの位置と照明の明るさ、色調を連動させ、室内の光環境を滑らかに夜へと移行させる。
設備を一つずつ操作する代わりに、「朝」「外出」「パーティ」「映画鑑賞」「就寝」といった生活シーンに合わせて住宅全体の状態を呼び出せることは、建築統合型システムの価値につながる。

HOMMAが実装する「Built-in Intelligence」
シリコンバレー発のスマートホームとして注目を集める、HOMMAが掲げる「Built-in Intelligence」も、窓辺の自動化を住宅の基盤へ組み込む考え方である。
HOMMAのシステムは、建築、独自のハードウェア、ソフトウェア、ユーザーエクスペリエンスを一体で設計する。照明、電動シェード、空調、ドアロックなどを住宅へあらかじめ組み込み、各設備をバックグラウンドで連携させる。
人の動きや時間帯、住宅の状態に応じて、住空間に配置されたセンサーが反応する。照明やシェードが自動的に切り替わり、建物側が生活の流れに沿って室内環境を整えることで、住まい手が機器ごとのアプリを開く場面を減らす。
HOMMAは、こうした制御の思想を住宅開発の初期段階から織り込み、建築とテクノロジーを一体の商品として提供する。

窓辺に溶け込む「Invisible Technology」
LutronやHOMMAが示す窓辺の自動化は、LWL onlineが紹介してきた「Invisible Technology」と重なる。
電動シェードやブラインドのモーターやローラーは天井や窓枠へ収まり、電源や配線も建築の内部へ隠される。壁面の操作部はシンプルなキーパッドへと集約され、自動制御が適切に設計されていれば、住まい手が操作を意識する場面も少なくなる。
そこから生まれるのは、朝の柔らかな自然光、日中の眩しさを抑えた窓辺、夕方の落ち着いた明るさ、そして快適な睡眠環境である。
サーカディアンライティングについても、人工照明と自然光を一体で捉えることが重要になる。照明の明るさや色温度を時間帯にあわせ、シェードによって自然光を取り込み、拡散し、抑制する。双方を連動させることで、住宅の光環境に一日のリズムが生まれる。
技術の存在感を抑えながらも、生活の質を高める。窓辺は「Invisible Technology」を象徴する場所になりつつある。
窓辺から考える「Invisible Wellness」
LWL onlineでは、光、空気、温度、音、素材をテクノロジーによって整え、住まい手が意識しなくても心身を休めやすい環境をつくる考え方を「Invisible Wellness」という言葉で表現してきた。
窓辺は、その重要な起点となる。朝はシェードが緩やかに開いて自然光を取り込み、日中は眩しさや日射熱を抑え、夜は外部からの視線を遮る。窓装飾に照明や空調が連携すれば、一日の時間に沿って室内環境が自然に切り替わる。
LutronのHomeWorksやHOMMAのBuilt-in Intelligenceが示すのも、こうした建築統合型スマートホームの考え方である。電動シェード、照明、空調、センサーを個別に操作するのではなく、住宅全体が住まい手の行動や時間帯に応じて環境を整える。
「Invisible Technology」が技術の存在感を抑え、空間へ溶け込ませる手法だとすれば、「Invisible Wellness」は、そこから生まれる心地よさと心身の状態に焦点を当てた考え方である。
Tuissがまとめた世界6か国の窓装飾トレンドは、窓辺が色や素材を選ぶインテリアの一部であると同時に、自然光、温熱、プライバシー、睡眠環境を支える住宅設備でもあることを示している。
スマートホームでは、何を操作できるかに加え、何を操作せずに済むかという視点が重要である。光、熱、空気、視線が暮らしに合わせて静かに整う窓辺は、「便利な住宅」から「人を整える住宅」へと向かう「Invisible Wellness」を象徴する場所なのである。
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LWL online 編集部