ディオール メゾン、新作「コロール」ランプを発表。ニュールックの曲線を光のオブジェへ
取材/LWL online編集部
ディオール メゾンは2026年ミラノサローネ国際家具見本市に合わせ、フランス人デザイナー、ノエ・デュショフール=ローランスとのコラボレーションによる新作「コロール」ランプを発表した。クリスチャン・ディオールの「ニュールック」を想起させる曲線、ムラーノガラスの手仕事、そしてかご細工の技術。ファッションメゾンの美意識が、上質な暮らしの中の光へと翻訳されている。
ディオールの美意識を暮らしの空間へ広げる「ディオール メゾン」
ディオールという名から、多くの人がまず思い浮かべるのはオートクチュール、プレタポルテ、バッグ、ジュエリー、香水といったファッションの世界だろう。しかしディオールの美意識は身体にまとうものだけにとどまらない。テーブルウェア、オブジェ、ホームアクセサリーなどを通じて、暮らしの空間へと拡張されてきた領域が「ディオール メゾン」である。
単なるインテリアラインというよりも、ディオールが大切にしてきた〈アール・ドゥ・ヴィーヴル〉、すなわち暮らしの美学をかたちにする試みだと言えるだろう。クチュールが身体のシルエットをつくるものだとすれば、ディオール メゾンは日々の食卓や部屋の佇まい、光の気配を通じて、生活そのものの輪郭を整える存在だ。
今回発表された新作「コロール」ランプはその思想を象徴するようなプロダクトである。
「ニュールック」の曲線を光のフォルムへ
2026年ミラノサローネ国際家具見本市を機に、ディオール メゾンとノエ・デュショフール=ローランスは、継続的なクリエイティブな対話の新章として、新作「コロール」ランプを発表した。2019年から続く両者の実りあるコラボレーションは、2026年のサローネにおいて、新たな「コロール」ランプとして結実した。
「コロール」という名はディオールの歴史において特別な響きを持つ。1947年、クリスチャン・ディオールが初のオートクチュールコレクションで提示したラインのひとつが「Corolle(コロール)」だった。花冠を思わせる量感、ウエストを絞り、スカートが豊かに広がるシルエットは、戦後の装いに新しい優雅さをもたらし、やがて「ニュールック」として語り継がれていく。
ノエ・デュショフール=ローランスが今回のランプで試みたのは、そのクチュールの記憶を照明という空間のオブジェへと移し替えることである。
ランプの曲線はコロールスカートの特徴的なラインを想起させる。プリーツやドレープといった布の動きはガラスや竹の構造へと置き換えられ、ファッションの造形言語が、空間を照らすためのフォルムとして再解釈されている。
ムラーノガラスとかご細工。手仕事が生む、静かな存在感
新作の一部は、ヴェネチアのムラーノの伝統に基づき、手吹きガラスで製作される。ガラスは光を受け止める素材であると同時に、その表情を変える素材でもある。透明性、厚み、揺らぎ、反射。それらは機械的な均質さではなく、職人の手の感覚によって、わずかな差異を含みながら立ち上がる。
一方、別の照明器具では、かご細工の工芸が称えられている。真竹の繊維を切断し、均一なストリップに整え、精緻に編み込むことで、ベルシェイプのフォルムを形づくる。そのモチーフはディオールを象徴する「カナージュ」をも想起させる。
カナージュは、ディオールの世界において繰り返し現れるコードのひとつである。椅子の籐編みに由来する格子状の意匠は、バッグやアクセサリーにも用いられてきたが、ここでは光を透過させ、影を落とす構造として立ち現れる。装飾であると同時に、空間に陰影をもたらす建築的な要素にもなっている。





光を「置く」のではなく、空間の気配をつくる
本サイトの視点から見れば、この「コロール」ランプの魅力は、単に美しい照明器具であることにとどまらない。そこには、光を機能としてではなく、暮らしの質を形づくる要素として捉える思想が透けて見える。
明るさを確保するための器具ではなく、空間の雰囲気を整えるオブジェ。視線を集めるための装飾ではなく、室内に静かなリズムを生み出す存在。ディオール メゾンが示すのはそのような光との関係性である。 クチュールのアトリエで布が扱われるように、ここではガラスや竹、光と影が扱われる。30 モンテーニュのアトリエに通じるサヴォワールフェールは、衣服から住空間へと場を移しながらも、手仕事への敬意、素材への感受性、そして時間をかけて生まれる美しさを保ち続けている。
クチュールと暮らしの美学が交差するディオール メゾンの現在地
ラグジュアリーとは、単に高価な素材や華やかな装飾を意味するものではなく、むしろ、日々の生活のなかで何を美しいと感じ、どのような光のもとで過ごし、どのような手触りや陰影に包まれていたいのか。その感覚を丁寧に設計することが重要だ。
「コロール」ランプは、ディオールの歴史的なシルエットを参照しながら、過去の引用にとどまらず、暮らしのなかに新しい光の風景をつくり出す。ファッションメゾンがインテリアを手がける意味はここにあるだろう。身体を美しく見せるクチュールの知性が、空間を美しく感じさせるためのデザインへと変換されるのだ。
ディオール メゾンとノエ・デュショフール=ローランスによる「コロール」ランプは、光を通じてクチュールの記憶を暮らしへと結び直す、詩的なプロダクトである。
クリスチャン ディオール
TEL:0120-02-1947
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