KITOWA、LEXUSのミラノデザインウィーク2026展示にスペシャルインセンスを提供。香りが空間体験の余韻をつくる
取材/LWL online編集部
メゾンフレグランスブランド「KITOWA(キトワ)」は、LEXUSがミラノデザインウィーク2026で展開したインスタレーションに向けて、来場者のための特別なインセンスを制作した。
今回の協業は単なるノベルティや香りの演出にとどまらない。LEXUSが提示したのは、新フラッグシップ「LEXUS LS Concept」を軸に「空間の在り方」を問い直す展示群である。なかでも、日本のクラフツマンシップを宇宙的なスケールで表現する「The Crafted Cosmos」を含む「Discover Together 2026」の世界観と響き合うように、KITOWAのインセンスは、視覚や聴覚だけでは完結しない体験の余韻を担っている。
LEXUSがミラノで提示した「移動」を超えた空間体験
ミラノデザインウィークは、家具やインテリアのみならず、自動車、ファッション、テクノロジー、アートが交差する世界最大級のデザインイベントである。近年のラグジュアリーブランドにとって、ここは新製品を発表する場である以上に、ブランドの哲学や物語を空間として表現する場になっている。
LEXUSは今年、新たなフラッグシップコンセプト「LEXUS LS Concept」を起点に、モビリティを単なる移動手段ではなく、生活や感性と連続する「空間」として捉え直す展示を行った。車内空間、移動時間、個人の内面、そして未来のライフスタイル。それらを一つの体験として重ね合わせる試みである。
この文脈におけるKITOWAの「インセンス」は重要な役割を担う。香りは形としては目に見えない。しかし、空間の印象を決定づけ、体験の記憶を深く身体に残す。ラグジュアリーを素材や造形だけでなく、時間や余韻の設計として捉えるならば、その風景を完成させる最後の要素になるのかもしれない。

KITOWAが表現する日本の香り文化と現代のラグジュアリー
KITOWAは日本の香木文化を現代のライフスタイルへと接続するメゾンフレグランスブランドである。
ブランド名には「木と和」の響きが重ねられ、ヒノキ、ヒバ、クスノキといった日本の樹木の香りを軸に、空間に静けさと奥行きをもたらすプロダクトを展開してきた。
今回、LEXUSの展示のために制作されたスペシャルインセンスには、三重県産の天然ヒノキオイルが使用されており、日本固有の和木が持つ清々しさと静けさを体現している。インセンスは古来、場を清め、心を鎮め、時間の流れを整える存在として使われてきた。
また、このインセンスは日本の伝統的な包みの形式である「たとう」に収められ、パッケージには展示テーマを象徴する詩が添えられた。炎が立ち、煙がゆっくりとほどけ、香りが空間に満ちていく。その一連の所作には、現代のデジタルな体験とは異なる身体的な時間が宿っている。
LEXUSがミラノの展示を通じて未来のモビリティ空間を提示し、KITOWAがその体験の余韻を香りとして持ち帰らせる。この組み合わせは、ラグジュアリーがもはや「所有するモノ」だけでは語れなくなっていることを示している。大切なのは、どのような空間に身を置き、どのような時間を過ごし、その体験がどのように記憶されるかである。




香りはスマートウェルネスホームの次なる要素になる
今回の協業はこれからのラグジュアリーを考えるうえで、示唆に富んでいる。
これまで住空間のラグジュアリーは、家具、照明、音響、空調、素材、アートといった要素によって構成されてきた。今後はそれらを横断する「感覚の設計」というものが必要になってくるだろう。
照明は一日のリズムを整え、音は空間の気配を変え、空調は身体感覚を支える。そして香りは空間に記憶と情緒を与える。スマートホームやホームオートメーションが、単なる利便性からウェルネスや情緒的価値へと拡張していくなかで、香りもまた、空間設計の重要な要素になっていくだろう。
たとえば朝には清々しい木の香り、夜には心を鎮める落ち着いた香り。来客時、食後、入浴後、就寝前。それぞれの場面にふさわしい香りが、照明や音、温熱環境とともに切り替わるのであれば、住まいの体験はより繊細なものになる。
もちろん、香りは強すぎれば空間を支配してしまう。だからこそ、ラグジュアリーな空間においては、香りを前面に押し出すことではなく、空間の奥に静かに沈ませる感覚が求められる。KITOWAのプロダクトが持つ端正な佇まいは、その点でもLEXUSの提示する静謐なラグジュアリーと響き合う。
モビリティから住空間へ。ラグジュアリーは五感の統合へ向かう
今回のKITOWAとLEXUSの協業は、自動車ブランドとフレグランスブランドの単発的なコラボレーションとしてだけでなく、ラグジュアリーが向かう方向を読み解く手がかりになる。
ミラノデザインウィークにおいて、LEXUSはモビリティを「空間」として提示した。KITOWAはその空間体験を「香り」として日常へと持ち帰るための装置として機能した。そこにあるのは、移動、住まい、香り、記憶がゆるやかにつながる新しいラグジュアリーの姿である。
上質な空間とは、そこで過ごした時間が、身体の奥に静かに残ること。目に見えるデザインと、目に見えない感覚が重なり合い、記憶の中でひとつの風景になること。 香りはその風景を完成させる最後の要素になることだろう。
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LWL online 編集部