ディオール メゾン、「コロール」ランプのメイキングを公開。クチュールの記憶を光のオブジェへ
取材/LWL online編集部
ディオール メゾンは、2026年ミラノサローネ国際家具見本市で発表した新作「コロール」ランプについて、フランス人デザイナー、ノエ・デュショフール=ローランスによる制作過程を捉えたメイキングを公開した。
先日当サイトで紹介したように、「コロール」ランプはクリスチャン・ディオールが1947年に発表した「コロール」ライン、そしてのちに「ニュールック」と呼ばれることになる歴史的シルエットから着想を得た照明コレクションである。今回公開されたメイキングは、その造形がどのように素材へ移し替えられ、光を宿すオブジェとして立ち上がっていくのかを伝えるものだ。
ディオール メゾン、新作「コロール」ランプを発表。ニュールックの曲線を光のオブジェへ
ディオール メゾンとは何か。クチュールの美意識を暮らしへ広げる領域
ディオールという名から、多くの人がまず思い浮かべるのは、オートクチュールやプレタポルテ、バッグ、ジュエリー、フレグランスといったファッションの世界だろう。しかし、クリスチャン・ディオールが築いた美意識は身体にまとう衣服だけにとどまらなかった。
ディオール メゾンは、テーブルウェア、オブジェ、ホームアクセサリー、テキスタイル、デコレーションなどを通じて、ディオールの世界観を暮らしの空間へと拡張する領域である。そこにあるのは、フランス的なアール・ドゥ・ヴィーヴル、すなわち「暮らしの美学」を、現代の住空間の中で表現する試みだ。
クチュールが身体のシルエットをつくるものだとすれば、ディオール メゾンは、食卓、室内、手触り、香り、そして光を通じて、日々の生活そのものの輪郭を整えるものだと言える。今回の「コロール」ランプは、まさにその思想を象徴するプロダクトである。
「コロール」スカートの記憶を照明のフォルムへ
「コロール」という言葉はディオールの歴史において特別な意味を持つ。1947年、クリスチャン・ディオールが初のオートクチュールコレクションで発表したラインのひとつが「Corolle(コロール)」だった。ウエストを絞り、スカートが花冠のように豊かに広がるシルエットは、戦後の装いに新たな優雅さをもたらし、「ニュールック」としてファッション史に刻まれていく。
ノエ・デュショフール=ローランスが今回のランプで試みたのは、そのクチュールの記憶を照明という住空間のオブジェへと翻訳することだ。
布が生み出すプリーツやドレープ。身体の動きに沿って揺らぐシルエット。そうしたクチュールの造形言語が、ここではガラスや竹細工といった素材の構造へと置き換えられている。ランプの曲線は、衣服のラインをそのまま模倣するのではなく、光を受け止め、透過させ、周囲に陰影を生み出すためのフォルムとして再構成されている。
ガラスと竹。熱、冷たさ、手の反復が生むフォルム
メイキングで印象的なのは、「コロール」ランプが、きわめて繊細な手仕事の連続によって成立している点だ。
ガラスは熱と冷たさの間を行き来しながら形を得る素材である。高温で柔らかくなったガラスは、職人の息、手の動き、道具との接触によって、わずかに揺らぎを含んだフォルムへと導かれる。そこには、完全に均質化された工業製品とは異なる、手仕事ならではの微細な差異が宿る。
一方で、別のモデルでは、日本の竹細工の技術が用いられている。真竹を細く割り、均一なストリップへと整え、精緻に編み上げていくことで、ベルのようなかたちが形づくられる。そこに現れるのが、ディオールを象徴するコードのひとつである「カナージュ」だ。
カナージュは、ディオールの世界に繰り返し登場してきた格子状の意匠である。バッグやアクセサリーの装飾として知られるこのコードは、「コロール」ランプにおいて、光を透過し、影を投げかける構造そのものとなる。装飾が単なる表面のパターンではなく、空間に陰影を生み出す建築的な要素へと変化している。


ノエ・デュショフール=ローランスが引き出す有機的な形と素材の感性
ノエ・デュショフール=ローランスは、フランスを拠点とするデザイナーであり、家具、空間、オブジェなどを横断しながら活動してきた。彫刻的な造形感覚、有機的なフォルム、素材への繊細なまなざしで知られ、自然環境や文化的記憶と人間との関係を、プロダクトや空間へと落とし込んできた存在である。
ディオール メゾンとの協働は2019年から続くクリエイティブな対話でもある。今回の「コロール」ランプはその延長線上に生み出された。
デュショフール=ローランスのデザインは、強い造形性を持ちながらも、決して過度に主張しすぎない。素材の振る舞い、あるいは光の反射や影の落ち方を丁寧に受け止めながら、空間の中に静かに存在する。その姿勢は、LWL onlineが重視してきた「住空間における体験価値」の視点とも響き合う。
光を「置く」のではなく、空間の気配をつくる
「コロール」ランプの魅力は美しい照明器具であることにとどまらない。そこには、光を単なる明るさとしてではなく、空間の質を形づくるものとして捉える思想がある。
どのような陰影をつくるのか。素材がどのように光を受け止めるのか。人がその空間でどのような気分になり、どのような時間を過ごすのか。上質な住空間における照明デザインとは、機能であると同時に、感覚の設計でもある。
ディオール メゾンの「コロール」ランプは、クチュールの記憶を住空間へと移し替えながら、光そのものをひとつの素材として扱っている。ガラスの透明感、竹の編み目、カナージュが生み出す影。それらが重なり合うことで、空間には静かなリズムが生まれる。
「コロール」ランプのメイキングでは、ディオール メゾンが大切にしてきたサヴォワールフェールを、衣服から住空間へと接続する過程を映し出している。クチュールのアトリエで布が扱われるように、ここではガラス、竹、光、影が扱われる。歴史的なシルエットは、単なる引用にとどまらず、現代の暮らしの中に新たな光の風景をつくり出す。
「コロール」ランプは、6月19日より「ハウス オブ ディオール 心斎橋」および「ハウス オブ ディオール ギンザ」にて見ることができる。
製品情報
- 「コロール」ランプ
価格:¥510,000
展開開始:2026年6月19日
展開場所:ハウス オブ ディオール 心斎橋、ハウス オブ ディオール ギンザ
問い合わせ:クリスチャン ディオール
TEL:0120-02-1947
https://x.gd/8dqyq
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