調光と調色の違いとは? 住宅照明ではどっちが必要? 後悔しない選び方と美しい「シーン」のつくり方 Living Insight vol.19
取材/LWL online編集部
「調光」は照明の明るさを変える機能、「調色」は光の色を変える機能である。住宅ではまず調光を基本に、LDKなど用途が変わる空間では調色を組み合わせることで、光環境の自由度は大きく高まる。調光・調色の違いと部屋ごとの選び方、さらに両者を「シーン」として美しく制御する考え方まで解説する。
※アイキャッチ画像:住宅照明では、明るさと光色の組み合わせによって同じ空間でも異なる表情をつくることができる。画像提供:Lutron
調光と調色の違いとは?
調光と調色、まず、ふたつの違いについて、簡単に説明しよう。以下の表を見てほしい。
| 機能 | 変えられるもの | 主な役割 |
| 調光 | 光の明るさ | 明るくする/暗くする |
| 調色 | 光の色・色温度 | 電球色/温白色/昼白色などを変える |
| 調光+調色 | 明るさ+光の色 | 時間帯や用途に合わせて光環境を変える |
調光とは「明るさ」を変えること
調光とは照明の光量を調節することである。要するに明るさを変えること。
たとえばリビングなら、掃除をするときには明るく、夕食後には少し落とし、映画を見るときにはさらに暗くする。
住宅照明では「暗くならないこと」が重視されがちだが、実際の暮らしでは必要なときに十分暗くできることも重要である。昼と夜、仕事と食事、掃除とくつろぎで、必要な明るさは異なる。住宅では「どれだけ明るくできるか」に加えて、「どこまで美しく明るさを落とせるか」も考えておきたい。
調色とは「光の色」を変えること
調色は照明の光の色を変える機能である。光の色は「色温度」で表し、単位にはK(ケルビン)を使う。住宅照明では、おおむね次のような光色が使われる。
2700K前後:電球色。暖かみのある、オレンジ色に近い光。3500K前後:温白色。電球色と白色の中間に位置する光。5000K前後:昼白色。白く、すっきりとした印象の光。
色温度が低いほど暖かみが増し、高くなるほど白から青白い印象に近づくということは知っておいてほしい。
調色対応の照明ならば、こうした光色を時間帯や用途に応じて変えることができる。
住宅照明では「調光」と「調色」、どっちが必要?
調光と調色、どちらかひとつを選ぶのであれば、住宅ではまず調光を優先すると考えると、わかりやすい。ほぼすべての居室で必要な明るさが時間や行為によって変化するからだ。
それに対して、調色が有効になるのは、ひとつの空間で複数の行為を行う場合である。
ひとつの空間で異なる時間(シーン)を過ごすのであれば、光の明るさだけでなく、光色まで変えられるメリットは大きい。
図式化すると、次のようになるだろう。
「調光=明るさを暮らしに合わせる」「調色=光の性質を暮らしに合わせる」。
リビング・ダイニングこそ「調光+調色」が生きる空間
調光・調色をもっとも活用しやすい空間としてはLDKがあげられる。
現代のLDKは、朝食をとり、家事をし、リモートワークをしたり、子どもが勉強して、夕食を囲み、夜にはテレビや映画を楽しむ、というように、ひとつの空間でありながらも、さまざまな時間を過ごすことになる。
であれば、照明も一日中同じ状態である必要はない。
たとえば、朝は「明るめ+白色寄り」、日中のリモートワークでは「明るめ+白色~昼白色」、夕食時は「中程度の明るさ+暖色寄り」、食後は「暗め+電球色」、映画鑑賞は「低照度+間接照明中心+電球色寄り」といった使い分けが考えられる。

画像提供:Lutron

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調光だけでも空間の印象は変わるが、そこに調色を加えることで、同じ部屋を異なる表情へ変化させることができる。
寝室ではまず「暗くできること」を考える
LDKでは調光・調色の両者が可能な方が望ましいが、やはり空間によって両者の必要度は異なる。
寝室では調光の優先度が高い。就寝直前まで照明を最大照度で点灯しておく必要はない。
夜は全体の明るさを落とし、必要に応じてベッドサイドや間接照明を中心にする。
そのため寝室では、色温度を自在に変えられること以上に、十分な低照度まで美しく落とせることを重視したい。
もちろん、朝は明るく、夜は暗く暖かみのある光へ変化させるのであれば調色も有効である。
調光か調色か迷うのであれば、まず調光。そのうえで生活スタイルに合わせて調色を加えるという考え方が基本になる。
すべての照明を「調色」にする必要はない

Image:pozitivo /Shutterstock.com
逆に、住宅内のすべての照明を調色対応にする必要はない。
たとえば、ダイニングを食事のための空間として明確に設計するなら、暖かみのある一定の色温度に固定する方法もある。
ペンダントライトや装飾照明では、器具そのものの素材やデザイン、家具、アートなどとの関係から、光色を固定した方が空間として美しくまとまることもある。
玄関や廊下も同様である。
「リビングだから調色」「寝室だから電球色」と部屋の名前だけで決めるのではなく、「その空間で何をするのか」、「その空間はいつ使うのか」、「その空間をどのような空間に見せたいのか」という3点から考えていくのがよいだろう。
調光と調色を「時間」でつなぐ。サーカディアンライティングとは?
ここから、調光と調色をもう少し広い視点で考えてみよう。
早朝、朝、午前、昼、午後、夕方、夜、深夜。自然界の光は、一日を通して明るさも光の性質も変化する。
こうした自然界の光環境に倣って、時間帯に応じて光環境を変化させる考え方のひとつが「サーカディアンライティング」である。
人間には、およそ24時間周期で睡眠や覚醒などのリズムを刻むサーカディアンリズムがあり、光はそのリズムに関係する重要な環境要因のひとつとされている。
国際照明委員会(CIE)も、人への光の非視覚的な作用まで考慮する「Integrative Lighting」という考え方において、光はその強さやスペクトルだけでなく、いつ受けるかまで含めて考える必要があるとしている。
住宅で図式化するのであれば、「朝から昼:比較的明るい環境」「夕方:徐々に明るさを落とす」「夜:低照度で暖かみのある光」という変化をつくる考え方がひとつの基本となる。

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ここで初めて、「調光」と「調色」が時間軸によってつながる。
「朝は白く、夜は電球色」にすればいいわけではない
ただし、サーカディアンライティングを「朝は5000K、夜は2700Kにすればよい」と理解するのは単純すぎる。
人が受ける光の影響は、色温度だけでは決まらない。光の強さ、スペクトル、光を受ける時間帯、その継続時間、目に届く光量など、複数の要素が関係する。より専門的には「メラノピックEDI」のような指標も用いられる。
サーカディアンライティングとは時間と人の生活を軸に、光環境そのものを設計する考え方と捉えた方がよい。
人工照明だけでなく「昼光」まで含めて考える
住宅では、室内照明だけではなく窓から入る昼光も重要である。
日中は自然光を活用し、不足する部分を人工照明で補う。夕方以降は人工照明へと主役を移しながら、明るさと光色を変化させていく必要がある。
照明だけでなく、カーテンやブラインドまで含めると、住宅の「光」はひとつの統合された環境システムとして見えてくる。

画像提供:Lutron

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美しい照明は調光と調色を「シーン」として考える
住宅照明では、もうひとつ重要な考え方がある。調光と調色を毎回ユーザーが操作しないことである。朝になったら5000Kにする。夕食時には3000K、ダウンライトは60%にする。映画を見るときには間接照明を20%にする。
こうした操作をいちいち毎日繰り返すのは現実的ではない。そこで出てくる発想が「シーン」である。
たとえば、MORNING、DINNER、RELAX、THEATER、GOOD NIGHTといったシーンをあらかじめ設定しておく。
「DINNER」を選べば、ダイニングのペンダントは少し明るく、リビング側は低照度に移行する。
「RELAX」ならば全体を暗くして暖色系の光を中心にする。
「THEATER」ならば足元の光だけを残して、全体は暗くする。
こうして複数の照明の明るさや光色を組み合わせ、ひとつの空間として最適な状態を記憶させておく。これが「シーン」である。
GRAFIK Eye QSに見る、「照明器具」ではなく「光を制御する」という発想
こうしたシーン制御は、最近になって登場した考え方ではない。
住宅やホテル、高級レストランなどの照明設計では以前から、複数の照明回路をまとめて調光し、用途ごとに最適な状態を呼び出す「プリセット調光」という考え方が使われてきた。
代表的なシステムのひとつが、米Lutron(ルートロン)の「GRAFIK Eye QS」である。

画像提供:Lutron
GRAFIK Eye QSは、複数の照明をゾーンとしてまとめ、あらかじめ設定した「シーン」をボタンひとつで呼び出せるプリセット調光システムだ。照明だけでなく、Lutronの電動カーテン/シェードとの連携も想定されている。
住宅照明を一灯ずつ操作するのではなく、空間全体の光をひとつの「シーン」としてデザインするという考え方がその背景にある。
仮にリビングにダウンライトが8灯、間接照明が2系統、ペンダントライトが1灯あったとして、それぞれを個別に点けたり消したりするだけでは、美しい照明環境を毎回再現するのは難しい。だが、それぞれの光量や光色を設計者が整え、「DINNER」「RELAX」「THEATER」といったシーンとして記憶させておけば、ボタンひとつで同じ光環境を再現できる。
美しい照明とは、光と光の関係をコントロールすることでもある。住宅照明を考える際に、ぜひ知っておきたいポイントである。
「調光・調色」から、建築と一体化した照明制御へ
さらに住宅全体まで範囲を広げれば、照明制御は一室だけでは完結しない。Lutron HomeWorksのような住宅向け統合システムでは、複数の照明によるシーンだけでなく、電動シェードや電動ブラインドなどのウインドウトリートメントを含めた制御が可能である。たとえば「Movie Night」のシーンで照明を落とし、シェードを閉めるといった空間制御も可能だ。
時間帯による自動制御を組み合わせれば、朝になれば照明が徐々に灯り、シェードが開き、夕方には照明を暖かい状態へ移行するなど、人が一灯ずつスイッチを操作する住宅から、生活シーンに合わせて建築環境そのものが変化する住宅へと進む。
ここまでくると、調光・調色は照明器具の「便利機能」ではない。建築空間をつくるための制御技術なのである。

LED照明は「調光対応」だけを見ればいいわけではない
実際に住宅へ導入する際には、照明器具と制御方式の組み合わせにも注意が必要だ。LED照明であれば、どの調光器でも自由に暗くできるわけではない。
器具によって対応する調光方式やコントローラーが異なるため、位相制御やPWMなどの調光方式、DALIなどの制御規格について、器具とシステムの対応を事前に確認する必要がある。
特にダウンライトや間接照明を多数配置する住宅では、照明器具だけを先に決めるのではなく、「どう制御するか」まで含めて照明計画を考えることが重要になる。
結論。「調光か調色か」の先に、住宅の光をデザインするという考え方がある
調光と調色の違いはシンプルだ。調光は明るさを変えることであり、調色は光の色を変えることである。
住宅でどちらかひとつを選ぶなら、まず調光を検討したい。ただし、LDKのように時間帯によって用途が変化する空間では、調光と調色を組み合わせることで、より多様な光環境をつくることができる。
さらに、その両者を時間軸で考えればサーカディアンライティングにつながり、行為を軸に考えれば「DINNER」「RELAX」「MORNING」といったシーン制御へとつながる。
一灯ずつ照明を操作するのではなく、複数の光を組み合わせ、時間や行為に合わせて空間全体を変化させる。
調光と調色はその入口なのである。
よくある質問
Q. 調光と調色の違いは何ですか?
調光は照明の明るさ(光の出力)を変える機能。結果として照度も変化する。調色は照明の「光の色=色温度」を変える機能である。なお、照度はルクスで表し、色温度はケルビンで表す。
Q. 住宅では調光と調色、どちらが必要ですか?
どちらかひとつなら、まず調光を優先したい。ただし、LDKなど複数用途で使用する場所では、調光と調色の両方に対応させることによるメリットが大きい。
Q. リビングには調光・調色が必要ですか?
食事、仕事、団らん、映画鑑賞など複数の用途に使うリビングでは、調光・調色との相性がよい。さらに複数の照明をシーンとして制御すると、操作性も高められる。
Q. 調光・調色とサーカディアンライティングは同じですか?
同じではない。調光と調色は照明の機能であり、サーカディアンライティングは時間帯や人の生活リズムを考慮して光環境を設計する考え方である。調光・調色はその実現手段のひとつとなる。
Q. 照明の「シーン」とは何ですか?
複数の照明について、明るさや光色などをあらかじめ組み合わせて記憶させた状態のこと。「MORNING」「DINNER」「RELAX」「THEATER」など、時間帯や用途に応じた光環境をボタン操作などで呼び出すことができる。
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