ウェグナーら北欧とイタリアの名作家具が青山に集結。ロイズ・アンティークス「PARALLELS」開催
取材/LWL online編集部
イタリアの工業技術が生んだ革新的な造形と、北欧の職人技が育んだ機能美。20世紀のヨーロッパ家具を発展させた二つのモダニズムに焦点を当てた企画展「PARALLELS ―並走する二つのモダニズム。南の工場と北の工房―」が、2026年10月24日(土)から東京・青山のロイズ・アンティークスで開催される。ハンス・J・ウェグナーやオズヴァルド・ボルサーニ、ポール・ケアホルムらが手がけた名作ヴィンテージ家具を通じて、工業技術と職人技、それぞれの思想が生んだデザインの価値を見つめ直す。

イタリアの「工場」と北欧の「工房」。二つのモダニズムが青山で交差
ヨーロッパのアンティーク・ヴィンテージ家具を扱うロイズ・アンティークスが、イタリアと北欧のミッドセンチュリー家具を紹介する特別企画展「PARALLELS」を2026年10月24日(土)から東京・青山のロイズ・アンティークスで開催する。
本展のテーマは、20世紀のヨーロッパで並行して発展した二つのモダニズムだ。
第二次世界大戦後、家具デザインは大きな転換期を迎えた。イタリアでは工業化の進展によって新しい素材や製造技術が取り入れられ、それまでにない造形や機能を備えた家具が次々と生み出された。
北欧、とりわけデンマークでは、建築家と熟練した家具職人が協働するものづくりが発展する。木材の特性を活かし、使い心地や耐久性、美しさを追求する家具が生み出されていった。
工業生産による革新と、手仕事による洗練。アプローチは異なるものの、両者に共通していたのは、新しい時代の暮らしにふさわしい家具を創造しようとする姿勢だった。
本展では、こうした異なる思想から誕生した家具を同じ空間に配置することで、それぞれのデザインが持つ独自性と共通点を浮かび上がらせる。
イタリアンモダンの革新。ボルサーニ「D70」「P40」が切り拓いた家具デザイン
イタリアのモダニズムは、戦後の経済成長と工業技術の発展を背景に生まれた革新的な家具に象徴される。
革新的な家具の登場を牽引した舞台の一つが国際的なデザイン展「ミラノ・トリエンナーレ」だった。新素材の活用や機械的な可動機構など、工業技術を積極的に取り入れた家具が注目を集め、イタリアンデザインの国際的な評価を高めていく。
イタリアのモダンデザインにおける代表的なデザイナーの一人が、オズヴァルド・ボルサーニ(Osvaldo Borsani)だ。
1954年に発表されたTecno(テクノ)の「D70」は、背もたれと座面がそれぞれ独立して動く機構を備えたソファであり、機械的な構造を隠すのではなく、デザインの一部として表現した点に、その革新性がある。
翌1955年に発表された「P40」も、自在なリクライニング機構を取り入れた代表作だ。身体の姿勢に合わせて変化する家具という発想は、現代のリクライニングチェアにも通じる。

また、ヴィットリオ・ノビリ(Vittorio Nobili)が手がけた「MEDEA」は、三次元成形合板による一体的なシェルと金属脚を組み合わせた椅子である。成形技術を活かした軽快なフォルムに、工業生産が可能にした新しい造形表現を見ることができる。

さらに、ヴィットリオ・ダッシ(Vittorio Dassi)が手がけたシェルフも紹介される。豊かな木目と真鍮のディテールを組み合わせた収納家具には、精緻な加工技術と装飾性を融合させたイタリアンモダンの美意識が表れている。

本展では、こうしたイタリアンモダンデザインを代表する作品を通じて、技術革新が家具の機能だけでなく、美しさのあり方そのものを変えていった時代を振り返る。
北欧家具の機能美。ウェグナー「ハートチェア」と工房が育んだモダニズム
一方、北欧の家具づくりは、職人技と建築家の協働によって独自の発展を遂げた
その重要な舞台となったのが、1927年に始まったデンマークの「キャビネットメーカーズ・ギルド展」である。
大量生産品との競争に直面していたデンマークの家具産業では、建築家と家具職人が協働し、素材や構造、使い心地を徹底して追求することで、大量生産品とは別の価値を創造しようとした。
その思想を体現する一人がモーエンス・コッホ(Mogens Koch)である。
コッホが自邸のために設計したブックシェルフは、同じ寸法のユニットを自由に組み合わせることができるモジュール構造を採用。蔵書や暮らしの変化に合わせて増設できる合理性と、木工家具ならではの美しさを兼ね備えている。
1932年からはデンマークの家具工房Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン)が製作を手がけ、建築家の設計思想と職人の技術を結びつけた。

また、ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)が1952年にFritz Hansen(フリッツ・ハンセン)のためにデザインした「ハートチェア(FH4104)」も注目作品の一つだ。
成形合板の座面と無垢材を組み合わせた3本脚の椅子は、ウェグナーの作品の中でも特徴的な存在。北欧の家具づくりが伝統的な木工技術だけに依存するのではなく、新しい製造技術も柔軟に取り入れていたことを示している。

スウェーデンのスヴァンテ・スコグ(Svante Skogh)によるデスクも、北欧家具の魅力を伝える一作だ。チーク材の美しい木目を活かした造形と、軽やかな脚部の構造に、木工技術の洗練が感じられる。

このほか、ポール・ケアホルム(Poul Kjærholm)の「PK22」、ブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson)の「PERNILLA」など、北欧家具の名作が紹介される。
名作ヴィンテージ家具を使い続ける豊かさ。現代の住空間に受け継がれる価値
本展は異なるものづくりの思想を現代の暮らしという視点から捉え直す試みとも言える。
工業技術によって新たな機能と造形を切り拓いたイタリアと、素材への理解と職人技を通じて長く使い続けられる家具を追求した北欧。
その両者が生み出した名作は、誕生から半世紀以上を経た現在も、住宅やインテリアの世界では、時代を超えて、デザイン史に残る名作として高く評価されている。
1988年創業のロイズ・アンティークスは、ヨーロッパ各地で買い付けた家具を熟練職人の手によって修復・再生し、次の使い手へとつなぐ取り組みを続けてきた。
良質な家具を修復しながら使い続けることは、資源を大切にするサステナブルな暮らしにもつながる。
新しい技術と伝統的な手仕事。そのどちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの価値を見極め、住空間へ取り入れていくこと。二つのモダニズムを並走させる今回の展覧会は、現代のラグジュアリーな住まいにおける家具の選び方についても、改めて考える機会となりそうだ。
なお、展覧会は10月24日から11月8日までロイズ・アンティークス 青山で開催。その後、11月14日から29日まで、東京・碑文谷のロイズ・アンティークス エゴイストへと会場を移す。入場は無料で、展示される名作ヴィンテージ家具は購入することもできる。
主なデザイナー・アイテムラインアップ
- ・Osvaldo Borsani(オズヴァルド・ボルサーニ):D70 3Pソファ for TECNO / P40 イージーチェア for TECNO
- ・Vittorio Nobili(ヴィットリオ・ノビリ):MEDEA チェア for FRATELLI TAGLIABUE
- ・Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー):ハートチェア Model.FH4104 / デイベッド Model.GE258 / ダイニングチェア Model.CH29 / イージーチェア Model.GE240
- ・Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム):PK22 イージーチェア for E. Kold Christensen
- ・Mogens Koch(モーエンス・コッホ):ウォールユニット for Rud. Rasmussen
- ・Bruno Mathsson(ブルーノ・マットソン):PERNILLA イージーチェア&オットマン
- ・Vittorio Dassi(ヴィットリオ・ダッシ):シェルフ
- ・Svante Skogh(スヴァンテ・スコグ):デスク
- ・Jørgen Kastholm & Preben Fabricius(ヨルゲン・カストホルム&プレベン・ファブリシャス):FK82 イージーチェア
- ・Luciano Frigerio(ルチアーノ・フリジェリオ):イージーチェア ほか
「PARALLELS ―並走する二つのモダニズム。南の工場と北の工房―」開催概要
第1会期:ロイズ・アンティークス 青山
- 会期:2026年10月24日(土)~11月8日(日)
- 会場:東京都渋谷区神宮前3-1-30
- 開館時間:11:00~19:00(会期中無休)
第2会期:ロイズ・アンティークス エゴイスト
- 会期:2026年11月14日(土)~11月29日(日)
- 会場:東京都目黒区碑文谷2-5-15
- 開館時間:11:00~19:00(会期中無休)
入場無料。展示作品は購入可能。
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LWL online 編集部