NOT A HOTELが住宅へ。「NOT A HOUSE」始動、スマートホーム標準の規格住宅「POD」を発表
取材/LWL online編集部
NOT A HOTEL株式会社が2026年10月2日付で「NOTA株式会社」へ社名を変更し、ホテルを起点に住宅、移動、街づくりへと事業領域を拡張する。その住宅事業を担う新会社「NOT A HOUSE」の第一弾として発表されたのが、NOT A HOTELが初めてデザインする規格住宅「POD」だ。価格は6,980万円から。スマートキー、自動調光、空調などを統合するスマートホームも住宅の一部として組み込む。ホテル・別荘で培った「体験から逆算する設計」は、日常の住まいをどう変えるのか。LWL onlineの視点から読み解く。

NOT A HOTELから「NOTA」へ。ホテルを越え、住宅・移動・街づくりへ
NOT A HOTELは建築家やクリエイターとともに各地に個性的な建築をつくり、それを所有と宿泊の双方から利用できる仕組みを展開してきた。
今回、会社名をNOTAへと変える。新たなコンセプト「Think beyond. ― あたりまえの、その先へ。」を掲げ、NOT A HOTELから始まった「NOT A」という考え方をホテル以外にも展開し、住宅、移動、街づくりまでをひとつのグループとして扱っていく。
その構成要素となるのが、従来のNOT A HOTELに加え、住宅の「NOT A HOUSE」、モビリティの「NOT A GARAGE」、街づくりの「NOT A CITY」だ。
NOTAによれば、NOT A HOTELは2026年10月1日時点で全国10拠点を開業し、オーナー数は1,357名、累計契約高は約940億円に達している。ホテルの周辺事業を増やすというよりも、これまで構築してきたブランド、建築、サービス、テクノロジーの基盤をより大きな「暮らし」の領域へ広げるフェーズに入ったと見ることができる。
そして、その方向性が最も端的に現れているのが新会社「NOT A HOUSE」だ。
「NOT A HOUSE」始動。第一弾「POD」は6,980万円から
NOT A HOUSEは、NOT A HOTELがホテルや別荘の開発を通じて蓄積してきたデザイン、テクノロジー、ホスピタリティのノウハウを住宅へと展開する新事業である。
代表取締役CEOには、GENDA共同創業者で、2024年12月からNOT A HOTELの社外取締役を務めてきた申真衣氏が就任した。
その第一弾となる「POD」は、NOT A HOTELが初めてデザインを手がけた住宅となる。注文住宅のようにゼロからすべてを設計する方式ではなく、あらかじめ空間やデザインの基本形をつくりながら、住む人のライフスタイルに合わせて選択肢を用意する。
間取りはStudio、2Bedrooms、3Bedroomsの3タイプ。屋内とテラスを合わせた面積は約120㎡で、販売価格は建物本体で税込6,980万円からとなる。
当初は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県を中心に展開し、対応地域は今後順次拡大する予定だ。
なお、価格には土地代、上下水道・電気などのインフラ引き込み工事、外構工事などは含まれず、建築地や選択する仕様によって総額は変わる。

規格住宅でも「完成された空間」と「自分らしさ」を両立

PODは規格住宅でありながら、単純なパッケージ商品にはしていない。
リビング・ダイニングを中心とした基本的な空間構成やインテリアのバランスはあらかじめデザインされ、そのうえで収納、ワークスペース、家具、造作などを選択できる。
外観もミニマルな直線を基調とする一方、外装材には複数の選択肢が用意され、都市部から自然環境まで建設地に合わせた仕様を選べるという。

住宅を建てる際、自由度を高めれば高めるほど、設計者と施主の双方に膨大な判断が求められる。一方、規格化を進めすぎれば、その人らしい住まいから遠ざかってしまう。
PODはその中間に位置し、空間の完成度を一定水準までプロダクト側が担保したうえで、暮らす人が必要な部分を選択するという考え方を採用する。
「よく設計された住宅を、自分の暮らしに合わせて選ぶ」。NOT A HOUSEが住宅を「プロダクト」と表現する理由も、この点にあるのだろう。

スマートホームを「後付け」にしない。PODが示す建築統合の発想
さて、LWL onlineとしては、何といってもPODにおけるスマートホームの位置づけに注目している。
PODでは、NOT A HOTELの施設で使われてきたスマートホームの仕組みを住宅にも導入。スマートキーをはじめ、照明の自動調光、空調などをタブレットから操作でき、スマートフォンからも住宅設備などにアクセスできる。
さらに、キッチン、浴室、洗面台、トイレと並び、スマートホームそのものが建物本体価格に含まれる「標準仕様」とされている。
PODでは、スマートホームをキッチンや浴室などと同様に、住宅を構成する基本設備のひとつとして扱っている。この点は特筆したい。しかも、以前取材したように、NOT A HOTELのスマートホームは、IoTガジェット型スマートホームなどではなく、建築統合型スマートホームであり、住まいが知性を宿したかのように洗練されたシステムである。
近年、「スマートホーム」という言葉から想起されるものも変わりつつある。
スマートスピーカーやスマート電球、後付け型のIoTデバイスを組み合わせるだけではなく、照明、空調、セキュリティ、AVなどを建築計画の段階から統合し、住む人が複雑な操作を意識することなく利用できる環境を構築する建築統合型スマートホームは、日本でも少しずつ導入事例が現れ始めている。
住宅とテクノロジーを一体で考えるという、海外では高級住宅を中心に先行してきた設計思想が、国内でもようやく具体的なかたちを見せ始めた。
PODについては現時点で、採用する制御プラットフォームや通信プロトコル、照明・空調・AVなど各設備との具体的な統合方式までは公表されていない。したがって、その技術的なアーキテクチャについては今後の取材を行いたい。

スマートホームを住宅に組み込み、「建築+インテリア+テクノロジー」を一体としていることは明らかになっている。まさに、スマートホームを建築の一部として設計する「Architectural Smart Home」という考え方にも通じる動きである。


PODで暮らし、NOT A HOTELに泊まる。「年間3泊」がつなぐ生活圏
もうひとつ特筆しておきたいのが、PODとNOT A HOTELとの連携だ。
PODのオーナーには月額1万6,500円で、全国のNOT A HOTELを年間3泊利用できるオプションが用意される。通常は自宅であるPODで暮らしながら、ときには各地のNOT A HOTELを「もうひとつの家」のように利用するという仕組みである。
ここからは、NOTAへの転換に通奏低音のように流れる考え方が見える。
「住宅」「ホテル」「別荘」をそれぞれ別の商品として捉えるのではなく、日常の家と非日常の滞在先を連続した生活環境として扱い、その先にはNOT A GARAGEによる移動、NOT A CITYによる街や拠点づくりも加わっていく。
NOTAが広げようとしているのは、住宅での過ごし方から、移動手段、旅先での体験、そしてそうした「体験価値」をテクノロジーやサービスによってどうシームレスにつなぐかという点まで視野に入れている。
今回のNOT A HOUSEとPODは、その構想を「日常の住まい」の側から具体化した最初のプロダクトといえる。
「住宅を一つのプロダクトとして設計する」という発想

これまでNOT A HOTELは、優れた建築家やデザイナーによる空間だけでなく、予約、チェックイン、スマートホーム、ホスピタリティなどを含めてひとつの滞在体験として設計してきた。
PODからは、その方法論を住宅に持ち込もうとしていることが読み取れる。
住宅は通常、建築、インテリア、住宅設備、照明、空調、AV、ネットワーク、スマートホームといった多数の要素が、設計・施工の過程でひとつずつ組み合わさって、完成する。
PODは逆に、あらかじめ「暮らし」という一つの体験から逆算し、住宅全体をプロダクトとしてパッケージしようとしている。
特に「スマートホーム付き住宅」を販売するのではなく、建築とテクノロジーが最初から分離していない住まいを商品化しようとしている点には注目したい。
NOT A HOTELからNOTAへ。その変化は、名前から「HOTEL」という言葉が消えたこと以上の意味を持つのかもしれない。
ホテルや別荘で培われてきた体験設計が、いよいよ最も身近な「住宅」へ向かい始めた。LWL onlineでは、NOTAのこれからと、PODに組み込まれたスマートホームを追い続けていく。

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LWL online 編集部