MEDUMがミラノデザインウィーク2026で示す、光と陰の「あわい」——インスタレーション「Light is Shadow」

 取材/LWL online編集部

MEDUM(メデュウム)が、ミラノデザインウィーク2026のトルトーナ地区でインスタレーション「Light is Shadow」を展開する。無機ELを用いた照明プロトタイプを通じて、光と陰を等価に扱う空間体験を提示し、過剰な明るさに覆われた現代に、もうひとつの光のあり方を問いかける。

ミラノで問い直される「明るさ」の価値

ミラノデザインウィークは、家具や照明の新作発表の場であると同時に、現代の暮らしと空間の価値観そのものを問い直す舞台でもある。

2026年、そのトルトーナ地区でMEDUM(メデュウム)が提示するのは、光を増やすことではなく、むしろ陰を取り戻すことで光を見つめ直そうとするインスタレーション「Light is Shadow」だ。
MEDUMは、株式会社quantumのインハウスデザインスタジオとして、技術や素材と生活者との関係を設計することを重視してきた。2023年に続く2度目のミラノデザインウィーク出展となる今回は、照明のプロトタイプを主軸に据えながら、過剰な明るさに覆われた現代に対して、もうひとつの光のあり方を提案する。

光と陰を等価に扱うインスタレーション

本展が着目するのは光と陰の「あわい」である。

安全性、効率性、衛生性を追求してきた現代社会は、空間から陰を遠ざけてきた。
しかし、昼夜を問わず隅々まで照らされる環境は、利便性をもたらす一方で、心身のリズムやエネルギー消費のあり方にまで影響を及ぼしている。そこでMEDUMは、陰を単なる不足や不便としてではなく、静けさや想像力、そして感覚の深度を宿す価値として捉え直す。

そこには、谷崎潤一郎『陰翳礼讃』にも通じる、日本的な美意識への現代的な応答を見ることができる。

無機ELという身近な技術の再解釈

その思想を支える素材として選ばれたのが、無機EL(エレクトロルミネッセンス)だ。サイネージなどにも用いられる身近な技術でありながら、MEDUMはこのシート素材を「自由に切る」ことのできる存在として読み替えた。極めてシンプルな加工によって、一枚のシートは多様な表情を持つ照明へと変わる。

ありふれた技術を別の視点から見直すことで、新たな造形と体験へと接続していく。この展示には、そうしたデザインの思考が静かに通底している。

一枚のシートから生まれる合理性と造形

興味深いのは、その造形が単なるコンセプトにとどまっていない点だ。

最小限の加工プロセスによって、素材を無駄なく使い切ることができ、輸送時にはフラットになるという合理性も備えている。低電力でやわらかく光る無機ELという素材の特性も含め、そこにはエネルギー過多の時代に対する、抑制のきいた提案がある。
美しさと合理性を同時に成立させるところに、MEDUMのプロトタイピングの強さが表れている。

LWL onlineが見る、空間体験としての光

LWL onlineの視点から見ると、この展示は単なる照明デザインの話にとどまらない。
光を「より強く、より多く」供給する対象としてではなく、空間体験を編成する繊細なメディアとして捉え直す試みだからだ。
ラグジュアリーな空間に求められるのはただ明るいことではない。光が陰と呼応しながら、静けさや余白、身体感覚の落ち着きを導いていくこと。その秩序が、住まいや空間に深い品格を与える。

アーカイブ展示が示すMEDUMの現在地

会場では、新作インスタレーションに加え、MEDUMのこれまでの代表作と制作プロセスを振り返るアーカイブ展示も行われる。過去のミラノデザインウィークで発表した「5lights」のうち1作が、後にALESSIから「Tsumiki」として製品化された経緯を踏まえると、同スタジオの提案がコンセプト提示に終わらず、国際的な製品化へと接続する力を備えていることも見えてくるだろう。

光を誇示するのではなく、陰を取り戻す

「Light is Shadow」は、光を主役として誇示する展示ではない。むしろ、光と陰を等価に扱うことで、現代の空間に失われつつある感覚のグラデーションを呼び戻そうとする試みである。まぶしさに慣れきった時代のなかで、あえて暗がりに身を委ねること。その静かな体験こそが、これからのデザインと暮らしに新たな深みをもたらすのかもしれない。

出展概要

  • タイトル: Light is Shadow
    会期: 2026年4月20日(月)〜25日(土)10:00〜19:00、26日(日)10:00〜16:00
    プレスプレビュー: 4月19日(日)15:00〜18:00
    会場: Via Tortona 12, Milan, Italy
    公式サイト: https://medum.jp/research/light-is-shadow

  • 取材

    LWL online 編集部

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