住宅にテスラの革命を。HOMMA「Built-in Intelligence」が切り拓く“日本仕様”のスマートホーム新時代
オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子
住まいにテクノロジーが入り込むことが当たり前になったとき、私たちは“操作の利便性”の先に、“意識せずとも得られる心地よさ”を求めるフェーズに入っていく。シリコンバレー発の建築統合型スマートホーム企業「HOMMA(ホンマ)」が2026年4月20日に開催したセミナー「HOMMA Built-in Intelligence Session vol.2」では、そんな心地よさを実現する“住宅インフラの知性”が、より具体的な実装フェーズの話と共に示された。
大好評セッションのvol.2開催。今回は未来への展望も
今回のセミナーは、建築家関係者に向けて2026年2月に開催された「HOMMA Built-in Intelligence Session vol.1」に続く第二弾イベント。vol.1のセッションが好評だったことから、一部内容を踏襲しつつ、未来の展開までより具体的に提示するvol.2が開催された形だ。
前回と同じく、会場はHOMMAの代々木上原オフィス。照明・空調・遮光・セキュリティといった住空間の要素を、設備単位ではなく「建築段階から統合するOS」として捉えるHOMMAのHome OS構想が紹介された。
▼「HOMMA Built-in Intelligence Session vol.1」のレポートはこちらから。
なおイベント当日は、ブランドの日本市場への本格展開と、長谷工コーポレーションの新築賃貸マンション「ブランシエスタ木場」に同社のスマートホームシステム「Built-in Intelligence」が導入されたプレスリリース(https://www.lwl-style.com/post-0000248/)の発表日ともあり、プレゼンもより熱を帯びていた印象だ。以下より、要点をレポートしていこう。

建築統合型スマートホームに「ユニット型」を提案するHOMMA
vol.1から引き続き、セッションの冒頭では(株)音元出版の川嶋が、現在のスマートホームを2つの潮流に整理した。
ひとつは、スマートスピーカーやIoT家電を中心とした「IoTガジェット型」のスマートホームだ。住んでいる自宅にそれらの機器を後付けで設置すれば、誰でも手軽に環境を構築できる。一般的にスマートホームといえばこのパターンが多い。
ただ、システムの根幹をクラウドに依存しているのが大きな弱点。米国で起きたインステオン(Insteon)事件のように、クラウドサービスがいきなり終了した場合、家中のスマートデバイスが使えなくなってしまう脆弱性を孕んでいる。
対するもうひとつの潮流が、「建築統合型」だ。住宅の設計段階であらかじめスマートホームシステムを組み込む方法で、ユーザーが何か操作をせずとも、照明や調光、セキュリティといった領域を住宅が自律的に調整していくスタイルである。
川嶋は「わたしが注目するのは、この建築統合型。その中でも、HOMMAが提案する新たな“ユニット型”の建築統合型スマートホームは魅力的」と語る。
というのも、クレストロンなど従来からある「レガシー型」のスマートホームシステムは、システムインテグレーターが施主ごとにゼロから構築していくもの。非常に完成度の高い住空間が実現するものの、システムインテグレーターの力量に左右されるため、属人的な性質を帯びる。
そうした中で、もうひとつの建築統合型の選択肢が、HOMMAの提唱する「ユニット型」なのだ。
「ユニット型」の建築統合型スマートホームは、長期運用を前提に、あらかじめ建築に住宅OSを組み込むスタイルである。住宅システムを、ソフトウェアの仕組みそのもので成立させて提供することで、属人的にならずOSをアップデートする形で進化させていける。いわば、後付けIoTとレガシー型スマートホームの良いとこ取りをするような設計だ。
川嶋は「このユニット型のアプローチを初めて提唱したのが、HOMMA。住まいの基盤として設計されるため、ガジェットのように短命ではない。それでいて特定のインテグレーターのスキルに左右されることもない。住宅そのものが知性を持ち、自律して動作するのが強み」と語った。
シリコンバレーから10年、住宅に「テスラ」のような革命を
続いて登壇したHOMMAの本間毅代表は、2026年5月で設立10年を迎える自社の歩みを振り返った。「黒電話がスマホになり、車がテスラに進化した。しかし、住宅だけは変わっていない」。この気づきが、シリコンバレーでの起業の原点だ。



HOMMAのスマートホーム設計は、2017年にレガシー型からスタートしている。しかし当時、インテグレーターに依存せざるを得ない状況に課題を感じ、自社テクノロジーを軸としたアプローチを強化していった。
同社で建築部門を担う一級建築士の井上氏は、「レガシー型で一番大変だったのは、何が行われているのかがわからないところ。どうやったかも不明なので、自分たちのやりたいように動かない場合は、いちいち担当者を呼ばないといけない。ビジネスとして続けていくことを考えると、その運用では難しかった」と語った。
そこから住宅に組み込むOSの自社開発を進め、それを「Built-in Intelligence」として他社にライセンス提供する取り組みをスタートし、今に至る。


本間氏は「時間の価値を量で測るのではなく、時間の質を高めること。それが幸福度に直結する。家時間の質を高める=Quality of Home Livingのために、私たちの技術=Built-in Intelligenceを使っていく」と語る。

そんな「Built-in Intelligence」のポイントのひとつが、エッジコンピューティングだ。クラウドに依存せず、宅内のエッジコンピューターで処理を行うため、通信が安定し、プライバシーも守られる。
「Built-in Intelligence」のある住宅に住む人は、日常的に質の高い家時間を体感する生活を享受できる。例えば、 照明の操作を自動化する「自動運転・ハンズフリー」で、1日約300回にも及ぶ点灯操作から解放されるとか、体内リズムに合わせて照明を自動コントロールする「サーカディアンライティング」によって、睡眠の質の向上やストレスの軽減が実現されるといったことだ。





これらは単なる機能の羅列ではない。「家が先回りして心地よく暮らす環境を整えてくれる」という、住人へのウェルビーイングの提供である。さらに、多言語対応のアプリや安心見守り機能など、不動産オーナーにとっても資産価値を高める仕組みが備わっている。


なお、これらのビジョンはすでに具現化されており、HOMMAのシステムは日米累計100世帯の実績を誇る。記事冒頭でお伝えしたとおり、国内でもっとも新しいのは、長谷工コーポレーションの新築賃貸マンション「ブランシエスタ木場」。HOMMAの「Built-in Intelligence」は、すでに日本の集合住宅でも実装のフェーズに入っている。


日本仕様への“本気”「ECHONET Lite」にも対応
イベントの後半では、いよいよ日本で本格展開に入った「Built-in Intelligence」について、今後の具体的なアップデート構想が語られた。なかでも川嶋が「特に大きな話」と注目したのが、日本特有の設備制御への対応予定だ。というのも「Built-in Intelligence」が床暖房と給湯器へも対応予定であることが明かされたからだ。
本間氏は「床暖房や給湯器をシステムに統合してほしいという声が非常に多かった。どちらも、ECHONET Lite(エコネットライト)で実現できることがわかったので、対応する様々なメーカーの機器を用意して、開発を進めている」と語った。
なお、ECHONET Liteは異なるメーカーの家電や住宅設備を相互に接続・制御するための通信規格だが、経済産業省主導で策定された日本のローカル仕様であるため、クレストロンなどグローバル企業のシステムではスルーされている。それらを使った開発もできないわけではないが、APIを解析して最適化する必要があるため、対応できるインテグレーターは非常に少ない。
川嶋は「HOMMAのシステムがECHONET Liteに対応するのは大きい。床暖房と給湯器は日本の暮らしで対応せざるを得ないポイント。(JEM-Aを使うことで)オンオフくらいはこれまでもできたが、これらをフル制御できる点は、極めて大きなアドバンテージなので期待したい」とコメントした。
レガシー型は専門のインテグレーターによる高度な設計・保守が必要だが、HOMMAは独自のセットアップツールと無線・有線のハイブリッド構成により、通常の電気工事の範疇で導入が可能となる。


また、AIとの付き合い方についても、本間氏のスタンスは冷静だ。「AIで先回りしすぎるのも良くないと思うので、そこはバランスをとる必要がある。AI Readyで土壌はかなり整ってきているので、ゆくゆくどこでどういうバランスで実装するか」。人のプライバシーを守りつつ、入眠や起床といった繊細なバイオリズムに寄り添うためのAIの在り方を模索している。
未来は、すでに実装されている
イベントのラスト、川嶋が「今日の参加者に持ち帰ってほしいもの」を尋ねると、建築担当の井上氏は「ここ数年は設備投資で差別化を図るところがあったが、体験価値にも設計施工のポテンシャルはある。弊社の技術で設計のポテンシャルを広げる取り組みができたらと思っている」と語った。
続いて本間氏は、「Built-in Intelligenceのデモをご覧になると、皆さん『未来ですね』と言われますが、これは今、すでに実現していること。照明だけでなく、ゆくゆくは床暖房や給湯に広がるこのシステムを、ぜひ今すぐ取り入れてほしい」と力強く締め括った。

スマートホームは、もはや憧れの未来予想図ではない。HOMMAの「Built-in Intelligence」によって、家で過ごす時間の質はすでに進化を始めている。
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オーディオ&サブカルライター
杉浦みな子
1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/