海外スマートホーム月報:AIスマートホームは住宅インフラへ。Google Home、eufy EdgeAgent、Alexa+、Matter×OpenADRの最新動向

 取材/LWL online編集部

この記事では、2026年5月の海外スマートホーム動向を、Google Home/Gemini for Home、eufy EdgeAgent、Alexa+、Matter×OpenADRの四つの軸から整理し、AIスマートホームが住宅インフラへ進化する現在地を解説する。

2026年5月の世界のスマートホーム動向では、Google Home/Gemini for Home、eufy EdgeAgent、Alexa+、Matter×OpenADRという四つのニュースが大きな意味を持った。AIは住宅の上位運用層へ入り、セキュリティはローカルAIで判断し、音声アシスタントは生成AIで進化し、MatterはOpenADRとの接続によって電力グリッドへ射程を広げ始めている。スマートホームは今、住宅そのものを支えるインフラへ移行しつつある。

目次

  1. 5月の世界のスマートホームニュース
  2. Google Homeは「家のAI運用基盤」へ向かう
  3. eufy EdgeAgentが示す、ローカルAIというもう一つの方向
  4. Alexa+は日本市場でも無視できない存在になる
  5. Matter×OpenADRで、Matter Readyは「住宅からグリッドへ」広がる
  6. AIスマートホームに必要なのは「設計思想」である

5月の世界のスマートホームニュース

Google、eufy、Amazon、Matter×OpenADRに共通する「住宅インフラ化」

2026年5月の世界のスマートホーム動向を振り返ると、注目すべきニュースは大きく四つに整理できる。

第一に、GoogleがGemini for Homeを軸に、Google Homeを単なる家庭内デバイス操作アプリから、AIを備えた住宅運用基盤へ進化させようとしていること。
第二に、eufyがローカルAIセキュリティエージェントの方向性を打ち出し、クラウドに依存しない住宅防犯・見守りの可能性を示したこと。
第三に、AmazonのAlexa+が欧州で展開を広げ、生成AI時代の音声アシスタントが、住宅内の操作インターフェースとして再び存在感を増していること。
そして第四に、MatterとOpenADRの正式連携によって、スマートホームが住宅内の便利機能にとどまらず、電力グリッドと接続するエネルギーインフラへ近づき始めたことである。

スマートホームは「機器操作」から「住宅運用」へ

この一か月の動きを一言で表すなら、『スマートホームは「機器操作」から「住宅インフラ」へ向かっている』である。
遠隔から照明を点けたり、空調を操作する、そうした便利機能は入口にすぎない。いま、主戦場になりつつあるのは、AIが住まいの状況を理解し、セキュリティやエネルギー、快適性、生活サービスまで含めて住宅全体をどう運用するかという、より上位のレイヤーである。

Google Homeは「家のAI運用基盤」へ向かう

Gemini for Homeが変えるスマートホームの上位レイヤー

まず、今月、最も大きな動きとして押さえておきたいのがGoogle Homeをめぐるアップデートである。

GoogleはGemini for Homeを単なる音声アシスタントの高度化としてではなく、通信事業者、ISP、警備会社、ハードウェアメーカーが自社サービスに組み込めるAI基盤として打ち出してきた。
カメラインテリジェンス、Ask Home、Home Briefといった機能は、スマートスピーカーに話しかけて照明を点けるという従来型のスマートホーム像を超えた存在となりつつある。

Camera intelligence、Ask Home、Home Briefが示す新しい住空間UX

先日も記事化しているが、いくつか例を挙げよう。たとえば、カメラが捉えた映像をAIが理解し、何が起きたのかを要約する。あるいは、複数の住宅機器の状態を自然言語で確認する。そして、日々の出来事をHome Briefとして整理する。Gemini for Homeに備わった機能は、住宅内の出来事を単なる通知ではなく「文脈」として扱うものとなっている。AI時代に、スマートホームの価値は、デバイスをむやみに増やすことではなく、住まいで起きていることを理解し、必要な判断や操作へつなげることへ移りつつある。

Googleがこの仕組みを自社製品だけに閉じていない点が重要なポイントである。通信会社や警備会社、さらにはハードウェアメーカーに対して、Google Home APIやGemini for Homeを組み込んだサービス展開の道を開いている。つまり、今後のスマートホームは「Google製の機器を使うかどうか」だけでは語れなくなる。住宅会社、警備会社、通信事業者、機器メーカーのサービスの裏側に、GoogleのAI基盤が入り込んでいく可能性がある。

住宅OSを誰が握るのか

LWL onlineの視点で言えば、これは「住宅OS」を誰が握るのかという問題に接続される。住宅の照明、空調、セキュリティ、カメラ、通知、生活ログ、さらにはエネルギー制御を束ねる上位レイヤーに、AIプラットフォームが入り始めた。スマートホームは、いよいよ住まいを運用するための知能層をめぐる競争になってきた。非常に大きな地殻変動を予感させる。

現代住宅とスマートホームダッシュボード。Google HomeやGemini for Homeが示すAI住宅運用基盤のイメージ
Google Home/Gemini for Homeの進化は、スマートホームを単なるアプリによる機器操作から、住まいを理解し運用するAI基盤へ近づけている
Image:ninoon /Shutterstock.com

eufy EdgeAgentが示す、ローカルAIというもう一つの方向

クラウドではなく住宅側で判断するAI

一方で、Googleのようなクラウド/プラットフォーム主導のAIスマートホームとは別の方向を示しているのが、アンカーのeufyが展開するEdgeAgentだ。ニューヨークで開催されたAnker Day 2026で「EdgeAgent」という概念が発表された。ローカルAIセキュリティエージェントの構想を打ち出し、住宅の外周、玄関、庭、車寄せ、別荘といった領域で、エッジ側のAIが状況を判断するスマートセキュリティの方向性を示したのである。

AIをクラウド上の巨大な知能としてではなく、住宅の近くに置かれる判断装置として捉えている点が最大の特徴といえる。セキュリティカメラや見守りシステムは、利便性とプライバシーが常に隣り合わせになり、その間の微妙なバランスが重要になる。映像を取得し、人物や車両、異常な動きを検知するほど、そのデータをどこで処理し、どこに保存し、誰が閲覧できるのかが問われる。

eufyのローカルAIは、この問いに対する一つの回答になり得る。映像や判断をできる限り住宅側で処理し、クラウドへの依存を抑えながら、防犯・見守り・通知を成立させる。これは、高級住宅や別荘においてとりわけ重要な考え方である。

防犯とプライバシーを両立するスマートセキュリティ

海外のラグジュアリー邸宅に導入される建築統合型スマートホームでは、クラウドへの過度な依存を避け、住宅内のローカル制御を重視する思想が強い。住空間を事業者のクラウドサービスに従属する場所ではなく、居住者のための自律したプライベートな環境として守るという考え方である。

住まいの安全性を高めるためのカメラが、逆にプライバシー上の不安要素になってはならない。今後のスマートセキュリティでは、「よく見える」こと以上に、「どこで判断するか」「誰が管理するか」が問われることになる。
LWL  onlineとしては、eufyのローカルAIの展開に期待している。

夜のラグジュアリー住宅外観。ローカルAIによる防犯とプライバシー重視のスマートセキュリティを想起させる住まい
高級住宅や別荘では、防犯性能だけでなく、映像や判断をどこで処理するかというプライバシー設計も重要になる
Image:korisbo /Shutterstock.com

Alexa+は日本市場でも無視できない存在になる

生成AI化する音声アシスタント

Googleとeufyに加えて、簡単に触れておきたいのがAmazonのAlexa+である。

Alexa+は生成AI時代のAlexaとして、従来の音声アシスタントをより自然な会話型インターフェースへ進化させる取り組みだ。2026年5月には欧州での展開も進み、ドイツ、オーストリア、フランスなどでEarly Accessが開始された。

スマートホームの文脈で見るとAlexa+の意味は大きい。これまでの音声操作は「照明をつけて」「エアコンを何度にして」といった、比較的決まった命令であった。そこには曖昧さが入る余地はほとんどなかった。しかし生成AIを組み込んだアシスタントは、「少し寒いよ」「映画を観たい」といった曖昧な表現を照明、空調、音響、スクリーン、ロックなどの操作へ変換していく方向に進んでいく。

日本展開を見据えたAmazonの存在感

AmazonはEchoシリーズを通じて、すでに家庭内の音声インターフェースとして強い接点を持っている。Alexa+が日本でも本格展開すれば、Google HomeやApple Home、Samsung SmartThingsとは異なる形で、AIスマートホームの普及を押し上げる可能性がある。

ただし、ここでも問われるのは音声AIの「賢さ」だけではない。どの機器と確実につながるのか、あるいはローカル制御とクラウド制御の境界はどこにあるのか、さらに生活データや音声データはどう扱われるのかなど、AIアシスタントが住宅の操作権限を持つほど、プライバシーとセキュリティの設計は重要になる。ここでもシステムの設計が問われるだろう。

室内空間に照明、空調、セキュリティなどのスマートホームアイコンが重なるイメージ
生成AI化した音声アシスタントは、「少し寒い」「映画を観たい」といった曖昧な言葉を、照明や空調、音響の操作へ変換していく
Image:ImageFlow /Shutterstock.com

Matter×OpenADRで、Matter Readyは「住宅からグリッドへ」広がる

MatterはHome OSではなく、住宅が受け止める共通言語

今月のもう一つの重要ニュースがMatterとOpenADRの正式連携である。
Matterは機器同士をつなぐ共通言語として語られてきた。メーカーの違いを超えて、照明、センサー、ロック、空調、家電を接続するための共通言語である。だが、OpenADRとの連携によって、その意味するところは住宅内の相互接続にとどまらなくなった。

LWL onlineではこれまで、Matterを単なるIoTガジェット向けの接続規格としてではなく、建築統合型スマートホームが将来的に受け止めるべき共通言語として見てきた。
そういうことから、「Matter Ready」という考え方をクローズアップして捉えてきた。これは住宅の中枢をMatterそのものに委ねるという意味ではない。住宅の中枢に置く共通言語として、率直なところMatterは物足らない。照明、空調、シェード、セキュリティ、AV、エネルギー設備などの基本制御は、あくまで住宅の設計思想とHome OS、ローカルネットワーク、BACnetやKNXなどのプロトコルや建築設備側の安定した制御基盤に置く。そのうえで、Matter対応機器や今後登場する新しいデバイスを、必要に応じて住宅側に取り込める状態をあらかじめ整えておく。これがMatter Readyである。

今回のMatter×OpenADRの連携は、そのMatter Readyの射程を一段広げる動きだといえる。

OpenADRとは何か

今回示された役割分担は明快だ。Matterは住宅内の機器とエネルギーゲートウェイをつなぐ。OpenADR 3はそのゲートウェイと電力会社、グリッドオペレーターをつなぐ。つまり、住宅内のスマート機器が、電力需給、料金インセンティブ、太陽光発電、家庭用蓄電池、EV充電、ヒートポンプと連動していくための道筋が示されたのである。

OpenADRとは、電力会社やアグリゲーターが、需要応答(DR:デマンドレスポンス)の信号を建物や家庭のエネルギー機器へ伝えるための標準プロトコルである。電力需給の逼迫時や料金が高い時間帯にEV充電、蓄電池などを自動的に調整するための「電力側の共通言語」と考えるとわかりやすいだろう。

これは、スマートホームの射程を大きく拡張する動きである。これまでのスマートホームは、住まいの中を快適にする技術だった。しかしこれからは、住まいが地域の電力網と接続し、電力需給の変動に応じて空調や充電、蓄電を調整する存在になっていく。住宅は、電気を消費するだけの箱ではなく、快適性を保ちながらエネルギーを制御するノードへ変わりつつあるのだ。

EV充電、蓄電池、ヒートポンプがグリッドとつながる

この動きを前提とすると、「Matter Ready」は単純に「Matter対応製品を買っておく」という話ではないということに注意してほしい。今後の住宅には、EVチャージャー、ヒートポンプ、太陽光発電、家庭用蓄電池、スマート分電盤、エネルギーゲートウェイといった機器が入り込んでくる。この流れは待ったなしだ。さらに、電力会社やアグリゲーターとの接続、時間帯別料金、需要応答、将来的なVPPとの連携も視野に入ってくることだろう。そうなれば、スマートホームは住宅の外、地域社会まで拡張される。

まだ先の課題にはなるが、今後は住宅の内部制御と、外部のエネルギーインフラをどう安全に、かつ住み心地を損なわずにつなぐかが問われる。

だからこそ、Matterを「家電連携の便利規格」として扱うだけでは不十分である。必要なのは、Matterでつながるもの、Home OSが直接制御すべきもの、OpenADRを介してグリッド側と応答するものを整理し、住宅全体の制御階層を設計することになる。居住者にとっては、電力需給の都合で快適性が乱されるようでは意味がない。
一方で、住宅設備側が適切に制御されれば、快適性を保ちながら電気料金を抑え、地域の電力安定にも寄与できる。

Matter Ready Homeの次なる射程

Matter×OpenADRの連携は、Matter Ready Homeが次に向かう方向を示す。スマートホームは、住宅内の便利な自動化から、住宅と都市インフラを接続する設計思想へと歩み始めた。

もちろん、日本国内に目を向ければ、既存の「ECHONET Lite」エコシステムとの連携や、各地域の電力会社によるOpenADR対応の足並みなど、乗り越えるべきローカルな課題は少なくない。だからこそ、こうしたグローバルな潮流を日本の住宅環境にどう落とし込み、独自の「Matter Ready」を定義するかが、これからのアーキテクトやビルダーの腕の見せ所となるはずだ。

太陽光発電を備えた住宅にスマートホームとエネルギーマネジメントのアイコンが重なるイメージ
Matter Readyの射程は、住宅内の機器接続だけでなく、太陽光発電、EV充電、蓄電池、電力グリッドとの連携へ広がりつつある
Image:Robert Kneschke /Shutterstock.com

AIスマートホームに必要なのは「設計思想」である

クラウドに何を預け、ローカルに何を残すのか

5月の海外スマートホームニュースを見渡すと、Google、eufy、Amazon、Matter/OpenADRは、それぞれ異なる方向から同じ問いに近づいている。それは、これからの住宅を誰が、どのような仕組みで、どこまで理解し、どうやって運用するのかという、きわめて重要な問いである。それぞれの立ち位置は異なり、スマートホームへのアプローチ自体も異なるが、問い自体は同じだ。

Googleは、AIとAPIを通じて、住宅の上位運用層をプラットフォーム化しようとしている。eufyは、セキュリティとプライバシーを両立するために、ローカルAIという方向を示している。AmazonのAlexa+は、生成AI時代の音声インターフェースとして、住まいとの対話を中心に置く。そしてMatterとOpenADRは、住宅を電力システムへ接続する標準化の道筋を示した。

今月のスマートホーム関連の動きが示しているのは、スマートホームが単なる便利機能の競争ではなくなったということだ。これからはAIの判断を誰がどのように運用するのかという、まさにシステムの設計思想が住宅の価値を左右する。

AIは間違いなく住宅に入り込んでくる。AIスマートホームの時代において、住まいはより便利になるだろう。しかし、それ以上に重要なのは、住まいがより安全で、より静かで、より自然に人を支える環境になることだ。照明、空調、セキュリティ、音響、エネルギーが、住む人の行動や時間に寄り添って整う。そこにこそ、LWL onlineが考えるスマートホームの本来の価値がある。

スマートホームは今、ガジェットの時代から、住宅インフラの時代へ移行している。

AI Home Control、音声インターフェース、太陽光発電、蓄電池、EV充電、電力グリッドがつながるAIスマートホームの概念図
AI、音声インターフェース、セキュリティ、エネルギー制御が住宅に重なり、スマートホームは機器操作から住宅インフラの段階へ進みつつある
※生成AIを使用して作成


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