ディオール メゾンの新作「コロール」ランプ。ニュールックを光の造形へ

 取材/LWL online編集部

ディオール メゾンは、ノエ・デュショフール=ローランスとのコラボレーションによる新作「コロール」ランプを発表した。クリスチャン・ディオールの「ニュールック」に着想を得た本作は、ムラーノガラスや京都の真竹による職人技を通じて、クチュールの記憶を住空間の光へと昇華する。

クチュールの記憶を住空間の光へ

ディオール メゾンは、ディオールの美意識をテーブルウェア、オブジェ、テキスタイル、照明などへと展開するホームコレクションである。そこにあるのは、単に美しいインテリアプロダクトではなく、クチュールメゾンが培ってきたフォルム、素材、装飾、サヴォワールフェールを、日々の暮らしの中へと移し替える試みである。

今回発表された「コロール」ランプも、その延長線上にある。着想源となったのは、クリスチャン・ディオールが考案した「ニュールック」の象徴的なスカートライン。ウエストを絞り、裾へ向かって優雅に広がるそのシルエットは、戦後のファッションに新しいエレガンスをもたらした革新的なスタイルとして知られている。

「コロール」ランプでは、そのクチュールの記憶が、光を受け止め、反射し、透過させる立体へと置き換えられている。ランプシェードは、プリーツやドレープを思わせる柔らかな表情をまとい、照明器具でありながら、まるで布が空気を含んで広がる瞬間をとどめたような佇まいを見せる。

ノエ・デュショフール=ローランスが描く有機的なフォルム

本コレクションを手がけるノエ・デュショフール=ローランスは、フランス出身のデザイナーである。
プロダクト、家具、インテリアなど幅広い領域で活動し、素材への繊細なまなざしと、有機的で流れるようなフォルムによって国際的に知られている。

もともと彫刻を学んだバックグラウンドを持つ彼のデザインには、空間とオブジェ、身体と素材の関係を探るような感覚がある。自然や土地、文化、工芸との結びつきを重視する姿勢も特徴で、近年はリスボンを拠点とするプロジェクト「Made in Situ」を通じて、地域の素材や職人技を現代のデザインへと接続する取り組みも行っている。

ディオール メゾンとの協業においても、その姿勢は明確だ。「コロール」ランプは、デザイナーの造形力だけで完結するものではない。ムラーノのガラス職人、京都の竹工芸の職人など、各地に受け継がれてきた手仕事と出会うことで、クチュールのシルエットは、光を宿す工芸作品へと姿を変えている。

ムラーノガラスが生む、布のような透明感

「コロール」ランプの一部は、ムラーノのガラス職人による口吹きガラスで制作される。高温で熱せられたガラスは、職人の息によって形づくられ、繊細なベル状のフォルムを生み出す。

ガラスでありながら、その表情は硬質というよりもしなやかだ。プリーツやドレープを思わせる陰翳が加わることで、素材はテキスタイルのような柔らかさを帯びる。透明感、厚み、揺らぎ、わずかな個体差。それらは機械的な均質性ではなく、手仕事だからこそ生まれるニュアンスである。

照明として点灯したとき、光はそのガラスの揺らぎを通して空間に広がる。単に明るさを得るための器具ではなく、素材そのものが光を受け止め、変化させる存在になる。

ムラーノの職人が口吹きガラスでコロールランプを制作する様子
ムラーノのガラス職人による口吹きガラスの制作風景。熱せられたガラスが、職人の息吹と手仕事によって繊細なフォルムへと形づくられていく。© MAX CORNWALL

京都の真竹と「カナージュ」が結びつくモデルも

さらに特筆すべきは、植物繊維を編む伝統的なかご細工の技術に光を当てたモデルである。なかでも、京都の職人たちによって真竹を用いて制作されるモデルは、ディオール メゾンならではの文化的な交差を感じさせる。

真竹は切断され、均一に整えられた後、幾何学的な構造を形づくるように丁寧に編み込まれる。その構造は、ディオールを象徴する「カナージュ」から着想を得たものだ。カナージュとは、ナポレオン3世様式の椅子の籐編みに由来する、ディオールを代表するモチーフのひとつである。

クチュールメゾンのコードと、日本の竹工芸が出会うことで、ランプは単なる装飾品を超え、文化と技術の対話を宿した作品となる。竹の軽やかさ、手編みの精緻さ、光を透かす構造。そこには、ガラスとはまた異なる、自然素材ならではの陰翳がある。

京都の職人が真竹を編み込みコロールランプの構造を制作する様子
京都の職人たちによって、真竹を用いて制作されるモデル。ディオールを象徴する「カナージュ」に着想を得た幾何学的な構造が、手作業で丹念に編み上げられる。© MAX CORNWALL

照明は空間に置かれるクチュールになる

「コロール」ランプは、照明が住空間における「設備」から「表現」へと移行しているということを示している。

現代のラグジュアリーなインテリアにおいて、照明は明るさを確保するだけではなく、昼と夜の空間の印象を変え、家具やアート、素材の質感を引き立て、住まいに感情的な奥行きを与える存在である。とりわけ、手仕事によって生まれる照明には、デジタル制御された光とは異なる、身体的な温度が宿る。

ディオール メゾンとノエ・デュショフール=ローランスによる「コロール」ランプは、その象徴といえるだろう。ニュールックのスカートライン、ムラーノの口吹きガラス、京都の真竹、カナージュの構造。それらが重なり合うことで、光は単なる現象ではなく、素材と記憶をまとったオブジェになる。

クチュールが身体のための建築であるならば、「コロール」ランプは、住空間のためのクチュールといえるかもしれない。ディオールが培ってきたエレガンスとサヴォワールフェールは、いま、光というかたちで暮らしの中に広がろうとしている。

真竹を編み込んだディオール メゾン「コロール」ランプ
真竹を用いた「コロール」ランプ。カナージュを思わせる編みの構造が、光と影を生み出し、工芸品としての存在感を際立たせる。© MAX CORNWALL

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