【AIスマートホーム/ホームオートメーション特集】ラグジュアリー住宅に相応しい建築統合型スマートホームとは

 取材/LWL online編集部

スマートホームは、大きく分けて2種類ある。ひとつは「デバイス統合型スマートホーム(IoTガジェット型)」、もうひとつは「建築統合型スマートホーム(ラグジュアリー型)」である。

前者は、スマートロックやスマートリモコン、IoT家電、IoTセンサーなどの各種デバイスを、主にクラウドを介して連携させるタイプ。一般住宅において、暮らしの利便性を高めるうえで有効な選択肢である。

一方、後者は、照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、ネットワークまでを、住宅のインフラとして建築と一体で設計するものだ。その出自には、ビルオートメーションや商業空間の設備制御とも通じる思想がある。実際、CrestronやLutronは、住宅だけでなく、オフィス、商業施設、ホテルなどの制御システムにも採用されてきた。ラグジュアリーレジデンスや別荘に相応しいスマートホームは、こちらの階層に属する。

LWL onlineでは、主に後者の建築統合型スマートホームを紹介している。今回は、日本でも導入が進むCrestron、Lutron HomeWorks、HOMMAを手がかりに、スマートホームの階層と、ラグジュアリー住宅に求められる本質的な価値について考えていきたい。

デバイス統合型スマートホームと建築統合型スマートホームの違いを示す比較図
デバイス統合型スマートホームはIoTデバイスをクラウド経由で連携させる。一方、建築統合型スマートホームは照明、空調、AV、セキュリティ、ネットワークを住宅インフラとして統合する
生成AIによって作成

スマートホームにも空間にふさわしいグレードがある

スマートホームにも、住宅のクラスに応じた階層がある。

これは、家具や自動車の世界に置き換えると分かりやすい。ラグジュアリーな空間には、アルフレックスやB&B Italia、カッシーナのような家具が自然に馴染む。一方で、一般住宅には一般住宅にふさわしい家具があり、それぞれに役割と価値がある。どちらが正しいという話ではない。空間のクラス、素材感、デザイン、耐久性、所有体験が異なるということだ。

自動車も同じである。ロールスロイスやベントレーのようなラグジュアリーカーがある一方で、大衆車や軽自動車もある。軽自動車や大衆車は、日常の移動手段として非常に合理的であり、十分な価値を持つ。しかし、静粛性、乗り心地、素材、クラフトマンシップ、ショーファードリブンの移動体験、ブランドの格まで求めるなら、ロールスロイスやベントレーが選ばれる。同じ「車」と呼ぶことはできても、体験価値はまったく異なる。

スマートホームも同じである。一般的な住宅であれば、スマートロック、スマートリモコン、IoT家電、IoTデバイス、スマートスピーカー、クラウドアプリを組み合わせるデバイス統合型スマートホーム(IoTガジェット型)で十分に便利になる。これは一般コンシューマ向けのスマートホームとして、極めて有効な選択肢である。

しかし、ラグジュアリーマンション、ラグジュアリー邸宅、別荘に求められるスマートホームは、その階層とは異なる。そこに相応しいのは、住宅の中核設備をクラウドサービスや個別アプリに委ねるのではなく、ローカルネットワークを基盤に、照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、ネットワーク、電源までを建築と一体で設計する建築統合型スマートホーム、別名ラグジュアリー型スマートホームである。

デバイス統合型は、暮らしに便利な機能を加える。建築統合型は、住まいの質そのものを支える。この違いこそが、スマートホームにおける階層である。

スマートホームという言葉があまりにも広くなった

日本でも、スマートホームという言葉は広く使われるようになった。
スマートフォンで玄関の鍵を開ける。外出先からエアコンを操作する。音声で照明を灯す。アプリで給湯器や床暖房、カーテンを操作する。こうした機能は、もはや一部の先進的な住宅だけのものではない。新築マンションや戸建住宅にも、スマートロック、スマートリモコン、IoT家電、IoTデバイス、アプリ連携設備が採用されるケースは増えている。

これは住宅の利便性を高めるうえで大きな進歩である。スマートロックやスマート照明、IoT家電、IoTデバイス、音声アシスタントは、暮らしにテクノロジーを取り入れる入口として非常に有効だ。従来は専門知識が必要だった住宅のデジタル化を、一般の生活者にも身近なものにしたという意味で、その役割は大きい。

ただし、同じ「スマートホーム」という言葉で語られていても、建築統合型とは中身が大きく異なる。スマートホームを単に「アプリで家電を操作できる住宅」と捉えるなら、スマートロックやスマートリモコン、IoT照明を備えた住宅もスマートホームである。一方で、海外のラグジュアリーレジデンスや別荘におけるスマートホームは、そのようなデバイス統合型の延長線上にはない。

そこでは、スマートホームは便利なIoTデバイスの集合ではなく、照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、ネットワーク、外構までを含めた住宅設備の統合システムとして扱われている。この違いを曖昧にしたままでは、日本におけるスマートホームの議論は先に進まない。重要なのは、スマートホームをひとつの言葉で括ることではなく、その階層を正しく分けて理解することだ。

デバイス統合型と建築統合型はそもそもの出自からして違う

本稿では、スマートホームを大きく二つの階層に分けて考えたい。

ひとつは、「デバイス統合型(IoTガジェット型)スマートホーム」である。スマートロック、スマート照明、IoT家電、スマートリモコン、スマートスピーカー、クラウドアプリなどを組み合わせ、暮らしの一部を便利にするアプローチだ。これは、スマートフォン時代の一般コンシューマ向けIoTデバイスから発展してきたスマートホームといえる。

もうひとつは、「建築統合型(ラグジュアリー型)スマートホーム」である。照明、シェード、空調、床暖房、AV、セキュリティ、ネットワーク、さらにはプールやサウナまでをも、建築や電気設備と一体で設計するスマートホームである。こちらは、ビルオートメーションや商業空間の設備制御にも通じる思想を住宅へ応用したものだ。
CrestronやLutronが、住宅だけでなく、オフィス、ホテル、商業施設、会議室などの制御領域でも用いられてきたことを考えれば、その出自の違いは分かりやすいだろう。Crestronはホワイトハウスや軍事施設でも使われていることで知られている。

つまり、デバイス統合型と建築統合型は、単に規模が違うのではない。そもそもの出発点が違う。前者は機器とクラウドサービスをつなぐ発想であり、後者は建築設備をローカルネットワークで制御する発想から出発している。

両者は、名称が同じでも、クラスも、設計思想も、出自も、体験価値も異なるのだ。

デバイス統合型スマートホームは、個別機器の便利さを生活に加えるものだ。玄関の鍵をスマートフォンで開けられる。照明を音声で点けられる。エアコンを外出先から操作できる。こうした機能は日常的で分かりやすく、導入しやすい。一般的な住宅であれば、デバイス統合型で十分に便利になる場面は多い。

一方、建築統合型スマートホームは、住宅全体の環境を設計するものだ。光、空気、音、映像、安全、遮光、温熱、外構、管理を、ひとつの住環境として統合する。住まい手がアプリを開いて一つひとつ操作するのではなく、生活シーンや時間帯に応じて、住宅そのものが知性を宿したかのように自律的に動く。

前者はスマートフォンをはじめとする機器起点であり、後者はビルオートメーションの系譜を引く建築起点である。ここに、スマートホームの本質的な階層差がある。

キッチン横に設置されたスマートホーム操作パネル
一般住宅でもスマートホーム機能の導入は進んでいるが、ラグジュアリー邸宅では操作パネルの有無以上に、住宅全体の統合設計が問われる
Image:Franck Boston /Shutterstock.com

一般住宅にはIoT型、ラグジュアリー住宅には建築統合型

一般住宅では、デバイス統合型スマートホームは十分に有効である。スマートロック、スマートリモコン、IoT照明、スマートスピーカー、クラウド連携アプリを組み合わせることで、暮らしの利便性は大きく高まる。導入しやすく、価格も比較的抑えられ、入居後にも機器を追加しやすい。一般コンシューマ向けのスマートホームとして見れば、極めて合理的な選択肢である。ただし、クラウド依存や赤外線通信に依存するシステムが多いため、そのリスクは認識しておくべきだろう。

一方、ラグジュアリーマンション、ラグジュアリー邸宅、別荘となると、求められるものは変わる。そこでは、スマートフォンで機器を操作できることだけでは足りない。照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、ネットワーク、外構照明、プールやサウナなどの特殊設備、さらにはダッシュボード機能=管理機能までを、住宅の一部として安定的に動かす必要がある。

住まいの規模が大きくなり、設備が複雑になり、利用者や管理者が増えるほど、単体デバイスとクラウドサービスの組み合わせだけでは、住宅全体の品質を支えきれなくなる。

ラグジュアリー邸宅に相応しいのは、住宅内のローカルネットワークを基盤に、専用プロセッサーや制御システムによって中核機能を動かす建築統合型スマートホームである。遠隔操作やクラウド連携を否定する必要はない。しかし、住宅の基本動作までクラウドに依存するのではなく、照明、シェード、空調、AV、セキュリティといった中核設備は、住宅内のネットワークと制御システムで安定して動作することが望ましい。

これは、単なる機能差ではなく、住まいのクラスに応じた、ある意味当然ともいえる選択である。

スマートフォンで住宅設備を操作するイメージ
両者ともスマートフォンを主な操作端末として使用するので、混同されやすいが、出自が異なることは理解しておいてほしい
Image:GFranck Boston /Shutterstock.com

海外ラグジュアリー邸宅ではスマートホームは住宅設備である

海外のラグジュアリーレジデンスや別荘におけるスマートホームといえば、建築統合型スマートホームが一般的である。中核にあるのは、Crestron、Lutron HomeWorks、Control4、Savantなどに代表される、住宅全体を統合するホームオートメーションシステムである。

これは、単なるブランド選択の問題ではなく、住宅の階層の問題である。

一般住宅や標準的なマンション住戸であれば、デバイス統合型スマートホームは有効だろう。だが、数百平方メートル規模の邸宅、複数のベッドルームを持つ別荘、ホームシアターやオーディオルーム、プール、サウナ、ワインセラー室、広い庭を備えた邸宅では、同じ発想では成立しない。

照明回路が多く、窓の面積も広く数も増えるため、シェードやカーテンの制御も複雑になる。空調はエリアごとに分かれ、床暖房や換気、湿度管理も関係する。AV機器は複数の部屋に分散し、ホームシアターもある。セキュリティ、インターホン、防犯カメラ、外構照明、ガレージ、ゲートも連動する。プールやサウナ、ワインセラー室、アート室などの特殊設備や特殊な空間もある。別荘であれば、不在時管理、来訪前の空調制御、管理会社との連携、ゲスト利用時の権限設定も必要になる。

これらを、IoT型のスマートホームで管理するのは現実的ではない。むしろ、機器が増えるほど操作は煩雑になり、保守も難しくなる。ラグジュアリー住宅に求められるのは、アプリの数ではなく、統合された住宅体験である。

だからこそ、海外のラグジュアリー邸宅では、スマートホームは建築や設備の一部として設計される。スマートホームは、暮らしに便利さを足すものではなく、最初から住宅に組み込まれるインフラである。

照明が灯るモダンなラグジュアリー邸宅
Lutron HomeWorksのキービジュアル。HomeWorksは、邸宅全体の照明、シェード、空調を住宅設備として統合する

クラウド型タイプの寿命と、住宅インフラの寿命

デバイス統合型スマートホームと建築統合型スマートホームでは、寿命の考え方も異なる。

一般的なIoTガジェットは、家電やデジタル機器に近い寿命で考える必要がある。スマートリモコン、スマートスピーカー、スマートロック、IoT照明、各種センサーは、数年単位で製品が更新される。アプリの仕様変更、クラウドサービスの変更、通信規格の変化、メーカーのサポート終了によって、使い勝手や保守性が大きく変わることもある。

これは、一般コンシューマ向けデバイスの宿命でもあり、仕方がない。価格を抑え、導入しやすく、機能更新のスピードが速い一方で、住宅そのものと同じ寿命を前提にしているわけではない。

一方、建築統合型スマートホームは、住宅設備として設計される。照明制御、シェード制御、空調制御、AV制御、セキュリティ、配線、ラック、制御盤、キーパッド、タッチパネルなどは、建築や電気設備と一体で組み込まれる。そのため、初期設計の段階で、将来の保守、更新、交換を見越した計画が必要になる。

もちろん、建築統合型スマートホームも一度入れれば永遠に更新不要というわけではない。むしろ、長寿命の住宅設備として設計するからこそ、更新を前提にしておく必要がある。照明や配線、スイッチ、シェードの機構部分は長く使える一方で、ネットワーク機器、Wi-Fiアクセスポイント、ルーター、スイッチングハブは、一定周期で更新される。

特にネットワーク設計は、5年程度をひとつの更新目安として考えておきたい。Wi-Fi規格、セキュリティ要件、接続機器数、ストリーミングやリモート監視の負荷は、数年で大きく変わる。ラグジュアリー邸宅では、スマートホーム機器だけでなく、スマートフォン、タブレット、PC、テレビ、ストリーミング機器、防犯カメラ、インターホン、ゲスト用ネットワーク、管理用ネットワークなど、多数の機器が同時に接続される。

そのため、建築統合型スマートホームでは、制御システムだけでなく、ネットワーク設計そのものが重要になる。有線LAN、PoE、ラック、UPS、VLAN、Wi-Fiアクセスポイントの配置、保守用アクセス、管理会社の遠隔確認まで含めて設計する必要がある。ここを軽視すると、どれほど高度なホームオートメーションを導入しても、住宅全体の安定性は損なわれる。

デバイス統合型は、機器を買い替えることで進化する。建築統合型は、住宅インフラとして設計し、必要な部分を計画的に更新しながら長く使い続ける。家電量販店で購入するルームエアコンと、設備として導入する業務用の天カセエアコンの違いと喩えればわかりやすいかもしれない。この寿命の違いも、両者の階層を分ける重要なポイントである。

日本でも導入が進み始めた、主要な建築統合型スマートホーム

では、ラグジュアリー邸宅に相応しい建築統合型スマートホームには、どのような選択肢があるのか。

海外では、Crestron、Lutron HomeWorks、Control4、Savantなどが、ラグジュアリーレジデンスや別荘、ホテル、商業空間で採用されてきた。日本ではまだ市場全体として普及しているとは言い難いが、ラグジュアリー邸宅や高級マンション、別荘の領域では、こうした建築統合型スマートホームの導入が少しずつ始まっている。

ここでは、日本でも導入を検討しやすい代表的な存在として、CrestronLutron HomeWorksHOMMAを取り上げる。

それぞれの役割は同じではない。Crestronは住宅全体の統合制御、Lutron HomeWorksは照明とシェードを中心とした光環境の制御と空調制御、HOMMAは住宅そのものに知性を組み込む建築統合型の新たなアプローチとして捉えると分かりやすい。

Crestron:複雑な住宅設備をひとつの体験に束ねる

建築統合型スマートホームを語るうえで、Crestronは代表的な存在である。Crestronは、照明、シェード、空調、音響、映像、セキュリティなどを横断的に制御し、住宅全体をひとつの操作体験にまとめるシステムとして知られている。

ラグジュアリー邸宅では、設備が複雑になる。リビングの大型ディスプレイ、ホームシアターのプロジェクター、複数室のスピーカー、照明シーン、電動シェード、空調、セキュリティを、それぞれ別々のリモコンやアプリで操作していては、暮らしの質は高まらない。むしろ、設備が増えるほど不便になる。

Crestronのような統合制御システムの価値は、複雑な設備を裏側で束ね、住まい手にはシンプルな操作として提示することにある。たとえば「映画を見る」というシーンを選べば、照明が落ち、シェードが閉まり、プロジェクターとAV機器が起動し、音響が適切なモードに切り替わる。「パーティ」、「食事」、「就寝」、「外出」といったシーンも同様である。

ラグジュアリー邸宅におけるスマートホームは、生活シーンを美しく設計することが目的である。Crestronは、そのための住宅の司令塔として位置づけることができる。

Crestronの制御プロセッサー
Crestronのコントローラー。建築統合型スマートホームでは、住宅内の照明、空調、AV、セキュリティなどを専用プロセッサーで統合制御する
Crestronのスイッチ
CrestronのスイッチHorizon

Lutron HomeWorks:ラグジュアリー住宅における光のインフラ

Lutron HomeWorksは、照明とシェード、そして空調を中心に、ラグジュアリー住宅の空間品質を支えるシステムである。高級住宅において、照明は単に明るさを確保するための設備ではない。素材の質感を引き出し、アートを美しく見せ、家具の陰影を整え、庭や外構との連続性をつくる。光は、建築の印象そのものを左右する。

Lutron HomeWorksの価値は、照明を「点ける/消す」から解放し、暮らしのシーンとして制御できる点にある。朝、昼、夕方、夜。食事、読書、映画、来客、就寝。時間帯や行為に合わせて、光の明るさ、色味、配光、シェードの開閉を組み合わせることで、空間はまったく異なる表情を見せる。

また、ラグジュアリー住宅では、壁面の美しさも重要である。スイッチやリモコンが乱立すれば、どれほど高価な家具や素材を使っても、空間の完成度は損なわれる。Lutron HomeWorksのようなシステムは、操作部を整理し、キーパッドやシーン制御によって、インテリアと制御を両立させる。

光を制御することは、空間を制御することだ。Lutron HomeWorksは、建築統合型スマートホームにおける「光のインフラ」として捉えるべき存在である。

電動シェードとキーパッドを備えたラグジュアリー住宅のリビング
Lutron HomeWorksは「光のインフラ」であるとともに、空調の制御も行う。照明とシェードの制御は、ラグジュアリー住宅における空間品質を左右する。壁面のキーパッドは、複数のシーンを美しく呼び出すためのインターフェースとなる
シーン名が刻印された上質な壁面キーパッド
Lutron HomeWorksのスイッチ、Palladiom。ラグジュアリーな空間に最適なスイッチだ

HOMMA:住宅そのものに知性を組み込む

HOMMAは、CrestronやLutron HomeWorksとは異なる角度から、建築統合型スマートホームの可能性を示している。HOMMAが掲げるのは、住宅の設計段階からテクノロジーを組み込む発想である。照明、空調、遮光、センサー、セキュリティ、アプリ、住宅内データを組み合わせ、住まいそのものに知性を持たせる。

従来のスマートホームは、人がアプリを開き、機器を操作することが中心だった。しかし本来、住まいが賢くなるということは、人の操作が増えることではない。むしろ、操作を減らすことに価値がある。人の動き、時間帯、在室状況、生活リズムに応じて、照明や空調が自然に反応する。スマートフォンを取り出さなくても、住環境が整う。そこに、建築統合型スマートホームの本質がある。

HOMMAは、住宅をハードウェアとソフトウェアの両面から考えるアプローチだといえる。日本において、ラグジュアリー型スマートホーム、あるいは建築統合型スマートホームはまだほとんど普及していない。その意味でHOMMAは、海外的なホームオートメーションの思想を、日本の住宅市場に接続するうえで重要な存在になる。

人の動きに合わせて階段照明が点灯する住宅空間
HOMMAのシステムは操作レスを基本としている。住まいが知性を持つとは、操作を増やすことではなく、人の動きや生活シーンに応じて、光や空調が自然に整うことである
住宅平面図上に広がるセンサーネットワークのイメージ
HOMMAのシステムは、センサーやネットワークを通じて住まい全体の状態を把握し、自動制御へとつなげる

海外にはControl4やSavantもあるが、日本では市場が育っていない

今回の記事では、日本でも文脈化しやすいシステムとして、Crestron、Lutron HomeWorks、HOMMAを中心に取り上げている。しかし、海外にはほかにも、Control4やSavantなど、建築統合型スマートホームに近いシステムが存在する。これらも、照明、空調、AV、セキュリティなどを統合し、住宅全体をひとつの操作体験にまとめるためのプラットフォームとして知られている。

海外では、こうしたホームオートメーションシステムを扱うインテグレーター文化が育っている。建築家、照明デザイナー、AVインテグレーター、電気設備業者、ネットワーク設計者が連携し、住宅の設計段階からテクノロジーを組み込む。ラグジュアリーレジデンスにスマートホームを入れるということは、単にIoT機器を導入することではなく、住宅全体の制御システムを設計することを意味する。

一方、日本では、この市場がまだ十分に形成されていない。スマートホームといえば、スマートロック、スマートリモコン、IoT家電、IoTデバイス、音声アシスタントといった一般コンシューマ向けの文脈で語られることが多い。高級住宅や別荘であっても、照明、空調、AV、セキュリティ、ネットワークが個別に設計され、建築統合型制御の思想が入りにくいケースは少なくない。

その結果、日本ではラグジュアリー邸宅であっても、デバイス統合型スマートホームの延長で語られてしまうことがある。しかし、本来この二つは別物である。一般コンシューマ向けのデバイス統合型と、ラグジュアリー住宅向けの建築統合型は、同じスマートホームという言葉を使っていても、属している階層が違う。大衆車とベントレーの階層が異なることと同様だ。

日本で必要なのは、まずこの違いを認識することだ。

CrestronやLutronを体感することが可能なハナムラのショールーム
ハナムラのショールームではCrestronやLutronを体感することが可能である

ラグジュアリー住宅に必要なのは、クラウド操作ではなく空間全体の統合制御である

ラグジュアリー住宅におけるスマートホームの価値は、操作できることではない。むしろ、操作しなくても整っていることにある。

朝、自然光と照明が穏やかに立ち上がる。日中は日射に合わせてシェードが動き、室温やまぶしさを調整する。夕方には照明の色温度が落ち着き、食事や会話にふさわしい光になる。夜、映画を見るときには、照明、シェード、AV機器、空調が一体で切り替わる。就寝時には、光が絞られ、空調が整い、セキュリティが有効になる。不在時には、照明、空調、防犯、外構が管理モードに移行する。

このような体験は、IoTデバイスを積み重ねただけでは実現しにくい。必要なのは、生活シーンを中心に住宅を設計することだ。デバイスではなく、空間を制御する。機能ではなく、体験を設計する。ここに、ラグジュアリー型スマートホームの価値がある。

高級住宅では、便利さだけでは十分ではない。静けさ、美しさ、信頼性、保守性、寿命、管理性が求められる。テクノロジーは目立つ必要がない。むしろ、建築やインテリアの中に溶け込み、住まい手に意識されないほど自然に働くことが望ましい。

スマートフォンで家じゅうを操作できることは、もはやラグジュアリーではない。ラグジュアリーなのは、スマートフォンを取り出さなくても、光、空気、音、安全が自然に整っていることである。

日本の高級住宅・別荘にこそ、建築統合型スマートホームが必要になる

日本では、これから高級住宅や別荘の領域で、建築統合型スマートホームの必要性が高まっていくはずだ。

別荘では、不在時の管理が大きな課題になる。室温、湿度、漏水、停電、侵入、設備の稼働状態をどう把握するのか。来訪前に空調や床暖房、給湯、サウナをどう整えるのか。家族、ゲスト、管理会社にどの権限を与えるのか。こうした課題は、デバイス統合型(IoTガジェット型)スマートホームでは解決しにくい。

都市部のラグジュアリーレジデンスでも同じである。照明計画、アート、ホームシアター、オーディオ、電動シェード、空調、セキュリティ、ネットワークを個別に考えていては、住宅全体の完成度は高まらない。むしろ、設備が増えるほど、操作と保守は複雑になる。

だからこそ、建築家、インテリアデザイナー、照明デザイナー、AVインテグレーター、ネットワーク設計者、電気工事会社、管理会社が、設計初期から連携する必要がある。

どの部屋にどのようなシーンを設けるのか。どの設備を連動させるのか。どこにキーパッドを置き、どこにラックを設け、どの系統を有線で引くのか。Wi-Fiアクセスポイントをどこに配置し、保守用ネットワークをどう分けるのか。こうしたことは竣工後に簡単に変更できるものではない。

住まいのグレードに応じて、スマートホームも選び分ける時代へ

デバイス統合型スマートホームは、一般コンシューマ向けの有効な選択肢である。導入しやすく、分かりやすく、日常生活の一部を便利にする。スマートホームの裾野を広げるという意味で、その価値は大きい。

しかし、それをラグジュアリー邸宅や別荘のスマートホームと同じものとして語るべきではない。建築統合型スマートホームは、住宅の設備、空間、インフラ、保守、体験を一体で設計するものであり、一般的なIoT型の延長にはない。

海外のラグジュアリーレジデンスでは、この階層の違いが明確である。一般住宅には一般住宅向けのスマートホームがあり、ラグジュアリー住宅にはラグジュアリー住宅向けのホームオートメーションがある。そこでは、スマートホームは家電操作の仕組みではなく、住宅の質そのものを支えるインフラとして扱われる。日本でも、そろそろこの認識が必要になる。

スマートホームは、もはやひとつの言葉では語れない。デバイス統合型スマートホームと、建築統合型スマートホーム。その違いは、導入する機器の違いではなく、住まいに対する思想の違いであり、そもそもの出自の違いである。

一般コンシューマ向けのスマートホームは暮らしに便利さを加える。ラグジュアリー型スマートホームは住まいそのものを知的に整える

ラグジュアリーな空間に、アルフレックスやB&B Italiaの家具が自然に馴染むように。ロールスロイスやベントレーが、単なる移動手段を超えた体験価値を持つように。ラグジュアリー邸宅には、それに相応しいスマートホームの階層がある。

この階層を理解することが、日本の高級住宅文化を次の段階へ進める第一歩になるのだ。

夜景に照明が灯るラグジュアリー邸宅の外観
ラグジュアリー邸宅では、スマートホームは単なる機器操作ではなく、光、空調、セキュリティ、ネットワークを含む住宅インフラとして設計される
Image:Girfa munawar /Shutterstock.com
  • 取材

    LWL online 編集部

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