中平穂積、初の追悼回顧展をパリと東京で開催。浜離宮恩賜庭園で希少なジャズ写真を展示

 取材/LWL online編集部

世界的なジャズフォトグラファーとして知られる中平穂積の初の追悼回顧展「THE TRAJECTORY OF JAZZ ― Jazzの軌跡 ―」が、2026年8月、フランス・パリと東京で同時期に開催される。パリ展は8月25日から30日まで、パリ市内の「GALERIE JOSEPH」で開催。東京展は8月28日から30日まで、浜離宮恩賜庭園内の「芳梅亭」を会場とする。中平が遺した希少なシルバーゼラチンプリントを通じて、ジャズの歴史と、その演奏家たちが放った一瞬の輝きをたどる展覧会となる。

半世紀にわたり、ジャズの巨人たちを追い続けた

ジョン・コルトレーンやマイルス・デイビスら、ジャズの巨人たちを撮影

中平穂積は1936年、和歌山県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、1961年に行われたアート・ブレイキーの初来日公演を撮影したことをきっかけに、ジャズフォトグラファーとしての活動を始めた。

その後、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイビス、ビル・エヴァンス、セロニアス・モンクをはじめ、20世紀のジャズ史を形づくった数多くの演奏家を撮影。半世紀以上にわたり、ステージ上の姿だけでなく、音楽家の表情や佇まい、その場に漂う空気まで写真に刻み続けた。

作品はレコードやCDのジャケット、映画などにも採用され、国内外で高い評価を受けている。中平は2024年12月1日、88歳で逝去した。

中上健次が通った「DIG」、三島由紀夫に愛された「DUG」

中平は写真家として活動する一方、1961年に新宿でジャズ喫茶「DIG」を、1967年には「DUG」を開店したことでも知られる。両店は、演奏を聴く場所であると同時に、音楽家や作家、芸術家たちが集う文化的なサロンとして、日本のジャズ文化を支えてきた。

なかでも中上健次は上京したその日に「DIG」を訪れ、その後もたびたび足を運んだというエピソードが残されている。

また、三島由紀夫をはじめ、寺山修司や村上春樹など、多くの文化人に愛された「DUG」は、入居する建物の解体に伴い、2026年6月27日に閉店。中平の追悼展が開催される2026年は、日本のジャズ文化にとって、一つの時代の記憶を次代へと受け渡す節目の年ともなった。

中平穂積 写真家 60周年記念 (2021年 L-1Gallery) 展示会

パリの「動」と、浜離宮の「静」

本展を特徴づけるのが、パリと東京という二つの都市、そして性格の異なる二つの空間を結んだ構成だ。

パリ会場となるGALERIE JOSEPHは、パリ市内に30以上の展示空間を展開し、現代アートや写真、デザインの国際展を手がけるアートネットワークである。本展では、都市のエネルギーと創造性を象徴する「動」の空間として位置づけられる。

パリの中平穂積追悼回顧展会場となるGALERIE JOSEPHの外観
パリ展の会場となるGALERIE JOSEPH。現代都市のエネルギーと創造性を象徴する「動」の空間として位置づけられる

一方、東京会場となるのは、江戸時代から続く浜離宮恩賜庭園内の芳梅亭だ。庭園の緑と水景に囲まれた歴史的な空間を、日本文化が持つ精神性や静謐さを象徴する「静」の場として捉える。

中平穂積追悼回顧展の東京会場となる浜離宮恩賜庭園・芳梅亭の外観
東京展の会場となる浜離宮恩賜庭園の芳梅亭。歴史と静謐さを湛える「静」の舞台で、希少な作品群を展示する

現代都市と歴史的庭園、パリと東京、動と静。対照的な二つの環境に作品を置くことで、中平の写真が内包するジャズの躍動感と、演奏の合間に訪れる静けさを浮かび上がらせる試みだ。

中平は、生涯にわたってフランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンを敬愛し、フランスで自身の作品を展示することを望んでいたという。ブレッソンが活動し、写真芸術が育まれたパリと、中平が活動の拠点とした東京。本展は二つの都市を結びながら、一人の写真家が歩んだ軌跡をたどる文化プロジェクトでもある。

希少なシルバーゼラチンプリントを展示

今回展示されるのは、中平が制作したモノクロームのシルバーゼラチンプリントだ。

中平は作品の販売を主な目的としていなかったため、現存するオリジナルプリントの数は極めて少ない。また、印画紙の仕様変更によって従来の色調を再現することが難しくなったことから、2014年以降は新たな写真プリントを行っていなかったという。

デジタル画像を通じて写真を見ることが日常となった現在、印画紙の表面に定着された光の階調や、黒の深さ、プリントそのものの質感を空間の中で体験できる機会は貴重だ。

中平の写真は、ジャズの歴史を伝える記録であるだけではない。演奏家の身体の動き、ステージに差し込む光、音が鳴る直前と直後の緊張感を一枚の画面に凝縮した、独立した写真表現でもある。

本展では、これまで音楽の記録写真として語られることの多かったジャズ写真を、現代アートの一分野として改めて提示する。住宅やホテル、ラウンジなどの空間において、写真やアートが音楽の記憶をどのように呼び起こすのかを考えるうえでも、示唆に富む展覧会となりそうだ。

中平穂積追悼回顧展のプロフィールに掲載されたジャズフォトグラファーのポートレート
半世紀以上にわたり、世界のジャズ・ジャイアンツを撮り続けた写真家。その歩みをたどる初の追悼回顧展が、パリと東京で開催される

開催概要

パリ展

  • 展覧会名: THE TRAJECTORY OF JAZZ Hozumi Nakadaira PHOTO EXHIBITION 2026 | PARIS & TOKYO
  • 会期:2026年8月25日(火)~8月30日(日)
  • 開館時間:11時~18時
  • ※最終日は17時閉館。現地時間
  • 会場:GALERIE JOSEPH 5 Rue Sainte-Anastase, 75003 Paris, France
  • 観覧料:無料

東京展

  • 会期:2026年8月28日(金)~8月30日(日)
  • 開館時間:8月28日:11時30分~16時
  • 8月29日:10時~16時
  • 8月30日:10時~15時
  • 会場:浜離宮恩賜庭園 芳梅亭
  • 観覧料:無料
  • ※浜離宮恩賜庭園の入園料として一般300円が別途必要
  • 主催:IL ART Inc.
  • 共催:FLECTRA、L-1Gallery
  • 協力:東京都、都立浜離宮恩賜庭園、Galerie Joseph、ACUMEN、新宿DUG、東京キララ社、VOID²ほか
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