ポルトローナ・フラウ×舘鼻則孝、伊勢丹新宿店で共演。「Heel-less Shoes」と名作家具が出会う
取材/LWL online編集部
イタリアを代表するラグジュアリーファニチャーブランド「Poltrona Frau(ポルトローナ・フラウ)」が、アーティスト・舘鼻則孝氏との特別展示「Poltrona Frau meets Noritaka Tatehana」を、2026年9月5日から29日まで伊勢丹新宿店で開催する。100年以上受け継がれてきた革のクラフツマンシップと、日本の伝統文化を「Rethink」する舘鼻氏の表現。両者の出会いから、工芸と現代のラグジュアリーの関係を考える。
イタリアの家具と日本の現代アートが出会う
イタリアを代表するラグジュアリーファニチャーブランドであるポルトローナ・フラウの家具とともに、江戸時代の花魁の高下駄から着想を得た舘鼻則孝氏の代表作である《Heel-less Shoes》や《Heel-less Shoes Drawing #1》《#2》などを展示。9月5日には舘鼻氏本人の在店も予定されている。
イタリアの家具と日本の現代アート。一見すると異なる文化圏の組み合わせに思えるが、その背景をたどると、単なる異業種コラボレーションではないことが見えてくる。
長い時間をかけて受け継がれてきた技術や美意識を保存することにとどまらず、現代に通用する表現へと読み替え続ける。そこからは、両者を貫く共通の思想が見えてくる。
1912年創業。クラフツマンシップを現代へつなぐポルトローナ・フラウ
ポルトローナ・フラウは1912年にレンツォ・フラウがイタリア・トリノで創業した。
上質な素材と高度な職人技を背景に、イタリアの上流階級から支持を集め、すでに1920年代には王室のための家具も手掛け、高級家具メーカーとしての地位を築いていった。現在まで100年以上の歴史を重ねてきた。
ポルトローナ・フラウで知られているのが、独自のレザー「Pelle Frau®(ペレ・フラウ)」だ。厳選した革を加工し、触感や発色、しなやかさ、耐久性といった感覚的・物性的な品質まで細かく管理し、ポルトローナ・フラウならではの柔らかな曲線や身体になじむ座り心地を生み出している。現在ではクロムフリーのなめしを採用したレザーなど、環境負荷低減を意識した素材開発への取り組みも進めている。

また、同ブランドの活動領域は住宅向けの家具にとどまらず、建築家やデザイナーとの協働のもとで、ホテルや美術館などの商業・公共空間、さらには自動車や航空機などのモビリティのインテリアへも、革加工や縫製の技術を応用している。
ポルトローナ・フラウというブランドを理解するうえで、こうした住宅家具以外へのアプローチは重要なポイントとなる。
100年以上の歴史のなかで継承されてきたクラフツマンシップを、完成された「伝統」として固定するのではなく、現代の多種多様な空間へと更新し続けているのだ。
この「伝統を現代へ翻訳する」という姿勢こそが、今回共演する舘鼻則孝氏の創作活動につながっている。

花魁の高下駄を現代アートへ。舘鼻則孝が掲げる「Rethink」
今回、そのポルトローナ・フラウと空間をともにするのが、アーティストの舘鼻則孝氏である。
東京藝術大学美術学部工芸科で染織を学び、2010年に卒業した。
創作活動の概念として「Rethink」を掲げ、日本古来の文化や美学を独自の視点から捉え直し、そこに含まれている美意識や価値観を再解釈することで、新たな造形として提示する。
「Rethink」という概念を象徴する作品が《Heel-less Shoes》である。
着想源となったのは、江戸時代の花魁が履いた高下駄。踵という構造を取り去り、極端な高さと曲線を持つ独自の造形へと再構成した。レディー・ガガが着用したことで世界的に知られるようになり、同シリーズの作品はニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などにも収蔵されている。

日本の工芸の背景にある文化を再解釈し、新しい文脈へ置き換える作業を行う。舘鼻氏の作品における伝統とは現在を考えるための起点なのである。
《Heel-less Shoes》を家具のある空間で見る
「Poltrona Frau meets Noritaka Tatehana」では、《Heel-less Shoes》とともに、《Heel-less Shoes Drawing #1》《#2》も展示される。
今回展示される《Heel-less Shoes》は2021年制作。牛革やピッグスエードにスワロフスキークリスタルなどを組み合わせた作品で、高さ337mm(片足)となる。《Heel-less Shoes Drawing》は2026年制作の版画作品で、《Heel-less Shoes》をレタープレス(活版印刷)によって平面へと展開。アンディ・ウォーホルによる靴のイラストレーションシリーズへのオマージュとして制作された。

こうしたアートがポルトローナ・フラウのソファやチェア、テーブルによって構成される「暮らし」の空間に置かれる。美術館で作品単体を見るのとは異なる関係性が生まれる。
家具もアートも、空間から切り離されたオブジェではなく、人が座り、歩き、視線を動かすなかで互いの素材や輪郭が響き合うことによって、デザイン空間を生み出していく。
この「家具とアートの距離感」と「家具とアートが創り出すデザイン空間」も体感できる機会となる。
共通するのは「伝統を守る」ことではなく、「伝統を更新する」こと
ここまで見てくると、ポルトローナ・フラウと舘鼻則孝氏、両者を結ぶひとつの軸が見えてくる。
ポルトローナ・フラウは、100年以上積み重ねてきた革加工をはじめとする技術を住宅向けの家具からホテル、公共空間、自動車、航空機といった領域へと拡張してきた。
舘鼻氏は、日本の伝統文化や工芸技法に着想を得ながらも、「Rethink」によって現代の価値観のなかで再解釈することで、新しい造形へとつくりあげていく。
完成された形式として伝統を扱わず、伝統の本質を見極め、時代、空間、役割に沿って変化させる。そうした更新を繰り返すことで、伝統は初めて現在と接続するに至る。
主催者も、「受け継がれてきた技と精神を大切にしながら、現代の表現へと昇華させる」創造の姿勢と美意識が両者に共通し、響き合うと説明している。
工芸はどう現代のラグジュアリーになるのか?
この「更新され続ける伝統」という視点は、現代のラグジュアリーを考えるうえでも重要である。
LWLではラグジュアリーを価格や希少性だけではなく、技術や文化、美意識の蓄積としても捉えている。だからこそ、この「更新され続ける伝統」という視点は実に重要になるのだ。
ポルトローナ・フラウにも舘鼻則孝氏にも、完成した作品の背後には、直接見えない膨大な「時間」の蓄積がある。
1912年から革と家具の文化を更新し続けてきたポルトローナ・フラウと、日本の伝統文化を「Rethink」することで新たな表現を創り出してきた舘鼻則孝氏。
両者によるコラボレーションは、家具とアートの美しい組み合わせに加えて、「伝統」がいかにして現代のラグジュアリーへと変換されるのかを考える機会にもなるだろう。
「Poltrona Frau meets Noritaka Tatehana」開催概要
- 会期:2026年9月5日(土)~9月29日(火)
- 会場:伊勢丹新宿店 本館5階 リビングルーム/ポルトローナ・フラウ
- 営業時間:10:00~20:00
- アーティスト在店予定:9月5日(土) 舘鼻則孝氏
- 主な展示作品
- 舘鼻則孝《Heel-less Shoes》(2021年)
- 《Heel-less Shoes Drawing #1》(2026年)
- 《Heel-less Shoes Drawing #2》(2026年)
伊勢丹新宿店「Poltrona Frau meets Noritaka Tatehana」
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