JBL「Summit Everest」日本発売。80年の歴史が生んだ「オブジェのような小さな建築」

 取材/LWL online編集部

JBLが創立80周年の集大成となるフラッグシップスピーカー「Summit Everest(サミット エベレスト)」を2026年秋に日本発売する。価格は1本1,210万円(税込)。1985年の初代DD55000から40年以上続くProject EVERESTの系譜を受け継ぎ、幅992mm、237kgの巨体に最新の音響技術を投入した。JBLが追い続けてきた「理想の家庭用スピーカー」とは何か。その歴史をたどりながら、家具やアートのように住空間を構成する「見せるテクノロジー」としての価値を読み解く。

JBLの歴史。「プロの性能」と「美しい住空間」から始まった

Hartsfield、ParagonからProject EVERESTへ。JBL「Project」スピーカーの系譜

JBLの創業者James B. Lansing(ジェームス・B・ランシング)は、映画・音楽産業の発展に大きな足跡を残したエンジニアである。1946年、ランシングはLansing Sound Inc.を設立した。

JBL公式「JBLストーリー」

JBLがブランドの歴史を説明する際に掲げているのが、「プロ機器の性能を持った美しい家庭用スピーカー」の実現である。高い音響性能と、住空間に置くプロダクトとしての美しさの両立が、ブランド誕生時からひとつの重要なテーマだった。

1940年代には15インチ・ワイドレンジユニット「D130」などを開発。その後1950年代になると、JBLの歴史を語るうえで欠かすことのできない「Hartsfield」、そして「Paragon」が登場する。

とりわけParagonは、左右のスピーカーを巨大な曲面キャビネットのなかへ一体化した、家具であると同時に、ひとつの「小さな建築」を思わせる存在だった。音を再生する装置でありながら、造形そのものが室内の風景を構築する。JBLは早くから、スピーカーを音響機器でありながらも、空間を構成する存在として提示してきたのである。

優れた音響性能と美しい造形を両立したモデルとして、およそ30年間にわたりJBLを代表するフラッグシップの座に君臨した。

1960年代には、日本のジャズ喫茶やミュージックパブにもJBLの大型スピーカーが広く浸透。さらに1970年代には、プロフェッショナル・ディビジョンを発足し、「4300 Series」に代表されるスタジオモニターによってプロ音響市場での存在感を高めていった。当時の作家や音楽家のエッセイに、「JBL」は度々登場している。

プロフェッショナルとホーム、音響技術と家具的アート的造形。その二つの世界を横断してきたことこそ、JBLというブランドの大きな特徴なのである。

JBLが「制約を外して」つくるProjectスピーカー

JBLの歴史において、特別な存在として開発されてきたのが「Project」と呼ばれる一連のスピーカー群である。

JBLのProjectスピーカーに共通する思想はきわめて明快である。その時代に利用できる技術、材料、製造技術を可能な限り投入し、音響再生の限界そのものを押し上げることである。

1950年代のHartsfieldから始まったこの考え方はParagonへと受け継がれ、後にProject EVERESTやProject K2へと発展していく。その時代に同社が到達できる最高水準の技術をひとつのシステムへ集約した存在がProjectであると、JBLは説明している。

1985年、新しい時代のフラッグシップとして登場したのが初代「Project EVEREST DD55000」だった。

その後、2000年代の「EVEREST DD66000」、2010年代の「DD67000」へと進化。EVERESTは約40年にわたり、JBLの家庭用スピーカー技術における最高峰を示し続けてきた。

その名称は、世界最高峰の山「エベレスト」に由来する。JBLにとってEVERESTとは単なる製品シリーズではなく、「その時代にJBLがどこまで到達できるのか」を示す技術的なマイルストーンなのである。

80周年の頂点「Summit Everest」。第4世代EVERESTが示す新たな到達点

今回登場するSummit Everestは、このProject EVERESTの思想を引き継ぐ第4世代のモデルとなる。

JBLは2025年、ハイエンドスピーカーの新体系として「Summit Series」を始動。「Summit Makalu」「Summit Pumori」「Summit Ama」を発表した。そして2026年、創立80周年に合わせてSummit EverestとSummit K2を加え、5モデルからなるシリーズを完成させた。

JBLはSummit Seriesを、同社がこれまで住宅用として開発したなかで、最も技術的に完成度の高いスピーカー群と位置づける。

その頂点がSummit Everestだ。

JBL Summit EverestのD2820コンプレッションドライバー、ミッドバス、380mmウーファー
Summit Everestの音響システムを構成する主要ユニット。左からD2820 D2コンプレッションドライバー、250mm径ミッドバス「JMW250SC」、380mm径ウーファー「JW380SC」

中高域には、新開発の50mm径×2 D2コンプレッションドライバー「D2820」を3基搭載する。それぞれの出力を専用設計の「3-into-1マニフォールド」で統合し、大型Sonoglass製HDI(High-Definition Imaging)ホーンへ導くという構成である。高い能率と音圧を確保しながら歪みを抑え、広い帯域で精密な指向性をコントロールする。JBLが長年得意としてきたコンプレッションドライバーとホーンの思想を、現代の技術で再構築した格好だ。

JBL Summit Everest D2820ドライバー3基と3-into-1マニフォールド
50mm径D2コンプレッションドライバー「D2820」を3基配置し、専用の3-into-1マニフォールドで出力を統合。大型Sonoglass製HDIホーンへと導くSummit Everest独自の高域システム

さらに低域側も圧巻だ。

250mm径ミッドバスユニット「JMW250SC」を2基、そして380mm径ウーファー「JW380SC」を2基搭載。振動板には、カーボンファイバーを配合したピュアパルプの間へクローズドセルフォームを挟み込んだ3層構造の「HC4(Hybrid Carbon Cellulose Composite)」コーンを採用した。

軽量化と高剛性化を両立するとともに、Differential Drive構造やネオジム磁気回路、デュアルボイスコイルなどを組み合わせ、大振幅時でも高いリニアリティと低歪みを目指した。

JBL Summit Everest JW380SC 380mmウーファーの断面構造
Summit Everestに2基搭載される380mm径ウーファー「JW380SC」の断面構造。Differential Drive構造やデュアルボイスコイル、強力なネオジム磁気回路を採用し、大振幅時の安定性と低歪み再生を追求する

圧倒的な存在感。Summit Everestは空間デザインの主役に

Summit Everestは圧倒的な存在感をもって、わたしたちの目の前に現れる。

外形寸法は幅992×高さ1,443×奥行695mm。重量は1台237kg。ステレオ再生のため2台導入すれば、スピーカーだけで474kgに達する。

感度は96dB、インピーダンスは4Ω、周波数特性は20Hz~23kHz(-6dB)。クロスオーバー周波数は270Hz/550Hz/850Hzとなる。

ネットワークには「MultiCap」クロスオーバーを採用し、複数の小容量コンデンサーを並列化することでESR(等価直列抵抗)の低減を図った。シングルワイヤだけでなく、バイワイヤ/バイアンプ、さらにトライワイヤ/トライアンプまで対応する。

JBL Summit Everest背面のバスレフポートとスピーカー端子
Summit Everestの背面。2基の大型バスレフポートを備え、シングルワイヤに加えてバイワイヤ/バイアンプ、トライワイヤ/トライアンプ接続にも対応する

キャビネット内部にはオフセット構造や多重補強、ダンピング処理を施し、床との接点には床との接点には、専用設計の「JBL IsoAcoustics®」アイソレーションフットを採用。巨大な振動板が生み出すエネルギーを制御しながら、スピーカーそのものをひとつの精密な音響構造体として成立させている。

この圧倒的な存在感は住空間の中で、床荷重、設置位置、視線、動線、そして音響まで含めて計画する、ひとつの「小さな建築」として捉えた方が良いだろう。左右それぞれ約1m幅のスピーカーを適切な位置へ設置し、それぞれ237kgという質量を受け止め、その前方に十分なリスニング空間を確保する。アンプや電源、音響調整も含めれば、住宅設計やインテリア計画と切り離して考えることはできない。

広いリビングや別荘、ペントハウスなどにおいて、アートや大型家具と同じように、大型スピーカーそのものを空間構成の主役として設計することを考えておきたい。

オブジェのように空間に飾る。まさにラグジュアリーオーディオ

近年のラグジュアリー住宅では、スピーカーを壁や天井へ埋め込み、テクノロジーの存在そのものを見せない「Invisible Technology」の考え方が広がっている。

一方で、すべてのテクノロジーを隠す必要があるわけではない。

たとえば、名作家具や、デザイナーの手による照明器具、そしてアート作品をあえて空間の中心に置くように、プロダクトそのものに圧倒的な存在価値があれば、「見せるテクノロジー」という別の解が成立する。

JBLは、まさにそうした存在価値があるラグジュアリーオーディオである。そして過去にも同じ位置付けのスピーカーが存在した。

1950年代のParagonは、音響装置であると同時に巨大な家具でもあった。Project EVERESTもまた、隠すことのできない大型ホーンとウーファーを堂々と空間へ提示してきた。

そしていま、Summit Everestがその思想を現代へ持ち込む。

1本1,210万円という価格も、幅約1mというサイズも、237kgという重量も、万人のためのものではない。しかし、すべてを小型化し、デジタル化し、存在感を消していく「Invisible」な時代だからこそ、物理的な空気を動かして音楽を再現する巨大なスピーカーには、特別な価値が生まれているともいえる。

JBLが1946年に掲げた「プロ機器の性能を持った美しい家庭用スピーカー」。その思想は、80年後の2026年に、ひとつの到達点として現れた。

まるでオブジェのようであり、同時に「小さな建築」のようでもあるラグジュアリーオーディオ。Summit Everestは、名作家具やアートと並び、住空間そのものを構成する「見せるテクノロジー」として、新たなリファレンスになり得る存在だ。

JBL「Summit Everest」主な仕様

  • 形式:380mm径×2/3.5ウェイ・フロアスタンディング型スピーカー
  • 高域ユニット:50mm径×2 D2コンプレッションドライバー「D2820」×3 + Sonoglass®製 HDI™ホーン
  • ミッドバス:250mm径「JMW250SC」×2
  • ウーファー:380mm径「JW380SC」×2
  • インピーダンス:4Ω
  • 感度:96dB(2.83V/1m)
  • 周波数特性:20Hz~23kHz(-6dB)
  • クロスオーバー周波数:270Hz/550Hz/850Hz
  • 外形寸法:幅992×高さ1,443×奥行695mm
  • 質量:237kg/本
  • 価格:12,100,000円(税込)/本
  • 発売時期:2026年秋

JBL Summit Everest公式ページ

JBL公式サイト

JBL創立80年の頂へ。「Summit K2」が示すラグジュアリーリスニング

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