ALESSI「La Bella Tavola」日本発売! エットレ・ソットサスの「美しい食卓」を読み解く

 取材/LWL online編集部

イタリアを代表するデザインブランドALESSI(アレッシ)から、エットレ・ソットサスが1993年にデザインしたテーブルウェア「La Bella Tavola」が復刻。日本で発売される。今年は東京・アーティゾン美術館で国内初の大規模回顧展が開催されるなど、ソットサスとポストモダンへの関心が改めて高まっている。食器とアート、デザインとインテリアの境界が曖昧になりつつあるいま、30年以上前に生まれた「美しい食卓」から、ソットサスの思想とALESSIが描いてきた「日常の暮らし」とアートの関係を読み解く。

ALESSI「La Bella Tavola」とは? 1993年の「美しい食卓」を2026年に復刻

実は、「La Bella Tavola」は新たにデザインされたものではなく、エットレ・ソットサスが1993年にALESSIのためにデザインした磁器製テーブルウェアである。いまから30年以上前、ALESSIにとって初のテーブルウェアコレクションでもあった。

このコレクションを現代の製造技術によって復刻したのが今回のシリーズである。ドイツの製造技術を用いることによって、薄く軽やかなプロポーションと耐久性を両立した。本コレクションではプレート、ボウル、カップなどをラインアップしている。

コレクションには、白磁のみで構成された「La Bella Tavola」と、コバルトブルーの幾何学的な装飾を施した「La Bella Tavola and My Beautiful China」がある。

ALESSI La Bella Tavolaの白磁カップとテーブルウェア
無駄を削ぎ落とした端正なフォルムが特徴の「La Bella Tavola」。薄く軽やかな白磁が、料理や食卓の風景を引き立てる
エットレ・ソットサスのLa Bella Tavola and My Beautiful Chinaを使った食卓
コバルトブルーの幾何学模様をまとった「La Bella Tavola and My Beautiful China」。食卓に置くことで、ソットサスの造形が日常の風景へ入り込む

後者の「La Bella Tavola and My Beautiful China」は、ブルーの線を完全に均質化するのではなく、境界をわずかにぼかし、色が滲んだような表情を残している。精密さを追求できるはずの工業製品に、あえて人間の手や感情を感じさせる「不完全さ」を持ち込んでいるのだ。

機能や合理性だけでは人間の生活は豊かにならないと考えたソットサスらしい思想が表出されている。

La Bella Tavola and My Beautiful Chinaのブルーの幾何学模様
直線的な幾何学模様でありながら、輪郭にはわずかな滲みや揺らぎを残す。工業製品の精密さだけに還元されない、ソットサスらしい表情が現れる

「メンフィス」だけではない、エットレ・ソットサスというデザイナー

エットレ・ソットサス(1917~2007)という名前を聞けば、デザイン史に詳しくなくても、1981年に結成されたデザイナー集団「メンフィス」を思い浮かべる人が多いだろう。筆者もそのひとりだ。

モダニズムが重視してきた合理性や機能性、量産性を中心とするデザインの規範から、意図的に距離を取った造形。大胆な色彩、幾何学的なフォルム、装飾性を特徴としている。

その表現は1980年代を象徴するポストモダン・デザインとして、家具や建築だけでなく、ファッションやグラフィック、より広く捉えれば、人々のライフスタイルに大きな影響を与えた。

しかし、現在アーティゾン美術館で開催されている回顧展を見れば、「派手で大胆なメンフィス」として捉えることは、ソットサスの仕事を狭めて捉えていることが理解できるだろう。

オリベッティでのプロダクトデザインやポルトロノーヴァでの家具をはじめ、陶芸、ガラス、写真、ドローイングまで、その活動領域は極めて幅広い。同展では石橋財団が収集してきた100点を超えるソットサス作品を核に、その創作の軌跡を紹介している。

ソットサスは、戦後デザインを強く規定してきた合理主義や機能主義に疑問を持ち、デザインによって、人間の生活に、自由な感性や人間らしい感情を取り戻そうとした。

かれの思想を家具以上に身近な存在である「食卓」で表現したひとつが「La Bella Tavola」だった。そのように捉えると、本コレクションの見え方も変わってくるだろう。

「La Bella Tavola」は食器なのか? アートなのか?

「La Bella Tavola and My Beautiful China」のプレートやティーポットは、パリのポンピドゥー・センターのコレクションに収蔵されている。1993年に制作されたプレートは翌年ALESSIから寄贈され、同館のデザインコレクションを飾ることになった。

日々の食事に使える「食器」であると同時に、美術館の収蔵対象の作品でもある。

近年、家具、照明、工芸、アートといった領域を明確に切り分けることが難しい存在が増えてきているが、ソットサスの仕事には、そのような多面的な意味があるのだ。

アートを家具や照明とともに、空間表現の一部として選ぶ。あるいは、機能を持つプロダクトでありながら、その造形や背景にある思想そのものを楽しむ。

そうした現代のデザイン感覚を、ソットサスは30年以上前から先取りしていたとも言えよう。

ALESSIが追求してきた「日常のなかのアート」

このソットサスの思想はALESSIの活動とも深く重なる。

ALESSIは既に1970年代に、サルバドール・ダリらを巻き込んだ「Alessi d’Après」で、「アートや詩」に応えるオブジェをつくろうとしていた。その後、ソットサスやリチャード・サパー、アキッレ・カスティリオーニといったデザイナーたちとの協業を重ねることによって、「デザイン・ファクトリー」と言えるような活動を進めてきたのだ。

そのため、ALESSIのプロダクトには、キッチン用品やテーブルウェアという用途を超えて、彫刻や建築のように見えるものが少なくないのである。

今回の「La Bella Tavola」もその延長線上にある。食卓を人と人が集まり、食事を通じてコミュニケーションを行い、時間を共有する場として捉え、そこに「アート」を添えるという試みを行ったともいえる。

ALESSI La Bella Tavolaのカップにコーヒーを注ぐ様子
「La Bella Tavola」は鑑賞するためだけのデザインではない。食事やコーヒーといった日常の時間のなかで使うことで、ソットサスの思想が暮らしと接続する
La Bella Tavola and My Beautiful ChinaをALESSIの空間でコーディネートした食卓
「La Bella Tavola and My Beautiful China」を実際の食卓へ。幾何学模様は器の装飾にとどまらず、テーブル全体の空間表現をつくり出す

なぜ今、再びポストモダンが注目されているのか?

効率や合理性を第一に考えるのではなく、人間の感情や家族の物語を住空間へ取り戻す試み。今回の「La Bella Tavola」をそのように捉えると、2026年にソットサスが再び注目されていることは偶然ではないことに気付かされる。

均質でミニマルな空間がひとつの完成形とされている時代だからこそ、プロダクトに装飾性を敢えて施し、普段の生活に積極的にユーモアを導入したポストモダンデザインの思想は改めて新鮮に映る。

1980年代のスタイルをそのまま復活させるという意味ではない。機能することと、人の感情を動かすことは両立できるのではないかという疑問。さらに、『道具』と『アート』の間に、本当に境界線を引く必要があるのかという問い。『La Bella Tavola』からは、そんな問いが浮かび上がってくる。

当時ソットサスが世の中に問い続けた問題意識が、いま再び現在のインテリアやデザインの課題と重なり始めていると捉えるのは大げさだろうか?

「La Bella Tavola」は、デザイン史の大きな潮流を、美術館ではなく毎日の食卓で体験することが可能である。一枚の食器を選ぶことから、暮らしとアートの関係を改めて考える機会を与えられる。

この「考えること」というのも、ソットサスとALESSIが描いた「美しい食卓」のひとつの姿なのかもしれない。

La Bella Tavola and My Beautiful Chinaのデザートプレートと焼き菓子
美術館で眺めるだけでなく、毎日の食卓で使うことができるソットサスのデザイン。一枚の皿から、アートと暮らしの関係を考えることができる

発売情報

ALESSI JAPAN 公式ECサイト

  • 2026年8月27日 発売開始

ALESSI TOKYO STORE

  • 2026年8月29日 発売開始
  • 住所  :東京都港区南青山3丁目7−1  ALESSI STORE TOKYO / ALESSI Caffè
  • 営業時間:10:30 – 18:45 (ドリンクサービスは18時30分まで)
  • 定休日:水曜(祝日を除く)

エットレ・ソットサス 代表的な既存製品

アレッシ ジャパン 公式ホームページ

ALESSI JAPANによるエットレ・ソットサス特設ページ

ALESSI『La Bella Tavola』公式ページ

関連記事
エットレ・ソットサス日本初の大回顧展、アーティゾン美術館で開催。《カールトン》とポストモダン・デザインの核心
透明・アイロニー・批評性~68年の帰結としてのポストモダン、その軌跡と再起動

  • 取材

    LWL online 編集部

Related articles 関連する記事

  1. home Home
  2. INFO
  3. ALESSI「La Bella Tavola」日本発売! エットレ・ソットサスの「美しい食卓」を読み解く