IXC、ヴィコ・マジストレッティ「OZU」を10月22日発売。約40年前の構想を製品化

 取材/LWL online編集部

IXC(イクスシー)は、ヴィコ・マジストレッティが1980年代半ばに構想したラウンジチェア「OZU(オヅ)」を、2026年10月22日より国内で発売する。IXCに残されていたオリジナルドローイングをもとに約40年の時を経て製品化された一脚で、今年6月の3daysofdesign 2026でプロトタイプを世界に先駆けて披露。小津安二郎への愛着にまつわる物語も秘めた、異色の新作である。

3daysofdesignで先行披露。「OZU」が10月22日より国内発売

LWL onlineでは2026年6月、IXCが3daysofdesignで発表した新作として、OZUを紹介している。

IXCは2025年の創業50周年を機にリブランディングを実施し、デンマークを拠点に活動するデザインユニットGamFratesi(ガムフラテージ)をアートディレクターに迎え、新たに「Emotional Minimalism(エモーショナル・ミニマリズム)」というブランド哲学を掲げた。

人の感情を動かすディテールをシンプルで自然体な心地よさの中に織り込む。この思想のもと、倉俣史朗や安藤忠雄らによるアーカイブと、新しいデザインを結び直しながら、IXCはブランドの再構築を進めている。

こうしたブランド再構築の流れの中で、3daysofdesignでOZUは披露された。

今回の正式発表により、青山本店と福岡店では10月22日から、名古屋店と大阪店では10月29日から展示・販売が始まる。

1980年代のドローイングから蘇った、マジストレッティの知られざる構想

OZUは、20世紀イタリアンデザインを代表する建築家・デザイナー、ヴィコ・マジストレッティ(Vico Magistretti)がデザインした。

マジストレッティは1920年にミラノで生まれ、ミラノ工科大学で建築を学ぶ。その後、都市計画、建築から家具、照明まで幅広い領域で活動した。Cassinaとの関係は深く、1973年に発表された「MARALUNGA(マラルンガ)」をはじめ、現在まで受け継がれる数多くの名作を残している。カッシーナ・イクスシーによれば、12作品がニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに収蔵されているという。

マジストレッティがOZUの原型を構想したのは1980年代半ばとされる。

IXCに託され、大切に保存されてきたマジストレッティのオリジナルドローイングをもとに、試作と検証を重ね、現代のプロダクトとして完成した。

したがってOZUは、かつて市販された名作家具を再現する一般的な「復刻」とは少し性格が異なる。約40年前の構想を読み解き、現在の素材と製造技術によって完成形へと導いた、いわばアーカイブの中に眠っていたデザインを現在進行形の家具へと変換するプロジェクトなのである。

「OZU」の名に宿る、小津安二郎と日本への眼差し

「OZU」という名称には、マジストレッティとIXC創業者・武藤重遠氏との交流、そしてマジストレッティが抱いていた日本映画、とりわけ映画監督・小津安二郎への深い愛着にまつわるエピソードがあるという。

小津安二郎は『晩春』『東京物語』『秋刀魚の味』などで知られ、低いカメラポジションや厳密に構成された画面、そして日常を静かに切り取る表現によって、映画史に大きな影響を与えた。装飾を抑え、構成によって豊かな感情を立ち上げる小津の映画。

最小限の構造から快適性や豊かな表情を導き出そうとしたマジストレッティのデザイン。

映画とインテリア、ジャンルこそ異なるものの、「抑制の中から感情を生み出す」という点では、両者の美学にはどこか通じるものがある。さらに、現在IXCが掲げる「Emotional Minimalism」という言葉と、OZUの物語、そして小津の作品は、不思議なほど自然に重なっている。

日本建築の和室に置かれたブラック仕様のIXC「OZU」ラウンジチェア
「OZU」の名には、ヴィコ・マジストレッティが抱いていた日本映画、そして小津安二郎への愛着にまつわる物語が込められている

カンチレバー構造に見る、ヴィコ・マジストレッティのデザイン思想

カンチレバー構造を採用したIXC「OZU」ラウンジチェアの製品画像
細身のスチールフレームによるカンチレバー構造と、柔らかく成形された座面・背もたれを組み合わせたOZU。構造体と身体を受け止める部分を分離している

OZUは、細身のスチールフレームによるカンチレバー構造に、クッションのように柔らかく成形された座面と背もたれを組み合わせる。荷重を支える構造体と、身体を受け止める柔らかな部分を視覚的にも分離することで、軽快さと安定感を両立させた。

OZUの構成には、当時のマジストレッティに見られた構造主義的なアプローチが反映されている。構造を装飾で覆い隠すのではなく、必要な要素を組み合わせながら、ミニマルな構成によって快適性を導き出していく。

今回の製品化ではモールドウレタンを採用。オリジナルのデザイン思想を尊重しながら、現代の住宅に求められる座り心地へとアップデートされた。

LWL onlineが6月に紹介した際のサイズは、ラウンジチェアがW950×D770×H740mm、オットマンがW950×D730×H410mm。大ぶりなボリュームを持ちながら、スチールフレームによって床面が大きく見えるため、軽やかな印象を与える。

青山本店で特別展示「Living in Motion」を開催

国内発表に合わせ、カッシーナ・イクスシー青山本店1階のポップアップスペースでは、GamFratesiが企画する特別展示「Living in Motion」も開催される。

テーマとなるのは、家具と人の「動き」の関係。

1970年代のプロダクト広告から着想し、家具を人の日々の所作や暮らしの変化に応じて異なる表情を見せる存在としてOZUを捉える。

人物の動きとともに日本建築の空間に置かれた白いIXC「OZU」ラウンジチェア
人の所作や暮らしの変化に呼応する家具としてのOZU。青山本店では、家具と人の「動き」の関係をテーマにした特別展示「Living in Motion」も開催される

展示は3つのシークエンスで構成される。

まず最初に、マジストレッティによるオリジナルスケッチやドローイング、アーカイブ資料を展示。あわせて、OZUの着想や開発背景を紹介するストーリーを通して、そのコンセプトの源流を紐解く。製品の現代的な解釈に触れる前に、デザインが生まれた背景や思考のプロセスを知ることで、OZUに込められた思想への理解を深めるための展示となる。

次に、小さな額装写真を集めたギャラリーを展開。ポートレートが並ぶ壁面は、ファッションのムードボードやバックステージのキャスティングウォールを想起させ、多彩な個性が共存する世界観を描き出す。さまざまな人物やカラー、ファブリックの組み合わせを通して、プロダクトの高い柔軟性と、それぞれのライフスタイルに寄り添う魅力を表現する。

そして展示の中心には、暮らしの中で多様な表情を見せるOZUを配置。使い手の動きやシーンの変化に呼応しながら、その機能美と柔軟性を体感できるインスタレーションを展開する。

家具と人との関係性を見つめ直すことで、OZUが持つ本質的な価値を紹介する構成になるという。

日本建築の畳空間に並べられた2脚のIXC「OZU」ラウンジチェア
約40年前のドローイングから現代の家具へ。時間と文化をまたいで受け継がれたOZUが、2026年、日本の暮らしの中へと入っていく

約40年前の「未完のデザイン」が2026年の暮らしへ

2026年6月、コペンハーゲンでOZUが披露されたとき、LWL onlineではこの一脚を、新生IXCのブランド哲学を象徴するプロダクトのひとつとして紹介した。

そして今回、国内発売の日程が正式に決定した。

プロトタイプとして提示された家具が、いよいよ実際の暮らしの中へ入っていく。

約40年前にマジストレッティが描いた線。その背後にある武藤重遠氏との交流と、日本への眼差し。そして小津安二郎という名前。時間と文化をまたぐ物語を受け継ぎながら、現在の素材、製造技術によって完成したOZU。「過去の名作家具の復刻」とは異なる、家具のアーカイブとの向き合い方をわたしたちに提示する。

構想から約40年を経て初めて現代の暮らしに置かれるOZUは、デザインが時間を超えて受け継がれていくことを、静謐な佇まいで伝えてくれる一脚になりそうだ。

IXC新作発表

  • 青山本店・福岡店:2026年10月22日(木)~
  • 名古屋店・大阪店:2026年10月29日(木)~
  • ※特別展示「Living in Motion」はカッシーナ・イクスシー青山本店のみで開催。

IXC

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    LWL online 編集部

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