ジャクソン×テクノジムが描くホームウェルネス。「Fava」「Convivio」に見る「動と静」のデザイン

fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人 取材/LWL online編集部

JAXSON(ジャクソン)は、プロトタイプとして発表済みの「Portico(ポルティコ)」「Convivio(コンヴィヴィオ)」を9月に新発売。12月には、新たなフラッグシップモデルとなるフリースタンディングバスタブ「Fava(ファーヴァ)」を発売予定だ。これを記念し、東京・赤坂のJAXSON TOKYO / HIDEO TOKYOでは、イタリアのウェルネスカンパニーTECHNOGYM(テクノジム)とのコラボレーションイベント「FROM MOVEMENT TO STILLNESS」が開催された。

身体を動かすことと、身体を休めること。異なるアプローチから「ウェルネス」を追求する両ブランドは、これからの住空間をどう捉えているのか。9月11日に行われたトークイベントから、その思想を紐解く。

テクノジム「筋力と有酸素、そしてデザイン」

冒頭、株式会社ジャクソン代表取締役社長・鈴木祐二が登壇。「ジャクソンはバスルームという空間から心と体を解放する時間を、テクノジムは運動によって健やかに生きる時間を提案する。一見すると異なる2つの領域ですが、その先にあるのは人がより豊かで心地よく暮らすための空間作りだと考えております。本イベントが皆様の設計や発想、気づきになれば幸いです」と挨拶した。

続いてテクノジムジャパンのマーケティングスペシャリスト角田岳が「フィットネスが家庭環境でどのような重要性を担っているかについては関心を得づらいところだと思いますが、本日はイタリアのホーム・ビジネス・グローバル・ディレクターAlessandro Franze(アレサンドロ・フランツェ)が新しいSand Stone Collection(サンド・ストーン・コレクション)のご紹介を通じプレゼンテーションいたします」と紹介。それを受け、アレッサンドロは次のように語った。

「今でもファミリーカンパニーであるテクノジムは、1983年に創業者Nerio Alessandri(ネリオ・アレッサンドリ)が自らのガレージで、安全なスクワットマシンを開発したのが始まりです。ブランド名は、ギリシャ語の『techne:logia』と『gymnos』に由来します。数々のスポーツ競技の大会で採用され、2000年のシドニー五輪以来、ずっとオリンピック・パラリンピックの公式サプライヤーです。特許は430、デザインでもアントニオ・チッテリオによるものなど70以上の賞を取っています」

現在の本社ビルはアントニオ・チッテリオがデザイン。丸い建物のウェルネスセンターで従業員はテクノジムのマシンを使う

「ジムのマシンといえばテクノジムでもダイヤモンドブラックのように黒ばかりで、インテリアには馴染みにくい…そうしたフィードバックを受けて、新しいサンド・ストーン・コレクションが開発されました。テクノジムの名にある『技術』と『ムーブメント』はもちろん、もうひとつ『デザイン』がカギになっています。今回は、日本でよく言われる“温かみのある仕上げ”になりました。サンド・ストーン・コレクションはイタリアンデザインであり、自然界からインスピレーションを受けています。もっとも、同じ天然石でも、テクノジムの場合は、触れると柔らかい「サンド」と、硬い「ストーン」の2つを使い分けています。これによって、同じ部屋、同じジムの中で全てのマシンが統一されたシーンを形成しつつ、光の当たり方次第で美しい佇まいを演出しています。

サンド・ストーン・コレクションでは2~3%の天然マイカと30%の再生素材を使っており、美しくサスティナブル。光の当たり方で異なる美しい佇まいを放つ。ウォーム・チタニウムや布張りのクレイと相まって独特の温かみを醸しだす
従来のダイヤモンドブラック展開。男性的でお馴染みのテクノジム
Cardio、Strength、Biostrengthなど6台をラインナップ
とくにピラティスマシン「Reform」ユーザーに人気。「マインフルネス=自然に近づきたい」というコンセプトが好まれ、必ずといっていいほど足元にアッシュウッドを使うという
アレッサンドリがケトルベル。丸い部分は輝くステンレス
ステッチなどひとつずつ職人さんによる手作り
テクノジムを使う前に、チェックアップ=体の測定を行う。体脂肪、筋力、可動域、バランスなどすべてをチェックして改善すべき点を自覚する
デザイナーはテクノロジー・アテリアというソフトウェアを使って空間提案をする

皆さん、現在のトレンドは長寿。筋肉と有酸素です。筋肉をつければ年を取っても元気ですし姿勢も良くなります。今日はいろいろなマシンを試してみてください」

ジャクソン「入浴で休め、心を整える。そして暮らしと時間を豊かにする」

続いてジャクソン創業者でデザイナーの清水秀男が登壇。次のように、新作が創業当時からの延長線上にあることを明かした。

「私たちジャクソンは45年近く、水と入浴を通して人の体と感覚について考えてきました。テクノジムさんとは、入口は異なるものの、人の体を理解しより良い日常を支えようとしていく点ではつながっています。ここからはジャクソンが体との関係をどのように考えながら新しいバスタブをデザインしたのか紹介したいと思います。

私は1982年創業以来、バスタブを単なる住宅設備でなくインテリアとして考えています。これは創業当時に描いたスケッチです。

私が目指してきたのは、空間の中に美しく佇むバスタブです。私が考えるインテリアとは、見た目の美しさだけではありません。空間にどう存在するか、水がどのように動くか、体をどう受け込めるか、それらが一つになって初めて心地いい入浴体験が生まれます。今日お話しするウェルネスも私にとって新しいテーマではなく、創業以来の延長線上にあります。

創業以来ジャクソンはさまざまなものを生み出してきました。時代とともに素材や技術的に求められることも変化し、バスタブの形や表現も広がってきました。しかし形を決める基準は変わっていません。見た目の美しさだけではなく人の体です。人がバスタブの形に体を合わせるのではなく、バスタブの方が体に寄り添う。そのために図面や数値だけで決めず、実際に原型に入り、背中や肩、肘、腰、足、手のひらで確かめてきました。

ファーヴァでデザインを精緻化するためにクレイパテで調整した際の原型。CADデータで3D化しただけでは足りず、最後は秀男さん自身が手で仕上げる

僅かな違いに、体は意外なほど正直に反応します。45年間変わらないのは、この“体に訊く”という考え方です。今回発売する2つのモデルは、形も大きさも、そこでの過ごし方も違います。Fava(ファーヴァ)が提案するのは、一人静かに自分のからだと向き合い、自分自身に戻るための時間、Convivio(コンヴィヴィオ)が提案するのは、誰かと入浴を共にし、会話や心地よさを分かち合う時間です。一人で自分を整えることも、誰かと時間を共有することも、どちらも人にとって大切なウェルネスだと考えています。

ファーヴァが目指したのは、体を自然に預ける形です。水の中で背中や肩、腰が無理なく支えられることで、少しずつ体の力が抜けていきます。そこには、母体に包まれているような安心感があります。そうした体の感覚から形を辿っていった結果、ソラマメを思わせる曲線ができあがりました。体を受け止める内側の心地よさと、空間の中に美しく佇む外側の造形を別々に考えず、滑らかに連携する一つの造形としています。ファーヴァで作りたかったのは、水に体を預け、静かに自分の感覚へと戻っていく時間です。これまでも、スケッチで始まり3Dで造形し実際の製品へと作り込んでいきます。体がどう感じるのか、水を入れたときにどう見えるのか、実際に製造できるのか、空間の中に置いたときに建築とどう調和するのか…といったすべてが成立しなければ、デザインとは言えないと思っています。私は、美しさとは無理がないことだと思っています。自然の石や水が作る線の美しさは、そこに理由と必然があるからです。この曲線も、装飾として作ったものではありません。体を構え続けた結果、このような形になりました。入浴時に、私たちの五感は敏感になります。体が無理なく支えられると余計な緊張が解け、呼吸も自然と深くなっていきます。体と心が本来のバランスを取り戻す。私はそれまで含めてバスタブの内部だと考えています。ファーヴァはそのための必要な場所です。

対するコンヴィヴィオは、人と人を繋ぐバスタブ。イタリア語で共に過ごす、語り合う、集うという意味です。日本でのバスタブの役割は、体を清潔にするというよりも、湯に浸かり心と体を整え、家族で湯を囲み話をする場です。水の中に入ると人と人の距離が少し変わります。向かい合う人と顔を見て話をする…そういった時間をデザインしたいと考えました。

創業当時のスケッチを見返すと既に、水の流れや体との関係、そして人は一緒に入るという考え方が見て取れます。もちろん当時からコンヴィヴィオの形が見えていたわけではありません。ただその原点となる考え方は既にあったのではないかと思います。その後、様々なバスタブを作り経験を積み重ねてまいりました。そして今回コンヴィヴィオという一つの形になりました。長く考え続けてきた水と体と人の関係を形にしたものです。単に4人が入るための機能を求めた結果ではありません。それぞれが寛ぎながら、自然な距離で向き合うためにデザインしたものです。体を支えること、人と人と人との関係を作ること、その二つを円の中に形にしました。

ファーヴァとコンヴィヴィオの根底にある考え方は同じです。バスタブをインテリアとして捉え、内側では体を無理なく整える。私がデザインしているのは、水の中で体を休め心を整える、そして暮らしと時間を豊かにする。入浴によって、次の活動への循環を作る。それが、ジャクソンのバスタブを通じて考えるウェルネスです。

今回、テクノジムさんとご一緒したことで、私たちもウェルネスについて改めて考えるきっかけとなりました。アプローチは異なりますが、両者ともその先に目指しているものはとても近いと思います。人は動き、疲れ、休み、また動き出します。その繰り返しの中で自分の状態と向き合いバランスを取り戻しているのです。常に良い状態でいることだけではありません。より良い状態に戻すための方法と時間を持つことも大切です。身体を動かす時間、水の中で静かに体を休める時間、その両方は、次の活動とその先の日常に繋がっていきます。人が過ごすより良い時間をデザインする。これが、今回のコラボレーションでお伝えしたかったことです」

「動」と「静」から考える、これからのホームウェルネス

心豊かに暮らすこととは? の問いに真正面から答えるふたつのブランド。自身も歳を重ねるにつれ、かつて提案してきたような「気の合う仲間と好きなモノを共有する空間」というコンヴィヴィオが掲げるラグジュアリーの姿から、一人静かに自分と向き合い心豊かに暮らすファーヴァ的視点に憧れるようになってきた。死ぬときは誰しもひとり。贅沢なモノに囲まれるよりも、自然と同化し居拠を探すという心の旅を求める境地が、これからのウェルネスなのかもしれない。

[問い合わせ先]

TECHNOGYM JAPAN

株式会社JAXSON「JAXSON TOKYO / HIDEO TOKYO」

  • fy7d(エフワイセブンディー)代表

    遠藤義人

    ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。

  • 取材

    LWL online 編集部

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