阿蘇の山並み広がる、天空のリゾート。昼間は景色を、夜はスクリーン大画面

fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人 

別荘は、景色を愉しむ場所であると同時に、滞在そのものを設計する場所でもある。だからこそ近く展開していく別荘特集に向けて、いま改めて注目したいのが「別荘とホームシアター」というテーマだ。LWL onlineがスマートホーム/ホームオートメーション特集で追ってきた『別荘における建築統合型スマートホーム』の延長線上に、本稿はある。熊本のインストールショップ、ダイナミックスカスタマイズに導かれて辿り着いた阿蘇の中腹。そこには、昼は雄大な山並みを借景に、夜は100インチの大画面に身を委ねる、もうひとつのラグジュアリーが広がっていた。

阿蘇を見晴らす、天空の貸別荘「あそ望家」

荒れ地から育て上げた、景観そのものが価値になる別荘

熊本のインストールショップ、ダイナミックスカスタマイズの小山信一郎さんから一本電話が。「いまお客さんのところにおるんやけど、素敵なお客さんなのでぜひ紹介したい」。そのまま詳細を何も聞かされないまま迎えた当日の朝、小山さんのクルマでちょっとしたドライブを経て辿り着いたのは、阿蘇の中腹にある新築の別荘と思しき場所だった。

表札には「あそ望家」。広い敷地には大きなキャンピングカーと高級車が停まっており、恐る恐るクルマを降りていくと、大物と思しくもたいへん物腰の柔らかいオーナーHさんが迎えてくださった。

「ここでゆっくり音楽を聴いていると、時の経つのも忘れます。やはりいい音は全然違いますね、音に包まれている感じです」

芝桜が満開の美しい庭の先は崖になっており、米塚を中心とした阿蘇の山々が広がる。豊かな自然に包まれたこの場所は、まさしく天空のリゾート。訪れたのは25年4月末だが、秋には紅葉も愉しめるという。最高のリゾート日和で、取材なのを忘れてしばし佇む。

「ようやく完成した」というこの場所は、23年10月に着工し、もともとは一面の荒れ地だったところを一年半掛けて植栽し、素晴らしい景観に仕上げた。そのあともご自身でこの建物を使いつつ、「あったらいいな」と思う設備を加えていった。

「自分だったらまた来てみたいと思うようなホテルをイメージして仕上げました」

駐車場にはキャンピングカーが。「最近は宿がなかなか取れませんが、これがあればいつでも泊まれますから」(Hさん)
離れにはエコスマートファイヤーも

別荘にホームシアターという発想

昼は絶景、夜は100インチ。“ごろ寝シアター”があるリビング

ダイナミックスカスタマイズがインストールしたホームシアターは、1階のリビングに設置されていた。動線を妨げないようにスピーカーは壁掛けし、プロジェクターは室内奥から軒に向かって投写する仕組み。使うときだけ電動のスクリーンが降りてきて映像を投写する。

「簾に映してサイネージっぽく使うのもいいんです。プロジェクターはいろいろな使い方ができるので気に入っています」

ごろりと横になりながら景色や大画面を眺めてリラックスできるよう、リーンロゼのソファベッドをチョイス。ダイニングと一体になったトーヨーキッチンスタイルのシステムキッチンで調理しながらでも見渡せるレイアウトだ。

ソファベッドになっており、ごろり寛いでゆったりと映画や音楽に浸ることができる
昼間は外の景色を堪能し、夜は100インチの電動スクリーンを下ろして映像を愉しむ
ダイニングテーブルと一体になっているトーヨーキッチンスタイルのシステムキッチンに、AIがデザインしたというKartellのエーアイスツールがマッチ
iPadで操作できるホームオートメーションシステムも装備。「たくさんあったリモコンがなくてスッキリして凄く便利」とHさんもお気に入り

サウナと浴槽が深める、阿蘇のウェルネス体験

開放感をまとったサウナと檜風呂

冬には氷点下になるというこの場所は、充実した風呂も完備。サウナと浴槽は開放感があるのがウリだ。

「サウナというと閉塞的なイメージをわたしは持っていたので、当初は計画に入っていませんでした。でも、ガラス張りの明るい仕上げもできると娘に教えてもらったんです。入れましたら、確かにこれは素晴らしくて気に入ってしまいまして。浴槽、サウナ、水風呂のルーティーンを3回転もすると、もうふらふらです。使ってみて分かったのですが、ここの水は炭酸水なので、血行が良くなるんですよ」

開放的な檜風呂は特注品。隣にはサブの浴槽もあり、使い分けている。「大きくて深い浴槽はいいけれど、湯を溜めるのに時間が掛かるので、もうひとつ浴槽を造りました。こちらを水風呂にして組み合わせてもいい」
サウナのスイッチ。温度調節と照明演出が可能

愛を注ぎ切ったからこそ生まれた、貸別荘という悩み

“誰かに貸したい”と“手放したくない”のあいだで

阿蘇の恵みを最大限生かした、人知れず佇む別宅は、ほぼこのまま高級旅館だ。

「貸別荘にしようと作り始めたものの、一見の人に貸すのは難しいなと思うようになりました。サウナやホームシアターなどの設備も、初めて来た方は使い方が分からないでしょうし」

愛情を注ぎすぎて製作物を手放すのが惜しくなった工芸士のように、大満足の仕上がりが逆にHさんを悩ませているようだが、ここを誰とどう共有しようか考える横顔は、どこか嬉しそうだ。

炭焼きのグリルとピザ窯。中はモチモチ表面はパリッと仕上がるという。オーディオテクニカのいちブランドAUTEC製セラミックカマドグリル「KAMADO Q」も活用されている
夜の照明にもこだわっている。バイオエタノールを使った暖炉「エコスマートファイヤー」なら、炎も美しくエコで安全性も高い
開放的なままデッキ全体を覆うことができる虫除けの“蚊帳”システムをカーテン業者と考案。虫が入らず景色も見えるようにと生地も吟味されたそうで、風にそよぐドレープも実に美しい
2階はダブルベッド2台。1階のソファベッドと合わせて定員4名の貸別荘として考案した

[問い合わせ先]

ダイナミックスカスタマイズ光の森店
熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘8ー8-40 Amitie 1F
電話/ファックス:096-348-1212(共通)
営業時間 AM10:00~PM6:00 ※水曜定休
https://www.dyna-cus.com/

  • fy7d(エフワイセブンディー)代表

    遠藤義人

    ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。

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