NOT A HOTELの建築ビジュアライゼーションに迫る。AI活用とCGパース制作の最前線
取材/LWL online編集部
NOT A HOTELにおける建築CGパースの制作と、AI・独自ツールを活用した最新ワークフローを紹介するイベント「Architecture Meets Visualization with NOT A HOTEL―建築ビジュアライゼーションの未来―」が、2026年8月7日、東京・大崎で開催される。設計者とCGビジュアライザーが上流工程から協働し、「WOWな建築体験」を可視化する同社の制作体制とは。NOT A HOTEL SETOUCHIをめぐるBIGとの座談会も交え、AI時代における建築表現の可能性を探る。
「NOT A HOTEL」の建築表現はどのように生まれるのか?
株式会社ボーンデジタルは、NOT A HOTELにおける建築CGパースの制作や、AI・独自ツールを活用したワークフローを紹介するオフラインイベント「Architecture Meets Visualization with NOT A HOTEL ― 建築ビジュアライゼーションの未来 ―」を、2026年8月7日に大崎ブライトコアホールで開催する。
イベントでは、NOT A HOTELが建築CGパースをどのように位置づけ、設計者とCGビジュアライザーがどの段階から協働しているのかを紹介する。
制作の効率化だけでなく、同社が掲げる「WOWな建築体験」を具体的な空間表現へ落とし込むプロセスに迫る。
NOT A HOTELが各地で展開する建築は、土地の風景、光、素材、家具、アート、食、サービス、テクノロジーまでを含め、滞在中にどのような時間が流れるのかを統合的に設計している。
その体験を建物が完成する前に視覚化するのがCGビジュアライゼーションである。

CGパースは「完成後を見せる画像」から「設計を進める道具」へ
これまで建築パースは、完成後の姿を施主や購入者に説明するための「完成予想図」として扱われることが多かった。
しかし、複雑な建築体験を設計する現代のプロジェクトでは、最終段階で図面を美しい画像に置き換えるだけでは十分ではなく、設計の初期段階からCGを用い、空間のスケール、視線の抜け、光の入り方、素材の質感、家具の配置、屋内外のつながりなどを検証する必要がある。

NOT A HOTEL ARCHITECTSでは、「CG Visualizer」を独立した専門職として位置づけ、3Dモデリングやレンダリングによるイメージ検討、CGパースのディレクションと制作を担うだけでなく、設計段階からプロジェクトに深く関わり、デザイナーとともに理想的な空間像をつくり上げる役割だ。
つまり、CGビジュアライザーは設計者から完成図面を受け取る「後工程」の制作者ではない。設計者と並走しながら、まだ存在していない空間を視覚化し、設計の精度を高める役割を担っている。
AIと独自ツールで「クリエイティブな時間」を最大化
イベントの第1セッション「NOT A HOTELのCGパースはこうして生まれる」には、NOT A HOTELのCG Visualizer、和田浩平太氏が登壇する。
和田氏は、日建設計でCGパースや動画の制作を経験した後、2024年6月にNOT A HOTELへ参画。現在はCGパースやムービーの制作、ディレクションを担当している。セッションでは、NOT A HOTELにおけるパースの重要性に加え、AIや独自ツールを活用した最新のワークフローが紹介される予定だ。

NOT A HOTELが、AIや独自ツールを活用する狙いとして、「クリエイティブな時間の最大化」を掲げている点に注目したい。
建築CGの制作には、3Dモデルの作成、素材や家具の設定、ライティング、レンダリング、画像調整など、多くの工程がある。一部の反復作業や検討作業をAIや独自ツールで効率化できれば、ビジュアライザーと設計者は、空間の質や体験について考える時間を増やせる。
AIは複数の可能性を素早く可視化し、人間が比較、検証、判断するための補助線として使われる。少なくとも今回のプログラムテーマからは、NOT A HOTELがAIを「画像を生成するための道具」に限定せず、設計と表現のワークフロー全体を改善する技術として捉えていることがうかがえる。
設計者とCGビジュアライザーが上流工程から協働
第2セッションには、NOT A HOTELのLead Architect、杉山竜氏が登壇する。
杉山氏は、現場管理や大規模再開発案件の設計を経験した後、2023年1月にNOT A HOTELへ参画。「TOKYO THE NIGO HOUSE」や「MIURA POOL CLUB」などの企画・設計を担当してきた。

セッションでは、「WOWな建築体験」を生み出す表現技法をテーマに、意匠設計者がデザイン、AI、デジタルツールをどのように組み合わせて提案を進めるのかが紹介される。
重要になるのが、意匠設計者とCGビジュアライザーの役割分担である。
CG制作を設計の最終工程に置いた場合、ビジュアライザーは、決定済みの設計を正確に表現することが中心になる。一方、上流工程からビジュアライザーが加われば、設計案を視覚的に検証しながら、空間構成そのものを改善できる。
たとえば、テラスから見える風景の切り取り方、プールの水面と水平線の重なり、室内から屋外へ移動するときの視線、夕暮れ時の照明の見え方などは、平面図や断面図だけではなかなか共有しにくい。
CGによる視覚化は、設計者、事業者、施工者、運営者が同じ完成像を共有するための「共通言語」になる。とりわけ、建築とサービスが一体となったラグジュアリーレジデンスやラグジュアリーホテルでは、その役割は大きい。
NOT A HOTEL SETOUCHIで見る、BIGとの協働
第3セッションでは、NOT A HOTELの牧野ひかり氏、杉山竜氏と、Bjarke Ingels Group、通称BIGの小池良平氏による座談会が行われる。


テーマは「建築ビジュアライゼーションの未来」。NOT A HOTELとBIGが協業した「NOT A HOTEL SETOUCHI」を事例に、設計初期からビジュアル制作が加わることの意義や、次世代の建築CGが担う役割を議論する。
「NOT A HOTEL SETOUCHI」は、世界的建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIGが、瀬戸内海に浮かぶ佐木島の半島状の敷地に手がけた、3棟のヴィラからなるプロジェクトである。
「180」「270」「360」と名付けられた各ヴィラは、敷地の地形や海への眺望を生かす角度で構成され、自然、建築、暮らし、旅の境界を溶かすような滞在体験を目指している。
NOT A HOTEL ARCHITECTSによれば、同プロジェクトでは、BIGから毎週100枚を超える提案資料が提示され、瀬戸内でしか成立しない建築について継続的な検討が行われたという。ラムドアースの壁、曲面の大開口窓、日本の瓦をモチーフにした太陽光パネルなど、日本での実現に前例のない課題を伴う要素も盛り込まれた。
複雑な形状や素材、自然との関係を検証するうえで、建築ビジュアライゼーションは完成後の広告画像ではなく、建築を成立させるための検討基盤となる。
AI時代に建築家とビジュアライザーの役割はどう変わるのか?
生成AIの進化により、建築イメージそのものを短時間で生成することは容易になりつつある。だが、魅力的な画像が生成できることと、実際に建設でき、長期にわたって快適に使える建築を設計できることは同義ではない。
生成されたイメージを、敷地条件、構造、設備、法規、施工性、運営、メンテナンスと結びつけるには、建築家やエンジニアの専門的な判断が不可欠である。また、CGビジュアライザーにも、単に画像を美しく仕上げる技術だけでなく、設計意図を読み取り、空間の可能性や問題点を可視化する能力が求められる。
AIによって画像制作が高速化するほど、どのような空間をつくるのか、何を検証するのか、どのイメージを採用するのかという、人間側の編集力と判断力はむしろ重要になるだろう。
今回のイベントは、NOT A HOTELの制作ノウハウを紹介するだけでなく、建築家とCGビジュアライザーの関係、さらにはAI時代の建築設計プロセスそのものを考える機会になりそうだ。
イベント概要
Architecture Meets Visualization with NOT A HOTEL ― 建築ビジュアライゼーションの未来 ―
- 開催日時:2026年8月7日(金)14時30分~19時(懇親会を含む)
- 会場:大崎ブライトコアホール
- 対象:建築設計・内装設計業界の関係者、建築ビジュアライゼーションに携わる人、または関心のある人
- 参加費:無料・事前登録制
- 定員:200名・抽選制
- 申込締切:2026年8月3日(月)17時
- 主催:株式会社ボーンデジタル
- セミナー終了後には懇親会も予定されている。懇親会参加費は1,000円。現時点でイベントの録画配信は予定されていない。
Architecture Meets Visualization with NOT A HOTEL ― 建築ビジュアライゼーションの未来 ―
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LWL online 編集部