龍村美術織物×高島屋「CASA TATSUMURA」が日本初公開。西陣織を「纏う」から「住まう」へ
取材/LWL online編集部
京都・西陣で130年以上にわたり美術織物を生み出してきた龍村美術織物と高島屋によるインテリアブランド「CASA TATSUMURA(カーサ タツムラ)」が、日本で初めて公開される。2026年4月のミラノデザインウィークで発表されたコレクションは、龍村錦帯の美術織物とカリモク家具の木工技術を融合し、行燈や屏風、格天井といった日本建築の要素を現代の家具へと再解釈したものだ。西陣織を「纏う」ものから「住まう」空間へ。伝統工芸と現代住宅の新たな関係を提示する。
100年続く「龍村錦帯」を、インテリアへ。

CASA TATSUMURA誕生の起点となったのが高島屋のオリジナルブランド「龍村錦帯」である。
龍村錦帯の歴史は1927年、初代・龍村平藏が高島屋で開催した「第1回錦帯作品展」に始まる。以来、昭和、平成、令和と歴代の龍村平藏によって制作が受け継がれてきた。2027年に、その誕生から100周年を迎える。CASA TATSUMURAは、この節目を前にスタートした新たなインテリアブランドである。
龍村美術織物そのものの歴史はさらに古い。1894年、初代龍村平藏が京都で創業。古代織物の研究・復元と新たな創作を重ね、「美術織物」という新しい分野を確立した。1954年にはクリスチャン・ディオールのオートクチュールにも採用されるなど、日本国内にとどまらない活動を早くから展開してきた。


現在、その精神を受け継ぐ五代・龍村平藏(龍村育氏)が掲げるのは「和の躍動 和の解放」である。 着物や帯として、人が「身にまとう」ことで受け継がれてきた織物を、家具や調度品、さらに空間へと広げていく。CASA TATSUMURAが目指しているのは、130年以上蓄積されてきた伝統的な意匠や織りの技術、美意識を、現代の住空間へ移植することである。

四代龍村平藏の長男。代々の龍村平藏が和装の世界で培って来た美意識、美的感覚、織り技術の素晴らしさを世界に広めるべく「和の躍動 和の解放」を理念に様々なクリエイター、職人とコラボレーションし、インテリア、アート作品として発表。ディオール2025年フォールコレクションで裂地が採用される。2026年CASA TATSUMURAを発表。
行燈、屏風、格天井。日本建築を家具として再解釈
CASA TATSUMURAの思想は、コレクションのデザインにも前景化している。
総合プロデュース兼デザインを担当したのは、Eightablish(エイタブリッシュ)のクリエイティブディレクター、川村明子氏。家具製作ではカリモク家具と協業し、龍村美術織物が持つ高度な織りの技術と、日本を代表する木工技術を組み合わせた。
モチーフとなったのは「行燈」「屏風」「格天井」といった、日本の建築や暮らしの中に古くから存在してきたものだ。
たとえば「The An-Don」は、日本の伝統的な照明である行燈を現代的に再構成した照明器具である。直接的に空間を照らすのではなく、柔らかな光と陰影を生み出し、その光の中で美術織物そのものを鑑賞できる存在としてデザインされている。

「The Tsui-Tate」や「The Byou-Bu」では、衝立や屏風が持っていた「空間を仕切る」という機能を受け継ぎながらも、龍村錦帯を空間に置かれるアートへと転換した。




さらにテーブル「The Gou-Buchi」では、日本建築の格式を象徴する「格天井」を天板へと移している。本来は見上げる存在であった建築意匠を、家具として日常の視線の高さにまで引き下ろす。日本の伝統的な建築要素をそのまま復刻するのではなく、現代生活の機能へ翻訳するというCASA TATSUMURAの姿勢が見えてくる。

ベッドヘッドボードを中心とした「The Shin-Gu」では、歴代龍村平藏による鮮やかな錦織を漆黒の家具と組み合わせるなど、寝室自体を美術織物の展示空間として捉える提案も行われている。
「工芸品を置く家」から「工芸そのものが空間になる家」へ
LWL onlineで記事にしたとおり、CASA TATSUMURAは2026年4月、ミラノデザインウィーク期間中の「フォーリサローネ」で世界に先駆けて発表された。ミラノ・ブレラ地区で行われた6日間の展示には1万2,000人以上が来場したという。
海外から日本のデザインを見たとき、しばしば強調されるのは「禅」「ミニマリズム」「余白」といった静かな美意識だ。もちろん、こうした美意識は日本のデザインの特徴として広く知られている。だが、日本の美はそれだけではない。
豪華な織物や金、鮮烈な色彩、複雑な文様といった、むしろ装飾的で躍動感のある美もまた、日本文化の重要な一面である。CASA TATSUMURAは、その双方を現代の空間へ取り込もうとしている。
伝統工芸を残すという話とは少し異なる。住宅の中に工芸品を飾るのではなく、照明、間仕切り、テーブル、ベッドといった日常生活を構成するもの自体に工芸を組み込むこと。言い換えれば、「工芸品のある住まい」から「工芸そのものが空間をつくる住まい」への転換ともいえる。

かつて中野重治は『芸術家の立場』で、職業として職人になっていく者が、結果として芸術家になることがあると論じた。織りや木工の技術もまた、家具をつくるための「技」を超え、住空間そのものを成立させる表現へと変わっている。
テクノロジーが住宅の中へ溶け込み、存在を意識させない「Invisible Technology」が進む一方で、素材や職人技、アートについては、むしろその存在感を積極的に空間へ引き出していく。一見相反するように思える二つの方向性だが、現代のラグジュアリー住宅においては決して矛盾しない。
テクノロジーは後景へ、クラフトは前景へ。
これからの上質な住空間の一つの方向性をCASA TATSUMURAは提示しているのかもしれない。
「CASA TATSUMURA」日本初公開。大阪、新宿、日本橋へ順次展開
CASA TATSUMURAの国内展開は、2026年9月23日から29日まで開催される大阪高島屋での展示・販売からスタートする。その後、10月28日から11月3日まで新宿高島屋、11月18日から23日まで日本橋高島屋S.C.で順次展開される予定だ。
コレクションには照明「The An-Don」、衝立「The Tsui-Tate」、屏風「The Byou-Bu」、ベッド「The Shin-Gu」、テーブル「The Gou-Buchi」などが用意される。
価格は「The An-Don Low」が429万円から、「The Shin-Gu」「The Tsui-Tate」が各1,980万円から、「The Gou-Buchi High」は2,530万円から。
家具という実用品であると同時に、室内に設置する美術作品としての性格を色濃く持つコレクションだ。
130年以上続く織物の技術を、未来へどう継承するのか?
その一つの答えが、博物館に保存することではなく、人々が暮らす空間の中へ再び戻していくことだとすれば、CASA TATSUMURAの「和の解放」は、日本の伝統工芸と現代住宅の関係を考えるうえでも注目すべき試みだといえるだろう。
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LWL online 編集部