神経美学でアートと住空間を考える。町田ひろ子アカデミー「アートインテリア環境カウンセラー国際科」10月開講

 取材/LWL online編集部

町田ひろ子アカデミーは2026年10月、神経美学を軸に、アートとインテリア、人の心理や身体との関係を学ぶ「アートインテリア環境カウンセラー国際科」を開講する。アートを単なる装飾ではなく、人の感情や記憶、ウェルビーイングに関わる住環境の一要素として捉える試みだ。

LWL online「住まいの詩学」で町田瑞穂ドロテア氏が語った「アートのある暮らし」とも重なる、新たな住空間デザインの可能性を考える。

神経美学とは? 「飾るアート」から「人に作用するアート」へ

住宅におけるアートといえば、これまでは「どんな作品を選ぶか」「壁のどこに飾るか」といった、装飾やスタイリングの観点から語られることが多かった。しかし近年、アートと人間との関係を、心理学や脳科学などを通じて捉えようとする「神経美学(Neuroaesthetics)」への関心が広がっている。

神経美学とは、人が美しいものや芸術作品を見たときに、なぜ心を動かされるのか。そのとき脳ではどのような活動が起こっているのかといった、美的体験と人間の認知・感情との関係を探る研究領域だ。

今回開講される「アートインテリア環境カウンセラー国際科」は、この神経美学を一つの軸として、アートとインテリア環境、人間の心理や身体との関係を横断的に学んでいく。

講師陣には、神経美学を研究する関西大学文学部心理学専修教授の石津智大氏をはじめ、山種美術館特別研究員の三戸信惠氏、疲労研究を専門とする疲労科学研究所代表取締役の倉恒邦比古氏らが名を連ねる。一般的な美術史やインテリアにとどまらない、多角的なプログラムであることがうかがえる。

「アートのある暮らし」を科学とデザインの両面から考える

今回の講座はLWL onlineの連載「住まいの詩学」で町田瑞穂ドロテア氏が語った「アートのある暮らし」と深く重なる。

「アートの本来の楽しみ方は『作家との対話』にある」と町田瑞穂ドロテア氏は語った。

住まいに作品を取り入れることは、単に空いた壁を埋めることではなく、作品が生まれた背景や作家の思想と出会い、その世界観を暮らしの中へ迎え入れることでもある。

同連載では、アートによって深く癒やされる人がいる一方、作品からの刺激によって、思考や創造性が喚起される人もいること、風景画が個人の記憶と結びついて安心感をもたらす場合もあることなどが紹介された。アートと人との関係は一様ではなく、その人の経験や感性によって異なるというわけだ。

だからこそ、インテリアの中でアートを考える際にも、「何を飾れば美しく見えるか」という視点にとどまらず、「この作品がこの空間で過ごす人に何をもたらすのか」という視点が重要になる。

今回の講座は、感性的な問いに加えて、心理学や神経美学、疲労科学といった知見を取り込みながら、アートと住環境との関係をより体系的に捉えようとする試みである。

アートは「最後の仕上げ」ではない。設計初期から住空間に組み込む

もう一つ、LWL onlineが注目したいのは、アートをインテリアデザインの「最後の仕上げ」として扱わないという考え方である。

「住まいの詩学」でも、アートを予定しているのであれば、設計の初期段階から壁面の下地やピクチャーレール、作品を照らす照明、直射日光や紫外線の影響まで考慮しておく必要性を町田瑞穂ドロテア氏は指摘した。

作品のサイズや色彩、光との関係、家具との距離、鑑賞するときの視線、さらには作品の周囲にどれだけの「余白」を残すのかまで含めて考えれば、アートは建築やインテリアと一体となって空間そのものを形づくる存在になる。

町田瑞穂ドロテア氏の指摘は、ラグジュアリー住宅の在り方を考えるうえでも重要になる。

高価な家具や美しい素材を配置するだけでは、人に深く作用する住空間にはならない。光や音、香り、素材、そしてアートといった要素が、住まう人の感覚や記憶、感情とどのようにつながるのか。その関係まで含めて設計することが、これからのウェルビーイングな住空間に求められていく。

感性とエビデンスが交差するインテリアへ

「風神雷神図」を壁面に取り入れたアートとインテリアの空間
アートを単なる装飾ではなく、空間体験の一部として捉えたインテリア。壁面の作品と照明、家具、オーディオなどが一体となって住空間を構成している

町田ひろ子アカデミーでは以前から、神経美学の知見をインテリアへ応用し、アートを取り入れた空間とストレスとの関係などについて研究を重ねてきた。そうした取り組みを「Evidence based Design orient®(エビデンスに基づくデザイン創造)」として展開している。

今回の「アートインテリア環境カウンセラー国際科」は、その考え方をより体系的に学ぶ場としても位置づけられる。

インテリアは本来、数値だけではつくることのできない領域だ。そこにはデザイナーの美意識や住まい手の感性、文化や記憶といった、定量化しにくいものが深く関わっている。

一方で、人間が空間からどのような影響を受けるのかについては、心理学や生理学、脳科学などから少しずつ解明が進んでいる。

感性と科学。アートとインテリア。そして美しさとウェルビーイング。一見相反するような要素を切り離すのではなく、両者を包含することによって、新しいインテリアデザインの可能性が見えてくるのかもしれない。

「アートインテリア環境カウンセラー国際科」概要

  • 開講期間:2026年10月〜2027年3月
  • 授業時間:10:30〜12:00
  • 形式:ライブオンライン
  • 定員:30名(最小催行人数10名)
  • 修了要件:全12回の課題を提出
  • 主催:町田ひろ子アカデミー

主な講師

石津智大氏
関西大学文学部心理学専修教授。美しさや芸術を人間がどのように知覚し、感情や心理にどのような影響を与えるのかを探る「神経美学」を専門とする。今回の講座では、アートと人間の心や脳との関係を科学的な視点から読み解く。

三戸信惠氏
山種美術館特別研究員。日本美術に関する専門的な知見をもとに、作品の背景や表現、美術を「見る」ことの意味について解説する。アートを単なるインテリアアイテムとしてではなく、文化や作家の思想まで含めて理解する視点につなげる。

倉恒邦比古氏
株式会社疲労科学研究所代表取締役。疲労やストレスを科学的に研究する立場から、人間の心身と環境との関係を考察。アートやインテリア環境がウェルビーイングにどのように関わり得るのかを考えるうえで、医学・疲労科学からの視点を提示する。

アート、心理学、神経美学、疲労科学と、異なる専門領域の講師から学べる点も本講座の特徴だ。アートを「美しいもの」として鑑賞するだけでなく、人間の感情や身体、そして住環境との関係まで横断して考えるプログラムとなっている。

講座の詳細および申し込みについては、町田ひろ子アカデミー公式サイトを参照のこと。

公式サイト

アートインテリア環境カウンセラー国際科

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