ザ・コンランショップ「Katachi」開催。内田繁「paper moon」からカリモク×OJASまで、8つの形

 取材/LWL online編集部

ザ・コンランショップは2026年9月18日から、日本各地の風土や素材、受け継がれてきた技術から生まれる「形」に焦点を当てたイベント「Katachi」を開催する。内田繁氏の照明「paper moon」やカリモク家具×OJASのオーディオ、漆器、陶磁器、家具、香りまで。「音色」「灯」「釉」「用」「森」「継ぐ」「妙」「構え」という8つの視点から、日本のものづくりと現代の暮らしの関係を見つめ直す。

暮らしから生まれた8つの「Katachi」を見る

日本のものづくりを紹介する企画は少なくない。
今回の「Katachi」が際立っているのは、「伝統工芸」や「Made in Japan」という括りではなく、暮らしのなかから生まれてきた「形」そのものを起点にしているからだ。

ザ・コンランショップは、「音色の形」「灯の形」「釉の形」「用の形」「森の形」「継ぐ形」「妙の形」「構えの形」という8つの視点を設定した。

家具や器に加えて、スピーカー、照明、カトラリー、香り、座布団、アイウェアまでもが並ぶ。カテゴリーは違っても、それぞれの形は、土地の風土、素材の性質、人の身体、そして用途への応答から生まれている。

豊かな住空間とは、家具だけでなく、光、音、素材、香りなど、五感にかかわるものの一つひとつの積み重ねによってつくられていく。

「Katachi」は、日本のものづくりを通して、そんな住まいの基本に改めて目を向ける企画ともいえる。

「音色の形」。カリモク家具×OJAS。「音」もまたインテリアになる

「音色の形」として紹介されるKarimoku Furniture × Ojas Speakerをまずは紹介したい。

ニューヨークを拠点とするオーディオデザイナー、デヴォン・ターンブル率いるOJASとカリモク家具によるプロジェクト「KARIMOKU RESEARCH Survey 03 FORM FOLLOWS FEELINGS」から生まれたコレクションであり、スピーカー「Sanjo」「Rokujo」「Nurikabe」などが展開される。

3次元加工技術による大型の木製ホーンや、スピーカー内部の構造を家具のフォルムへと展開した椅子など、一般的な「オーディオ機器」の枠には収まらない。カリモク家具の木工技術とフォステクスのアルニコ磁石を用いた音響技術を結びつけ、音を鳴らす装置と、空間を構成する家具との境界を取り払おうとしている。

カリモク家具とOJASによる家具とスピーカーのコレクション
カリモク家具とデヴォン・ターンブル氏率いるOJASによる「KARIMOKU RESEARCH Survey 03 FORM FOLLOWS FEELINGS」。家具と音響の境界を横断するコレクション

KARIMOKU RESEARCHが掲げるテーマは「FORM FOLLOWS FEELINGS」。モダンデザインでは「Form follows function(形態は機能に従う)」が語られてきたが、さらに一歩進み、機能だけでなく、モノの形や素材、存在そのものが人に何を感じさせるのかを問い直している。

スピーカーを目立たないよう隠す「Invisible Technology」という方向性がある一方で、優れた音響機器そのものを家具やアートのように空間へ溶け込ませる方法もある。「音のある空間」を考えるうえで、興味深いアプローチだ。

「灯の形」。内田繁「paper moon」と、「ウツ」としての光

「灯の形」では、日本の伝統工芸の技法や素材から光と影をつくり出す照明作家・谷俊幸氏の作品とともに、岐阜提灯の老舗・浅野商店と、日本を代表するインテリアデザイナーの内田繁氏による照明「paper moon」が紹介される。

照明作家・谷俊幸による竹を使った照明
照明作家・谷俊幸氏が追求するのは、光だけでなく「影」の美しさ。伝統的な素材と技法を用い、空間に豊かな陰影を描き出す

paper moonは、美濃和紙と岐阜提灯の伝統技術を基盤としながら、従来の提灯の形式にとらわれない、現代の生活空間に向けたフォルムを追求したシリーズである。1998年に「ペーパー・ムーン 内田繁+浅野商店」として発表された。和紙を透過した柔らかな光と、簡潔でありながらどこか有機的な形によって、光そのものを空間へ静かに広げていく。

内田繁がデザインした和紙照明paper moon
岐阜提灯の老舗・浅野商店と内田繁氏が共同開発した「paper moon」。美濃和紙を通した柔らかな光が、空間に静かな陰影をもたらす

内田氏が長年考察してきた日本独自の空間思想を重ねて見ることもできる。

内田氏は、日本の空間の根底に「ウツ」という考え方を見ていた。「空」と書いて「ウツ」。それは単なる「何もない空間」ではなく、何も固定されていないからこそ、季節や光、人の行為といったさまざまなものを受け入れ、その時々の姿へと変化できる「器」のような空間を意味する。ウツから「ウツロヒ」が生まれ、そこに時間や出来事が映し出される。内田氏にとって、日本の住空間は本来、そのように変化を受け入れる存在だった。

paper moonもまた、単に周囲を明るくするための「照明器具」とは少し違う。和紙に包まれた光源はそれ自体を強く主張するのではなく、光を柔らかく受け止め、周囲へと滲ませる。主役になるのは器具そのものではなく、そこから生まれる陰影や気配、そして時間とともに移ろっていく空間である。

テクノロジーや設備が存在感を増している現代住宅において、これは示唆的である。優れた照明とは、器具を見せることではなく、光によって空間そのものをつくることなのかもしれない。伝統的な技術をそのまま保存するのではなく、現代の暮らしを受け入れる「器」へと変換する。paper moonには、内田繁氏の空間思想と日本的な光の感覚が、静かに、そしてたしかに息づいている。

「釉」「用」「妙」「構え」。暮らしのなかに宿るさまざまな「形」

「Katachi」では、家具や照明以外にも拡張する。

「釉の形」では、有田焼400年の節目となる2016年に誕生したプロジェクト「2016/」と、ロンドン出身で日本を拠点に活動する写真家・陶芸家マーク・ヴァサーロ氏による「WHITE BEACH POTTERY」を紹介する。人の手による造形に、釉薬の流れや焼成という完全には制御できない現象が加わり、一つひとつ異なる表情が生まれる。工業製品とは異なる「揺らぎ」もまた、住空間に豊かさをもたらす要素だ。

有田焼400年を契機に誕生した陶磁器ブランド2016/の器
有田焼400年の節目に誕生した「2016/」。受け継がれてきた高度な技術と世界のデザイナーの感性を重ね、新しい有田焼のスタンダードを提案する
WHITE BEACH POTTERYの青い釉薬をまとった陶器
写真家・陶芸家マーク・ヴァサーロ氏による「WHITE BEACH POTTERY」。下田・白浜の自然から着想を得た釉薬の色や流れが、一点ごとに異なる表情を生む

「用の形」が焦点を当てるのは、用途から必然的に導かれる美しさ。420年以上にわたり技を受け継ぐ「博多曲物 玉樹」をはじめ、竹とサトウキビの繊維から生まれた「casanet」、新潟・燕の金属加工技術を背景に石井佳苗氏と燕物産が共作したカトラリー「Caff」など、日常で「使う」ことそのものから生まれたデザインが並ぶ。

博多曲物 玉樹の木製曲物
420年以上にわたり技を受け継ぐ「博多曲物 玉樹」。杉やヒノキの板を曲げ、桜の皮で綴じる伝統的な技法が、現代の日用品にも息づく
竹とサトウキビの繊維からつくられたcasanetの容器
竹とサトウキビの繊維から生まれた「casanet」。ものを入れ、重ね、届けるという日常の行為から「用の形」を考える
石井佳苗と燕物産によるカトラリーCaff
インテリアスタイリスト石井佳苗氏と、新潟・燕の老舗洋食器メーカー燕物産が共作したザ・コンランショップ別注カトラリー「Caff」

そして「妙の形」。昭和のこけしに新しい役割を与えるWOODWORKの「B-KOKESHI」や、淡路島のお香文化を現代の感性で再解釈する「THE ROOT 595」、丹羽ふとん店による座布団などを紹介。受け継がれてきた素材や技法をそのまま保存するのではなく、現代の暮らしのなかで再び使われるものへと更新している。

昭和のこけしを現代的に再生したB-KOKESHI
昭和のこけしにキャップを組み合わせ、新たな役割と表情を与えるWOODWORKの「B-KOKESHI」。工芸品を現代へつなぐリサイクルプロジェクトでもある
淡路島のお香文化を再解釈するTHE ROOT 595
淡路島のお香文化を現代の感性で読み解く「THE ROOT 595」。薫寿堂の製造技術と和泉侃氏の感性を重ね、香りの新たなあり方を提案する
丹羽ふとん店が仕立てた座布団とバタフライスツール
天然素材と熟練の手仕事を受け継ぐ丹羽ふとん店。坐禅用をはじめ、椅子に合わせた特注サイズの座布団も展開する

「構えの形」では、1970年に新居猛氏が生み出したロングライフデザイン「Nychair X」と、眼鏡を「顔にのる小さな建築」と捉える建築家・漢那潤氏の「ROBLE JUN」を紹介する。椅子とアイウェアというまったく異なるプロダクトを、構造そのものの美しさという視点から並べるところも、この企画ならではだ。

新居猛がデザインしたNychair Xのある室内空間
1970年に新居猛氏が生み出した「Nychair X」。軽量で折りたためる合理的な構造と、身体を包み込む座り心地を両立したロングライフデザイン。
ROBLE JUNのアイウェアを着用した人物
建築家・漢那潤氏による「ROBLE JUN」。眼鏡を「顔にのる小さな建築」と捉え、構造・機能・素材からその形を導き出している

器、道具、香り、椅子。対象は異なるが、そこに共通するのは、装飾として「日本らしさ」を付け加えるのではなく、素材、用途、構造、技術から必然的に「形」が導き出されていることだろう。

「森の形」。土地の素材と向き合い、これからの家具をつくる

「森の形」では、ザ・コンランショップが国産杉に着目して開発する「Resöma」や、テレンス・コンランの孫であるフィリックス・コンラン氏による「Island」を紹介する。

国産杉を使用したザ・コンランショップの家具Resöma
国産杉に着目したザ・コンランショップの「Resöma」。杉の軽やかな木質感や節の表情を生かし、現代の家具へと再構成している
フィリックス・コンランがデザインした木製家具Island
日本へ移住したフィリックス・コンラン氏が手がける「Island」。日々の暮らしや使い方から発想した、ヒノキによる家具コレクション

フィリックス・コンラン氏は日本各地の工房や地域を訪ねたことをきっかけに日本のものづくりへの関心を深め、2024年には奈良県東吉野村へ移住。現在は日本を拠点として、建築や家具、プロダクト、建材など領域を横断して活動している。

日本の風土を海外のデザイナーが「日本的な意匠」として引用するのではなく、その土地に暮らし、素材や生産現場と向き合いながらデザインする。そのプロセス自体も、これからのローカルなものづくりを考えるうえで興味深い。

「継ぐ形」。工芸とテクノロジーは対立しない

「継ぐ形」では、1793年創業の越前漆器の漆塗師屋・漆琳堂とZOZO NEXTが共同開発した「URUSHICA」が登場する。

漆琳堂とZOZO NEXTが共同開発した漆器URUSHICA
越前漆器の漆琳堂とZOZO NEXTによる「URUSHICA」。伝統的な漆と現代の素材技術を結びつけ、電子レンジや食器洗浄機にも対応する

同じ「継ぐ形」では、岩手のものづくりとフィンランドのデザインを結ぶ「iwatemo」も紹介される。異なる土地で育まれてきた手仕事とデザインの知恵を掛け合わせ、新たなプロダクトへとつなげる試みだ。

岩手のものづくりとフィンランドデザインを融合したiwatemoのスツール
岩手のものづくりとフィンランドのデザインを結ぶ「iwatemo」。ヴィッレ・コッコネン氏らデザイナーと岩手のつくり手による協働から生まれたプロダクト

伝統的な漆と耐熱樹脂を組み合わせることで、食器洗浄機や電子レンジにも対応した漆器を実現したものだ。優れた技術とは、ときに伝統を壊すものではなく、伝統を現代の生活へ戻すための手段にもなる。

手入れが難しいから使われなくなったものや、現代住宅には合わないから選ばれなくなったものを先端的な素材技術やデジタル設計、生産技術によって再び日常へ戻していく。その考え方は、住宅やインテリアの世界にも通じることだろう。

8つの「Katachi」から見える、五感でつくる住空間

音、光、触覚、香り、そして身体を支える構造。

8つの「Katachi」を眺めると、インテリアとは五感を通じて人と空間との関係を整える行為であることが見えてくる。

テクノロジーが住宅のなかへ急速に入り込みつつある今だからこそ、素材の手触りや光の陰影、家具の座り心地、音の響き、香りといった、人間の身体に直接作用する要素の価値は、むしろ大きくなっていくのではないだろうか。

「Katachi」は、日本の伝統や工芸を振り返るイベントであると同時に、これからの豊かな住まいとは何かを、モノの「形」から考える場でもありそうだ。

「Katachi」開催概要

  • 開催開始:2026年9月18日(金)
  • 会場:ザ・コンランショップ各店
  • 内容:「音色」「灯」「釉」「用」「森」「継ぐ」「妙」「構え」の8つの「Katachi」をテーマに、日本各地の素材、技術、デザインを紹介
  • なお9月18日から30日までは、ザ・コンランショップ各店(伊勢丹新宿店を除く)で10%ポイントアップキャンペーンも実施予定。

ザ・コンランショップ公式サイト

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