Intelligent Residence Notes②:ロボット掃除機の次に来る住宅ロボットは何か?
取材/LWL online編集部
ロボット掃除機の普及により、住まいはすでに「ロボットが動く場所」として設計され始めている。では、その次に住宅へ入ってくるロボットは何か。窓拭きロボット、ロボット芝刈り機、外構管理ロボットなど、床から窓・庭・外構へと広がる住宅ロボットの現在地を整理し、建築家やデザイナー、住宅事業者がいま考えておくべき「ロボット前提」の住まいを考える。
窓、庭、外構から始まる「ロボット前提」の住まい
住まいにおけるロボットの導入は、もはや未来の話ではなくなった。最初に普及したのは、言うまでもなくロボット掃除機である。かつては「床を自動で掃除する家電」という位置づけだったが、いまでは吸引、拭き掃除、モップ洗浄、乾燥、給排水までを一体化したモデルも登場し、床清掃の自動化はすでに普及段階に入りつつある。
では、ロボット掃除機の次に住宅へ入ってくるロボットは何か。
答えはヒューマノイドロボット…、ではない。少なくとも近い将来において、住宅のなかで最初に広がるのは、人の形をした万能ロボットではなく、特定の作業に特化した「専用ロボット」だろう。窓を拭くロボット、芝を刈るロボット、プールを清掃するロボット、外構を見守るロボット。住宅ロボットの進化は、床から始まり、窓、庭、外構へと対象領域を広げていく。
ロボット掃除機はすでに次の壁に向かっている
ロボット掃除機が普及した理由は明快である。床という平面は、ロボットにとって比較的扱いやすい環境だった。家具や段差、ケーブル、ラグといった課題はあるものの、平面上を移動し、地図をつくり、清掃範囲を管理するという点では、住宅のなかでも自動化しやすい領域だったのである。
しかし、ロボット掃除機にはまだ大きな制約がある。ひとつは階段であり、もうひとつはフロアをまたぐ移動だ。現在のロボット掃除機は、複数フロアのマップを保存できても、自ら階段を上り下りすることは基本的にできない。海外の展示会では、ロボット掃除機を階段上へ運ぶ専用モジュールの提案も出始めており、「床清掃ロボット」が一階層だけで完結する時代から、住宅全体を移動する時代への入口が見えつつある。
とはいえ、階段を自在に移動するロボット掃除機が一般家庭に普及するには、まだ時間がかかるだろう。最近、ある発表会で、メーカーの方と話をしたが、数年のうちに実用化、普及となるとまだしばらく先になるとのことだった。そこで注目したいのが、すでに実用段階に入り始めている別の住宅ロボットだ。
次に来るのは「床以外」を扱うロボット
ロボット掃除機の次に住宅へ入りやすいのは、窓拭きロボットとロボット芝刈り機である。この2つに共通しているのは、人にとって負担が大きく、かつ住宅の設計や維持管理と密接に結びついている作業である点だ。
床掃除は日常的な家事だが、窓拭きや芝刈りは、より身体的な負担が大きい。大開口の窓、高所のガラス、広い芝生、傾斜している広大な庭園。ラグジュアリー邸宅や別荘で魅力とされる要素ほど、実はメンテナンスの手間も増大する。
大きな窓は、室内に光を取り込み、庭や眺望との連続性を生み出す。一方で、ガラス面が大きくなるほど、清掃の負担は増える。
庭も同様だ。芝生は外構の質を高めるが、美しい状態を保つには定期的な手入れが不可欠である。つまり、窓拭きロボットやロボット芝刈り機は、単なる便利家電ではなく、「大開口」「庭」「外構」を豊かに設計するための維持管理インフラとして捉えるべき存在なのである。
窓拭きロボットは大開口住宅と相性がよい

Image:onzon /Shutterstock.com
近年、窓拭きロボットは小型化と高機能化が進んでいる。吸着しながらガラス面を移動し、センサーで窓の端や障害物を検知しながら清掃経路を組み立てる。機種によっては、自動噴霧や高い吸着力、安全対策を備え、従来は人が脚立や長尺ワイパーを使って行っていた作業を補助できるようになってきた。
とりわけ相性がよいのは、大開口のある住宅だ。リビングとテラスをつなぐ大きな掃き出し窓、吹き抜けに面したガラス、眺望を取り込むためのワイドな開口部。これらは建築的にはたいへん魅力的だが、一方で日常の清掃という観点では課題を抱えている。
ただし、窓拭きロボットには、ガラスのサイズ、フレーム形状、電源、安全ロープの取り回しなどの運用条件がある。大開口を設計するなら、清掃性まで含めてあらかじめ想定しておきたい。
たとえば、大開口のそばに電源を確保する。窓まわりにロボットの着脱作業ができる余白を残す。あるいは、高所ガラスについては、人が安全にアクセスできる清掃動線も同時に考えるなどが挙げられる。ロボットが担える領域と、人や専門業者が担う領域を分けて設計することが、これからの住宅では重要になる。

芝刈りロボットは庭のある邸宅・別荘で本領を発揮する
もうひとつ注目したいのが、ロボット芝刈り機である。欧米では比較的早くから普及が進み、広い庭を持つ住宅や別荘、ホテル、公共緑地などで活用されてきた。近年は、境界ワイヤーを敷設する従来型に加え、GPSやRTK、カメラ、LiDAR、AI認識を活用し、仮想境界で作業範囲を設定するモデルも増えつつある。
ロボット芝刈り機の価値は、単に人の作業を代替することにかぎらない。定期的に少しずつ芝を刈ることで、芝生の状態を均一に保ちやすいことも大きなポイントだ。筆者も経験があるが、来客前にまとめて芝を刈るということをやりがちだ。しかし、景観を考えると、本来は、常に一定の状態を維持すべきである。これは、別荘や週末住宅のように、オーナーが常時滞在しない住宅とは特に相性がよい。
日本でも、ハスクバーナのAutomowerシリーズやHondaのMiimoなど、ロボット芝刈り機/ロボット草刈機はすでに発売されている。大規模な庭を持つ邸宅、芝生の中庭を設けた住宅、軽井沢や那須、箱根、三浦半島沿い、さらにニセコのような別荘地では、積極的に導入しておくべきだろう。
ただし、芝刈りロボットを活かすには、設計が非常に重要になる。段差や飛び石、砂利、植栽帯との境界という外構設計上の課題もあるが、他にも充電ステーションをどこに置くか、屋外電源を検討しておく必要がある。また、盗難対策も重要であるが、もうひとつ、忘れられがちな点として、Wi-Fiや通信環境の確保である。スマートホーム/ホームオートメーションも同時に導入するのであれば、システムインテグレーターに相談してみるとよいだろう。
ロボット芝刈り機は、庭に置けば自動的に解決する機器ではなく、庭の設計と一体で考えるべき住宅設備として捉え、迎え入れる設計を検討しておくべきだろう。

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国内で検討できる住宅ロボット
では、実際に日本国内で導入を検討できる住宅ロボットには、どのようなものがあるのだろうか。ここでは、ラグジュアリー邸宅や別荘、大開口のある住宅、庭の広い住宅と相性のよい製品カテゴリーとして、窓拭きロボットとロボット芝刈り機に注目したい。
ECOVACS「WINBOT mini 2」:大開口や手の届きにくい窓を補助する窓拭きロボット
窓拭きロボットの代表例として挙げられるのが、ECOVACSの「WINBOT」シリーズである。特に最近発売された「WINBOT mini 2」は、幅215mm・厚さ55mmのコンパクトな筐体に、8000Paの最大吸着力、WIN-SLAM 4.0による経路計画、複数の清掃モードを備えた窓拭きロボットである。大開口や手の届きにくい窓の清掃を補助し、ガラス面の美しさを日常的に保つための選択肢となる。

ハスクバーナ・ゼノア(Husqvarna)「Automower」:広い庭や傾斜地に対応するロボット芝刈機
庭のある邸宅や別荘で検討したいのが、ハスクバーナ・ゼノア(Husqvarna)のロボット芝刈機「Automower」シリーズである。たとえば「Automower 435X AWD NERA」は、四輪駆動により最大70%の急勾配に対応し、仮想境界によるワイヤーフリー設置、アプリ制御、ゾーンコントロールなどを特徴とするロボット芝刈機である。広い庭や傾斜地のある邸宅・別荘では、芝生を日常的に整えるための設備として検討できる。

Honda「Miimo」:国内メーカーによるロボット芝刈機という選択肢
国内メーカーの選択肢としては、Hondaのロボット草刈機/芝刈機「Miimo」も挙げられる。2024年発売モデルの「Grass Miimo HRM4000 Live」は、最大作業エリア4000㎡、最大登坂能力25°、刈幅250mm、スマートフォン設定などを備えるロボット芝刈機である。別荘地や郊外型邸宅、モデルハウス、レジデンスの共用緑地などでは、管理会社や外構業者と連携した運用も考えられる。

製品選定より先に、住宅側の受け入れ準備を考える
WINBOT、Automower、Miimoはいずれも、住宅ロボットがすでに「検討可能な製品」として市場に存在していることを示している。ただし、重要なのは個別製品のスペック比較ではない。住宅側が、ロボットを受け入れられる環境になっているかどうかである。
窓であれば、ガラス面の寸法、フレーム形状、電源、安全ロープ、作業時の人の立ち位置。庭であれば、芝生エリアの連続性、傾斜、境界処理、屋外電源、充電ステーション、雨風や盗難への対策が必要になる。さらに、屋外を含めたWi-Fiや通信環境が非常に重要になってくることも明記しておきたい。
重要なのは、ロボットを「後から付け足して買う家電」として扱わないこと。高級住宅ほど、設備、照明、空調、セキュリティ、AV、ネットワークが建築と統合されている。同じように、住宅ロボットも建築・外構・ネットワーク・管理計画のなかに組み込むべき段階に入りつつある。
ロボットを受け入れる環境を設計時点で考えておくことで、ロボットは後付けのガジェットではなく、住まいの維持管理を支える設備として機能し始める。

海外のラグジュアリー邸宅では、すでに屋外ロボットが自然に入り始めている
海外のラグジュアリー邸宅では、住宅と庭を一体の生活空間として扱う発想が強い。こうした空間を美しく維持するには、ガーデナーや管理会社の力が不可欠だが、同時にロボットによる日常管理も導入しやすい。
ロボット芝刈り機は、その代表例である。広い庭を毎回人手で管理するのではなく、ロボットが日々少しずつ整え、人は剪定や植栽、季節ごとの調整といった高度な作業に集中する。これは人手を不要にするというより、管理業務の質を高めるための分業と考えたほうがよい。
同じことは窓拭きにも言える。大開口の住宅では、ガラスを美しく保つことが空間体験そのものに直結する。眺望を切り取る窓が曇っていれば、設計の魅力は十分に伝わらない。ロボットは、建築の美しさを日常的に保つための補助装置として位置づけられる。
ヒューマノイドより先に専用ロボットを迎え入れる
ヒューマノイドロボットが住宅に入り、人の代わりに多様な家事をこなす未来は、いずれ訪れるかもしれない。ただし、少なくとも現時点で住宅に導入しやすいのは、より限定された作業を確実にこなす専用ロボットである。
床を掃除する。窓を拭く。芝を刈る。プールを清掃する。外構を見守る。こうした機能別のロボットが、住まいのなかに少しずつ入り込んでいく。そのとき、住宅の造り手に求められるのは、ロボットを目立たせることではなく、自然に使える環境を整えることだ。

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ロボット掃除機の普及によって、わたしたちはすでに「ロボットが動く床」を意識し始めた。次に考えるべきは、「ロボットが拭ける窓」であり、「ロボットが管理できる庭」であり、「ロボットが働きやすい住宅」である。
ラグジュアリーな住まいの価値は、完成した瞬間の美しさだけで決まるものではない。その美しさを、日々どのように維持管理していくか? 住宅ロボットはその問いに対する新たな回答になろうとしている。

Image:onzon /Shutterstock.com
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