LUCE VISIONとは? GLAS LUCEの花村勇氏が描く「映像のインテリア」。軍艦島をデジタルアートに

 取材/LWL online編集部

ミラーガラスとディスプレイを融合し、映像をインテリアの一部へと変えてきた「GLAS LUCE」。その開発を率いてきた花村勇氏が、新たなアートブランド「LUCE VISION」を始動した。第一弾のテーマは、写真家・山口政勝氏が15年以上撮影を続けてきた長崎・軍艦島。写真作品からGLAS LUCEを使ったデジタルアートへ。その試みから見えてきた「映像のインテリア」の新たな可能性をレポートする。

GLAS LUCEの花村勇氏が始動した「LUCE VISION」とは?

テレビやディスプレイは、住空間のなかでどこまで「インテリア」になれるのだろうか?
この問いに向き合ってきたのが、ミラーガラスの向こうから映像を浮かびあがらせる「GLAS LUCE」を展開するハナムラの代表、花村勇氏。花村氏はGLAS LUCEを生み出した人物であり、15年前からスマートホーム事業に取り組んできたことで知られる。

花村氏はGLAS LUCEのほか、スマートホームなどを通じて、インテリアとテクノロジーを融合した空間づくりに取り組んできた。GLAS LUCEもまた、テレビやディスプレイという機器をそのまま室内に置くのではなく、建築やインテリアのなかへ溶け込ませ、「映像そのものを空間の一部にする」ためのプロダクトといえる。花村氏の問題意識は常にインテリアとテクノロジーの融合にあるのだ。

さて、その花村勇氏が、新たに立ち上げたアートブランド/プロジェクトが「LUCE VISION」だ。2026年8月6日から8日まで、東京・銀座のAKIO NAGASAWA Galleryで、その最初の展覧会となる「軍艦島、光と影 GUNKANJIMA Light and Shadow」が開催された。

会場に並んだのは、写真家・山口政勝氏が15年以上にわたり撮影してきた軍艦島の写真作品。そして、その写真をGLAS LUCEの映像として再構成したデジタルアートである。

写真家・山口政勝が撮影した光芒に浮かぶ長崎・軍艦島
雲間から差し込む光のなかに浮かぶ軍艦島。LUCE VISION第一弾では、山口政勝氏が15年以上撮り続けてきた軍艦島の作品を展開する

15年以上、軍艦島の「光と影」を追い続けた写真家・山口政勝

今回の作品を撮影した山口政勝氏は長崎生まれ。2009年から軍艦島の撮影を始め、以来15年以上にわたって、海の向こうに浮かぶ島へカメラを向け続けてきた。

花村氏によれば、山口氏は三菱電機を退職した際、その退職金で一眼レフカメラと望遠レンズを購入。当初の約10年間は田畑や鳥などを撮影していたという。

なかでも惹かれたのが「光」だった。

田畑の水面に反射する光などを撮り続けるなかで、やがて被写体は軍艦島へと収斂していく。しかも、単に同じ位置から島を記録しているわけではない。夕陽が沈む位置は季節によって変化する。軍艦島を望む長崎半島側には複数の撮影ポイントがあり、季節、時刻、天候、光の向きによって最適な場所も変わるのだ。

「三脚を置く場所を決めるのに10年かかっているんです」と花村氏は語る。

長い時間をかけて撮影場所を探し出し、光を読み、その瞬間を待つ。そうした蓄積があるからこそ、近年撮影された作品には、軍艦島そのものだけではなく、その周囲を包む海や雲、夕陽、空気までが写し込まれている。

軍艦島は強烈な建築的シルエットを持つ。しかし山口氏の作品を見ていると、主役はむしろ、その周囲に現れては消えていく「光と影」なのではないかと思えてくる。

LUCE VISIONが目指す、写真を「コレクション」から「空間」へ

写真をギャラリーで販売するだけではないのがLUCE VISIONの特徴である。今回の写真は、AKIO NAGASAWA Gallery仕様による額装を施し、複数のサイズでエディション作品として制作されている。

実際に会場で見ると、フレームの存在を極力主張させることなく、写真そのものが壁面へと広がっていくような仕上がりが印象的だった。インテリアの世界を長く見てきた花村氏ならではの視点がうかがえる。

LUCE VISIONの軍艦島写真をインテリアに取り入れたラグジュアリー空間のイメージ
LUCE VISIONが目指すのは、写真を鑑賞するだけでなく、建築やインテリアを構成するアートとして空間へ取り入れることだ

一般的には、ギャラリーが作品を届ける先には、美術作品を収集するコレクターがいる。一方、LUCE VISIONが強く意識するのは、ホテル、ラグジュアリーレジデンス、ヴィラ、ラグジュアリー施設といった「空間」である。花村氏の問題意識は常に「空間」へと向かう。

建築家やインテリアデザイナーが空間を計画する段階からアートを提案し、作品のサイズや額装、設置方法まで含めて、その場所にふさわしい形へと組み込んでいく。要するに、作品を単独で鑑賞する対象としてだけにとどまらず、空間をつくるひとつの要素として捉えているわけだ。

LUCE VISIONが掲げるのも、日本の建築遺産や自然、文化を「現代のインテリアアート」へと昇華し、世界へ発信するという考え方だ。今回の軍艦島は、その第一歩となる。

軍艦島の静止画にAIで「時間」を加えるデジタルアート

そしてLUCE VISIONにはもうひとつの展開がある。GLAS LUCEを使ったデジタルアートだ。

会場では山口氏が撮影した軍艦島の写真が、GLAS LUCEの大画面に映し出されていた。

一見すると一枚の写真に見える。ところが、少し眺め続けていると、海面の波などがごくわずかに動いていることに気づく。そのことを花村氏に指摘すると、静止画をAIによって加工し、あえて微細な動きを与えているという。

この「動かしすぎない」表現に、LUCE VISIONならではの映像表現が感じられる。

写真を派手に動く動画へと変換するのではない。静止画が本来持つ構図や空気感を壊さない範囲で、ほんのわずかな「時間」を加えているのだ。すると、壁に掛けられた写真とも、一般的なテレビ映像とも異なる、斬新な視覚体験が生まれる。

情報を見るための映像ではなく、音楽をBGMとして流すように、映像そのものを空間のなかに自然に存在させるという発想だ。やはりGLAS LUCEを通じて、「インテリアにおけるディスプレイ」「インテリアとテクノロジーの融合」「空間でいかに映像を存在させるべきか」という課題に向き合ってきた花村氏ならではの高い意識がうかがえる。

GLAS LUCEに軍艦島のデジタルアートを表示したラグジュアリーリビングのイメージ
軍艦島の作品をGLAS LUCEで表示した空間イメージ。LUCE VISIONは静止画に微細な動きを加え、「映像のインテリア」として空間へ展開する

GLAS LUCEという「器」から、「何を見るか」へ。映像のインテリアの可能性

GLAS LUCEはこれまで、テレビやディスプレイという存在をインテリアへと融合させる方法を提案してきた。しかし、どれほど美しいディスプレイをつくったとしても、ひとつの問いは残り続ける。

その美しいディスプレイで、何を見るのか。

花村氏自身も、GLAS LUCEを展開していくなかで、その「コンテンツ」の重要性を感じていたという。そう考えると、LUCE VISIONはGLAS LUCEとは別の新規事業というより、その思想をもう一段先へ進めるプロジェクトと捉えることができる。

GLAS LUCEが「映像をどう美しく空間に存在させるか」を追求してきたとすれば、LUCE VISIONは「そこで何を見るのか」へと、さらに一歩先へと踏み込むプロジェクトである。ハードウェアからコンテンツへ。そのふたつが結びつくことで、ようやくディスプレイは単なるAV機器という役割を超えて、季節や時間、気分に合わせて表情を変える「映像のインテリア」へと進化を遂げる。

スマートホームも同様だろう。

照明や空調、音響、映像を統合する技術は急速に進化している。しかし、住宅にとって本当に重要なのは、テクノロジーそのものではなく、それによってどのような時間や感覚を生み出せるのかということだ。

写真、映像、光、インテリア、そしてデジタルテクノロジー。

それらを別々のカテゴリーとして扱うのではなく、ひとつの空間体験として束ねていく。

LUCE VISIONのスタートは、花村氏がGLAS LUCEやスマートホームを通じて取り組んできた「テクノロジーを空間へ溶け込ませる」という仕事を、さらにその先にある「何を感じ、何を見るのか」という領域へ広げる試みである。

LWL onlineは近々、花村氏に改めて「テクノロジーとインテリア」について話をうかがう予定である。

公式サイト

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