カリモク〈MAS〉の企画展「御宿MAS」開催。家具、光、香りで描く“New Japanese Comfort”

 取材/LWL online編集部

カリモク家具の木工家具ブランド〈MAS〉が、企画展『御宿MAS』を2026年9月19日(土)から10月20日(火)まで、東京・Karimoku Commons Tokyoで開催する。家具だけでなく、照明、和紙、漆器、寝具、香り、茶や和菓子までをひとつの空間に集め、〈MAS〉が掲げる日本の心地よさの新基準“New Japanese Comfort”を五感で表現する企画展だ。

企画展「御宿MAS」メインビジュアル|Karimoku Commons Tokyo
カリモク家具の木工家具ブランド〈MAS〉による企画展『御宿MAS』。2026年9月19日からKarimoku Commons Tokyoで開催される。

針葉樹から始まったカリモクの家具ブランド〈MAS〉

〈MAS〉は、プロダクトデザイナーの熊野亘をデザインディレクターに迎え、2018年にスタートしたカリモク家具の木工家具ブランドだ。針葉樹を中心とした日本各地の木材との対話が出発点にある。

家具材として既に確立された素材や製法だけを前提とするのではなく、素材そのものの可能性を探りながら新たな手法や表現を模索する。そこから生まれる、控えめでありながらも機能性と包容力を備えたフォルムを、〈MAS〉は「現代の用即美」として提案してきた。

その考え方を家具というプロダクトから、さらに暮らし全体へと広げようとしている。そのキーワードとなるのが“New Japanese Comfort”である。

自然光の中に置かれた〈MAS〉の木製スツール
木の表情と簡潔なフォルムを生かした〈MAS〉の木製スツール。素材そのものの魅力を引き出すデザインも〈MAS〉の特徴だ

〈MAS〉が考える“New Japanese Comfort”とは?

〈MAS〉が考える“New Japanese Comfort”は、単純に椅子の座り心地やベッドの寝心地といったフィジカルな快適性に加えて、素材の可能性を活かし、森や環境へ配慮し、受け継がれてきた技術を未来へつなぎ、そして、日本の暮らしの中で培われてきた文化や感覚を、現代の生活に合わせて再解釈する。

さらに、道具として普遍性を持ちながら、美しく佇み、それが暮らしの中で心の豊かさへつながっていくことまで含めて、「心地よさ」と捉えている。

住宅におけるウェルネスというと、温熱環境や空気質、照明、睡眠などが思い浮かびやすい。しかし、人が住まいを「心地よい」と感じる理由は、それだけではない。

手に触れる素材、目に入る光、香り、音、食べるもの、そして空間の中を流れる時間。五感で捉える、数値化しにくい複数の要素がいくつも重なったところに、暮らしの心地よさは存在する。

『御宿MAS』はプロダクトの展示にとどまらず、そうした心地よさを空間として表現しようという試みだ。

家具、光、和紙、香り、眠り。架空の「御宿」をつくる

会場となるKarimoku Commons Tokyoには、〈MAS〉とともに日本各地のブランドやクリエイターが集う。

〈MAS〉の家具と照明を組み合わせたダイニング空間
家具だけでなく、光や素材まで含めて暮らしの心地よさを考える『御宿MAS』。多様なプロダクトをひとつの空間として編集する

奈良を拠点とする照明ブランド〈NEW LIGHT POTTERY〉、佐賀で300年以上続く〈名尾手すき和紙〉、福井の漆器メーカーを背景に持つ〈SEKISAKA〉、天然素材によるキャンドルを手掛ける〈sheep〉、天然素材を軸に眠りを提案する〈sinso〉。さらに〈日本草木研究所〉のお茶や、和菓子作家・小島直子による〈嶋ゞ〉の和菓子も加わる。

NEW LIGHT POTTERYの照明「SOL / 700」
奈良を拠点とする照明ブランド〈NEW LIGHT POTTERY〉の「SOL / 700」。『御宿MAS』では展示プロダクトのひとつとして紹介される
名尾手すき和紙による作品「PAUSE」
佐賀県で300年以上受け継がれてきた〈名尾手すき和紙〉による「PAUSE」。和紙という素材の可能性を現代的な表現へと広げる
SAROの漆器「URUSHI SPOON」
SEKISAKAが展開するブランド〈SARO〉の「URUSHI SPOON」。『御宿MAS』では、家具だけでなく日常の道具まで含めた暮らしの風景を提示する

家具、光、素材、香り、眠り、味覚までをひとつの暮らしとして編集する空間なのである。

展示会のディレクション・グラフィックは川浪寛朗、空間ディレクションは熊野亘が手掛ける。

リビング、ダイニング、寝室まで。「暮らす」ことで家具を見る

会場の入り口では、御宿の玄関を思わせる暖簾をくぐり、フロントとショップを兼ねたラウンジへと進む。このスペースでは、2026年内に発売予定の〈MAS〉の新作「WK Lounge chair 01 Pad」を使ったコンパクトなラウンジも展開される。

さらにその奥には、リビング、ダイニング、寝室を備えた「居室」をイメージした空間が広がる。それぞれの生活シーンに合わせて〈MAS〉の家具がコーディネートされるほか、熊野亘がデザインしたヒノキの座椅子のプロトタイプも初公開される予定となっている。

また、「製品を見る」ことよりも「空間を体験する」ことに軸足が置かれている。

日本草木研究所による日本の森の植物を使ったお茶、〈sheep〉が〈MAS〉の世界観をイメージして制作したアロマキャンドルなども用意され、視覚や触覚だけではなく、嗅覚や味覚にも働きかける。

sheepが制作した「御宿MASの香り」アロマキャンドル
〈sheep〉が〈MAS〉の世界観をイメージして制作した「(Untitled) × karimoku 御宿MASの香り」。会場では香りも“New Japanese Comfort”を構成する要素となる

『御宿MAS』の発表資料では「家具、光、素材、香り、味わい、それらを包む時間」と表現されている。住宅を考える際にも、実はこの「それらを包む時間」という視点が必要だろう。

高級で美しい家具を置いたからといって、心地よい空間になるわけではない。

光の入り方、素材の感触、香り、眠り、食事、人がそこで過ごす時間までが積み重なって、初めてひとつの生活環境になる。

天然素材の寝具を展開する〈sinso〉が提案する眠りの空間
天然素材を軸に、本当に心地よい眠りと暮らしを追求する〈sinso〉。『御宿MAS』では、家具だけでなく「眠り」も心地よさを構成する要素として取り込まれる

『御宿MAS』が家具展示ではなく「御宿」という形式を選んだ理由も、そこにあると言えるだろう。

世界に出たからこそ見えてきた「日本」

参加するブランドの多くは、2026年にコペンハーゲンで開催されたデザインフェスティバル「3daysofdesign 2026」の『Japanmade vol.1』でも〈MAS〉と協働している。

会期中の9月25日には、その参加メンバーが再び集まり、「世界に出て、あらためて見えた日本。」をテーマとしたトークイベントも開催される。

さらに10月1日には、「森からはじまる暮らしの豊かさ。」をテーマに、日本の森や自然が暮らしと空間にもたらす価値を掘り下げ、“New Japanese Comfort”を素材や自然、ウェルネスの視点から考えるトークセッションも予定されている。

日本草木研究所「森を飲むフォレストシロップ」
日本の森を新たな文化資本として捉える〈日本草木研究所〉の「森を飲むフォレストシロップ」。『御宿MAS』では、森の恵みも暮らしの心地よさを考える要素となる

海外に日本のデザインを紹介するだけではなく、一度海外から日本を見つめ直し、そこで見えてきたものを再び国内の暮らしへと戻していく。“New Japanese Comfort”という言葉には、そんな往復運動も含まれているのかもしれない。

「日本らしい住宅」とは何かを考える場所に

畳を敷いて、障子を入れ、和風の家具を置けば、「日本らしい空間」が成立する時代ではない。

一方で、木や紙といった自然素材を尊重する感覚、光を柔らかく受け止めること、季節を感じること、控えめな意匠、眠ることや食べることまで含めて住環境を考える姿勢には、確かに日本の暮らしが長い時間をかけて育んできた何かがある。

〈MAS〉が掲げる“New Japanese Comfort”は、それを過去の様式として再現するのではなく、現在の暮らしに適した新しい「心地よさ」として再構成しようとしている。

住宅の価値が、モノの豪華さから「そこでどのような時間を過ごせるか」へと広がりつつある現在、家具、照明、素材、香り、眠り、食、そして森までをひとつの空間として束ねる『御宿MAS』は、これからの日本の住まいを考える上でも、示唆の多い展示となりそうだ。

『御宿MAS』開催概要

  • 会期:2026年9月19日(土)〜10月20日(火)
  • 休館日:日曜
  • 時間:13:00〜18:00
  • 会場:Karimoku Commons Tokyo 1F ギャラリースペース
  • 入場料:無料
  • 主催:カリモク家具株式会社
  • 展示会ディレクション・グラフィック:川浪寛朗
  • 空間ディレクション:熊野亘

関連トークイベント

「世界に出て、あらためて見えた日本。」

3daysofdesign 2026「Japanmade vol.1」に参加したブランドや作家が集まり、海外で感じた日本のものづくりの魅力や、その可能性について語るトークセッション。“New Japanese Comfort”の価値や、これからの日本のデザイン、文化、ものづくりについて考える。

  • 日程:2026年9月25日(金)
  • 時間:18:30〜20:00(開場18:00)
  • 会場:KARIMOKU RESEARCH CENTER B1F
  • 定員:50名
  • 登壇者:Jens H. Jensen、関坂達弘(SEKISAKA)、谷口弦(名尾手すき和紙)、永冨裕幸(NEW LIGHT POTTERY)、山川立真(SHEEP DESIGN Inc.)、熊野亘(〈MAS〉デザインディレクター)
  • 参加:事前申込制
  • お申込み:https://peatix.com/event/5164557

「森からはじまる暮らしの豊かさ。」

木材だけでなく、植物や香り、お茶、お酒など多様な恵みをもたらす「日本の森」をテーマに、自然が暮らしや空間にもたらす価値について考えるトークセッション。“New Japanese Comfort”を、森や自然との関係から紐解く。

  • 日程:2026年10月1日(木)
  • 時間:18:30〜20:00(開場18:00)
  • 会場:KARIMOKU RESEARCH CENTER B1F
  • 定員:50名
  • 登壇者:川浪寛朗(展示会ディレクション・グラフィック)、古谷知華(日本草木研究所)、熊野亘(〈MAS〉デザインディレクター)、石野田輝旭(FLOOAT)
  • 参加:事前申込制
  • お申込み:https://peatix.com/event/5164870

MAS

カリモク家具

Karimoku Commons Tokyo

  • 取材

    LWL online 編集部

Related articles 関連する記事

  1. home Home
  2. EVENT
  3. カリモク〈MAS〉の企画展「御宿MAS」開催。家具、光、香りで描く“New Japanese Comfort”