Bang & Olufsen、100周年記念展「Residence of Beautiful Sound」開催。コペンハーゲンの邸宅で体感する「美しい音」

 取材/LWL online編集部

Bang & Olufsen(バング & オルフセン)は、2026年6月10日(水)から12日(金)までデンマーク・コペンハーゲンで開催されるデザインイベント「3daysofdesign」にあわせ、ブランド創立100周年を記念した没入型展示「Residence of Beautiful Sound」を開催する。会場はコペンハーゲンのChristianshavnエリアにある歴史ある邸宅。

3daysofdesignは、コペンハーゲン市内各所を舞台に、デザイン、家具、照明、素材、クラフト、建築的インスタレーションが展開される北欧を代表するデザインフェスティバルであり、2026年は6月10日から12日まで開催される。

LWL onlineではこれまでも、Bang & Olufsenの創業100周年にあわせ、昨年秋以降、Centennial Collectionから、日本初のコンセプトブック、そして藤原ヒロシ氏率いるfragmentとのコラボレーションまで紹介してきた。そこから一貫して見えてくるのは、Bang & Olufsenが「音を住空間の中でどのように存在させるのか」を問い続けてきたブランドである、ということだ。

今回の「Residence of Beautiful Sound」は、その100年の歩みを、展示室ではなく敢えて「邸宅」という親密な空間で再構成する試みである。音、デザイン、クラフツマンシップ。Bang & Olufsenが長く守り、更新してきた価値を暮らしの風景の中で体験させる展示と言えるだろう。

Bang & Olufsen(バング & オルフセン)は、藤原ヒロシ氏率いる東京のデザインスタジオfragment(フラグメント)とのコラボレーションモデルを発表した。ポータブルBluetoothスピーカー「Beosound A1」、ヘッドホン「Beoplay H100」、壁掛け型スピーカーシステム「Beosound Shape」、そして名作CDプレーヤー「Beosound 9000」を現代に蘇らせる「Beosystem 9000c」。4つのアイコニックなプロダクトが、fragmentの美学によって再解釈される

ストルーアの屋根裏からコペンハーゲンの邸宅へ

Bang & Olufsenの歴史は、1925年、デンマーク北西部の小さな町ストルーア近郊の屋根裏部屋から始まった。創業者のPeter Bang(ピーター・バング)とSvend Olufsen(スヴェン・オルフセン)は、ラジオという当時の先端テクノロジーを、家庭の中へと導くための製品づくりに取り組んだ。

その初期の象徴が1927年に発表された「The Eliminator」である。電池式ラジオを家庭用電源で使えるようにするこの装置は、ラジオを「特別な機械」から「暮らしに根付く音」へと近づけるものだった。Bang & Olufsenの100年は、音響技術の進化であると同時に、音を生活空間へどう自然に溶け込ませるかという探求でもあった。

1960年代以降、その思想はJacob Jensen(ヤコブ・イェンセン)によるミニマルで水平的なデザイン、そしてDavid Lewis(デイビッド・ルイス)による彫刻的なプロダクト群へと受け継がれていく。Beogram 4000の水平に移動するトーンアーム、Beosound 9000の6枚のCDを敢えて見せるデザイン、そしてBeolabシリーズの造形的で圧倒的な存在感まで、Bang & Olufsenの数々の名作は、音を鳴らすだけでなく、音楽を聴く所作そのもの、音のある風景や佇まいを空間の中で美しく見せてきた。

今回の会場が、ホワイトキューブのギャラリーではなく、歴史ある邸宅であることはまさに象徴的だろう。Bang & Olufsenにとって音響機器とは、棚の上に置かれる家電ではなく、家具、照明、外光、アート、建築とともにインテリアを構築するエレメントであり続けてきたからである。

「Residence of Beautiful Sound」が提示する4つの空間

「Residence of Beautiful Sound」は、4つの異なる空間で構成される。それぞれの部屋では、Bang & Olufsenが100年にわたって育んできた思想が、異なる角度から再解釈される。

ひとつの軸となるのが、Recreated Classics(リクリエイト・クラシック)とReloved pieces(リ・ラブド・ピース)である。過去の名品を懐かしむための懐古的な展示ではなく、リファービッシュ、リサーキュレーション、そして現代のクラフツマンシップを通じて、アイコニックなプロダクトがいかに次の世代へ受け継がれていくのかを示すものとなる。

LWL onlineで紹介したfragmentとのコラボレーションでも、Bang & Olufsenの名作は「復刻」ではなく「再解釈」として扱われていた。たとえば、Beosound 9000を現代に蘇らせるBeosystem 9000cは、CDというメディアの記憶を現代の素材感と90年代以降のカルチャーの文脈から読み直すプロジェクトだった。今回のReloved and Recreated Classicsもまた、100年のアーカイブを静的に保存するのではなく、現代の暮らしの中へ置き直す試みだと言える。

Bang & Olufsenにとって、時間を経たプロダクトは古びたものではない。むしろ、使われることによって、時代ごとの感性により新しく解釈し直されることで、より深い価値を帯びていくのだ。ここには、ラグジュアリーを「新品の豪華さ」ではなく、「長く付き合える時間の質」として捉える姿勢がある。

Atelierが示す音響とインテリアの調和

もうひとつの見どころが、「The Atelier Experience」である。Bang & Olufsenが展開するカスタマイズプログラムAtelier(アトリエ)を通じて、オーダーメイドのサウンド体験と先進的な音響技術が、建築やインテリアデザインとどのように調和するのかを体験できる。

Atelierはアルミニウム、木、ファブリック、仕上げ、色彩、設置環境を含め、音響機器を空間の一部として仕立てるためのアプローチである。たとえば、Beolab 90 Titan Editionの記事でもふれたように、Bang & Olufsenのフラッグシップは、しばしば「音響彫刻」と呼びたくなる存在感を持つ。そこでは音響技術と造形、素材、表面処理が不可分に結びついている。

今回の邸宅展示においても、音がどのように部屋の雰囲気を変え、素材の質感と響き合い、住まいの中に記憶として根付く体験を生み出すのか、その関係性こそが重要であり、Bang & Olufsenが100年をかけて磨きあげてきた結晶なのである。

スマートホームや建築統合型の音響提案が広がる現在、オーディオは照明、家具、壁面、開口部、生活動線とともに、空間全体の体験を構成する要素になっている。Bang & OlufsenのAtelierは、その時代におけるラグジュアリーオーディオのひとつの回答と言えるだろう。

デンマークと日本のクラフツマンシップが交差する

今回の展示で特に注目したいのが、「Japanese Artist Collaborations」である。デンマークのデザインと、玉川堂の手打ち金属工芸、名尾手すき和紙、そしてカリモク家具の木工が交差する展示が予定されている。

Bang & Olufsenの100周年を考えるうえで非常に興味深い構成である。Bang & Olufsenのものづくりは、アルミニウム加工や木工、表面仕上げといった素材への深い理解に支えられてきた。精密な音響設計だけではなく、素材が空間の中でどのような光をまとい、どのような手触りを持ち、どのような時間の変化を受け入れるのかを重視してきた。

玉川堂の鎚起銅器、名尾手すき和紙、カリモク家具の木工。いずれも、素材を単なる原料として扱うのではなく、時間、技術、手の痕跡を含んだ存在として扱う日本の文化である。そこにBang & Olufsenの音響技術とデンマークデザインが重なることで、音と素材をめぐる新しい対話が生まれる。

当サイトではこれまでも、ラグジュアリーを単に「高価格なもの」を指すのではなく、素材、技術、空間、時間が重なり合う体験として捉えてきた。今回のJapanese Artist Collaborationsは、その視点から見ても実にラグジュアリーを体現する展示である。音は目に見えないが、しかし音を支える素材と音を受け止める空間は、間違いなく暮らしの質を変えていく。

100周年は回顧ではなく「再編集」である

Bang & Olufsenの100周年をめぐる一連のプロジェクトには共通した姿勢がある。過去を記念するだけでなく、過去を現代の暮らしへと「再編集」する姿勢だ。

Centennial Collectionでは、Beoplay H100、Beosound A5、Beosound A9といった現代の代表作に、100年の記憶が織り込まれた。Beolab 90 Titan Editionでは、フラッグシップスピーカーがクラフツマンシップとモダニズムの記念碑として示された。表参道ヒルズでの100周年記念展では、Bang & Olufsenの歩みが空間文化史の視点から紹介された。そしてfragmentとのコラボレーションでは、藤原ヒロシ氏の個人的な記憶と東京のカルチャーが、Bang & Olufsenのアーカイブに重ねられた。

今回の「Residence of Beautiful Sound」は、ここまでの流れをコペンハーゲンの邸宅という場へと展開するものとなる。Bang & Olufsenが次の100年へ向けて、音と空間の関係をどのように更新しようとしているかを示している。

音は人の記憶に残り、そして、ときに住まいそのものの印象を決定づける。

Bang & Olufsenが100年にわたって追い続けてきたのは、まさにそのような「美しい音」のあり方だった。コペンハーゲンの歴史ある邸宅で開催される「Residence of Beautiful Sound」は、ブランドの過去を振り返る展示であると同時に、音がこれからの住空間にどのように息づいていくのかを示す、静かで力強い提案となりそうだ。

開催概要

「Residence of Beautiful Sound」

  • 会期:2026年6月10日(水)〜6月12日(金)
  • 会場:Strandgade 26, København K 1401(Christianshavnエリア)
  • 開場時間:
  • 6月10日(水)9:00〜11:30、13:45〜19:00
  • 6月11日(木)10:30〜19:00(※9:00〜10:30には日本語のスペシャルツアーと立食の朝食を予定)
  • 6月12日(金)9:00〜19:00
  • 主な展示内容:
  • Reloved and Recreated Classics
  • The Atelier Experience
  • Japanese Artist Collaborations
  • ライブデモンストレーション、試聴会、トークイベントなど
  • 登壇予定:
  • Kresten Bjørn Krab-Bjerre, Senior Director of Design
  • Mads Kogsgaard Hansen, Director of Product Circularity
  • Dorte Vestergaard, Head of Reloved

Bang & Olufsen創業100周年記念コンセプトブックも発売中

Bang & Olufsen Japanによる創業100周年記念コンセプトブック『バング & オルフセンの音とデザイン』も発売中である。歴代の名品を年代順に紹介する製品カタログ、ブランド100年の歩みを追ったドキュメント、藤原ヒロシ氏、片山正通氏、中村拓志氏、三好良氏、イ・カンホ氏ら、Bang & Olufsenを愛用するクリエイターやアーティストの声を収録。さらに、David Lewisの弟子であるトーステン・ヴァリュアーやセシリエ・マンツなど、現在のBang & Olufsenと協働するデンマーク人デザイナーへのインタビューも掲載される。

ストルーアから世界へ。音響技術、デザイン、クラフツマンシップを結びつけてきたBang & Olufsenの100年を、プロダクト、人物、空間の視点から読み解く一冊である。

  • 書名:『バング & オルフセンの音とデザイン』
  • 著者:バング & オルフセン ジャパン
  • アートディレクション:田部井美奈
  • 判型:B5変形
  • 総頁:208頁
  • 製本:並製
  • 定価:4,400円(税込)

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