英国高級マットレス「VISPRING(バイスプリング)」を日本ベッドが国内展開。125年の手仕事がつくる「眠り」
取材/LWL online編集部
日本ベッド製造は、英国の高級ベッド・マットレスブランド「VISPRING(バイスプリング)」と日本における輸入総代理店の独占販売契約を締結し、2026年8月26日から国内販売を開始した。ポケットスプリングの源流に連なる125年の歴史、英国プリマスで受け継がれる手仕事、天然素材とビスポーク。創業100周年を迎えた日本ベッドとの組み合わせから、これからの「眠り」とラグジュアリー、ウェルネスの関係を考える。
日本ベッドが英国VISPRINGの国内展開を開始
日本ベッド製造株式会社は、英国の高級ベッド・マットレスブランド「VISPRING(バイスプリング)」を展開するバイスプリング社と、日本における輸入総代理店として独占販売契約を締結した。2026年8月26日より、バイスプリングのマットレスを国内で販売している。
バイスプリングは、今日「ポケットスプリング」として知られるマーシャル・コイルの発明を礎に誕生した、125年の歴史を誇る英国の名門ブランドである。
睡眠を心身のコンディションを整えるための「ウェルネス」として捉える考え方が広がるなか、ベッドルームが住宅における極めて重要なウェルネス空間として捉えられつつある。
天然素材や身体への適合性を通して、意識することなく睡眠環境の質を高めるバイスプリングのものづくりは、住宅のなかにウェルネスを自然に織り込む「Invisible Wellness」という近年の潮流とも響き合う。
さらに、照明、空調、遮光、音環境を統合するスマートホーム/ホームオートメーションと合わせて考えれば、寝具もまた「ラグジュアリー×ウェルネス×リビングテック」を構成する重要な要素になってくる。
ポケットスプリングの歴史から始まったバイスプリング
バイスプリングの歴史は19世紀末まで遡る。
1899年、カナダに暮らしていた英国人技師ジェームズ・マーシャルは、体調を崩した妻のために、コイルスプリングを布製のポケットにひとつずつ包んだマットレスを考案した。
この構造が後に「ポケットスプリング」と呼ばれる方式へと発展していく。
1901年にはジョン・ノロンとフレデリック・ジェームズがジェームズ・マーシャルの技術を英国に持ち込み、ロンドンでMarshall Sanitary Mattress Companyを設立。その後1911年に「Vi-Spring」の名称が誕生した。
1912年には豪華客船タイタニック号のスイート39室とファーストクラス350室にも同社のマットレスが採用されたという。
その後もホテルや高級住宅などへと展開を広げ、1971年には生産拠点を現在の英国プリマスへ移転。現在も約200人の職人がマットレスづくりに携わっている。
1977年にはエリザベス2世の即位25周年に際して「Regal Supreme」ベッドが贈られ、2012年にはQueen’s Award for Enterprise、2024年にはKing’s Award for Enterpriseを受賞するなど、英国を代表するベッドメーカーのひとつとして歴史を重ねてきた。

英国プリマスでスプリングから自社生産
バイスプリングでは、現在でも英国プリマスの自社工場で製造を続けている。マットレスだけではなく、その核となるスプリングも自社工場内で製造している。
ブランド公式情報によれば、線径などが異なる70種類以上のスプリングを使い分け、モデルや求める寝心地に合わせて構成しているとのこと。
ポケットスプリングは、ひとつひとつのスプリングが独立して身体の荷重を受け止める構造である。肩や腰など身体の部位ごとに異なる荷重へ追従するとともに、隣で眠る人の寝返りなどによる振動が伝わりにくい。身体へのフィット感だけでなく、二人で使用するベッドにおける快適性にもつながってくる。
さらに、マットレスの縁を職人が手縫いで仕上げるなど、機械では置き換えにくい工程を現在も残している。効率的な大量生産とは対極にあるこうした製造工程そのものが、ブランドの価値を形成していることが見てとれる。

ウール、シルク、馬毛。天然素材を重ねる寝心地
マットレス内部に用いる素材もバイスプリングの特徴である。
バイスプリングでは、ウール、シルク、馬毛、アルパカ、竹など、モデルに応じてさまざまな天然素材を使用する。日本ベッドによれば、製造工程でプラスチック、ポリエステル、発泡素材などの人工素材や化学物質は使用していないという。
ウールは吸放湿性や温度調整性を備え、馬毛は弾力性と通気性を持つ。こうした素材を組み合わせながら身体を支持することによって、スプリングだけでは完結しない寝床内環境を築いている。
バイスプリングが天然素材にこだわる背景には、マットレスを単なる「身体を載せるクッション」ではなく、睡眠中の身体を取り巻く環境そのものとして考える思想があるといえるだろう。
サイズからヘッドボードまで。ベッドルームそのものをビスポークする
寝心地だけではなく、住空間との関係も重視されている。
マットレスはサイズや形状のカスタマイズに対応する。また、ヘッドボードやベッド脚、張地なども選択が可能であり、住宅だけでなく、ヨットや特殊な形状のベッドフレームなどにも対応してきた。
要するに、バイスプリングは、身体、空間、インテリアに合わせて一台のベッドを仕立てていくという、家具に近いビスポークの考え方を採用している。
近年、ラグジュアリー住宅におけるベッドルームは、照明、空調、遮光、音環境などを含めた、質の高い休息をつくる「ウェルネス空間」として設計する考え方が広がりつつある。身体との接点であるマットレスは、寝室を構成する設備のなかでも極めて重要な存在となる。
創業100年の日本ベッドと、125年を超える英国寝具文化が交差する
今回、日本におけるバイスプリングの総代理店となった日本ベッドもまた、日本のベッド文化を長く支えてきた。
同社は1926年、日本初のベッド製造会社「日本羽根工業社」として創業した。洋式寝具の生産に取り組み、国産初の連結式スプリングマットレスを商品化するなど、日本におけるベッドの普及とともに歩んできた。現在は独自技術によるポケットコイルマットレスを主力製品のひとつとしている。
2026年は、日本ベッドにとって創業100周年にあたる。一方のバイスプリングも、ポケットスプリングの源流まで遡れば125年以上の歴史を持つ。
日本と英国、それぞれ異なる土地でベッド文化を築いてきた老舗メーカーが、日本市場で出会う。
「眠る8時間」をどうデザインするか?
住宅というと、家具、照明、キッチン、オーディオ、アートなど、人が起きている時間に触れるものを中心に考えていく。
しかし、ごく単純に言ってしまえば、人生のおよそ3分の1は睡眠に費やす。
ウェルネスという観点から住宅を捉え直すなら、その長い時間を過ごすベッドルームと寝具は、本来、住宅設計の中心的なテーマのひとつであるはずだ。
毎晩繰り返される睡眠という日常の質へ投資することは、今後の住まいづくりにおいて、より重要なテーマになってくるはずだ。
バイスプリングの日本展開は、高級マットレスの選択肢が増えるというよりも、眠りの質まで含めて住空間を考えるという価値観が、日本の住宅にもより深く入り込んでいく契機のひとつになるだろう。
これからのラグジュアリーは、高価なものを所有することだけではなく、日々の時間の質をどこまで高められるかという方向へ、さらに広がっていくだろう。
インテリアを設計するのと同じように、「眠り」をデザインすることが、ラグジュアリーとウェルネスが交わるこれからの住まいにおいてより問われていくはずだ。
VISPRING(バイスプリング) 日本発売概要
- 発売日:2026年8月26日
- ブランド:VISPRING(バイスプリング)
- 生産国:英国
- 製造拠点:英国プリマス
- 製品:高級ハンドメイドマットレス/ベッド関連製品
- 主な素材:ウール、シルク、馬毛、アルパカ、竹などの天然素材
- 主な特徴:ポケットスプリング構造、ハンドメイド、サイズ・仕様のカスタマイズ対応
- 価格:オープン価格
- 日本総代理店:日本ベッド製造株式会社
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LWL online 編集部