アルマーニ / カーザ、2026年新作コレクション「ORIGINS」を発表。住まいに宿る、原点と進化の美学

 取材/LWL online編集部

アルマーニ / カーザは2026年新作コレクション「ORIGINS」を発表した。舞台となったのはミラノのコルソ・ヴェネツィア14番地に構える旗艦店。ミラノデザインウィークの文脈の中で披露された本コレクションは、単なる新作家具の発表ではなく、アルマーニ / カーザが長年にわたり磨いてきた住空間への思想を、アイコンと新作の対話として立ち上げる展示となっている。

「ORIGINS」というタイトルが示すように、今回のコレクションで問われているのは、ブランドの原点である。ただし、過去に戻るわけではなく、むしろ時代を超えて残る造形、素材、比例、光の扱いを、現代の住空間へと更新していく試みとなっている。

8点のアイコンが描くアルマーニ / カーザの原点

展示の起点となるのは、アルマーニ / カーザを象徴する8点のアイコンである。

BALOONアームチェア、SEINEコンソール、RIESLINGバーキャビネット、DUSTINディレクターズチェア、TOKYOアームチェア、WINCHESTERスクリーン、LOGOランプ、DANZICAコーヒーテーブル。これらのピースは、ひと目でアルマーニ / カーザとわかる存在感を持ちながら、時代ごとに少しずつ姿を変えてきた。

アイコンとは、ブランドの美意識を最も明快に示しながら、現在の生活感覚に応じて更新され続ける存在である。今回の展示では、それらのアイコンが新作とともに配置されることで、アルマーニ / カーザが歩んできた時間と、これからの住空間への提案が、ひとつの連続した物語として示されている。

黒いドレープとゴールドのケース。旗艦店が「舞台」へと変わる

1階の空間は黒いドレープとゴールドのケースによって、舞台のような空間で構成される。外からは家具のシルエットだけが浮かび上がり、店内へ足を踏み入れることで、その全貌が明らかになる。

この演出は、家具を単なるプロダクトとして見せるのではなく、ひとつの登場人物のように扱う。影、輪郭、光沢、余白。アルマーニ / カーザの世界では、家具は室内を満たす物体である以前に、空間の緊張感をつくる要素でもあり、暮らしの中に静かなリズムをもたらす存在である。

黒とゴールドのコントラストは、アルマーニが長く追求してきた抑制されたエレガンスを象徴する。過度に語らず、しかし確かに記憶に残る。そのバランスこそが、アルマーニ / カーザの住空間に通底する美学といえるだろう。

住まいの記憶をたどる3つのリビングルーム

2階では、ジョルジオ・アルマーニの邸宅に着想を得たリビングルームが展開され、複数のエリアで構成される。落ち着きのある私的な空間でありながら、同時に人を迎え、会話し、時間を共有する場としてのリビングの役割が描かれている。

それぞれの空間には、ジョルジオ・アルマーニの邸宅を想起させる手描きの水彩画が配される。家具だけではなく、壁面に描かれた風景や建築的要素、素材の表情、光の入り方までを含めて、ひとつの居住体験として構成されている点が印象的である。

ミラノの自邸にあるギャラリーウォールを描いた空間では、新作BORGONUOVOゲームテーブル、アルマーニ / フィオリのコンポジションに着想を得たBRIGHTONジャカードのCLASSICチェア、そしてフロアタイプへと進化したLOGOランプが配置される。柔らかな色彩と白黒のチェッカーフロアの対比が、クラシックでありながら現代的な緊張感を生み出している。

素材、色彩、フォルムが呼応するインテリアの構成力

階段と黒豹の彫刻を描いたエリアは、ミラノの邸宅を象徴する空間として構成されている。ここでは、ストーンウォッシュ加工を施したシェニールの質感を持つBILBAOリネン張りのソファ、クラッケル調の背景を持つBERLINフローラルジャカードのALBERTアームチェア、ブラックアッシュにゴールドエッジを効かせたBRERAテーブルが並ぶ。

それぞれの家具が個別の造形美を主張するのではなく、素材、色彩、フォルムが互いに呼応しながら空間を整える。アルマーニ / カーザの家具は、単体で完結するオブジェでありながら、空間に置かれて初めてその魅力を深める。家具、照明、ファブリック、小物が互いに距離を取りながら調和することで、住まい全体に静かな秩序が生まれる。

くつろぎと親密さをもたらす、PLAYソファとブックケース

暖炉と大きな窓を描いた壁面が印象的なエリアは、より親密なくつろぎの場として構成されている。やわらかく起毛したウールのBRETAGNEファブリックによる新作PLAYソファ、BYRONアームチェア、ローテーブル、そしてカナレットウォールナットとナチュラルレザーを組み合わせたPLAYブックケースが配置される。

ソファのファブリック、木部の質感、レザーの表情、窓辺を想起させる光。それらが重なり合うことで、住まいの中に深く身を委ねる時間が立ち上がる。

当サイトが重視してきた「ラグジュアリーな住空間」とは、単に高価な家具を置くことではなく、素材の選択、光の扱い、家具同士の関係性、そしてそこに流れる時間までを丁寧に設計することだ。「ORIGINS」は、アルマーニ / カーザが考える住まいの豊かさを、極めて端正な形で可視化した展示といえるだろう。

パンテッレリアの情景が示すもてなしの美学

最後のエリアでは、大切な人々と過ごす時間がテーマとなる。穏やかな海景と風に揺れるカーテンを描いた背景は、ジョルジオ・アルマーニの邸宅があるパンテッレリアの情景を想起させる。

ここに配置されるのは、ライトグレーのオーク材の一枚板にクッションを配したBRANDOモジュラーソファ、曲線を描くローテーブル、RETTAテーブルランプ。開放感のある構成でありながら、空間全体には落ち着きがあり、親しい人々と過ごす時間のための穏やかな舞台がつくられている。

アルマーニ / カーザにおける「もてなし」とは、相手が自然にくつろぎ、会話が生まれ、時間がゆるやかに流れるように、空間そのものを整えることだ。家具や小物は、そのための装置であり、同時に住まいの記憶をつくる要素でもある。

シンプルであることと、時間とともに進化し続けること

「ORIGINS」が示すのは、シンプルであることと、時間とともに進化し続けることは矛盾しないという考え方である。

アルマーニ / カーザの家具は、強い装飾性によって空間を支配するのではなく、素材、光、余白のバランスによって、住まいに静かな品格を与える。その美学は、ファッションにおけるジョルジオ・アルマーニの哲学とも深く通じている。身体を包む衣服から、暮らしを包む住空間へ。アルマーニの視線は、常に人の振る舞いと時間に向けられている。

2026年コレクション「ORIGINS」は、アイコンの再提示でありながら、懐古的なコレクションではない。過去に培われた造形や思想を現代の住まいの感覚へと自然に接続する試みである。そこには、住空間を単なるインテリアの集合ではなく、記憶、交流、くつろぎ、もてなしが重なり合う場として捉える、アルマーニ / カーザならではの視点がある。

https://www.armani.com/ja-jp/armani-casa/experience/salone-del-mobile-2026

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